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    かわいいの波状攻撃に耐えきれない先生の話それにしても帰宅が遅くなった…とやっと家にたどりついたのが昼の2時。世間一般ではまだまだ昼だけど、日勤当直の後、ずるずる勤務が伸びた身としては、十分に遅い帰宅だ。百音さんに『帰ります』とメッセージを入れた後、さらに退勤が伸びたのが痛い。やっと終わって抜け出して『帰りそびれました。帰ります』と再送したけど、それには既読がついていない。僕の帰宅予定がズレることなんて、よくあることすぎて期待もされてないんだろうな、と思うと、寂しいような、理解がありがたいような。

    玄関を解錠して家に入れば、キッチンは暗く、リビングには明かりがついている。ふと見れば、ダイニングテーブルの上にはラップのかけられたナポリタンの皿がぽつんと。作っておいてくれたのかな、と口許が緩む。で、その百音さんは…と大して広くもないリビングを見渡せば、ソファベンチでまどろむ姿があった。おろした髪が広がって顔半分にもかかっている。その静かな寝顔を見ると、仕事の疲れも吹き飛ぶ気がする。起こすのも忍びないし、支度してくれていたごはんを食べるか…と思ったところで気が付いた。

    かけ布団を抱き込む癖がある百音さんだから、この季節にソファに置いてるブランケットを抱いてるのかと思ったら、百音さんが抱いてるのは先日クリーニングから戻ってきた僕の上着だ。そろそろシーズンだから、と百音さんが自分のコート類と一緒に預かりサービスから受け取ってきてくれている。え、お昼寝に、僕の上着を抱きしめてるの?百音さんが?

    なんだかとってもそれってかわいい…。思わず膝をついて百音さんの顔を覗き込んでしまう。無防備なまま寝てる百音さんは、なんだかほほ笑んでいるようでもいて。え、なに、やっぱりめちゃくちゃかわいい…。見惚れてその場にピン止めされたように動けないでいると、むにゃむにゃと嬉しそうに百音さんの唇が動く。

    「せんせい、あったかいです…」
    えっ?百音さんが僕のことを夢に見てる?僕の上着を抱きしめながら?マジで?
    もう、かわいいの波状攻撃が過ぎて、うめき声がでそうなのを手で押さえるしかないし、それにしても嬉しそうにむにゃむにゃ寝てる百音さんがかわいすぎて目が離せないんですけど。

    しばらくそうやって硬直してたら、カーテンの隙間から陽の光がさっと百音さんの顔をかすめた。まつ毛がその光できらりと輝いてしばし、ゆっくりと百音さんの目があいて、膝をついて百音さんを見つめていた僕とばっちり目があった。

    「あ…。せんせい」
    目の前に僕が帰ってることがまだ脳内処理できてないみたいで夢うつつにふにゃっと笑う百音さんと、さっきからのかわいいの波状攻撃にその寝起きもかわいすぎて、脳がキャパオーバーになってる僕とで、じっと見つめ合いになってしまう。

    「え、あ!先生!帰ってたんですね!」
    急に覚醒のレベルが上がった百音さんが、僕の上着ごとがばっと起き上がる。上着をぎゅっと抱きしめて、上目遣いに「おかえりなさい」って言ってくれるの、もうこれ反則でしょ…。
    「ただいま」って言うと、僕がなぜソファの傍らに膝ついているのか、怪訝な顔をする。
    「先生、もしかして、私の寝顔ずっと見てました?」
    「あの、起こしたら悪いかなと思って…」
    「起こしてほしかったです。先生が帰ってきたなら」
    「はい、ごめんなさい」
    素直にぺこりと頭を下げると、「あぁ、でも」と百音さんがまたふにゃりと笑う。
    「夢の中で先生にハグしてもらってて、うれしかったから、起こされなくてもよかったのかも」

    そういわれると、本体はいなくていい、みたいに聞こえて、なんだか不服。膝をついたままソファにいざって、上着ごと百音さんを力いっぱい抱きしめる。
    「夢にまで見てくれるのはうれしいですが、こうしてほんとに抱きしめられる方が、よくないですか?」
    僕の腕の中で、百音さんが上着を両手に見上げてくる。
    「もちろん、そのほうがいい…です。先生いないなーって、つい上着だっこしちゃったら夢には出て来てくれましたけど…」
    かわいいが過ぎる…。しばらくそうやってぎゅってしてたら、百音さんの右手が僕の背中に回った。とんとん、ってしてくれるのが心地良すぎる。そうやって安心したら、まるでタイマーのように僕の腹が鳴った。

    「あまり何も食べてないですよね?ナポリタン食べてください」
    「うん。温める」
    名残惜しく抱擁を解くと、百音さんは僕の上着をふわりと羽織ってそれにくるまった。僕の上着にすっぽりくるまって、立ち上がった僕をちょこんと見上げてくる百音さんの破壊力に、また膝折れそうになりながら、僕はなんとかテーブルの上の皿を電子レンジまで運ぶことに成功したのだった。
    ねじねじ Link Message Mute
    2022/11/06 23:09:41

    かわいいの波状攻撃に耐えきれない先生の話

    #sgmn
    お題ガチャ(https://odaibako.net/gacha/2563?share=tw)で出たお題の話をついったでお見かけしまして、つい書いてしまいました。ただひたすら先生が悶えている話です。

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