宝石
それは自分がまだ七つの頃か、八つの頃か…
母はまだまだ目を離せない弟の世話に忙しく、何となく独りで遊んで居ることが多かった。
中でも母の所有するアクセサリーボックスに並ぶ宝石をよく眺めていた。
母が大切にしていた様子は普段から見ていたため蓋を開けて眺めるだけだったが
キラキラとした石たちはそれはそれは魅力的だったのをよく覚えている。
ある日、いつものように独り蓋を開けて眺めていたところ、弟を昼寝に寝かしつけた母がすっと隣に座り『どれが好き?』と声をかけてくれた。
母の言葉に自分が指をさしたのは
小粒の赤い石が着いた
ハート型のペンダントだった。
母はにこりと微笑んでそのペンダントを手にすると自分に着けてくれた。
『この宝石はルビーと言ってね、あなたの誕生石なのよ。
あなたが生まれて直ぐにパパがプレゼントしてくれたの。
…いずれあなたに贈れるように。』
母は嬉しそうにそう語っていた。
『いつかあなたの素敵な王子様が
あなたのためだけの素敵な宝石をプレゼントしてくれるかもしれない。
それが例えルビーでなくても…
あなたはきっととても喜ぶでしょうね。
だってあなたはママの可愛い娘だもの♡
大好きな人からのプレゼントに
喜ばないはずはないわ。』
眩しそうに目を細める母はとても美しいと思った。
アクセサリーボックスに並ぶ宝石達も霞んでしまうほど『美しい』…と。