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    正義の味方はあてにならない取引会社の闇営業を知ってしまった。
    たまたま商談で訪れたYコーポレーションの社長室の前を
    通った時に、会話が聞こえてきた。
    ある暴力団から顧客情報を受け取り
    それを利用して利益を得ていると。
     
    東海林はこの会社と取引を続けるのはまずいと思い
    社長に直判断しに行くと、Yコーポレーションは
    大手の取引先なんだ、闇営業だなんて聞き間違いだろうと
    一蹴された。
     
    こうなったら証拠を掴んで納得させるしかない。
     
    東海林はYコーポレーションの社長の人脈や行動範囲を調べて
    尾行もした。まるで探偵のようだと自分でも思った。
    誰かに手伝ってもらおうかと思ったが、危険な目にあわせたくないと
    誰にも言わず一人で行動していた。
     
    そして、ある日の夜に料亭で聞いたこともない会社との
    食事会があることを聞きつけ、隣の部屋に潜り込み
    レコーダーを仕込んで会話を盗み聞きしていた。
     
    「いつもありがとうございます、社長」
    「いやいや、こちらこそ頭のおかげで
    顧客も増えましてね、先日も大手の食品会社と
    契約が取れたんですよ」
    うちの会社のことだ、東海林は唾を飲み込んだ。
    「ああ、S&Fとかいう会社か。今度そこの社長にも
    声かけしてくれたまえ」
    穏やかな談笑のように聞こえるが要はうちの会社へも
    闇営業を広げるつもりだ、そんなことをしたら
    会社のイメージも悪くなる、なにより自分の愛する会社を
    そんな風に汚されたくない。
     
    東海林は隣の部屋の引き戸を開けて
    「話は全部聞かせてもらいましたよ」
    ドラマのヒーローのように登場したつもりだった。
     
    しかし、社長の向かいにいた組長らしき人物は
    Vシネマに出てきそうなほど強面で、よくみると
    組長だけでなく見張りの組員が3人ほど周りを囲んでいた。
    東海林は今すぐ逃げ出したくなったが、水戸黄門の印籠のように
    レコーダーを取り出し
    「会話は録音させてもらいましたよ、こんな闇取引を
    されている会社とうちは取引できません!」
    さあ、これで相手も降参するだろうー。
    そうタカをくくっていた。
     
    ところがー。
     
    一人の組員にみぞおちを殴られ、レコーダーは
    取り上げられてしまう。
    「こいつは何だ?」
    「…さっき話したS&Fの社員ですよ、確か営業部の課長です」
    「おい、お前らそいつをどうにか処理しろ」
    東海林はあっさりと捕まり、黒い外車のトランクに押し込められた。
     
    (ちょっと待て…処理って、東京湾にでも鎮められるのか?!)
    東海林は暗闇の中体を震わせた。
    ポケットのスマホも奪われ、真っ暗闇の中
    あの時どうして部屋に乗り込んでしまったのかと
    激しく後悔した。
    でももう後の祭りだ。
     
    数十分後に車が止まり、トランクから出されると
    目の前には古びた倉庫が建っていた。
    東海林は両腕を抑えられたまま中に連れて行かれる。
    錆びたドアが嫌な音を立てて開く、それが余計に恐怖心を掻き立てた。
     
    その中は少しホコリがたっていてやに臭い。
    何も書かれていないダンボールやロープにガムテープなどが
    端に並んでいた。
    「おい、こいつ縛っておけ」
    東海林はロープで手首を縛られて床に転がされ足と体も
    きつく拘束された。
    まさかこのロープで首を絞められて…そう考えるだけで
    ゾッとしてどんどん顔が青白くなってきた。
    だか縛り終えると、今度はガムテープで口を塞ぎ
    「しばらくここで大人しくしてるんだな」
    そう言って男たちは倉庫を出て行った。
    今殺されはしなかったが、しばらくのその後、どうされるかわからない。
     
    誰もいなくなった倉庫で、東海林は必死に逃げようと
    体を動かした。
    ロープの擦れる音が倉庫内に響く。
    「んっ……ううーーーっ」
    こんな、ドラマや映画の世界のような監禁なんて
    人生の中で経験するとは思わなかった。
    体を縛られるってこんなに不自由で怖いものなのか。
    そんなことを実感しつつもこのままじゃ確実に殺されてしまう。
    そう感じた東海林は必死で縄を解こうと体を動かす。
    (くそっ、せめて誰かに相談しておけば助けをよべたのに…賢ちゃん
    …………とっくり!)
    ふと春子の顔が頭に浮かんだ。
    そうだ、あいつなら縛られても縄抜けでもして…。
    こんなことならとっくりに協力してもらっておけばよかった。
    東海林は力を抜いて、仰向けになり天井を見つめた。
     
    (死ぬ前に、あいつにちゃんと言いたかった…)
    気が付くと目から涙があふれて、頬を伝って薄汚れたセメントに落ちていた。
     
     
     
    それから数時間たっただろうか。
    再びさびたドアの音がした。
    「おい、待たせたな。お前をやってくれる奴が見つかった」
    さっきの組員たちが戻ってきた。
    東海林は思わず後ずさりする。
    「ほら、早く来い」
    スーツの襟をつかまれ体を起こされ、引きずられるように
    車へ運ばれる。
    もう駄目だ、せめて痛くない方法で殺してくれ-。
     
    目を閉じて祈るように心で叫んだ、その時。
     
     
    「待ちなさい!!!」
     
    黒い車の前に人影が浮かぶ。
    「誰だ!?お前」
     
    「大前春子です!!!」
    月明かりにぼんやりと浮かんで見えたのは紛れもなく
    とっくりだった。
     
    「ひょふひ…!!」
    とっくり!!と叫んだが、猿轡でうまく言葉が出ない。
    「なんだ、こいつの仲間か?女一人で来るなんてどうかしてるぜ」
    組員の一人がとっくりに向かっていくと
    とっくりは素早くかわし足蹴りをする。
    そしてアクションスターのようにほかの二人もいとも簡単に倒してしまった。
     
    東海林は地面にひざまずきその様子を呆然と見ていた。
     
    三人とも白目をむいて倒れたあと、とっくりは東海林のほうを向き
    「護身術師範の大前春子です!!!」
    そう宣言するとすたすたと近づき、東海林の口に貼られたガムテープを
    乱暴にはがす。
     
    「いてっ…!!お前!!もっと優しく剥がせよ!!」
    東海林は口が自由になり、声を張り上げてとっくりをにらんだ。
    と、同時にとっくりは東海林を抱きしめた。
     
    「どうして…一人でこんな無茶なことをするんですか?」
    「え…」
    抱きしめられた驚きで言葉が出ない。
    「あなたが連れていかれて…追いかけようとしたけれど見失ったときは
    心臓がはちきれそうでした」
    「とっくり…もしかして知っていたのか?」
    「あなたの尾行は素人レベルです」
    そう言うと春子は両手で東海林の頬を包み込み
    瞳を潤ませながら見つめていた。
    そしてそっとキスをする。
    唇を話すと東海林はとろけるような表情で
    「とっくり…」
    もう一度キスを求めるような顔をしていた。
     
    ところが、とっくりは真剣な顔で
    「くるくるパーマがくるくる巻かれてダジャレのようですね」
    そう言いながら縛られた体を目で舐めまわす。
     
    「…はぁぁぁぁ???」
    東海林の眉間にしわが寄る。
    「もうすぐ警察がきますので、失礼します」
    とっくりは東海林から手を放し立ち上がる。
    「いや、ロープほどけよ!!ローーープ!!!!」
    「おまわりさんに頼んでください」
    「おい、とっくり!!覚えておけよ
    お前もいつか縛ってやるからな!!」
     
     
     
    東海林の叫びがむなしく夜空に響いた。




    しゅ Link Message Mute
    2021/01/04 11:16:38

    正義の味方はあてにならない

    さらわれ東海林はここで始まった…(笑)

    #ハケンの品格 #二次創作 #東春

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