小さなバースデーパーティー 「父さん、来て」とカールに呼ばれ、リックは仲間たちから離れた場所まで足を運ぶ。かなり距離はあるが、仲間たちの姿が視界に入っているので問題はないだろう。
リックは立ち止まってこちらに振り向いたカールに倣い、自らも足を止めた。
「カール、どうしたんだ?」
その質問にカールは嬉しそうな笑みを返してくる。
「父さんの誕生日は今ぐらいの季節だったよね?正確な日付はわからないけどさ。」
「ああ、そういえばそうかもしれないな。」
正確な日付はとっくの昔にわからなくなっていたが、季節から予想すると誕生日を迎えていてもおかしくはない。
誕生日なんてすっかり忘れていた、とリックは頬をかきながら苦笑する。
「プレゼントはないけどお祝いしたいんだ。父さん、誕生日おめでとう。」
祝福の言葉と共に抱きしめられ、バースデーソングがカールの口から奏でられる。
柔らかな歌声が平和だった頃の誕生日の記憶を思い出させてくれた。
自分の誕生日を忘れずにいてくれたことがとても嬉しかった。
荒廃した世界でも共に誕生日を迎えられたことが幸せだった。
「ありがとう、カール。」
リックが感謝の気持ちを込めて抱きしめ返せば「愛してるよ、父さん」と更に強く抱きしめられる。
「カールの誕生日もこうして一緒に迎えたい」と願いながら、リックはカールと同じように愛の言葉を贈る。
「愛してるよ、カール。」
End