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    私たちはお江戸にいる 前編「どういう事なんだーーーーー!!!!」
    東海林主任が全身全霊で叫んでいる。
    「東海林さん、落ち着いて!」
    里中主任こそさっきからオロオロしてぐるぐる回っている。
    「つまり、これはタイムスリップしたという事ですね」
    春子先輩はこんな時まで冷静沈着だった。

    「そんなぁ〜〜〜!?元の世界に帰るにはどうしたらいいんですかぁ???」
    私、森美雪は涙目で春子先輩に泣きついた。
    「そんなこと知りません、私はドラえもんではないので」

    事の発端は数時間前、私と春子先輩と里中主任と東海林主任の4人でドライブ(と言う名の仕事)で埼玉まで走っていた。するとエンストを起こしたので、春子先輩に直してもらい、再び走り出したらー。


    突然車の前が光りだして、吸い込まれるように移動して
    気がつくと、私たちは、何と…


    江戸時代にタイムスリップしてしまった!!!!



    なぜ江戸時代か分かったかと言うと、春子先輩が
    周りの景色を見て「徳川幕府の時代だ」と言って、乗ってきた車を探そうと彷徨っていたら、ちょんまげの人に追いかけられて4人で必死に逃げてきたから。
    私は歴史苦手なんだけど、春子先輩がそう言うのならきっとそうなんだろう。でも何で江戸時代にタイムスリップしたの??車で過去へ行くなんて、昔見た映画みたい!!

    「とっくり、お前が変な小細工してタイムマシンに改造したのか!?」
    東海林主任は相変わらず怒っている、春子先輩も負けずに
    「私は発明家ではないので単なる偶然です」
    「偶然でこんなところにきてたまるか!!俺たちどう見ても時代にそぐわない格好してるだろ、下手したら打ち首にされるぞ!!」
    「え?打ち首って…?」
    「首を切られて死刑にされるって事だよ」
    里中主任が眉を下げて私に教えてくれた。
    「そんなぁ〜〜春子先輩い〜」
    「私と里中主任は着替えたらまだ何とかなりますが
    森美雪の茶髪パーマとくるくるパーマは完全に外国人扱いされて捕まるでしょうね」
    「冗談じゃねーよ!!こんなところで死んだら現代の俺はどうなるんだ!!」
    「とにかく東海林さんも大前さんも喧嘩しないで、今はこの場にいても怪しまれないように…」
    里中主任がそう言いかけている時に、またさっきのお侍さんたちがやってきた。
    「見つけたぞ!!あやつらだー!!」
    私たちはとにかく逃げようと走り出した。
    ところが、ミュールを履いていた私は慣れないデコボコ道に足を引っ掛け思い切りこけてしまった。
    膝を擦り剥き、すぐに立つことができなかったので
    私の目の前にお侍さんがかごめかごめのように輪になり、逃げられないよう囲まれてしまう。
    「森くん!!」
    里中主任が私の方にかけてきてくれたが、お侍さんは刀を取り出して里中主任の首筋近くに向けた。
    「貴様ら、外国人か!?それともキリシタンか!?」
    桐下さん??よくわからないけれど里中主任が危ない。
    「違います、僕たちは未来からタイムスリップしてきた…」
    「賢ちゃん、話の通じる相手じゃないんだぞ」
    東海林主任が里中主任の前に来て庇うようにお侍さんに向かっていく。
    すると、お侍さんは東海林主任のネームプレートに目をやり、突然態度が豹変した。

    「まさか…あなたは東海林からやってきた武士でござるか!?」

    私たち4人は意味がわからずポカンとしていたが、その理由に1番最初に気づいたのは春子先輩だった。

    「そうです、この方は東海林武という立派な武士です!」
    …そうか!東海林主任の名前は「武」だからそれを見て武士と思ったんだ!!
    「お主ら、我こそが東海林武じゃ!!」
    東海林主任は暴れん坊将軍のモノマネをする様に声を上げた。
    まさか東海林主任のノリの良さがこんなところで生かされるなんて!!
    「だが、その服装や刀はどうされたのですか?」
    「えっ…ええっと…」
    「それは私たちが隠れキリシタンを探しているからです、囮になり隠れキリシタンを探し出そうとしたのですが…ある者たちに刀と身ぐるみを奪われたのです」
    春子先輩が勝手に話を作り、いかにもそれっぽいことを告げるとお侍さんたちはすっかり信じてしまった。


    ということで、私たちはなんとか打ち首を免れた上にお侍さんたちの家におよばれしてもらうことになりました♪
    よかった〜とりあえず今は江戸時代の人になりすまして、その間に車を探し出そうという事になった。

    こんな状況だけど、タイムスリップなんて一生のうちに何度もする事じゃないし、楽しもうと思い
    春子先輩に浮かれながら話しかけると
    「あなたは馬鹿ですか?ちょっとでも油断すれば2度と帰れなくなりますよ」
    「ええ〜そんなぁ」

    この時の私は本当に帰れなくなるかもしれないと思うほどの危機に遭遇するとは夢にも思っていなかった。



    私たちはあるお城へ到着し、とりあえず身なりを整えるようにと
    着物を借りた。時代劇で見るようなシンプルな模様だけど
    和装は成人式以来なのでテンションがあがる。
    私は黄色の生地に黒の千鳥柄の着物に赤い帯を巻く。
    春子先輩は青に黒と赤の縦縞模様の着物に黒い帯。
    これはこれでシンプルでかわいい。
    髪もまとめてかんざしを指して、まるで時代劇の町娘のよう。
    ウキウキしながら春子先輩に
    「着物ってテンション上がりますよね~」
    と、話しかけたら春子先輩は呆れるように
    「呑気でいいですね、あなたは」
    そういわれてちょっとへこんでしまった。

    すると奥の部屋にいた、里中主任と東海林主任がノックしてきた。
    「おーい、もう着替えたか?」
    「あ、終わりました~今開けますね」
    ふすまを開けて衣装を披露しようと
    「じゃぁ~~~~ん!!」
    といったのだけど…目の前の二人に驚いてくるりと回転しようとした足が止まる。



    なんと、二人は着物に着替えた上にちょんまげになっていた!!!



    「ええーーー!!どうしたんですかその髪!!!」
    「いや…侍ならこうあるべきだと無理矢理されちゃって…」
    弱々しい声で里中主任が言うと、東海林主任が
    「マジで剃られたんだぞ、これ。元に戻ったらどうしたらいいんだよ…」
    「元に戻れず一生ここで暮らしたらどうですか?」
    困惑している男性陣に春子先輩が茶々を入れる。
    「誰が暮らすかよ!!お前こそ、ここじゃ豊富なスキルも時代にそぐわなくて
    役に立たないんじゃないか?」
    東海林主任も負けずに反論するが
    「くるくるパーマすら失ったあなたに言われたくありません」
    春子先輩が言い放つと東海林主任は
    「けっこう落ち込んでるんだからもう髪の毛のことは言うな!!」
    と、叫んでいつものように里中主任が止めに入った。


    すると、お侍さんから呼ばれる。
    「東海林どのとその付き人たち、殿がお呼びだ」
    私たちは付き人??東海林主任の付き人になるなら里中主任のほうがいいなぁ。
    なんて思いつつ、長い廊下を歩き殿様の部屋に行く。

    こう言った場合はどう挨拶するんだろう?
    私は春子先輩の後ろをついて歩き作法を真似する。
    殿様のお部屋に入ると、奥のキラキラした屏風の前にちょんまげの背の低い目の離れたお殿様がいた。
    春子先輩が「失礼します」と腰を下ろすので、私も真似して後ろで正座した。

    「貴様たちがキリシタン狩りをしていたという東海林とその付き人か?」
    「ははっ、私が東海林武という侍でございます」
    東海林主任は息をするように嘘を吐く、さすがお調子者。
    すると、お殿様はわたしのことをじっと見た。

    「おい、その後ろにいる娘よ。お前は何というのだ?」
    「え??私はもりみゆ…」
    「こちらはみゆき嬢、そして前にいるのはお春でございます」
    「ほほう……みゆき嬢か、可愛い名前じゃ」
    東海林主任が勝手に名前を呼んで、なんだかなぁと思っていたらお殿様が私の方を見てニヤニヤしている。
    ちょっとこわい…。
    少し引き気味でいると、今度はさらにドン引きするようなことを口にした。

    「その、みゆき嬢。よければ私の嫁にならないか??」



    「ええーーーーっ!?」

    そんな、会って数分でプロポーズって昔の人はどうなってるの???
    私は困惑して思わず里中主任の方を見る。すると里中主任も意外だという顔をしていた。
    そうだ、私は里中主任がすきなんだからお殿様の気持ちには答えられない。

    「お殿様、わたしにはす…」
    好きな人がいると即答しようとしたら、突然春子先輩に口を塞がれた。



    「わたしにはすごくもったいないと言っています」
    なぜか私の言葉を勝手に捏造する。

    「そうです、殿様の嫁になれるなんて光栄だぞ、みゆき嬢。ぜひぜひ嫁にもらって下さい!!」
    東海林主任まで私をお殿様に身売りしようとする。なぜかわからず頭がこんがらがる。
    「里中主任、どうしたらいいですか?」
    そう言って里中主任のほうを見ると困っているようで、でも言葉に迷ってるようで口元に手を当てている。
    すると東海林主任が耳打ちをする。何を話したのかそのあと里中主任は私に向かって
    「森くん、じゃなくてみゆき嬢、ぜひお殿様とデートしてみてはどうだい?」
    そんなことを言われて私は絶望の淵に落とされた。



    そんな…里中主任は私が他の人と結婚してもいいなんて。


    明らかに感情が顔に出ていると、春子先輩が私にぼそっと言ってきた。


    「あなたは安全な場所にいなさい、その間に私たちが車を探してきます」


    その言葉を聞いて、今までのことは演技だったのだと知る。たしかに私は足手まといだ、だから春子先輩たちは私を危険な目に合わせないようわざとお殿様と一緒にいるように仕向けている。

    そう理解した私は笑顔でお殿様に話しかけた。



    「ええ、ぜひ町を案内してほしいですわ、お殿様♡」
    そう言うとお殿様はご機嫌で
    「そうかそうか、では早速乗り物を用意しよう」
    「では私たちはお邪魔してはいけませんので、再び隠れキリシタンを探しに参ります」
    「うむ、ご苦労」

    そう言って3人はそそくさと部屋を出て行った。

    一人取り残された私は心細いけど、みんなで元の世界に戻るためにも頑張らなくっちゃ!!

    「では参ろう、みゆき嬢」
    お殿様はノリノリで私の肩をつかむ。
    ちょっと鳥肌が立ってしまったが我慢我慢…。



    絶対みんなで現代に戻るんだから!!



    お殿様は私を外に連れ出してくれた。
    昔テレビの時代劇で見た籠に乗って町へ出る。昔の人は本当に大変だなと思う、私なんていつも電車に乗って仕事へ向かってるけどこの時代には電車どころか車もないんだよね。

    簾の隙間からちらっと外を見ると、農民と呼ばれる人たちが遠巻きから地面につき礼をしていた。古びた薄い生地の服に、黒ずんだ顔、ボサボサの髪の毛。
    その姿を見ていると、自分の格好がとても恵まれていることを痛感した。
    江戸時代の方が格差差別が酷かったんだろうな。私の社員とハケンの格差なんてまだマシな方かもしれない。

    ちょっとやるせない気持ちになりつつたどり着いたのは、一面花が咲きこぼれる野原だった。
    今も昔も植物は変わらず咲き続けている、そんな感動が胸に込み上げた。

    「うわぁ〜きれいですね!!」
    ここにきて初めて純粋に嬉しいという気持ちになれた。
    すると後ろから殿様が私に声をかけた。
    「みゆき嬢、ここの風景は私が子供の頃からのお気に入りなんじゃ」
    殿様のほうを顧みると、穏やかな笑顔をしていた。よく見るとこの人の人相はそこまで悪くない、里中主任のようなイケメンではないけど親戚のお兄ちゃんのような親しみのある顔だと思った。それに、私をお気に入りの場所へ連れてきてくれたということは、下心なしで純粋に私のことを気に入ってくれているのかもしれない。

    私は殿様に精一杯のお礼を伝えた。
    「ありがとうございます、とても綺麗ですね。もっと近くで見ていいですか?」
    「ああ、ぜひ一緒に参ろう」
    すると殿様は私が転ばないようにと手を握りゆっくりと前を歩いてくれた。
    花を踏まないように僅かな隙間を踏み締めて、少し胸が踊り出した、そんな時ー。

    突然殿様が振り返り、私に飛びついた。
    その勢いで、私は思い切り背中を地面に叩きつける。
    同時に殿様の叫び声が耳に響いた。

    「あうっ……!!」

    何が起きたかわからずとりあえず起き上がり殿様の方に目を向けると、左足から赤い液が滴り落ちていた。
    「殿!!大丈夫ですか!?」
    周りにいた人たちも血相を変えて駆け寄る。
    そして奥の方からガサガサと何か物音がした。

    私はまだ状況が掴めず言葉を失いただ呆然と座り込んでいた。
    しばらくして、やっとわかったことだけど殿様の命を狙う人が私を弓で刺し殺そうとしていたのを、殿様が気づいて庇ってくれたようだ。

    この世界は、私が生きている未来よりもはるかに生きづらいものだと身をもって感じる。


    そして、私がそんな思いを知り始めた頃、春子先輩や里中主任たちはもっと大変な目にあっていることを後で知らされることになる。

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    2021/01/06 9:49:53

    私たちはお江戸にいる 前編

    これも途中のままです、いつか完結させたい…。

    タイムスリップものです。

    #ハケンの品格 #二次創作

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    私たちはお江戸にいる
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