2月2日【2月2日】
休校なのに、間違えて学校に来てしまった。
帰ろうとしたが、一番近い教室に人影が見えた。自分のように、間違えて登校した人だろうか。
廊下から教室を覗くと、四人の人間らしきものがいた。
一人は手足が真っ黒になっていて、既に何かに堕ちているようだった。もう一人はまだ正常な人間のように見える。
残りの二人は、一目見た瞬間に、もう取り返しがつかない状態にあると理解できた。
彼らは海と、海の中にいる神を信仰してるようだった。手足の真っ黒な人が、神の名前らしきものを繰り返し呼んでいるのが聞こえた。
教卓に置かれた古びた射影機が、黒板に何かを映し出している。目を凝らすと、それが海の中の様子であることに気がついた。
海の中で、小さな魚が、大きな魚に噛み殺されている。魚が口を動かす度、人間の骨を砕くような音が立て続けに響いた。教室の中の人々が歓喜の声を上げた。
異様な光景に呆然としていたせいで、気がつくのが遅れた。手足の真っ黒な人が、すぐ隣に立っていた。
口からは何かの言葉を呟いていたが、先程と違って理解の出来ない言語へと変わっていた。まるで、逆再生したかのような言葉だと思った。
教室の中では、取り返しのつかない人たちの頭部が小さくなったり大きくなったりしていた。
弾かれたように逃げ出した。走っている内に、校門の外に出た。幸いにも、追ってきてはいないようだった。
外から見た教室には、もう何の影もなかった。