3月23日【3月23日】
ベッドに座って外を眺めていた。
窓は開け放していた。虫はいないようだったので、網戸は閉めなかった。昼とも夕方ともつかないような空が、何にも遮られることなく綺麗に見える。
ぼんやり眺めていると、肩に何かが当たった感覚があった。続いて、何かが頬の辺りを掠める。カラカラと、小さなものが床を転がる音がした。
黄色いBB弾が落ちていた。
それを皮切りに、何発も撃ち込まれる。ベッドから降りて弾を避けながら、近くの机に置いてあった小型のエアガンを引っ掴んだ。弾は充分に入っていた。
再びベッドに飛び乗り、素早く照準を定める。連射ができる型のエアガンだったことが幸いし、相手をすぐに追い払うことには成功した。
しかし、弾が切れてしまった。
いつまたアレが来るとも分からない。補填用のBB弾を一階に取りに行こう。
階段には未塗装のプラモデルが隙間なく並べられていた。降りようとした瞬間に、真っ白なロボットがブレザーの袖が当たって落ちた。欠片が散乱した。
「ごめん!」
咄嗟にそう謝って、駆け下りた。卵のような小さな生き物がよちよちと後ろをついてきていたが、気にしている暇はない。
リビングには誰もいなかった。それなのに、テレビがついている。砂嵐を映し出した画面に、意識が引き込まれた。
砂嵐が切り替わる。見覚えのない風景が映し出された。日本家屋のような場所で、数人の少年が何かを話し合っている。その中の一人がこちらに気がついて、焦ったような顔をして近づいてくる。
何やら話しかけてきたが、聞き取れない。
これ以上見ていると良くないと、直感的に理解した。その瞬間に、テレビから意識が離れた。
我に返ると、手に持っていたはずのエアガンと、置いてあったはずの予備の弾が姿を消していた。不思議に思つつも二階へ上がる。階段のプラモデルも、壊れたロボットも、部屋に落ちていたBB弾も消えていた。何もかもが、煙のように消えていた。
最初からなかったことだったのか。
部屋に落ちていた卵の欠片をつまみ上げて、首を捻った。