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    ケアロボットの誕生日ある日の朝。ベイマックスはカフェの前を掃き掃除をしていた。エプロンをして掃除をする彼の愛くるしい姿はカフェの客から好評だ。

    「毎日ありがとう。でね、今日はもう一個頼みがあるんだけど」
    キャスは申し訳なさそうにドアから顔を出した。頼みというのは『ヒロを起こすこと』だった。

    今日は休日。ヒロはベイマックスと外出する予定だ。出発は午前。しかし彼は休日の早起きが不得意だ。彼も自覚したうえで携帯電話のアラームは設定している。それでもアラームを止めて二度寝することを危惧し、キャスにも起こしてもらうようお願いしていた。だが彼女は今レジのお釣りの補充に銀行に行く必要があった。
    「わかりました。モチは起こしますか?」
    「モチは大丈夫!ほんとありがとう!」
    彼女は慌ただしく近所の銀行へ向かった。カフェの中が静寂に包まれる。ベイマックスはエプロンを外して元の場所にかける。彼は二階で寝ているヒロを起こしに向かった。

    彼は階段を登り、ヒロの寝ているベッドのほうまできゅむきゅむと足音を立てて歩いていく。
    「ヒロ」
    ベイマックスは寝ているヒロに声をかけた。
    「ん、ああ、おはよう……」
    ヒロは寝ぼけまなこでベイマックスに挨拶した。
    「おはようございます。換気するのにちょうど良い気候……」
    ジリリリリリリリ!!!ベイマックスの声を遮るように携帯電話のアラームが騒がしく鳴り響く。ヒロは驚いてアラームを止めた。
    「今日は出かける日だった。忘れてた」
    ヒロは後頭部を手櫛で掻く。
    「キャスおばさんは?」
    「お釣りの補充で銀行に行きました」
    ヒロは時計を見た。確かにこの時間ぐらいしか銀行に行けなさそうだ。
    「なるほどね」
    ヒロはゆっくりとベッドから体を起こして洗面所に向かった。ベイマックスのカメラの焦点が彼から別の対象へと絞られる。それは机の角にあったリボンで結ばれた箱だ。彼は近寄ってそれを見つめた。

    数分後、ヒロが部屋に戻ってきた。
    「ヒロ、これは『プレゼント』ですか?」
    ベイマックスは知っている。お祝いのときに誰かにモノを贈る時、モノを箱に入れてリボンで箱を閉めることがあると。
    「うん、そうだよ」
    ヒロは笑う。ベイマックスのセンサーでは体温が上がっているように検出された。
    「誰に贈るのでしょうか?」
    ベイマックスは首を傾げた。彼の体の中で、慶事──誕生日や祝日というイベントのデータが処理されていく。しかし、彼の高性能な人工知能でさえもヒロが『近日に』贈り物を贈る可能性のある人間は0人という結果を出した。

    彼の頭の中で『ヒロがプレゼントを貰った』という可能性も一瞬提示されたが、彼に関連するようなイベントは前後一ヶ月で検出されなかった。ならば人間以外の生き物はどうだろうか。
    「モチでしょうか」
    ベイマックスは再び首を傾げた。彼はモチの誕生日を知らなかった。そこで『モチの誕生日プレゼント』という可能性をヒロに伝えることにした。
    「いや、違うんだ」
    ヒロは首を横に振って続けた。
    「きみのだよ。ベイマックス」
    少し間があいた。
    「私に誕生日はありません」
    ベイマックスは二回瞬きして見せた。
    「確かにきみの正確な誕生日はわからない」
    兄のタダシがヘルスケアチップを作った日、テスト成功した日、ヒロが新しくボディを作り直した日……。ヒロが思う候補はいくつかあった。
    「でも『兄さんがテストに成功した日』は祝いたいんだ」
    兄が「記念すべき瞬間」だと言ったあの日は祝いたい。ヒロはそう思っていた。
    「では、『成功したテストの録画日』が私の誕生日ということになりますか?」
    「たぶん。でもフレッドは全部祝いたいって。他のみんなも賛成してる」
    ヒロは寝間着から私服に着替える。今日の午前はフレッドの屋敷で、夜はカフェでお祝いをする予定だ。
    「イベントは心に活力を与えるそうですね」
    ヒロの言葉にケアロボットはそう返した。
    「乗り気だね」
    「今日はバスに乗る予定でしたね」
    ヒロはバスの中で「乗り気」が言葉の綾であることを彼に教えようと思った。

    「プレゼントは贈られた相手が開ける傾向にあります。開けていいですか?」
    ベイマックスは尋ねた。
    「うん、開けて大丈夫だよ」
    ヒロの許可を得ると、ベイマックスはリボンを解いて蓋を開けた。箱の中には帽子が入っていた。
    「これから暑くなるからね。ビニールの日焼け予防と、あとオーバーヒート防止にファンもつけたんだ」
    ヒロは帽子を持って説明した。ベイマックスはお辞儀をするような体勢になる。ヒロは彼の頭に帽子を被せた。
    「クールです。今回は涼しいという意味です」
    ベイマックスはそう言った。送風のおかげでデータ処理も少しスムーズだ。
    「見た目もクールだよ」
    ヒロは親指を立ててベイマックスを褒めた。

    「そろそろ行こうか。そのクールな姿をみんなに見せなきゃね」
    ヒロはリュックを背負って準備を整えた。彼とベイマックスは階段を降りていく。ちょうど帰ってきたキャスとそれぞれハグを交わして家を出た。一人と一体は、フレッドの屋敷の方面に向かうバスの方角へ歩き始めた。
    mith0log Link Message Mute
    2018/07/07 8:52:17

    ケアロボットの誕生日

    ベイマックスの誕生日はいつにあたるのか考えるヒロの話 ##二次創作 #ベイマックス #bighero6

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