ふとしたリラックスお昼ごはんのオムライスを二人で作って食べて。午前中、急患で呼ばれてた先生にはゆっくりしてほしくて、後片付けは私が買って出た。予想通り、先生は最初は渋ったけど、私があまりにキッパリ言うものだから、最後ははい、って言ってくれて、私にソファベンチに座らされて、クッションを抱えて隣のサメ太朗がお付きみたいになってる。
たいして洗い物もないし、すぐ終わらせますね、って言ったら、二人でやったらもっと早いと思うんですが…なんて、クッションを抱えてぶつぶつ言ってる。往生際が悪い先生ですねぇ。実際、お料理しながら片付けもしてたから、洗い物なんてカトラリーとお皿とフライパンと、ぐらいなもの。さっさと洗って、ワークトップを布巾で拭いちゃえばあっという間に後片付けは完了。台所からリビングに戻って、思わず笑っちゃった。先生、クッション抱えてうたた寝してる。やっぱりちょっとお疲れだったんだ。そうだよね、地域の人たちの健康を預かっているんだもん。
ソファベンチの前に座り込んで、うたた寝してる先生をとっくりと観察してみる。顔にかかってる前髪はこの間きた時よりちょっと伸びてて、そういえば昨日なんだか鬱陶しそうにしてた。やっぱりまつ毛長いなぁ。それにお肌がキレイ。特にスキンケアなんてしてないって言うけど、それでこんなにお肌がキレイなんだから、一生懸命スキンケアしてる自分とつい比べちゃう。まぁ、先生はお化粧もしないけど。半開きになってる口元もかわいい。
私がいるときに、リラックスできててうたた寝しちゃってるって言うのが、何だかうれしい気もする。しばらく、膝にほおづえして、うたた寝してる先生を観察してたら、先生の隣に寄り添ってるサメ太朗と目があった気がした。サメ太朗も先生がうたた寝し始めちゃったことをほほえましく見守ってたみたい。
先生を起こさないように、そっとサメ太朗を取り上げて抱っこする。
「ね、先生寝ちゃったね」
サメ太朗に小声でくすくす話をしたら、サメ太朗もうんうん、って頷いてる気分。
しばらくそうやってサメ太朗とふたりで先生を観察してたら、先生がクッションをむぎゅりって抱き直して、口元がむにゃむにゃってする。なんだかそれもかわいくて、サメ太朗とかわいいね、ってひそひそ話。
サメ太朗とお話してたら、ふと先生が
「ももねさん…」
って寝言を言った。え、私が夢に出てる…?
どんな夢なんだろ…。
って思ってたら、また何か言ってる。
「サメたろう…」
あ、サメ太朗も出てるんだ。
どんな夢なんだろね、ってまたサメ太朗と小声でお話ししながら、おねむの先生の観察(見守るっていうよりはもう、観察って感じになってきた)。
「サメたろう!よすんだ!」
えっ?!サメ太朗が何か大変なことに?!
「ももねさんも、無茶だ!」
私も?!
どんな夢かものすごく気になる…。なんだか手に汗握ってしまって、私の腕の中のサメ太朗もなんだかハラハラしてるみたい。その後しばらく待ってみても、寝言は出てこなくて、でも段々と眉間にシワが寄ってる。何がどうしたんだろう…。サメ太朗とふたり、手に汗握って先生を観察してたら、ふとパチリと先生が目を開けて、目の前にしゃがみ込んでた私とばっちり目が合う。
「え…あ…ももねさん…。ん?僕、寝てた?」
寝起きで一瞬状況を把握できない感じの先生が、これまたなんだかかわいい。両手で顔を擦った先生が、それで覚醒したみたいで、右手で頭をくしゃってした。
「迂闊でした。洗い物してくれたのにその間に寝ちゃったなんて、ごめん」
「とんでもない。先生にリラックスして欲しかったから。それに、うたた寝の先生、なんだかかわいかったですよ?」
サメ太朗の胸ビレを持ってぱたぱたしてみせると、かわいい、って言われることに一抹の不服を持ってる先生の顔がチベットスナギツネみたいになる。先生が座ってるソファベンチの位置をちょっとずらして、ぽんぽんって隣の座面をたたいて笑ってお誘いしてくれるので、サメ太朗と一緒にそこに座る。そしたら、先生がサメ太朗のお鼻をぴこんって軽く指ではじいた。
「サメ太朗かわいそうじゃないですか」
私がサメ太朗をぎゅってしてみせたら、先生がまたチベットスナギツネみたいな顔をした。
「よく覚えてないんですが、さっき夢の中で、こいつが大暴れしてたんです」
「やっぱり?」
「え?」
「寝言で言ってましたよ」
「本当?なんだったんだろう…。とにかくサメ太朗のせいで百音さんと僕が大変な目にあったことしか思い出せないけど…」
首を傾げながらそれでもサメ太朗になんだか恨みがましい目をしてみせる先生に、メッて顔をして見せる。
「夢にまで出るなんて、サメ太朗すごいですね。でも、夢のことでサメ太朗にひどいのはよくないですよ」
先生にピコンってされたお鼻を撫でてあげながら言うと、まだちょっと不服顔だけど、先生は「ごめんなさい」って頭を下げる。うん、よろしい。
さて、と先生が言って、両手でお膝の上のクッションをぽんって叩いた。これから何しましょう、って先生が言うので、私とサメ太朗が顔を見合わせる。ね、何しよっか。先生と私とサメ太朗と、こんな登米でのゆっくりした時間、宝物みたいだもんね。
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モネちゃんに登米に連れてきてもらって、スガナミんちのサメ仲間と旧交温めたり、モネちゃんにデレデレのスガナミにみんなでドン引きしたりしてる。今日は、朝からスガナミがお仕事で呼ばれたとかで、モネちゃんとお留守番。スガナミのお仕事も大変だよなー。でも、ちゃんとお仕事するスガナミのことをモネちゃんが大事に思ってくれてるのが素敵。ほんとスガナミはモネちゃんに感謝すべき。マジで。
んで、スガナミが帰ってきたら仲良くオムライス作って食べて。モネちゃんもにっこにこでおいしそーに食べてるし、スガナミはスガナミでそんなモネちゃんにデレデレだし。もー、ジンエベザメ君なんか、スガナミがばくはつしちゃわないかな、ってそわそわしてる。スガナミはばくはつしちゃえばいいんだよ!
なかよくごはん食べ終わった後、モネちゃんがきっぱりと、お片づけは私がします、って言いながら、スガナミをぐいぐいーってベンチソファに座らせてクッションだっこさせてる。んで、僕のことをひょいって持ち上げて、スガナミの隣に。あ、見張りね!りょうかい!まかせて、モネちゃん!
そうやって座らされて、スガナミは、背後のモネちゃんがご用事してる様子がソワソワ気にして。でもそうしてるうちに、気持ちいい水の流れる音と、モネちゃんのいる気配がここちよくって、ふと見上げたらウトウトしてる。まーそーだよなー。。モネちゃんが来てる時は普段より寝る時間遅くって、そんで朝はお仕事だったんだもんなー。おぉお、なんだかんだ結構フネこいでるー。
スガナミの隣でそれを見まもってたら、モネちゃんがお台所から戻ってきた。スガナミがうたた寝してんの見て、なんだか楽しそう。スガナミの前にしゃがみこんで寝顔を見てる。あーもー!スガナミの寝顔を見るモネちゃんがとろけそうな顔してる!モネちゃん、これ、タダのスガナミだから!
しばらくそうやってスガナミを見てたモネちゃんが、僕のことをそっと抱っこしてくれる
「ね、先生寝ちゃったね」
って僕とくすくす内緒話。ねー、スガナミ寝ちゃったねー。
なんだかんだ図体でかいけど、こういう時はなんつーか、かわいいよね、スガナミ。うん、モネちゃんも多分そう思ってる。
あ、むにゃむにゃした。と思ったら、モネちゃんが、かわいいね、ってひそひそ言う。だねー。
そうやってモネちゃんと一緒にスガナミを観察してると
「ももねさん…」
ってスガナミが寝言を言う。おま、モネちゃんが夢にも出て来てくれるとかカホーモノすぎる!
「サメたろう…」
えっ?ぼくも?
そっかー、僕もかぁ。まぁ、スガナミんちのサメを代表してモネちゃんと一緒に暮らしてる僕だからね!
スガナミの夢でもお世話しなきゃとか手がかかるけど、まぁ、しゃあないかなー。
どんな夢なんだろね、ってモネちゃんとお話してたら、スガナミの眉間にシワが寄りだした。
なんだなんだ?!
「サメたろう!よすんだ!」
えっ?!僕がなんかしてんの?!
「ももねさんも、無茶だ!」
え、モネちゃん巻き込まれてんの?僕そんなことしないよ!スガナミなら気にしないけど!
えー、めっちゃハラハラするー。どんな夢だよー。どしたんだろね、気になるね、って心の胸ビレをぱたぱた振りながらモネちゃんとお話してたら、ふとスガナミの目があいた。真正面にいるモネちゃんと僕を見て、なんだかキョトンとしてる。
あ、寝起き。
「え…あ…ももねさん…。ん?僕、寝てた?」
って、アレが寝てなかったら、サメの睡眠は全部覚醒に分類されちゃうね。
両手で顔をごしごししたスガナミが、目ぇさめたみたいで頭をかきながら、寝ちゃってたお詫びを言う。
「とんでもない。先生にリラックスしてほしかったから」
なんて言ってくれるモネちゃん、マジ天使。ありがとう。
「それに、うたた寝の先生、なんだかかわいかったですよ?」
って僕の胸ビレをぱたぱたしながら言うモネちゃんがむしろかわいい。ゆうしょう。そんで、かわいいって言われるのがフホンイなスガナミがチベットスナギツネみたいな顔になる。もうヨーシキビ。スガナミが、自分のおとなりにモネちゃんをさそって、ソファをぽんぽんってたたく。僕を抱っこしたモネちゃんが座ったら、スガナミが僕のかたちのいい吻を指でぴこん!ってはじいてきた!なにすんだ!フカー!すぐ、モネちゃんが僕の吻をなでなでして、僕のことをぎゅってしてくれる。
「サメ太朗かわいそうじゃないですか」
ほらまたチベットスナギツネみたいな顔になるー。
「よく覚えてないんですが、さっき夢の中で、こいつが大暴れしてたんです」
「やっぱり?」
「え?」
「寝言で言ってましたよ」
「本当?なんだったんだろう…。とにかくサメ太朗のせいで百音さんと僕が大変な目にあったことしか思い出せないけど…」
えー、そんなの知らないよぅ~。僕がモネちゃんを大変な目にあわせるなんて、あるわけないじゃーん。スガナミとモネちゃんがピンチだったら、僕はすぐモネちゃんを助けるよ!スガナミは自分で何とか出来る。知らんけど。
ってスガナミを見てたら、モネちゃんがスガナミにメッって顔をしてる。
「夢にまで出るなんて、サメ太朗すごいですね。でも、夢のことでサメ太朗にひどいのはよくないですよ」
そーだそーだ!ばーか!スガナミのばーか!
モネちゃんが吻をずっとなでなでしてくれるからいいけどさー。
んでもそしたらスガナミが「ごめんなさい」って頭をさげてる。うん、素直でよろしい。
さて、とスガナミが行って、両手でお膝のクッションをぽんってたたいた。これから何しましょう、ってスガナミが言うから、僕とモネちゃんで顔を見合わせる。ね、なにしよっか!僕とモネちゃんとスガナミのお休み時間、宝物みたいだもんね!