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    特に何も始まっていない二人・【「久しぶり」】

     近頃、ダリルはとても忙しい。刑務所で大勢の人間が暮らすようになってからダリルが行動を共にしていた仲間たちの多くは複数の役割を担うようになり、それはダリルも例外ではなかった。
     調達、見張り、ウォーカー駆除、そして委員会の一員でもあるため一日のスケジュールはほとんど埋まっている。タフなところを買われているのか、個人的な頼まれ事も少なくない。
     ダリルは忙しいことが嫌なわけではない。皆から頼りにされることは誇らしく、笑顔と共に感謝を告げられると悪い気はしなかった。コミュニティーの一員として貢献することは自信にも繋がった。
     しかし、自由な時間を持つことが難しくなったのは困りものである。忙しさのせいで相棒とも呼べる存在のリックと最近は会話さえしていない。そのことに気づいたのは「リックの奴、最近は何してるんだ?」と思い出したように疑問に思ったのがきっかけだ。
     「これは良くない」と慌ててリックが居る畑に足を運んだダリルだったが、種蒔きの最中のリックが放つ言葉に顔をしかめる。
    「ああ、久しぶりだな、ダリル。」
     しゃがみ込んで作業するリックはダリルを見上げながら笑みを浮かべる。それとは対照的にダリルの眉間には深いしわが刻まれた。
     ダリルは不機嫌さを隠さずにリックを見下ろす。
    「久しぶりって何だよ。離れて暮らしてるわけでもないのに。」
     ダリルの抗議にリックは首を傾げる。
    「正確な日数を数えたわけじゃないが、俺たちは何日も話していなかったよな?だから久しぶりだな、と思って。おかしいか?」
    「……いや、おかしくは、ねぇよ。」
     リックの主張の正当性を前に反論の材料が見つからず、ダリルは溜め息混じりにリックの言葉を肯定した。
     確かに「久しぶり」と言いたくなる気持ちは理解できる。ダリルがリックと言葉を交わしていないのは二、三日程度の話ではなく、とりあえず一週間以上にはなるだろう。もしかするとそれどころの日数ではないかもしれない。同じ敷地内で生活しながらも離れているのと変わらない状態になっていたのだ。
     ダリルは後ろめたさを感じながらリックの隣に腰を下ろした。そして、リックの動きを黙って見守る。
     リックは少し盛り上がった土に指で穴を掘り、そこに種を落としてから土を被せた。それを何度か繰り返して一帯の種蒔きが終わると場所を移動して再び種を蒔く。ダリルもリックに合わせて場所を移動する。
     その間、ダリルは何も話すことができなかった。何を言うべきなのか言葉が見つからないのだ。
     そのうちにリックが手を止めてダリルに顔を向ける。その表情は訝しげだ。
    「どうした?何か話があるんだろう?」
     手伝うわけでもなく隣に居るダリルは何か目的があって自分のところへ来た。リックはそのように解釈したのだろう。
     話を促すようなリックの眼差しを受け、ダリルは緩く頭を振った。
    「別に特別な用事があるってわけじゃない。……最近、あんたと話してないことにさっき気づいた。それどころかまともに顔も合わせてない。それに気づいたら落ちつかなくなった。」
     気まずさを味わいながら打ち明けた内容にリックが不思議そうに瞬きをする。
    「お互いに別々の仕事があるし、ここで暮らす人数も増えた。話をするタイミングがなくても仕方ないだろう。それに、お前以外にも顔を合わせてない相手はいるぞ。気にしすぎじゃないか?」
    「俺は忙しくてあんたのことを忘れてた。顔を見てないってことに今日になるまで気づきもしなかった。……リック、俺はあんたを一人きりにした。最低だ。」
     苦しく厳しい旅を続ける中で育んだリックとの信頼関係はダリルにとって何よりも大切なものだ。ダリルとリックは自他共に「相棒」と認める存在になっている。それなのに日々の忙しさを理由にリックのことを忘れていた己が許せない。
     それだけでなく、リックを一人きりにしてしまったことがダリルにとっては大失態だ。リーダーを降りてからのリックは他者との交流が少なく、昔からの仲間の多くは孤立しそうな彼を心配している。そのため、ダリルはリックを孤立させないように声をかけたり様子を見に行くように心がけていた。だからこそリックを一人きりで放置してしまったことはダリルにとって大失態なのだ。
     気まずさは罪悪感へ変わり、ダリルはリックから顔を逸らす。
     ダリルが地面を見つめていると隣から「大げさな奴だな」と呆れたような声が聞こえてきた。反射的に顔をリックの方に向ければ苦笑いを滲ませる彼と目が合う。
    「特定の誰かのことを一日中考えているのは無理だ。言い方は悪いが、俺だって子どもたちのことばかり考えていられるわけじゃない。お前は一日中、何をしていても俺のことを考えていられるか?頭から抜け落ちる瞬間があるんじゃないか?」
    「……あんたの言う通りだ。一日中考えていられない。」
    「そうだろう?だったら思い詰める必要はない。それにな、ダリル。俺は一人でいることを寂しいと思わない。特に何とも感じていないんだよ。だから勝手に憐れむのはやめてくれ。」
     リックの言葉にダリルはハッとする。
     リック本人が一人でいることを寂しいと言ったわけでもないのに「一人きりでかわいそうだ」と決めつけ、勝手に憐れんでいたのだ。それを自覚した途端に無意識にリックを憐れんでいた自分が恥ずかしくなる。
    「俺はリックをかわいそうな奴として扱ってたんだな。本当に悪かった。」
     ダリルが謝罪するとリックは「気にしてない」と微笑み、ダリルの肩を慰めるように叩いた。
    「ダリルは優しいから他人を心配せずにいられない。それは悪いことじゃないさ。あんまり落ち込むなよ。」
     リックはダリルから視線を外すと種蒔き作業に戻った。ダリルは再び地面に視線を移したリックの横顔を眺めながら声をかける。
    「俺は頭が悪いから、またあんたのことを忘れちまって何日も顔を合わさないことがあると思う。それでも思い出したら今日みたいに会いに来ていいか?」
     ダリルがそのように尋ねると、リックが再び顔をこちらに向けた。
    「もちろん。その時は『久しぶり』って挨拶するよ。」
     リックは返事をしながら笑顔を浮かべた。それに釣られてダリルも微笑む。
     心がスッキリしたダリルはリックに「手伝う」と手を差し出した。
    「いいのか?」
    「ああ、今日はスケジュールに余裕がある。」
    「じゃあ、頼む。」
     リックは嬉しそうに笑いながらダリルの掌に種を落とした。
     種を受け取り、リックに倣って種蒔きを始める。単純作業なので会話をしながらでも問題ない。
     ダリルはリックと並んで畑に種を蒔きながら最近の出来事を語って聞かせた。語る方も聞き入る方も、どちらも心から楽しそうに笑っていたのは言うまでもない。

    END



    ・【進歩】

     冬の厳しさが和らぎつつある中、今日は日差しの温もりに加えて風がないことにより暖かさを強く感じる。屋外での作業に励む者たちは「今日は暖かいね」と言葉を交わしながら頬を緩ませた。
     暖かさの恩恵を受けているのはリックも例外ではなく、久しぶりに凍えることなく畑仕事ができるのはありがたかった。家畜として飼育している動物たちもいつもより気持ち良さそうにしており、餌を食べ終わった後は元気に柵の中を歩いている。
     リックは動物たちを観察しながら「今日ならジュディスを外に連れ出しても問題ない」と考え、午後の暖かい時間帯にジュディスを散歩に連れ出そうと決めた。
     午後になり、リックは昼食後の昼寝から目覚めて元気いっぱいな我が子を抱いて監房棟を出る。気温は午前中よりも高く、上着の前が開いていても気にならないほど暖かい。ジュディスも寒さを全く感じていない様子ではしゃいでいる。
    「久しぶりにお出かけできて嬉しいな、ジュディス。今日はパパとお散歩しよう。」
     リックが微笑みながら声をかけるとジュディスは嬉しそうな声を上げた。
     ジュディスはまだ会話はできない。意味不明な言葉を口にするだけなのだが、彼女がどのような気持ちでいるのかは表情や声でわかる。今の気持ちは「嬉しくて仕方ない」らしい。
     リックはジュディスを抱いたまま監房棟の周囲を歩く。監房棟の周囲を歩くだけでは散歩と呼べないかもしれないが、フェンスに近づくとウォーカーの姿が見えるのでジュディスが怯えてしまう。そのためフェンスから離れた場所を歩くしかなかった。
     リックはジュディスに話しかけながら散歩を続け、十分ほど歩いてから建物に添うように置かれたベンチに腰を下ろした。
    「しばらく座ってのんびりしよう。な、ジュディス。」
     リックが笑いかけるとジュディスは笑い声で応える。
     しばらくの間、親子は穏やかな時間を楽しんでいたのだが、そこへ焦った様子のダリルが姿を見せた。ダリルは二人の姿を認めるとリックに視線を向け、その次にリックの腕に抱かれるジュディスに視線を移して脱力したようにしゃがみ込んだ。
    「ダリル、どうしたんだ?何かあったのか?」
     普段とは異なる様子のダリルに不安が込み上げる。
     ダリルはリックの問いに対して「何もない」と返しながら立ち上がり、こちらに近づいてきてリックの正面に立った。こちらを見下ろすダリルは安堵の表情を浮かべていた。
    「特に何かあったわけじゃないが、あんたとじゃじゃ馬娘がどこにもいなかったから心配になって捜してただけだ。監房棟から出たとは思わなかった。」
    「そうだったのか……心配させて悪かった。今日は暖かいからジュディスを外に出してあげたくて。それにしてもお前は心配性だな。俺がこの子を連れてフェンスの外に出るなんて有り得ないとわかってるだろう?」
     リックは苦笑しながら肩を小さく竦めた。自身を守ることができない年齢の子どもや老人がフェンスの外に出ることは規則で禁止されている。それを含めた様々な規則を決める話し合いにはリックも参加していたのだ。
     リックの指摘にダリルは「わかってる」と頷いた。
    「わかってるが、何が起きてもおかしくないだろ。特に今の世界は。」
     ダリルは淡々とした様子で言葉を返すとリックの前に片膝をつき、ジュディスを抱くリックの手に自らの手を重ねてきた。ダリルの大きな掌に手を包まれ、リックはダリルの顔を見つめたまま目を瞠る。
     ダリルの表情に揺らぎはない。落ちついた様子でこちらに真っ直ぐな眼差しを寄越す。
    「大事なものはしっかりと掴んでおかなきゃならない。手を離したら二度と取り戻せなくなる。大げさかもしれないが、俺はそう思う。」
     リックはダリルの真剣な目を見つめ返しながら、彼の兄であるメルルのことを脳裏に思い浮かべる。
     メルルが死んだ原因は単身で敵のところへ乗り込んだことだ。誰かと一緒であればケガは避けられなかったとしても命は助かったかもしれない。ダリルは兄を一人で行かせたことを悔いており、救えなかったことは心の傷として残っているだろう。
     唯一の肉親の死がダリルの中に存在する「仲間を失うことに対する恐怖」を今まで以上に大きくさせている。リックにはそのように思えた。
     しかし、リックにはその恐怖を取り除くことも和らげることもできない。その恐怖を和らげるのは己の考え方や心構え次第なのだから。
     リックが己の無力さを感じているとダリルが微かに苦笑を漏らした。
    「そんな暗い顔するなよ。これでも俺にとっては進歩なんだ。」
    「進歩?」
     リックが首を傾げるとリックの手を掴むダリルの手に力が込められた。
    「昔の俺はいろんなことを最初から諦めてた。何かを望んでも『どうせ無理だ』って諦めて手を伸ばそうともしなかった。拗ねて唾を吐きかけてただけだ。」
     ダリルは「ダサいよな」と自嘲気味に笑って目を伏せたが、すぐにリックに視線を戻す。その目に宿る光にリックは目を奪われた。
    「諦めるのをやめたのはあんたに出会ったからだ。手を伸ばしてみなきゃ始まらない。掴もうとしなきゃ掴めるわけがない。リック、あんたはそのことに気づかせてくれた。だから俺はリックを失わないために何があってもリックを守る。そう決めた。」
     そのように宣言したダリルに悲壮感はなかった。
     「大事なものはしっかりと掴んでおかなければならない」という気持ちは決して後ろ向きなものではない。最初から諦めたりせずに必死に掴もうとする前向きな姿勢から生まれたもの。ダリルは兄の死を彼なりに乗り越えていたのだ。
     リックはダリルの気持ちを後ろ向きな捉え方をしていたことが恥ずかしくなり、ダリルに「すまなかった」と謝罪した。
    「お前の気持ちを後ろ向きなものだと決めつけていたよ。失礼なことをした。本当にすまない。」
     リックの謝罪にダリルは目を丸くしたが、柔らかく微笑むと「謝るな」と言ってリックから手を離した。
     そして、リックから離したばかりの手でジュディスの頭を撫でる。
    「兄貴が死んだことを乗り越えられたのか未だによくわからないが……あんたや他の奴らがいるから大丈夫だって思える。だから、しっかり生きてろよ、じゃじゃ馬娘。」
     ダリルの物言いにリックは思わず吹き出した。
    「何だ、それ。変な言い方だな。」
    「俺は洒落た言い方なんてできないからこれでいい。」
     笑い続けるリックにダリルは拗ねた表情を浮かべた。それもすぐに真剣な表情に変わり、そんなダリルを見てリックは笑いを治めた。
     真剣な面持ちで見つめ合ったまま沈黙が続いたが、それはダリルによって破られる。
    「──リック、あんたも生きてろ。あんたもカールもジュディスも俺が守るから。」
     ダリルは大事なものを失わないために自らの手で大事なものを守ると決めた。そして、彼はリックに「生きていること」を求めている。それならばリックがダリルの思いに応える方法は一つだけだ。
     リックは穏やかに微笑みながら深く頷く。
    「生きるよ。子どもたちを、みんなを守るために。それから……お前が大事なものを失わないために。」
     リックがそのように告げるとダリルは笑った。心の底から嬉しそうな笑みはリックの心を温める。
     その時、リックの胸をジュディスの小さな手が叩いた。それに促されるようにリックが視線を愛娘に落とせば宝石よりも美しい瞳が輝きを放つ。
    (ああ、失いたくないな)
     リックはジュディスを見つめながら心の中だけで独りごちた。
     リックにとって大事なもの──それはダリルと同じで自分と共に生きる人々だ。彼や彼女の誰一人として失いたくないと強く望む。それならば自分もダリルのようにしっかりと掴んでいよう。
     その決意を表すようにリックはジュディスを抱きかかえる腕に力を込める。それを察したのか、小さな手がリックの手を力強く掴んだ。

    END



    【はんぶんこ】

     文明社会が崩壊し、娯楽の少ない暮らしの中での最大の楽しみといえば食事だ。質素であっても調理当番が心を込めて作った料理は美味しい。美味しいものを食べるだけで心が安らぎ、楽しい気分になるものだ。住人が増えた刑務所においてもそれは例外ではなく、見張り当番以外の全員が揃う夕食ははしゃぐ声や笑い声が絶えない。
     その夕食時。今日はいつにも増して皆のテンションが高いのには理由がある。
    「今夜のメインディッシュは鹿肉のトマト煮込みだよ!」
     調理当番が声高に告げれば食堂に集う皆から歓声が上がった。
     今日の狩りでは大きな鹿を一頭仕留めることに成功した。その鹿を少しの取り零しもないよう丁寧に捌いたので肉の量はかなりのものになり、「少しくらい贅沢しても構わないだろう」ということで全員に新鮮な鹿肉が行き渡ることになったのだ。
     鹿を仕留めたのは狩りが得意なダリルである。ちなみにダリルは狩りを終えて刑務所に戻ってきた後、擦れ違う誰もが感謝の言葉を投げてくることに照れくさくなって夕食の時間になるまで使われていない監房棟に隠れていた。
     夕食を食べるために隠れるのをやめて食堂に足を踏み入れたダリルは早速食事を受け取りにいく。
     配膳係から料理の盛られた皿を受け取る際に「夕食の功労者にはサービスしないとね」と言われ、受け取った皿に視線を落とすと通常は一切れであるパンが二切れも乗せられていた。自分だけ量を多くしてもらうわけにはいかない、と返そうとしても拒否されてしまっては仕方ない。ダリルは小さく肩を竦めてから空いた席を探して食堂の中を見回す。
     視線を移動させていく中で食堂の隅のテーブルにリックの姿を見つけた。彼の隣の席が一つ空いている。ダリルはその席に狙いを定め、少しだけ足早に移動した。
    「ここ、空いてるよな?座るぞ。」
     ダリルはお目当ての席に到着するとリックに宣言しながら座った。それに対してリックは「空いてるぞ」と微笑み、自分の皿を少し移動させてダリルが皿を置きやすいように気遣ってくれた。
    「今日の鹿はかなり大きかったんだって?運ぶのが大変だったとタイリースが言っていた。」
    「ああ、あそこまで大きい奴はなかなか見かけないな。仕留められて良かった。」
    「車から運び出すのにかなりの人手が必要だったらしいな。それなのに手伝えなくて悪かった。ジュディスがぐずってて動けなかったんだ。」
     申し訳なさそうに眉を下げるリックにダリルは苦笑いを向ける。
    「あんたはジュディスに構ってやればいいんだよ。ほら、冷めないうちに食おうぜ。」
     ダリルはリックに声をかけてから自分の食事に視線を落とし、皿の上に乗っている二切れのパンを見て動きを止める。鹿を持ち帰ったことに対する感謝として一切れ多めに貰ったパンではあるが、ダリルはこれをリックに食べてもらいたいと思った。
     リックは広い畑や何匹もいる家畜の世話をほとんど一人で引き受けており、毎日休むことなく畑と家畜小屋に足を運んでいる。一日の大半を体を動かして過ごすのだからとても腹が空くだろう。改めて考えてみると、現状で与えられる食事の量で足りているのか疑問だ。他者を優先しがちなリックであれば腹を満たせなくても我慢してしまいそうな気がした。
     やはり余分に貰ったパンはリックが食べるべきだ。
     その結論に至ったダリルはパンを一切れ手に取るとリックの皿に乗せる。そうするとリックが驚いたようにダリルを見るので「やるよ」と告げた。
    「余分に貰ったんだ。あんたが食え。」
     ダリルの言葉にリックは首を横に振り、ダリルがリックの皿に乗せたパンをダリルの皿に戻してしまった。
     ダリルは自分の皿に戻ってきたパンを睨んでからリックの方に顔を向ける。
    「おい、戻すな。」
     ダリルが眉間にしわを寄せて抗議の声を上げるとリックは困ったように眉を下げる。
    「これは貰った本人が食べるべきだと思う。特にお前は忙しく飛び回っているんだから腹が減るはずだ。俺は気持ちだけで十分だよ。」
     リックの主張にダリルの眉間に刻まれたしわが深くなる。
     他者を優先しようとするところはリックの美点ではあるが、それを自分相手にする必要はない。刑務所で暮らす者たちの中でもリックとの付き合いは長い方に入るのだから余計な気遣いは無用だ。
     ダリルは返されたパンをリックの皿に再び置いた。そうするとリックが「ダリル!」と非難めいた口調で名前を呼んでくるが、それに負けるダリルではない。
    「あんたは畑と家畜の世話を一人でやってるんだから食わなきゃ体力が持たないぞ。いいから食えよ。」
    「だから、俺はその気持ちだけで十分なんだ。体力なら問題ない。」
     リックは言い返すとパンを再びダリルの方に戻してしまった。すぐにダリルがそのパンをリックの方に戻せばリックの表情は渋くなる。
     こうなってしまえば意地の張り合いだ。ダリルとリックは互いに己の主張を譲らず、二人の間では一切れのパンが往復を繰り返す。「自分は大丈夫だ」「そっちが食べるべき」などの主張と共に続くパンの譲り合いは不毛な争いと称しても問題ないだろう。
     しかし、終わりの見えなかった争いは唐突に終わりを告げる。
    「あっ!……そうか!」
     リックが何か閃いたように声を上げ、ダリルと目を合わせたまま笑みを浮かべた。
     急に様子の変わったリックに戸惑うダリルの目の前で、リックは二人の間を往復していたパンを慎重な手つきで半分に分けた。ほぼ均等に分かれたパンのうちの一切れがダリルの皿に乗せられる。
     ダリルは自分の皿に視線を落としてから顔を上げてリックを見た。リックはニッコリと笑っている。
    「半分にして分け合えば良かったんだ。最初に気づけば良かったな。」
     ダリルはリックの笑顔を見つめながら妙に全身の力が抜けるような気がした。
     意地の張り合いはあっけないほど簡単な方法で終わりを迎えた。そのあっけなさとリックの温かな人柄に触れて力んでいた自分がバカみたいに思える。
     ダリルは苦笑いしながら半分に分けられたパンを手に取った。
    「俺たち、かなりの間抜けだな。こんなに簡単に解決できるってのに……本当に間抜けだ。」
    「どっちも思いやりがあるってことでいいだろう。じゃあ、食べようか。」
     リックは明るく笑うと分け合ったパンを齧る。そして口をモグモグと動かしながら「旨い」と目尻を下げた。
     ダリルはリックの様子を見守ってからパンに噛み付いた。噛みちぎって咀嚼すれば旨味が口の中いっぱいに広がっていく。食べ慣れたパンであるはずなのに特別に美味しく感じられた。
     ダリルは不思議な感覚に首を傾げながらリックに視線を向けてみる。そうするとダリルの視線に気づいたリックが目線をこちらに寄越した。目が合い、リックが微笑む。
    「今日のパン、旨いよな。な、ダリル。」
     微笑みながらのリックの言葉を聞いてダリルは理解した。
     分け合ったのはパンだけではない。相手を大切に思う気持ちも分け合ったから普段よりも美味しく感じられるのだ。相手を大切に思い、相手から大切に思われているということを感じながら食べるのだから美味しさが増して当然だ。
     何かを分け合う相手がいるということが尊く、そして愛おしい。ダリルはその思いを噛みしめながら笑みを口の端に乗せた。
     そして、リックに向かって心からの言葉を告げる。
    「ああ、リックの言う通りだ。このパンは本当に旨い。」

    END



    ・【充電】

     住人が増えた刑務所は賑やかな場所になった。使用していない監房棟以外の場所には絶えず明るい声や人々の足音が響いており、そのことについて「賑やかになった」と笑い合う住人たちの姿はお馴染みのものとなっている。
     そんな賑やかな刑務所であっても早朝は静かなものだ。見張り当番や調理当番、そして一部の早起きな人間しか活動を始めていない時間帯は緩やかな空気が流れている。
     その早朝の住人の一人であるリックはジュディスを胸に抱きながらグリーン親子と立ち話を楽しんでいた。椅子に腰かけるハーシェルを囲むようにリックとグリーン姉妹の三人が立ち、リックの腕の中ではジュディスが目をパッチリと開けて大人たちを見上げている。
     今朝の話題はベスの提案についてだ。ベスは目を輝かせながら三人に向かって熱心に話す。
    「だからね、プランター栽培を子どもたちに頼んでもいいんじゃないかなって。育てるのが簡単な野菜を選べば上手くいくと思う。そうすれば農作業にも興味を持ってもらえると思わない?」
     ベスの提案に他の三人は頷いた。
    「俺としても畑の世話をする人間が増えてほしいから、今のうちに興味を持ってもらえるのは良いことだと思う。」
    「今は刑務所の整備と生活の維持のための仕事でみんなが手いっぱいだもんね。今はリックに踏ん張ってもらって、子どもたちがもう少し成長したら畑と家畜の世話の方に何人か行ってもらうのがベストかな。父さんはどう思う?」
    「このコミュニティーの一員としての自覚と責任を持たせる良い機会になるだろう。幸い、プランターを置く場所はたくさんある。私も賛成だ。」
     ハーシェルが賛成の意を示して微笑むとベスが「良かった」と満面の笑みを浮かべる。その笑みはすぐに引き、真剣な顔つきになったベスが三人の顔を順に見つめながら口を開く。
    「このことは私が主導でやります。でも、一人で進めるのは難しいから手伝いをお願いすることになると思います。その時はよろしくお願いします。」
     畏まった口調のベスにリックたちは互いの顔を見合わせた。そして、少しの間を置いた後に揃って吹き出す。
     マギーはキョトンとするベスの顔を両手で挟んで明るく笑う。
    「変なところで遠慮しないでよね!そんなに畏まって頼むようなことじゃないでしょ?手伝うに決まってる。」
     マギーの言葉にリックとハーシェルも微笑みながら頷く。それを受けてベスは少しはにかみながら「ありがとう」と感謝した。
     その時、和やかな雰囲気とは対照的な空気を纏った男が監房棟に入ってきた。それは夜間の見張り当番だったダリルだ。こちらに向かって歩いてくるダリルは動きが鈍く、「全身が重くて仕方ない」といった雰囲気が垂れ流されている。顔にも覇気がないためウォーカーに転化したのかと疑いたくなってしまう。
     リックたちは困惑を顔に浮かべながら顔を見合わせた。
    「彼、どうしたの?妙に疲れてない?」
     微かに眉間にしわを寄せるマギーの疑問に答えたのはハーシェルだ。
    「昨夜、もう一人の見張り当番のショーンが熱を出したんだ。疲れが溜まっていたようだな。風邪ではないから、その点については安心していい。ダリルには見張りを代行できる人間を探すように言っておいたんだが、まさか……」
     ハーシェルはダリルの方に顔を向けて渋い顔になった。
     不自然なところで途切れた言葉の続きは「代行を頼まずに自分だけで一晩中見張りを行ったのではないか?」といったものだろう。それはリックとマギー、ベスの三人も頭に過ったことだ。それはダリルの優しさからの行動であると理解しているが、一人だけで負担を抱え込むのは良くない。
     リックは徐々に距離を縮めてくるダリルを眺めながら「叱ってやらなければいけない」と気を引き締める。
     遂にダリルがリックたちの近くまで来たので、リックは夜間の見張りを一人で行ったのではないかと確認するために口を開いた。
     しかし、その口から飛び出したのは「へ?」という間の抜けた声だった。
    「へ?……え、ダリル?」
     こちらに近づいてきたダリルはリックに後ろから抱きつくと首元に顔を埋めて動かなくなった。ダリルの予想外の行動に驚いたリックが言葉を紡ぐことができなくても無理はない。
     リックは顔を少し後ろに向けて自分に抱きついたままのダリルを呆然と見つめていたが、我に返ると助けを求めて他の三人を見た。
     しかし、ハーシェルは苦笑を浮かべ、マギーは呆れ顔で腕組みをし、ベスに至っては微笑ましげに見つめてくるだけだった。
    「ど、どういうことだと思う?」
     すっかり混乱したリックは仲間たちに問いかけた。それに対する答えはすぐには返ってこず、三人は曖昧な笑みを浮かべながら視線を交わらせている。
    「どうって言っても……ねぇ?」
     マギーの言葉を受けたハーシェルは「そうしたいと彼が望んでいるとしか……」と言ったきり口を噤んでしまった。
     そして、ベスはリックの手からジュディスを引き取ってニコッと笑う。
    「ダリルはリックに甘えたいみたい。しばらく構ってあげて。」
     ベスはそう告げて外に出ていってしまった。それを追いかけるようにマギーもハーシェルを立ち上がらせて二人で外へ向かう。リックはダリルに抱きつかれたまま仲間たちと愛娘が出ていくのを見送るしかなかった。
     取り残されたリックは一つ息を吐くと首元に顔を埋めたままのダリルに声をかける。
    「……ダリル、一人で朝まで見張りをしていたのか?」
     その質問に対してボソッとした声で「そうだ」との返事があった。
    「やっぱり、そうだったのか。みんなに負担をかけないようにしたかったんだろうが、お前だけが負担を背負うのはだめだ。みんなで助け合ってやっていこうと決めただろう?また同じようなことがあったら必ず誰かに手伝ってもらえ。わかったな?」
    「ああ、わかった。」
     疲れきった声での返事にリックは苦笑する。これ以上の説教はかわいそうだ。
     リックは己の体に回されたダリルの腕を軽く叩きながら「お疲れ様」と労った。
    「ダリル、朝食まで時間があるから寝てくるといい。時間になったら起こしに行くから。」
    「いい。起きてる。」
     眠たそうな声音で提案を蹴ったダリルにリックは顔をしかめる。眠気と疲れが限界に来ているだろうに、何を言っているのか?
    「絶対に起こしてやるし、もし起きなかったらお前の分の食事は確保しておいてやる。いいから寝てこい。」
    「いいって言ってるだろ……あんたに引っ付いてる方が良い。」
     ダリルは反論するとリックの首に頬ずりした。その次はスンスンと鼻を鳴らしながら首元に鼻先を寄せる。
     ダリルの行動に驚いたリックは言葉を失い、全身を硬直させた。
    (匂いを嗅いでる……よな?間違いなく俺の匂いを嗅いでるんだよな?)
     ダリルの奇妙な行動に驚いた後は心配する気持ちが芽生えてきた。疲れのせいでダリルがおかしくなってしまったのではないかと思ったのだ。
     リックはダリルの注意を引くために彼の腕を軽く叩いた。
    「ダリル、大丈夫か?寝不足と疲れでおかしくなってないか?」
     それに対してダリルは「なってない」と言いながら深呼吸をする。まるで匂いを吸い込むような行為にリックは恥ずかしくなった。
     今更になって今の状態を恥ずかしく思ったリックがダリルの腕から抜け出そうと身じろぎしても拘束する腕の力は強く、更に悪いことにリックが抜け出そうとしたのを察して力が強まってしまった。
     ダリルの腕の中から抜け出せず途方に暮れるリックの耳にダリルの声が届く。
    「リックの匂いも体温も、好きだ。安心する。」
     独り言に近い声量ではあったが、ダリルの本音は間違いなくリックに届いた。
     リックは一瞬だけ目を瞠り、続いて穏やかな表情になると内緒話をするような声の大きさでダリルに話しかける。
    「俺は良い匂いなんてしないぞ。汗臭いか、泥臭いか、動物臭いか……そんな匂いしかしないと思う。それでも好きなのか?」
     その問いにダリルが微かに頷く。
    「好きだ。俺にとってリックの匂いは好きな匂いなんだ。体温も。ずっと嗅いでいたいし触っていたい。だから、このままでいさせろ。疲れが取れる。」
    「お前──……」
     ダリル自身には大胆なことを口にしている自覚はないだろう。こんなにも疲れきっているのだから頭が回っていないはずだ。
     恥ずかしくなるような言葉ばかりだが、それでもリックはダリルの言葉を嬉しく思う。出会ったばかりの頃は周囲に対して警戒心や敵意を剥き出しにしていた男が、自分の傍に居て安心できると言ってくれたようなものなのだから。それは仲間として、そして家族として何よりも嬉しいことだ。
     リックは自分が微笑んでいることを自覚しながらダリルの腕に手を乗せる。ダリルの言葉が嬉しいのだと示すように腕を撫でてやれば彼は安堵したように息を吐いた。
    「ダリルが望むなら、どれだけでもこうしていて構わない。これぐらいのことでお前が元気になるなら俺は嬉しいよ。」
    「ん。──ありがとな。」
     感謝の言葉を告げるダリルは今にも眠ってしまいそうな声をしており、それが面白くてリックは軽く笑い声を上げた。
     ダリルは元気になったら自分の行動を恥じて大慌てで謝ってくるだろう。その姿を想像するだけで笑いが込み上げてくるが、その時に伝えたいことをリックは脳裏に浮かべる。
    (疲れたら、いつでも俺のところへ来ていい。そう伝えよう)
     そのように伝えたらダリルはどんな反応をするのだろう?
     リックは楽しげに微笑みながらダリルの腕を撫で続けた。


     ──あの日から数ヶ月後。
     刑務所では階段に座るリックの一段上にダリルが座ってリックを背後から抱きしめるという光景が繰り広げられていた。ダリルの方が高い位置に座っているので彼はリックの髪に鼻先を埋めている。
     抱きしめられている側のリックはというと、平気な顔でジュディス用の布おむつを縫う作業に勤しんでいる。少し動きにくそうではあるが手元での作業なので縫い物をするのに支障はなく、特に鬱陶しがる素振りは見せない。そんな二人の近くにはジュディスをあやすグリーン姉妹の姿があった。
     その奇妙で穏やかな空間に足を踏み入れたグレンはリックとダリルを見て目を丸くした。口が半開きになっているものの本人が気づいた様子はない。
     グレンの存在に気づいたマギーが「グレン、作業は終わったの?」と声をかけた。
    「あ、ああ、うん。思ったより早く終わったよ。」
     マギーの声によって我に返ったグレンはリックとダリルをチラチラと見ながらグリーン姉妹に近づいていった。
     グレンはマギーの隣に立つと声を潜めて質問する。
    「ねえ、あの二人はどうしたの?何してるの?どんな関係?」
     困惑を隠すことなく矢継ぎ早に質問を重ねる夫にマギーは苦笑する。
    「別に関係性は変わってないわよ。疲れが限界に来たダリルはリックを抱きしめて匂いを嗅ぐと回復するってだけ。」
     マギーの返答にグレンが硬直する。少しの沈黙の後、グレンは恐る恐るといった様子で後ろを振り返ってリックとダリルに視線を向けた。
    「要するに、ダリルは充電中ってこと?」
    「そういうこと。だから放っておきなさい、グレン。」
     マギーはそれだけを告げるとベスの腕の中でご機嫌なジュディスの頬を突いて「そうだよね、ジュディス」と笑いかけた。
     グレンは指一本動かさないまま再び問う。
    「リックは何で平気そうなの?慣れてるのか?」
     今度はベスがグレンの質問に答える。
    「私が見ただけでも四回目になるかも。リックが言うにはリック一人でいる時にも何回かあるみたい。慣れるのは当たり前ね。」
    「そ、そうなんだ。……衝撃が大きくて頭の処理が追いつかない。」
     混乱し続けるグレンの視線の先ではリックとダリルが言葉を交わす。
    「なあ、ダリル。俺はさっきまで外で動いていたから汗臭いんじゃないか?嫌じゃないのか?」
     リックは手を止めずにダリルに尋ねた。それを受けてダリルはスンスンとリックの匂いを嗅いで「臭くないぞ」と答える。
    「あんたが臭いなんて一回も思ったことない。俺はあんたの匂いが好きなんだから気にするな。」
    「それならいいんだ。」
     そのやり取りの後も二人の体勢は変わらない。
     グレンはぎこちなく顔を動かしてマギーとベスの方を見た。そのグレンの顔には何かを察した気配がある。
    「マギー、ベス、わかったよ。周りの人間があの二人に慣れたらいいんだな。」
     どこか遠い目をするグレンに姉妹は同時に首を縦に振った。
     その後もリックで充電をするダリルと、それを平然と受け入れるリックの姿は日常として存在し続けた。その度に初めて目撃した誰かが驚き、混乱し、最終的に悟りを開く姿もまた、日常となったのだった。

    END
    ♢だんご♢ Link Message Mute
    2020/01/20 19:11:58

    特に何も始まっていない二人

    #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク

    pixivに投稿した作品と同じもです。
    平和な刑務所時代のダリリク。
    特に何も始まってないけれど仲よしなダリリクの詰め合わせ。

    CPというよりブロマンスなダリリクです。お互いに相手を大事に思ってることが滲み出るダリリクが好きです。
    よかったら、どうぞ。

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    • リック受まとめ #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      ♢だんご♢
    • 飽きたなら、さようなら #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      ニーガンに素っ気なくされるようになったリックが徴収の前日に調達に出かけるお話。


      ニーガンに素っ気なくされるリックを書いてみたかったので挑戦してみましたが、あんまり素っ気ない感じがしないかもしれません。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • リック受けまとめ2 ##TWD ##ニガリク ##ダリリク ##メルリク

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      ほぼニガリクでした。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • スコット受まとめ #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      ♢だんご♢
    • スコット受け他まとめ ##アントマン ##蜘蛛蟻 ##スコット ##ロケット ##トニー

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      CPあり・なしの話がごちゃまぜ。CPありは蜘蛛蟻のみ。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ある寒い日のこと #ウースコ  #アントマン  #腐向け ##ウースコ ##アントマン


      自宅軟禁期間のウースコ。
      寒い日にスコットの自宅を訪ねるジミーのお話。

      寒い日は妄想がはかどるので書いてみました。ウースコというよりもウースコ未満かもしれません。
      いつも「ウーさん」と呼んでいるのでCP表記をウースコにしましたが、ジミスコの方がいいんでしょうか?
      とりあえずウースコでいこうと思います。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤ずきんとおばあさん #蜘蛛蟻  #ピタスコ  #腐向け  ##蜘蛛蟻


      小説投稿機能のお試し。
      ぷらいべったーで投稿したものを少し手直ししました。タイトルのセンスがないのはお許しください。
      ピーターが遊びに来るのを待つ心配性なスコットのお話。
      よかったらどうぞ〜。
      ♢だんご♢
    • 本能が「欲しい」と囁いた #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿した作品です。
      S7のニガリクで、オメガバース設定を使用しています。
      ネタバレになるので詳細は控えさせていただきます。

      好きなように設定を詰め込んでいますが、よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 小さなバースデーパーティー ##TWD ##リック ##カール

      アンディの誕生日にグライムズ親子の誕生日ネタで1つ。
      放浪中の親子の誕生日のお話。短いです。
      ♢だんご♢
    • さよなら、私のアルファ #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  #オリジナルキャラクター  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の続きになります。
      ニーガンが運命の番と出会ったため、サンクチュアリを出ていくことにしたリックのお話。


      オリジナルキャラクターが複数名登場します。出番が多く、ニガリクの子どもも登場するので苦手な方はご注意ください。
      詳細は1ページ目に案内がありますので、そちらをご覧ください。
      ニガモブ要素を少し含みますし、ニーガンがひどい男です。
      よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • ベッドひとつぶんの世界 #TWD #ダリリク #ニーガン #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿したものと同じ作品です。
      S7辺りのダリリク。
      ニーガンの部下になったダリリクと、二人を見つめるニーガンのお話。


      ダリリクが揃ってニーガンの部下になったら、互いだけを支えにして寄り添い合うのかなーと妄想したので書きました。
      寄り添い合うダリリクはとても美しいと思います。
      CPもののような、そうでないような、微妙な話ではありますが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ちょっとそこまで逃避行 #蜘蛛蟻 #ピタスコ #腐向け ##アントマン ##蜘蛛蟻


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンFFH後の蜘蛛蟻。
      FFHのネタバレを含むのでご注意ください。
      辛い状況にあるピーターがスコットの家に逃避行するお話。


      FFHが個人的に辛すぎたので自分を救済するために書きました。
      蜘蛛蟻というより蜘蛛蟻未満?
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 数値は愛を語る #蜘蛛蟻 #腐向け #Dom/SubAU ##蜘蛛蟻

      pixivに投稿したものと同じものです。
      Dom/Subユニバース設定で、Switch×Subの蜘蛛蟻。
      ピーターに惹かれながらも寄せられる想いに向き合うことができないスコットさんのお話。
      特にどの時間軸というのはなく、設定ゆるゆるです。


      突然降ってきたネタに萌えてしまったので勢いで書きました。スコットさんがヘタレです。
      特殊設定なので「大丈夫だよ!」という方は、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(前半) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク

      S7の頃。救世主として日々を過ごす主人公が偶然リックと関わり、それをきっかけにリックやニーガンと深く関わるようになるお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 家族写真 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      大切にしてる家族写真をニーガンに奪われたリックのお話。

      「ニーガンはグライムズ親子の写真を勝手に持って帰りそう」と思ったので書いてみました。
      特に盛り上がりのない私向けの話です。お暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち③ #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックは食料調達のためにシェーンとカールと共に森に入り、その最中に事件が起きる。それはグループの運命を変えるものだった。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      ニガリクタグを付けたら詐欺になりそうなくらいにニガリク要素が少ないです。ニガリクを探せ!という気持ちで読んでください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 僕はコーヒー豆を挽かない #TWD #ダリリク ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S5でアレクサンドリアに到着した後。
      「生きてきた世界が違う」という理由でリックや仲間と距離を置くダリルを心配するリックのお話。


      ほんのりダリリクの味がするお話です。
      アレクサンドリアに着いたばかりのダリリクの何とも言えない距離感も良いですね。
      タイトルについては深く考えずに読んでいたたければありがたいです。
      地味な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • Restart #蜘蛛蟻 #ピタスコ #最新作のネタバレあり ##蜘蛛蟻


      ※スパイダーマンNWHのネタバレを含むのでご注意ください。


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンNWH後。
      パトロール中のピーターがスコットに出会うお話。
      蜘蛛蟻未満だけど後々に蜘蛛蟻が成立するという解釈で書いているので蜘蛛蟻です。


      スパイダーマンNWHは面白い映画でしたね。
      でも個人的にとてもしんどい展開だったので自分を救済するために書きました。蜘蛛蟻は癒やし。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 侵入者との攻防 #ロケスコ #腐向け ##ロケスコ


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      アベンジャーズ・エンドゲームでのロケスコ。
      毎朝ロケットが自分の上で寝ていることに困惑するスコットのお話。


      エンドゲームを観て見事にロケスコにすっ転んだので書いてみました。
      口調が掴みきれてないので違和感があったら申し訳ないです。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 亡霊殺し #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S2終了後のダリリク。
      リックの傍にシェーンの亡霊が見えるダリルのお話。ほんのりシェンリク風味もあります。

      盛り上がりが特にない私得なダリリクです。ダリリク未満かもしれません。
      じんわりとリックへの執着を滲ませるダリルが好きなので書いてみました。
      本当に暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 雛の巣作り #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の番外編。
      ニガリクが番になって1年が経った頃のお話。
      よかったら、どうぞ〜。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 罪な味 #TWD #リック #シェーン #カール #ダリル #ニーガン ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      リックと誰かの食にまつわるお話。
      時期も長さもバラバラ。基本的にほのぼのですが、ニーガンとの話はほのぼのしてません。


      ・【ピザ】 リック&シェーン
       アポカリプス前。「ピザの魅力には抗えません」というお話。

      ・【ケーキ】 リック&カール
       アポカリプス前。「いつもと違う食べ方をすると楽しくて美味しい」というお話。

      ・【肉】 リック&ダリル
       平和な刑務所時代。「調味料は偉大だ」というお話。

      ・【フルーツティー】 リック&ニーガン
       S7辺り。「悔しいけれど美味しいものは美味しい」というお話。


      リックに美味しいものを食べてほしいと思ったので書いてみました。ニーガン以外はほのぼのしてます。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち① #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックの家族を捜す旅に出たリックとニーガンだったが、過酷な世界での旅は簡単なものではなく……。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      長編なのでのんびり書いています。次の章を投稿できるのがいつになるのか不明です。
      完全に私得な話なのでお暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(後編) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク


      S7の頃。前作の続きで、ケガの治療のためにサンクチュアリに滞在するリックを世話する主人公がリックとニーガンの関係性を目の当たりにするお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      前編よりも主人公がリックに肩入れしています。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 恋しい、と獣は鳴いた #TWD #ダリリク #ニガリク #腐向け #オメガバース ##TWD ##ダリリク ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのダリリク・ニガリク。
      リックと番になっているダリルがリックと引き離されて情緒不安定な時にニーガンと話すお話。ダリルとニーガンのちょっとしたバトル。


      「αが番のΩに依存する」という設定で書きたくて書いてみました。会話してるだけなので特に盛り上がりのない地味な仕上がりです。
      気が向いた時にでもどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 彼らが愛したのは「   」です #TWD #セディリク #ゲイリク #ニガリク #妊夫 #腐向け ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S8終了後。
      ニーガンの子どもを妊娠したために孤立するリックを支えるセディク、ゲイブリエル、ニーガンのお話。セディクがメインです。

      ※注意
      ・男性の妊娠、出産、授乳の表現あり
      ・リックへの差別、迫害要素あり
      ・全体的に重苦しい展開


      CP要素があるような無いような微妙なところです。
      重苦しい雰囲気の話なのでご注意ください。
      本当に気が向いた時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 生まれ落ちた日 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S1初回。
      ニーガンが病院でリックを見つけるお話。
      S1初回にニーガンを放り込んだだけ。ニーガンの過去について原作の設定を使っているので未読の方はご注意ください。


      S1の時点でニガリクが出会っていたら最強コンビになったのでは?という妄想を形にしてみました。別人感が強いです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤い糸の憂鬱 #TWD #カルリク #ニガリク #腐向け ##TWD ##カルリク ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7のカルリク・ニガリク。
      リックとニーガンが赤い糸で繋がっているのが許せないカールのお話。
      特殊な設定がありますが、深く考えない方がいいかも?


      カルリクとニガリクで三角関係が読みたくて書きました。カールの前に立ち塞がるニーガン美味しいです。
      「カールは赤い糸が見える」という特殊設定がありますが、深く考えず雰囲気を味わって頂ければと思います。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 「大丈夫」の言葉 #TWD #ダリリク #腐向け #ケーキバース ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      リックが「ケーキ」であることを知ったダリルが思い悩むお話。
      ケーキバース設定を使っています。この話にグロテスクな要素はありませんが、ケーキバース設定自体がカニバリズム要素を含むので苦手な方はご注意ください。


      リックのことが好きすぎて思い詰めるダリルが大好物なので書いてみました。
      盛り上がりの少ない私得な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 夢の残骸 #TWD #ニーガン #ゲイブリエル ##TWD

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S9ep5後で、リックが死んですぐの頃。
      リックの死を悲しむニーガンのお話。ゲイブリエルがそこそこに出番があります。リック、カール、ジュディスの出番は少々。


      リックが死んだと知らされたらニーガンは悲しむんじゃないかと思って書いてみました。
      もしかしたらドラマの中で触れている内容かもしれませんが、「こういう妄想をしました」という報告書みたいなものだと思ってください。
      特に盛り上がりのない話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
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