なんでもない日々のお話7「だからー!」
「ちょっとだけでいいんだってばぁー!」
「ダメですって。」
「「もぉぉぉぉ、なんでよぉ〜〜!!!!」」
仕事を済ませて帰宅し、玄関ドアを開くとそこには客人が二人。
すっかり見慣れた顔の上、賑やかなことこの上ない。
随分と盛り上がっていてこちらに全く気付かないのをいい事にそっと姿を消し静かに扉を閉じ…そのまま静観する事約10分。
鼬ごっこの問答にただ呆れるばかり。
要約すると…
季節の変わり目忙しさもあって体調を崩した姫の見舞いに来た二人のレディは姫に会わせろと騒ぐも、当然今の姫に無理をさせる訳には行かず。
シェフがNoを突きつけている…と言ったところだろうか。
妥当な判断だと思う。
あの人の好い姫はわざわざ出向いててくれたのだから…と無茶をするに決まっているのだから。
しかし、絶対に会いたい二人VS無理をさせたくないシェフのこのやり取りを10分も見ていて流石に嫌気が差した。
「「だからお願いだってばぁ〜〜!」」
「ほんのちょっと!」
「一目だけ!」
何度も繰り返される言葉にシェフはもう言葉もなく溜息を零す。
ああ、このままでは気の優しいあの子は根負けするナァ…と過ぎり思わず口を開いた。
「ダメダヨ。」
突如聞こえてきた声に二人のレディはぴたりと口を閉ざして振り向いた。
「「…え????」」
「スマイル?」
「いつからいたの?」
二人の視線を受けて姿を現しながらつかつかと横を通り過ぎ、靴箱の横にあるスツールにどっかりと腰掛けた。
「もう10分くらいカナ。」
「それなら声かけてよー!」
「ほんとだよー!」
「「ねーー!!」」
悪びれない様子の二人に呆れてシェフを見るとやはり彼は呆れた様子で大きな溜息を吐く。
「ネェ、アッシュ。ユーリは?」
「姫と居ます。」
「そっか。今はどっち?」
「姫の自室っスね。
…正直芳しくないので。」
「主治医はなんて?」
「安静第一と。」
「そう。
…ってコトだから。ダメダヨ。」
流れるようにそう言って立ち上がった。
「あんまり騒ぐなら
キミたちの保護者にクレーム入れるヨ?」
「ほ、保護者って…!!」
「あたし達子供じゃないケド!?」
「子供じゃナイナラ弁えてヨ。」
「「………。」」
「ミミチャンもニャミチャンもオトナなんだカラ。」
「「………。」」
静かになった二人を見てシェフことアッシュは安堵している様だ。非常に判り易い。
「…姫の心配してくれるのはスゴく有難いヨ?
でもタイミングってあるジャナイ。
その時に連絡入れるカラサ。」
「「…わかった…」」
「絶対連絡してよ!?」
「絶対だからね!?」
「モチロン。約束は守るヨ、ボクは。」
スマイルのその言葉に二人は気を収めたようで騒がしくしてごめんねと残して帰って行った。
「…助かったっスけど…
助け舟ちょっと遅くねぇっスか!?」
「キミ独りでなんとかなると思ってサー。
そしたら根負けしそうになってるんだもの。」
二人を見送った後、アッシュは噛みつかんばかりに食ってかかる。
「だいたいボクが帰ってなかったらどーしてたのサー。」
「そりゃ…きっちり断ってましたよ…」
「…どうだか…」
「断ってますって!」
「…ナラ、イイケド。
キミ、絆されスギ。気をつけなヨ?」
「…肝に…銘じます…」
主人に叱られた飼い犬のようにあからさまにしょんぼりするアッシュを見ていると仕方ないナァ…と頬が緩む。
「ん。ヨシヨーシ♪」
そう言いながら頭をわしわしと撫でてやれば彼は犬扱いすんなしっ!!と怒っていた。