モアナ140字SSまとめ目次と各話あらすじ
1.綺麗な蟹の噂:
エンドロール後のタマトア
2.新たな歌を:
モアナ経由で流行るユアウェルカム
3.釣り針の道しるべ:
釣り針の星座が本人の動きと連動する前提
4.鶏の繁栄:
ヘイヘイたちと海さん
5.一本釣り:
モアナの釣りをサメ頭で妨害するマウイ
6.天翔ける鷹:
暗い転生の話
7.航海士との再会:
明るい転生の話
8.特別な人:
村の子供にマウイの話をせがまれるモアナ
9.水鏡:
水たまりに姿を映して身だしなみを整えるモアナとマウイ
10.祖母に会う日まで:
モトゥヌイに戻っておばあちゃんのいない生活を実感するモアナ
11.貝殻の耳飾り:
耳飾りをつけ始めたモアナ
12.深緑の羽:
尾羽を毟ったヘイヘイに戸惑うモアナ
13.魚釣りのあと:
円盤収録の短編後のモアナとマウイとミニマウイ
14.ハートのサイン:
ハートの意味を理解しきれていないモアナと彼女に会いに行くマウイ
15.旅仕度:
新天地の出航に向けて何を持っていくか悩むモアナ
16.空を泳ぐ鶏:
鷹マウイを見つめているように見えるヘイヘイを見つめる海さん
17.攻防戦:
魔物の国に向かった二人を待っている間のヘイヘイと海さん
18.鷹の目:
隠れんぼするモアナとマウイ
19.昔話:
マウイに他の英雄譚を教えてもらうモアナ
20.土産話:
巨大な鷹が変わったエイを見かける話
1.綺麗な蟹の噂
観客は無慈悲に去る。画面越しのため無茶な願いだとはタマトアにも自覚はあった。彼は動きを止め、歌を聞かせた客の言葉を思い出した。あの人間の言葉は本当だろうか。海上では綺麗な蟹として自分が語り継がれている。その真偽を確かめるためにも、彼は自分一匹でその巨体を起こそうともがき始めた。
2.新たな歌を
モトゥヌイへ戻ってきた彼女はあるメロディを口ずさむようになった。村では馴染みのないメロディだ。それは彼女と旅を共にした彼の歌だ。珍しい歌に村の子供たちは興味を持った。彼女は歌を通して彼のことを教える。歌を教えたあと、お礼を言う子供たちに彼女は必ずこう伝える。
『ユアウェルカム』と。
3.釣り針の道しるべ
釣り針の星座を目指せばマウイが見つかる。そのせいで、魔物や人間が嫌でもやって来て鬱陶しいと思うこともあった。でも今は釣り針の星座があって嬉しいこともある。
「マウイ!」
彼女の声だ。左胸の彼のタトゥーが浮き足立った。今日は彼女から会いに来たらしい。彼は彼女の舟に追い風を吹かせた。
4.鶏の繁栄
手のかかる雄鶏がまたやって来た。海は海面を持ち上げ、その先端で雄鶏の向きを変えた。しかし雄鶏は再び海の方を振り向いて首を傾げて鳴いた。海が雄鶏を持て余す中、雌鶏と数羽の雛がやって来た。雌鶏と雛は雄鶏の隣で足を止める。雄鶏の面影を残す雛に、海面の先端がしかめるようにうねりを見せた。
5.一本釣り
釣りの途中、モアナはマウイに声をかけられた。振り向くと、鮫頭で釣りをする彼の姿があった。思わず彼女は噴き出してしまい、魚を捕まえ損ねた。怒りたいが鮫頭を見る度に笑いが堪えられない。彼女を笑わせるつもりで鮫頭になったが、いつまでも笑いの止まらない彼女を見て、彼は却って心配になった。
6.天翔ける鷹
航海士モアナは、能力を尊重し村長の世襲制を廃止しようとした。だがそれにより起きた争いで彼女は命を落としたとされる。一説では彼女は争いの中で大鷹に攫われたとも言われている。大鷹は島に彼女を匿い、最後を看取ったという。彼女は鷹に転生した後、その大鷹とともに世界を翔け続けているという。
7.航海士との再会
偉大な航海士が亡くなった。半神は彼女の死を見届けて別の島へ行く。一人思いにふけると小さな相棒が彼女の姿の入墨を見つめる。誰だって死ぬ。わかりきっていたのに胸が疼く。すると、一羽の鷹が彼の元に降りた。それは少女の姿に変わる。
「お戻りのようだ」
彼は偉大な航海士との再会に心を躍らせた。
8.特別な人
モアナは村の子供たちに話をせがまれた。彼女は浜辺で物語を語り出す。彼女と伝説の半神、そして鶏が成し遂げた世界を救う物語だ。
「マウイのこと好き?」
語り終えた彼女に一人の子供が尋ねた。
「ええ。島の外で初めて会った特別な人ね」
彼女は答える。海の方に顔を向ける痩せこけた鶏を見つめながら。
9.水鏡
雨上がり。水たまりに澄んだ空が映る。身を乗り出して自分の姿を映してみた。普段見ない自分の姿。少し乱れた髪を手櫛で整える。そわそわする自分に可笑しくなった。相手は気づかないだろう。それでも構わない。自分がしたいだけだ。別の場所で互いに同じことをしているとは露知らず、二人は落ち合う。
10.祖母に会う日まで
モアナが故郷に戻ってから数日。彼女は穏やかな生活に戻り、改めて祖母が村にいないことを実感していた。いつでも祖母と話していた頃に懐かしさと寂しさを覚える。浜辺に訪れ、エイがいないか水平線まで見つめた。船の修理や航海術を教える毎日は続く。再会の日を待ちわびながら、彼女は村へと戻った。
11.貝殻の耳飾り
村長の耳飾りはどの島の海岸でも見つからないような美しい貝殻で作られている。村人に材料の貝殻をどこで手に入れたか尋ねられても、彼女は微笑んではぐらかす。否、はぐらかしてなどいない。彼女は本当に知らないのだ。貝殻をどこで手に入れたのかを知っているのはただ一人。贈り主の半神だけだろう。
12.深緑の羽
村長が今着ている服は先導者の象徴である赤い羽を用いて作られた。彼女の前に雄鶏が現れる。美しい深緑の羽だが、先に零れ落ちそうな目に引きつけられる。
「ヘイヘイ?」
「コケッ」
鶏は突如、尾羽を嘴で毟って地面に落とし、先導者を見上げた。その巨大な白目には戸惑う彼女の顔が微かに反射していた。
13.魚釣りのあと
マウイは海の一撃を食らって地面に叩きつけられた。モアナは倒れる彼を見下ろす。
「海に頼るんじゃない。自分でやるの」
気づけば彼女は手に釣り道具を携えていた。ミニマウイは埋まった点数表を見つめ、新たな点数表を準備し始める。
「もういい」
本人の剣幕に対し、その潜在意識は渋々と表を仕舞った。
14.ハートのサイン
鷹の姿だと普段より世界が鮮やかに見える。彼はこの姿で世界を回るのが好きだ。目的地に見慣れた少女の姿が見えた。彼女はオールで砂浜に大きなハートのサインを描いている。少女は彼に気づいて飛び跳ねながら手を大きく振った。彼は彼女のオールにハートのサインを描いたことを悔やみつつ島へ降りた。
15.旅仕度
出航の数日前、モアナは村人に船に詰めたいものを尋ねた。食べ物は勿論、仕事道具や愛用のタパ布など希望は様々だ。
「貴女は何を持ってくの?」
突然の村人の質問にモアナは考え込んだ。数日後、彼女は幾つかのタパ布を船の倉庫に詰める。使い込まれたそれには魔物や名の知れた半神の姿が描かれていた。
16.空を泳ぐ鶏
鶏は首を小刻みに動かしながら空を見上げている。鷹になった彼の姿を見ているのだろうか。海は鶏を掴んで持ち上げた。余計な世話かもしれない。海がそう思っていた矢先、空を泳ぐ鶏は小さく鳴いた。何を思うのだろう。彼の気持ちはわからない。少なくとも鶏は叫ばずに、翼を羽ばたかせる仕草を見せた。
17.攻防戦
魔物の国に行った二人を待っているときのこと。ヘイヘイは舟をつつくのをやめた。餌を食べたくなったのだろうか。しかし、海の予想は外れた。彼は海へと歩いて落ちてしまった。押し寄せる波が雄鶏を拾い上げる。油断も隙もない。彼は懲りずに海に落ちる。あの二人が帰還するまで、両者の攻防は続いた。
18.鷹の目
巨大な鷹はモアナに会いに行く。珍しくいつもの場所に彼女がいない。そこには椰子の葉で作られた舟が置かれているだけだ。彼は島に降りて周囲を見回した。よく見ると葉が密集しているところが微かに揺れている。彼は驚かせようと近づいていく。その奥で忍び笑う彼女は鷹の目が良いことを知らずにいる。
19.昔話
小さな島の森の奥、焚き火に照らされるのは二つの影。大きな影は形を変えていく。自分の倒した魔物の姿を再現するためだ。小さな影の主は目を輝かせる。昔話に出てきた彼から物語を聞けるなんて幼い頃の自分が知ったらどう思うだろう。生まれ育った島では知り得なかった話を聞きながら夜は更けていく。
20.土産話
巨大な鷹が夜空を泳ぐように滑空する。その鋭い目が海を見下ろす。そこには美しいエイが泳いでいた。その体の模様は青白く光り輝いている。彼の頭に少女の顔が浮かぶ。彼女に会うときの土産話にしよう。おそらく探しに行くに違いない。エイと彼女の関係を知らないまま、彼はエイの姿を目に焼き付けた。