1月9日【1月9日】
目が覚めた。ここはどこだろうと見回す。学校らしき建物が目の前に建っていた。手にはすり潰された植物がこびりついている。むせるような草の匂いが鼻についた。
自分の置かれた状況について逡巡していると、足が独りでに動き出していた。学校に入り、目の前にあった入り組んだ構造の階段を登っていく。学校だと言うのに、人影はまばらだ。
三つほど踊り場を数えたとき、クラスメイトとすれ違った。背が低い少女だった。
「ねえ、あなたって、誰それと仲良いよね」
彼女が話しかけてきた。名前が聞き取れない。
「ああ、そうだね」
私の口は滑らかに動く。まるで、私の体でないかのように。
「あの子とも仲は良いの?ほら、妹の」
「良い友達だと思ってるよ。可愛らしい子だよね」
何かがおかしい。
「彼と付き合ってる?」
「相談に乗っているだけだよ。お互い好きな人は別にいる」
呼ばれる名前は確かに私のものであるけれど、それでも私のものではない。
思えば、視界だってずっとおかしかった。彼女より、私は背が高い。しかし、ここまで彼女を見下ろしたことはない。確信を持った。
私じゃない。この身体は、私のものじゃないのだ。
では、この身体の持ち主は一体誰なのだろうか。