タイトル未定よく晴れたある日の昼。
暖かな陽の差す窓辺でもえはせっせと洗濯物を畳んでいた。
昨日まで数日間降り続いた雨は今朝にはすっかり止み久方ぶりの晴天が広がっている。
洗濯をする際には洗濯乾燥機を使用しているが、雨の日と晴れの日ではやはり仕上がりが大きく変わる。
特にアッシュは人狼という種族柄匂いに敏感で雨の日の洗濯は極力避けたがり、この数日間の雨の間は必要最低限の洗濯しかしておらず。
バスタオルにフェイスタオルだけでもかなりの数になった。
幸いにもタオル類のストックには事欠かないゆえに、天気の回復した今日…溜まった洗濯物を一気に片付ける事となり、第一弾の洗濯物を窓辺の暖かな場所でもえがたたみ始めた次第である。
今日は全員がオフでユーリとスマイルは久しぶりの朝寝坊を決め込んでいる様だ。
昼をとうにすぎたこの時間も未だ起きて来る様子がない。
アッシュは先程食料品調達から帰宅したところで、今は昼食の支度をしているようだ。
『恐らく二人は起きてこないだろうから
二人でランチにしましょう。』と、彼は上機嫌で支度に取り掛かった。
ふわふわのタオルから程よく香る薔薇の香り。
城主の彼と触れ合った時、すれ違った時に感じるその香りはなんだかとても安堵感をくれる。
その香りに包まれているとまるですぐ隣で寄り添ってくれているかのような
抱き締めてくれているかのような
そんな幸せな気持ちが満ちる。
そしてそんな時、無意識に浮かべている『恋する乙女』の表情を、彼女自身は全く自覚していない。
そしてこの表情や姿が共にこの城で暮らす二人の兄たちの大きな癒しになっていることにも。
ここにスマイルがいたならばいつも以上にデレデレであっただろう。
半分程たたみ終えた時、城の呼び鈴が鳴り響いた。
もえは顔を上げて怪訝そうにする。
今日の来客予定はなかったはずだが…と思いながら立ち上がると玄関へ向かった。
立て続けに呼び鈴が鳴り響く中、もえははいはーい!と慌ててドアを開く。
余りの呼び鈴連打にアッシュも気になって手を止めて顔を出した。
もえが扉を開くや否や、客人と思しき人物ががばっともえに覆いかぶさり、勢いそのままにもえはその人物に押し倒される形となる。
きゃっ!と悲鳴を上げながらどさりと後方に倒れたもえを見てアッシュは『姫っ!』と慌てた。
「も〜〜〜〜え〜〜〜〜!!!!!」
「え、ろ…ロティ、さん???」
「あ〜〜今日もあんたは可愛いわねぇぇぇ〜〜!♡♡」
「ちょ……ロティッッ!!
何ッ…やって、ん…スかッ!!」
アッシュが必死に引き剥がそうと試みるもビクともしない。
それどころかもえの首筋に顔を埋め甘えるようにすりすりとしている。
「ふぇぇぇ!?」
「ちょッ、コラ、ロティ!?!?」
それには流石にもえも赤面して狼狽えるばかりだ。
「ん〜〜〜……ほんと、いい香りぃ〜。
ユーリお兄様の魔力残滓ともえの甘い香りが相まって…めちゃくちゃ美味しそう…♡
ユーリお兄様じゃなくても食べちゃいたくなるわよぉ♡
ユーリお兄様がうじうじして手を出さないんなら…あたしが食べてあげても良いのよぉ?♡♡」
「何言ってんだ!!!アンタッッ!!!」
とんだ爆弾発言にアッシュが素で突っ込んでいる。
「………ロティさん、お酒飲んできたんですか?」
赤面しつつも冷静なもえのその一言にアッシュもロティもピタリと動きを止めた。
そしてロティはもえを見下ろして妖艶に微笑む。
「あ・た・り♡」
その答えにアッシュは思いっきり頭を抱えると共に、大きく溜息を吐くのだった。