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    道なき未知を拓く者たち③ どうして、なぜ、こんなことになってしまったのだろう?

     意識を失った息子を胸に抱いて必死に走るリックの頭の中には「なぜ?」という言葉しか浮かばない。
     最愛の息子──カールの体にできた傷口から真っ赤な血が流れ出ていく。それにつれて我が子の顔が青白くなっていくことが恐ろしい。
     カールは先程まで元気に歩いていたのだ。陰りのない笑顔を見せて、あんなにも楽しそうに過ごしていたのに。
     リックの目の前で輝いていたカールの命の炎は今、消える寸前にまで追い込まれている。
    「農場はまだなのか⁉いつまで走りゃいいんだ!」
     後方からシェーンの怒鳴り声が響いた。それは出会ったばかりの男に向けられたものだ。
     己の肉の重さのせいで走ることがひどく辛そうな男は息を切らしながらも足を止めようとはしない。彼は息も絶え絶えに「もうすぐだ」とシェーンに答えてからリックに向かって次のように叫ぶ。
    「このまま、真っ直ぐ!先に行ってくれ!」
     それを聞き、リックは足を速めた。
     カールを早く医者に診せなければならない。治療を受けるのが遅れたら死んでしまう。
    「カール、頑張れ!もう少しだ!」
     リックはぐったりして返事をしない息子を励ましながら走り続ける。
     懸命に走りながらも頭の中にはカールがこのような状態になるまでの出来事が甦り、大き過ぎる後悔がリックを押し潰そうとしていた。


    ******


     リックがグループのリーダーに就任した翌日、グループは未だに車の大群に進路を塞がれた道路に留まっていた。ウォーカーの群れをやり過ごすために費やした時間は非常に長く、ソフィアの一件から生じた騒動が落ち着く頃には野営の準備を始める時間になっていた。それにより道を空ける作業を中断することになり、今日に持ち越された作業はランチタイムを大幅に過ぎた頃にようやく完了したのだ。
     朝から車を動かし続けた男たちは疲れ切っている。このまま車で移動するのは体力的にきつい。それだけでなく今から出発しても二時間ほどで野営の準備をすることになる。それならば今日の移動は諦めて出発は明日にした方が良いだろう。
     リックが明日の出発を提案すると反対する者は一人もいなかった。何人かが安堵の表情を浮かべたことから皆も明日の出発を望んでいたことが窺える。
     リックは仲間たちが休憩する姿を見遣り、車のトランクからリュックサックを取り出した。そして愛用の拳銃に銃弾がきちんと収められていることを確かめるとローリの元へ向かう。
     キャンピングカーの出入り口に座るローリは夫の姿を見て微かに眉根を寄せた。
    「リック、どこへ行くつもりなの?」
    「森に入って食料を調達してくる。少しでも食料が手に入ればみんなの心配が減るだろう?」
     その言葉にローリは不安そうな顔をする。不安を訴えるように腕を掴んできたローリにリックは「すぐに戻るよ」と微笑んだ。
    「何時間も森にいるつもりはない。心配しないでくれ。」
    「時間の長さは問題じゃない。あなただって疲れてるんだから行かないで。疲れのせいで動きが鈍ったらどうするの?」
    「ローリ、無理はしないと約束するから。みんなのためなんだ。」
    「だめ。一人でなんて行かせられない。」
     リックの腕を掴むローリの手の力は強くなっている。何が何でも行かせたくないのだ。
     リックが困り果てていると「俺も行く」とシェーンが名乗りを上げた。いつの間にか近くに来ていたシェーンはローリを見下ろしながら同じ言葉を繰り返す。
    「俺も行く。リック一人じゃなかったら問題ないだろ?それでいいな、ローリ。」
     ローリは顔を強張らせたままシェーンを見つめていたが、やがて小さく頷いた。
    「……気をつけて。」
     その場に小さな声が落ちると同時にリックの腕からローリの手が離れていった。リックはローリの額に口付けて「すぐに戻る」と告げてからその場を離れようとした。ところが今度はカールに腕を掴まれる。
    「カール?どうしたんだ?」
     リックが問いかけるとカールは真っ直ぐな眼差しを向けてきた。
    「僕も行く。父さんの手伝いをさせて。」
     思いがけない申し出にリックは驚いたが、すぐに首を横に振る。
    「だめだ。森の中にはウォーカーがいる可能性がある。そんなところにお前を連れていけない。母さんと待っていてくれ。」
     そのように諭してもカールは頭を振って「嫌だ、行く」と申し出を取り下げようとしない。
     我が子のとんでもない申し出にローリの表情は険しくなり、勢い良く立ち上がると怒気をまとってカールに迫る。
    「カール、いい加減にしなさい。自分のことも守れないのに行ってどうするの?あなたは私と一緒に残って。」
    「勝手に歩き回ったりしない。森の中では父さんの言うことを聞く。だから一緒に行かせて。僕だって父さんの役に立てるよ。」
     カールは両親を交互に見つめながら必死に訴えた。純粋さと熱心さを併せ持つ眼差しにリックは思わず呻いた。
     カールは以前から保安官として活躍する父を誇りに思っており、強い憧れを抱いている。そのため父の役に立とうとする気持ちが強いのだと知っていたが、再会を果たしてからはその気持ちが更に強くなっていたようだ。これでは簡単に諦めたりしないだろう。
     どうしたものか、と頭を悩ませているとシェーンがカールの肩に手を置いた。
    「カール、リックと俺の言うことを絶対に守るか?それを約束するなら連れていってやる。」
     シェーンの言葉にカールが目を輝かせ、ローリの表情の険しさが増した。
    「シェーン、勝手なことを言わないで。これは親子の問題よ。」
     表情にも声にも怒りを滲ませるローリからシェーンは視線を逸らすことなく冷静に言葉を返す。
    「俺たちの傍を離れなきゃ問題ない。このまま無理に置いていっても勝手に後を付いてくるぞ。その方が危険だ。」
     シェーンの指摘を的外れだとは言えない。今のカールの勢いでは一人で父を追いかけてくるだろう。合流する前にウォーカーに遭遇すれば命の保証はない。
     リックはしゃがんでカールに目線を合わせると落ち着いた口調で問いかける。
    「俺とシェーンの傍を離れないこと。俺とシェーンの指示に従うこと。この二つを守ると約束できるか?」
    「うん、約束する。」
    「……わかった。一緒に行こう。」
     リックはカールがしっかりと頷いたのを見てからローリを見上げる。彼女は己の中に渦巻く感情を堪えるように自身を抱きしめている。
    「ローリ、俺がこの子を守る。だから──」
    「わかった。それ以上言わなくて大丈夫。」
     ローリはぎこちなく笑みを作るとカールの頬を撫でて「約束を守ってね」と言い聞かせた。それに対してカールが笑顔で頷くと、ローリは足早にキャンピングカーの中に入っていった。心の乱れを落ち着かせようとしているのだろう。
     リックがキャンピングカーの出入り口を眺めていると、シェーンが「準備してくる」と言って離れていった。それを合図にリックは立ち上がってカールの頭に手を置く。
    「母さんはお前を心配しているから怒ったんだ。そのことを忘れるな。」
    「……うん。」
     リックは神妙な様子で頷いた息子の頭を優しく撫でてやる。
     これから先、カールが自分の考えや思いを主張をすることが増えてくるだろう。それは体だけでなく心も成長している証だ。手を焼くこともあるだろうが喜ばしいことに変わりはない。リックはこれからのカールの成長を思って頬を緩ませた。


     リックはシェーンとカールを連れて森に入った。留守の間のことはニーガンに頼んできたので問題はないだろう。
     リックは自分の前を歩くカールとの距離を一定に保つよう心がけながら周囲に視線を巡らせる。
    「ベリーでも生えていると嬉しいんだけどな。」
     リックが漏らした一言にシェーンが反応する。
    「そんなに都合良くいかないだろ。動物が通りかかることを祈っとけ。……嫌になるくらいに何もかも運頼みだな。」
    「確かにそうだな。ところでシェーン、さっきは助かった。ありがとう。」
     出発前の出来事について感謝するとシェーンの表情が少し険しくなった。こちらを睨むシェーンは怒っているようだ。
    「一応はお前の味方をしてやったが、ローリが不安がるのは当たり前だぞ。もっとローリとカールを優先しろ。お前が守るべきなのは家族じゃないのか?」
    「ローリとカールを後回しにしたつもりはない。グループを守ることは二人を守ることにも繋がる。」
     リックの反論をシェーンは鼻で笑った。
    「そうか?俺なら二人の傍を離れない。いつも傍にいて守ってやる。」
     怒りを滲ませながらも小バカにしたように笑うシェーンにリックは強い不快感を抱き、彼の言葉に怒りを感じた。「お前ではローリとカールを守れない」と言われているように感じられたのだ。
     怒りを必死に堪えるリックに向かってシェーンは言葉を続ける。
    「とにかく、一人で行動するのは控えろ。それだけで彼女は不安になるんだ。……お前の騎士様なら喜んで付いてきてくれるんじゃないか?」
     「騎士様」という単語にリックは首を傾げた。
    「騎士様?誰のことだ?」
    「ニーガンしかいないだろ。あいつはお前にベッタリだから頼めばどこにでも付いてくるさ。」
     リックはシェーンの言葉の端々から敵意に近いものを感じた。それは恐らくニーガンに向けられたものだろう。
     リックは「何が気に入らないんだ?」と溜め息を吐く。
    「俺がニーガンを頼りにするのが気に入らないのか?信用し過ぎだって?シェーン、彼を受け入れてくれたんじゃなかったのか?」
     ニーガンを警戒していたシェーンは「信用するように努力する」と宣言した上、その後の旅の中でも二人が協力し合う姿は何度も見られた。それなのに未だに信用できないのだろうか?
     リックはシェーンの顔を見つめながら答えを待ったが、シェーンは顔を逸らしてしまった。
    「……言ったってお前にはわからない。」
     シェーンが小さく漏らした一言にリックは眉を寄せる。彼が何を言いたいのかわからなかった。
     意味を問おうとしたリックを無視するようにシェーンはカールを追い越して先に行ってしまった。その後ろ姿に溜め息を吐くと隣に小さな影が並ぶ。隣を見下ろせばカールが気遣うような眼差しを寄越した。
    「ケンカ?」
     幼い息子からのストレートな質問にリックは思わず苦笑する。
    「そんなものかな。心配させて悪かった。」
    「僕は大丈夫だよ。でも、父さんとシェーンのケンカは初めて見た。」
    「そうだな。お前の前であいつとケンカしたことはなかったな。」
     リックはカールの柔らかな髪を梳きながらシェーンとの口論について振り返る。
     これまでにシェーンと口論したことがないわけではない。考え方の違いから意見が対立したことは何度もある。
     しかし、いつも必ず何かしらの答えを出した。今回のように中途半端な状態で話を打ち切られたことは一度もなかった。そのことがリックを戸惑わせる。
     リックは距離の開いたシェーンの背中を見つめながら、物理的な距離だけでなく心の距離まで開いてしまったような寂しさに胸を締め付けられた。
     それから三十分ほど森の中を歩き続けていたが、目ぼしいものは見つからない。何か手に入れるまで探索を続けたいが、戻りが遅いとローリが不安になるのでもう少し探索したら戻るべきだろう。
     リックがそのように考えていた時、三人の前に一頭の鹿が現れた。立派な角を持つ雄の鹿はこちらを見て逃げ出すこともなく、その場に留まってこちらを見つめている。
     リックも鹿を見つめていると隣にいるカールが「鹿だ!」と小声で呟く。その声には感動の響きがあった。
     カールが慎重な足取りで鹿に近づいていく姿を見て、リックは鹿に銃を向けるシェーンの腕に触れて首を横に振った。「鹿を撃たないでくれ」というリックの願いは正確に伝わり、シェーンは穏やかな表情で頷いてからカールに目を向けた。
     カールはある程度の距離まで鹿に近づくと立ち止まり、声をかけることも触れることもせずに鹿を見つめている。死と恐怖に覆われた世界で力強く生きる命に魅せられ、辛いことの方が多い状況の中で彼は心から感動しているのだ。その事実はカールの心を明るく照らすだろう。これから先、何が起きたとしても「命の美しさに感動した」という経験は誰にも奪えない。
     リックはカールを見守りながら笑みを浮かべた。鹿を熱心に見つめる我が子の姿がとても愛おしかった。隣にチラリと視線を向ければ、シェーンも優しい表情でカールを見守っている。久しぶりに見る親友の穏やかな顔もリックを嬉しくさせた。
     穏やかな時間がゆっくりと流れていく。永遠に続いてほしいと願いたくなるほどの幸福な時間。それが一発の銃声に砕かれることになるだなんて誰が予想できただろうか?
     銃声が響いたと同時にカールの腹部から血飛沫が上がり、幼い体が吹き飛ばされるようにして後ろへ倒れ込んだ。
    (何が、起きているんだ?)
     リックの脳は一瞬、目の前で起きた出来事の理解を拒否した。カールの体から血が流れ出ているなんて信じたくない。それでも現実を受け入れたリックは倒れているカールに駆け寄った。
    「カール!カール、しっかりしろ!カール!」
     リックは悲鳴のような声で我が子の名前を呼びながら己の手で傷口を押さえて止血を試みた。溢れ出る血の生温かさがリックから冷静さを奪おうとする。
    「リック、しっかり押さえてろ!離すなよ!」
     シェーンの必死な声にリックは頷き返すことしかできない。
     その時「なんてことだ!」と狼狽する男の声が聞こえてきて、横に幅のある男が猟銃を肩に掛けながら走り寄ってきた。その様子から男がカールを撃った相手なのだとわかる。カールの状態を見て青ざめる男にシェーンが怒りを顕に掴みかかった。
    「おい、お前が撃ったのか!クソ野郎!」
     胸倉を掴まれた男は苦しそうに呻く。
    「す、すまない!鹿の向こう側に男の子が立っているなんて気づかなかったんだ!」
    「どうしてくれるんだ!?このままじゃ死んじまう!」
     男はシェーンに怯えた様子を見せながらも「医者を知ってる」と話す。
    「俺が世話になってる農場にハーシェルという人がいる。彼ならその子を治療してくれる。信じてくれ。」
     リックは必死に訴える男の声に耳を傾けながらカールの顔を改めて見下ろす。
     カールの顔色はどんどん悪くなっていく。出血が止まらないのだから当然だ。このままでは出血多量で死んでしまう。
     リックはカールを横抱きにして立ち上がり、男に近づいた。
    「息子を助けたい。農場へ案内してくれ。」
     リックが男を見つめながら告げると男はしっかりと頷き、それを見てシェーンは彼から手を離した。
    「俺はリックだ。この子はカールで、彼はシェーンと言う。あんたの名前は?」
    「オーティスだ。こんなことになって本当にすまない。急ごう、付いてきてくれ。」
     そう言うとオーティスと名乗った男は走り出す。リックはシェーンと頷き合ってからオーティスの後を追った。


    ******


     オーティスに導かれて辿り着いた農場は森に囲まれた広い農場だった。牧草地が広がる中に畑や果樹があり、動物や鶏の鳴き声が聞こえてくる。まるで外界から遮断されたようにのどかな場所だが、今のリックにはその光景を楽しむ余裕はない。
     広い農場に建つ一軒家に向かって走っていくと家の外にいた若い女がこちらの存在に気づき、家の中に向かって「父さん!」と叫ぶ声が聞こえた。その後に家から数人が出てきた。その先頭に立つのは初老の男だった。突然の来訪者に驚いた様子の男はリックの腕に抱かれたカールを見て厳しい顔つきに変わる。
    「噛まれたのか?」
     男からの問いかけにリックは息を切らしながらも必死に声を絞り出す。
    「オーティス、という男に撃たれたっ。あなたがハーシェルか?オーティスに言われて、ここへ来たんだっ。頼む、息子を……息子を助けてくれ!」
     リックの懇願にハーシェルは頷いて「中に入ってくれ」と言って歩き出した。家に入るとハーシェルは次々と指示を出す。
    「パトリシア、道具を用意してくれ。マギーは鎮痛剤と凝固剤を頼む。」
     指示を受けた彼女たちはテキパキと頼まれたものを用意していく。リックもハーシェルの指示を受けてカールをゲストルームに運んでベッドに寝かせ、枕を用意したり傷口を手で押さえて止血した。
     ハーシェルは聴診器を使ってカールの状態を確かめるとリックの方に顔を向けた。
    「君の名前は?」
    「リック……リック・グライムズだ。」
    「リック、我々は最善を尽くしたい。だから場所を空けるために部屋から出てくれ。」
     付け加えるように「今すぐ」と言われてリックは震える足で部屋を出た。外から「急げ!」と怒鳴るシェーンの声が聞こえたため導かれるように家から出ればシェーンとオーティスが息を切らしながら立っていた。
     オーティスに「彼は大丈夫か?」と尋ねられたものの、リックは言葉に詰まって何も言えない。思わず額の汗を拭うと粘着性のある液体が額に付着した。カールの血だ。
    「リック、血が付いてる。」
     気遣わしげな眼差しのシェーンがハンカチを取り出して顔を拭ってくれた。その手付きと「大丈夫だ」と言う声の優しさに少しだけホッとする。
     シェーンはリックの顔を拭き終わるとカールの状態について尋ねてきたが、リックは何も答えられずにフラフラと家の中に戻った。
    (カール……俺の大切な子……カール……!)
     カールを運び込んだ部屋に再び入るとハーシェルがカールの傷口を手で押さえて止血していた。
     ハーシェルはリックとシェーン、そしてオーティスが来たことに気づいて顔を上げる。
    「リック、この子の血液型は?」
    「俺と同じA型だ。」
    「それはよかった。輸血が必要になる。ところで、一体何が起きたんだ?状況を説明してくれ。」
     説明を引き受けたのはオーティスで、彼は「鹿狩りをしていたんだが……」と話し始めた。
    「鹿の反対側に男の子が立っていたことに気づかずに鹿を撃って、その弾が鹿を貫通して彼に当たった。本当に気づかなかったんだ。」
     最後の方は涙声になったオーティスにパトリシアが寄り添い、「事故だったのはわかってるわ」と彼を慰めた。
     オーティスの報告にハーシェルは頷き、カールに視線を戻すと止血する手を離して傷口を再度確かめる。その表情の厳しさが増していくことにリックの不安は大きくなった。
     やがてハーシェルは厳しい表情のままリックを真っ直ぐに見る。
    「鹿の体を貫通して弾の速度が落ちたおかげで命拾いしたが、銃弾が体内に残ってしまっている。しかも砕けているから厄介だ。六個の破片を取り除かなければ、この子は助からない。」


     これは何かの罰だろうか?
     そのように思いたくなるほどカールの身に降りかかった困難がリックを苦しめる。
     銃弾の破片を取り除く作業は難航した。器具が十分にない状態で体内に飛び散った破片を取り除くのは難しく、麻酔なしで行われたために激痛がカールを襲った。痛みに泣き叫びながら父を呼ぶ我が子にリックがしてやれるのは輸血用の血液を提供することだけ。歯がゆさと無力感に全身を蝕まれる。
     治療がある程度まで進むとカールは大人しく眠り、それにより少し落ち着きを取り戻したリックはローリがカールの状態を知らないことが気にかかるようになった。
    「ローリに……妻に知らせないと。彼女はカールが撃たれたことを知らない。」
     独り言のように呟いたリックにハーシェルはカールの血圧を測りながら視線を寄越した。
    「リック、君はここに居てくれ。血液が必要だ。」
    「だが、ローリに知らせなきゃならない。ローリに……」
     輸血のために血液を抜いたせいで目眩がする。それにより正常な判断ができなくなっていることにリックは気が付かない。
     フラフラと歩きながらカールがいる部屋を出るリックをシェーンが追いかけてきた。
    「リック、少し落ち着け。とりあえず座ろう。」
     宥めるようなシェーンの声を聞きながらリックは近くの椅子に腰を下ろす。足に力が入らず、崩れ落ちるように座る姿をハーシェルの娘のマギーが心配そうに見ていた。
     マギーの近くに座っていたオーティスからカールの容態を尋ねられたが、リックは返事をすることができなかった。今のカールの状況を言葉にしようとするだけで辛い。それを察したシェーンが代わりに「今は落ち着いてる」と答えた。
     そしてシェーンはリックの前に跪いて「よく聞け、兄弟」と話し始める。
    「輸血が必要ないとしてもお前はここに留まるべきだ。カールがお前を、父親を必要としてるんだぞ。」
    「だが、ローリに知らせたいんだ。」
    「ローリに知らせなきゃいけないと思う気持ちはわかる。でもな、リック。……もしカールが死んでしまった時にお前が傍にいなかったら、お前は死ぬまで自分を許せないし、ローリはお前を恨むぞ。」
     真剣な眼差しのシェーンの言葉の一つひとつがリックの頭に染み込んでいく。
     もしカールの命が失われる瞬間に彼の傍に家族が誰もいなかったら、それは一人ぼっちで死なせることと同義だ。まだ幼い息子にそんなことをさせてしまったならばリックは自分自身を殴り殺したくなるほどに許せない。そして、ローリも絶対にリックを許さないだろう。
     リックは涙を零しながらシェーンの言葉に何度も頷く。
    「リック、ローリは昏睡状態のお前の回復を信じてた。俺でさえお前は助からないと諦めかけてたが、ローリは違った。彼女は本当に強い。だから今度はお前が強くなれ。カールは助かるんだと信じろ。」
     そう言って微笑むシェーンにリックは微笑み返す。
    「そうだな、シェーンの言うことが正しい。」
     涙声で返せばおどけたような笑みが返ってきた。
    「そうさ、俺はいつも正しい。……なあ、リック。」
     名前を呼ばれると同時にシェーンに顔を引き寄せられ、額同士が触れ合わされた。目を閉じてシェーンの体温を感じるだけで心が落ち着いてくる。
    「今は大変な時だ。だから他のことは全て俺に任せろ。大丈夫だから。な?」
     優しく心強い親友の言葉にリックの目から新たな涙が流れ落ちた。
     励ましてくれる声の優しさが、辛い気持ちに寄り添ってくれる気持ちが、包み込むように温かな眼差しが嬉しかった。
     最近、シェーンとの間に感じていた距離が一気に消え去ったような気がした。以前と変わらない友情を感じられたことが大きな喜びと安堵をもたらした。
     リックは笑みを浮かべながら親友に感謝の言葉を捧げる。
    「ありがとう、シェーン。」
     リックの感謝にシェーンが小さく頷いた時、ドアが開いて部屋からハーシェルが出てきた。それと同時にシェーンはリックから離れて立ち上がる。
     リックは離れてしまった温もりに僅かな寂しさを抱きながらもハーシェルを見上げた。
    「ハーシェル、カールに何かあったのか?」
     治療のために部屋から一歩も出てくることのなかったハーシェルがカールの傍を離れたことに不安が過ぎる。
     リックの問いにハーシェルは首を横に振ったが、その表情は渋い。
    「今は落ち着いてるが、内出血のせいで腹部が膨らんで血圧が下がっている。奥に入り込んだ銃弾の破片が血管を傷つけているんだ。それを取り除くには手術が必要だが、カールを大人しくさせないと。暴れたら動脈が傷ついて死んでしまう。だから意識を失わせないとならない。」
    「全身麻酔はできないのか?」
    「可能だが、自発呼吸ができなくなって死ぬ可能性が高い。」
     厳し過ぎる現実を前にしたリックは視線を辺りへ彷徨わせる。
     動揺しているせいで上手く考えがまとまらない。それでも必死に考えなければたった一人の我が子が死んでしまう。
     リックは唇を震わせながらも「何が必要なんだ?」と尋ねた。それに対してハーシェルは思案するように宙を見つめる。
    「人工呼吸器。それから手術道具やチューブ、縫合用の布と糸も足りない。それに凝固剤と抗生物質も追加したいところだ。必要なものが揃えば最善を尽くせる。誰かに調達してきてもらいたい。」
     それを聞いてオーティスが立ち上がった。
    「近くの病院は焼けて全滅だが、高校に行けば物資がある。緊急避難所になってたんだ。ウォーカーが多くて近づけなかったが、今なら大丈夫だろう。」
     その時、黙って話を聞いていたシェーンが「俺が行く」と申し出た。シェーンはリックとハーシェルを見ながら告げる。
    「リックは輸血っていう大事な仕事があるが、俺は座って待ってるだけだ。それなら俺が行くのが一番いい。地図とリストをくれ。」
     それを聞いてリックは黙っていられない。すぐに「俺も行く」と言うとシェーンが顔をしかめた。
    「俺の話を聞いてたのか?リック、お前は残らなきゃだめだ。」
    「お前に危険なことを任せて自分は安全な場所にいるなんてできない。一緒に行く。」
    「だめだ、お前は来るな。」
     シェーンは厳しい表情でリックの申し出を跳ね除ける。
    「輸血のための血液を提供できるのはリックだけなんだぞ。それに、貧血でフラフラしてる奴とは一緒に行動できない。これ以上わがままを言うなら両脚を折ってでも置いていく。」
     睨むようにこちらを見るシェーンの目を見て、彼が本気なのだとわかる。リックはそれ以上の反論は諦めた。
     しかし、シェーンが頼りになる人間だからといって一人で行かせるのは不安が残る。リックがそのように考えているとオーティスが手を挙げた。
    「俺が一緒に行こう。救命士の経験があるから物資の見分けがつく。素人には難しいだろ?」
     それを受けてシェーンは苦笑いと共に頷いた。
    「ああ、その通り。来てくれると助かる。」
    「じゃあ、すぐに準備しよう。」
     シェーンとオーティスは話をまとめて頷き合う。それを見てハーシェルがリックを見た。
    「必要な物資はオーティスとシェーンが取りに行き、君は家に残る。これで進めよう。出血が続く限り輸血は不可欠だ。君がいなければカールは血液が足りないせいで死んでしまう。」
     ハーシェルの拒否を許さない眼差しにリックは首を縦に振る。
     出血は止まっていない。この場にいる人間でカールと血液型が同じなのはリックだけなのだから、リックがいなくなればカールは輸血ができずに死んでしまう。これしか道はないのだ。
     そのように考え方を切り替えてからリックはシェーンとオーティスの方に顔を向けた。
    「二人とも、危険なことを頼んですまない。……カールのために、頼む。」
     リックの心からの言葉に二人は揃って頷き、出かける準備をするために動き出した。
     調達の準備は慌ただしく進み、出発しようとする二人を全員で見送る。オーティスの妻であるパトリシアは涙ながらに無事を祈る言葉をオーティスに贈り、ハーシェルとその家族たちも抱擁と共に「絶対に帰ってきて」と願いを伝えた。リックはその様子を眺めてからシェーンと向かい合う。
    「一緒に行けなくてすまない。暗くなってくるから気をつけろ。」
    「任せておけって。お前こそ貧血なんだから無理するな。大人しく座ってろ。」
    「ああ、そうするよ。」
    「それでいい。絶対に物資を持ち帰るから俺たちを信じて待ってろよ、リック。」
     シェーンの力強い宣言に対してリックも頷き返す。
    「ああ、二人が帰ってくるのを待ってる。」
     シェーンは頼もしげな笑みを見せると「行ってくる」と言って車の方に歩いていった。
     シェーンとの挨拶が済んだので次はオーティスの元へ向かう。車に乗り込もうとしたオーティスはリックが近づいてくることに気づいて足を止めた。
    「オーティス、これを持っていってくれ。」
     リックは愛用の拳銃を差し出す。それにオーティスは目を瞠ったが、慎重な手つきで拳銃を受け取った。
    「ありがとう。大切に使うよ。」
    「これはあんたの手で返してくれ。……必ず無事に帰ってきてほしい。大切な人のためにも。」
     無事の帰還を願う言葉にオーティスが小さく微笑む。
    「あの子が元気になったら、あんたの身の上話を聞かせてくれ。」
    「ああ、そうしよう。」
     リックが頷くとオーティスは車に乗り込んだ。
     シェーンとオーティスが乗った車はゆっくりと走り出し、徐々にスピードを速めていく。勢いに乗った車はすぐに見えなくなった。
     車が見えなくなった時、リックはマギーに声をかけられる。
    「リック、あなたの奥さんを私がここに連れてくる。彼女はどこにいるの?」
    「この近くの大きな道路だ。たくさんの車が停まっているから足止めを食らっていたんだ。そこで俺たちの帰りを仲間と一緒に待ってる。」
     リックの返事にマギーは頷き、ハーシェルの方に振り返った。
    「父さん、リックの奥さんと仲間を呼んでくるから馬を借りていい?」
     それに対してハーシェルは「気をつけて行ってきなさい」と許可を出した。それを受けてマギーは馬小屋に向かって歩き出す。
     リックはマギーの後ろ姿を見送りながら、手を差し伸べてくれる人々に対する感謝を深くした。
     皆がこんなにも力を貸してくれているのだ。だから自分にできる最大限のことをした上でカールの回復を信じる。「それが自分に課せられた使命だ」とリックは自身を奮い立たせた。
     ──リックたちの戻りが遅い。
     ニーガンは翌日の出発に備えて荷物を車に積み込みながら、森の方に顔を向けて何度目かの溜め息を落とす。
     リックがシェーンとカールを連れて食料調達に出かけてから二時間ほどは経過しているだろう。時計がないため正確な時刻はわからないが、太陽の位置が下がってきているので夕方が近づいていると判断できる。それなのに三人が戻ってこないことが気がかりだった。
     ニーガンは視線を森から仲間たちに移すと、作業の手を止めて森をジッと見つめるローリの姿が目に留まった。その顔に滲む不安の色は見たことがないほどに濃い。
     ニーガンは荷物を車に押し込んでからローリに近づいた。
    「ローリ、手を動かした方が気が紛れるぞ。心配し過ぎるとぶっ倒れちまう。」
     普段通りの笑みを作って話しかけるとローリがこちらを見る。その顔に微かに笑みが戻った。
    「ありがとう。そう考えるようにしてるんだけど、つい森の方が気になって。……あの日のことが頭を過ぎるせいなのかも。」
    「あの日?」
     そう尋ねるとローリは「リックが撃たれた日」と答えて再び視線を森の方へ戻した。
    「朝からケンカして、和解できないままリックは仕事に出かけて……次に会ったのは病院。彼は管に繋がれたままベッドの上にいた。あの時のことが頭から離れないせいで余計に心配になるの。彼に何かあったんじゃないかって。」
     今のニーガンにはローリの不安を「考え過ぎだ」と笑い飛ばしてやることができない。リックたちが出かけて三十分ほど経った頃に森の方向から銃声が聞こえたのだ。辛うじて聞こえた程度なので聞き間違いだと思いたいのだが、銃声を耳にしてから胸騒ぎがする。そのためにニーガンはローリの不安を消してやれなかった。
     ニーガンが慰めの言葉を言えずにローリの肩を軽く叩いた時、こちらに向かってくる音が聞こえることに気づいた。それは森の方からではなくグループの進行方向とは反対側から聞こえてくる。耳を澄ましてみれば馬の蹄の音だとわかる。
     ニーガンは思わずローリと顔を見合わせた。
    「この音って馬が走る音よね?」
    「やっぱりそう思うか?アスファルトの道路を馬が走るなんて世紀末って感じだよな。クールだ。」
     ニーガンは冗談を言いながらも近くに置いたルシールを手に取って近づいてくる足音に向かい合う。
     敵意や悪意のある人間か?相手の人数は?今の状況で戦力として当てになるのは誰か?
     それらのことを瞬時に頭の中で考えながらルシールを持つ手に力を込めた。
     やがて姿を現したのは馬に乗った若い女だった。右手でベースボールバットを握る姿は勇ましい。彼女は馬から降りずにローリを見て口を開く。
    「あなたがローリ?ローリ・グライムズ?」
     ニーガンは自分の斜め後ろにいるローリを振り返った。彼女はニーガンを見つめながら首を横に振る。知り合いではないということだ。
     ローリは見知らぬ相手が自分の名前を知っていることへの驚きと警戒心を顔に浮かべたままニーガンより前に出て女と向かい合う。
    「ええ、私がローリ。なぜ私の名前を知ってるの?」
    「すぐに私と一緒に来て。リックが待ってる。」
     女の言葉にニーガンは眉根を寄せる。リックたちにアクシデントが起きたことが今の言葉で確定したからだ。
     ローリは顔を引きつらせながらも質問を重ねる。
    「彼に何があったの?無事なの?」
    「カールが撃たれた。いいから早く一緒に来て。説明は走りながらする。」
     カールが撃たれたという知らせにローリの肩がビクンッと跳ねた。それとほぼ同時に後方から「カールが撃たれた!?」という悲鳴が上がったのでニーガンは後ろを振り向く。いつの間にか仲間たちが集まってきており、それぞれの顔に驚きや悲痛を浮かべている。
     ニーガンが再び顔を正面に戻すとローリが女に近づいていくところだった。
     カールの状態を知らせてくれたとはいえ初めて顔を合わせた相手だ。簡単に信用できるほど今の世界は甘くはない。
     ニーガンは「ローリ、待て」と呼び止めて、こちらに振り向いた彼女に問う。
    「今は初めて出会った人間を信用するのが難しい世界だぞ。それでも行くんだな?」
     ローリはニーガンと目を合わせて深く頷いた。覚悟を決めた目を見て、ニーガンはそれ以上引き止めるのをやめて馬上の相手を見る。
    「俺たちも準備を終えたら後を追う。どこに行けばいい?」
     その質問に女はローリを馬に引き上げてから答える。
    「道を引き返して少し走ると農場があるから、そこへ来て。郵便ポストにグリーン農場って書いてあるところよ。」
     女はニーガンの質問に答えるとローリを連れて走り去っていった。遠ざかっていく馬を見送りながらニーガンは短く息を吐く。
     初対面の相手を簡単に信用するわけにはいかないが、物資を奪うことが目的であれば回りくどいやり方はしないだろう。武力で押さえつける方が簡単なので、カールが撃たれたという話は事実だと判断して良さそうだ。
     そうであれば息子が撃たれたことにリックはひどく動揺しているだろう。重傷である可能性は高く、命が危うい状態だとも考えられる。息子のことで手一杯なリックにリーダーとしてグループ全体に指示を出す余裕はないはず。しばらくの間、リックの代わりにリーダー役を担う者が必要だ。
    (リックを支えるのは俺だ。あいつと約束した。何でもやってやるさ)
     ニーガンはリックの代わりを担うと決めた。決めたならば早く皆をまとめてリックのところへ向かうのみだ。
     ニーガンは体の向きを変えて仲間たちに向かい合い、全体を見回しながら指示を出す。
    「今の話は理解できたな?すぐに荷物をまとめて移動する。デールとグレンは見張りだ。少しでも変なことがあったら報告しろ。重い荷物は俺とTドッグの二人で積み込むからアンドレアとキャロルは細かい荷物を頼む。ソフィア、君は母さんを手伝え。さあ、始めるぞ。」
     口を挟む暇なく指示を出せば全員が一斉に動き出した。
     しかし、グループ全体に広がった動揺は大きい。共に過ごした期間は一年に満たずとも、家族同然に過ごしてきた仲間の身に起きた悲劇は皆の心に強い衝撃を与えた。この余波はカールがある程度回復するまで続きそうだ。
     ニーガンは「ここが踏ん張りどころだな」と呟いた。


     ニーガンは皆を連れて教えられた通りに来た道を戻り、グリーン農場に辿り着いた。広い敷地の中にポツンと佇む家を目指して車を走らせる中で農場の風景に目を奪われる。
     夕日に照らされてキラキラと輝く牧草地は絵画で見るよりも美しい。その穏やかな光景の農場を取り囲む森が外界を遮断しているので夢物語の中に迷い込んだ気分になる。
    (夢みたいな場所って奴だな。……そうさ、安全な場所なんて夢みたいなものだ。世界は何一つ変わっちゃいない)
     目の前の光景に目を奪われながらもニーガンはひどく冷静だった。
     この農場が崩壊する前の世界と同じ状態を保っているのだとしても、死んでしまえば誰もが転化して他者を襲い出すという現実は変わらない。ウォーカーを寄せ付けない魔法の結界が存在するはずもなく、きっかけがあればウォーカーは群れを成して押し寄せる。世界の過酷さや残酷さは相変わらず生者の喉笛を食い破ろうと狙っているのだ。
     考えに耽るうちに目的地に到着したので車を降りると、家の前にはローリを迎えに来た女がニーガンたちを待っていた。
     ニーガンが家に近づくと女は「ゲートは閉めた?」と尋ねてきた。
    「ああ、閉めてきた。さっきは名乗る暇もなかったな。俺はニーガン。君は?」
    「マギー。全員の挨拶は後にして中に入って。疲れた顔をしてるから少し休んだ方が良さそう。」
    「助かる。」
     ニーガンは振り返って皆に中に入るように伝え、全員が中に入るのを見届ける。
     家に入ろうとしないニーガンにマギーが訝しげな顔で近づいてきた。
    「どうしたの?」
    「リックたちがこの農場に留まるなら俺たちも留まることになるが、全員が家で寝泊まりするわけにいかない。テントを建てても問題ない場所が知りたい。」
     ニーガンの言葉にマギーは納得したように頷くと、家から少し離れた場所にある木の密集地帯を指差した。
    「木が密集してる場所があるでしょ?あそこなら大丈夫。仲間がいるって話を聞いたから父さんが場所を決めておいたの。」
     マギーが示した場所は木が集まっているものの程良く空間があり、枝葉が広がっているので日差しが強くても影ができて涼しそうだ。雨も多少は防ぐことができるだろう。テントを建てるには申し分ない場所だ。
    「良い場所だ。しばらく世話になる。」
    「できる限りで力になるから、何かあったら父さんか私に言って。」
    「ああ、そうしよう。」
     場所を確認し終わったニーガンはマギーと共に家の中に入る。他の仲間たちは既にカールの様子を見に行ったようで、友人の痛々しい姿にショックを受けたソフィアが肩を震わせて泣いていた。そのソフィアを慰めるキャロルの目も潤んでいる。他の者たちも沈んでいるようだ。
     ニーガンはマギーに案内されて一室に足を踏み入れる。真っ先に目に飛び込んできたのはベッドに力なく横たわっているカールだ。
    「カール……」
     無邪気に笑いながら父親の食料調達に同行したはずの少年が青白い顔で眠る姿を見てニーガンは言葉を失った。消毒液の匂いに混じって微かに漂うのは血臭だ。血の臭いが消えないということはカールの傷の状態は悪いのだろう。
     部屋の中にはカール以外にリックとローリ、そして見知らぬ白髪の男がいた。聴診器を使ってカールの心音を診ている姿から彼が医者なのだとわかる。
     ニーガンはカールの状態に胸を痛めながらもリックとローリの傍に行った。
    「二人とも、大変だったな。」
     ニーガンが声をかけるとリックは顔をくしゃくしゃにして泣き始める。ニーガンはリックの頭を撫でて苦笑いを浮かべた。
    「こら、今は泣くな。泣いたら冷静に考えられなくなるぞ。」
    「ん。」
     頷いて必死に目元を拭うリックだが、涙の勢いは衰えない。その涙を優しく拭ってやりたいが、今のリックに必要なのは甘やかすことではない。
     ニーガンは抱き寄せて慰めてやりたい気持ちを抑えつけてリックから手を離す。
    「頼りがいのある俺が来て安心したのはわかるが、しっかりしろ。お前とローリがカールを支えなきゃならないんだから泣いてばかりいられないぞ。お前の代わりに俺が他の奴らの面倒を見るから、お前はカールのことだけを考えろ。」
    「……ありがとう、ニーガン。」
     リックは鼻をすすりながらも涙を止めた。
     そしてローリに「少し席を外す」と告げて立ち上がり、ニーガンに目配せしてから先導するように部屋を出る。ニーガンはリックの後に続き、彼と共に玄関を出てポーチに立った。向かい合うとリックが状況を話し始める。
    「カールは鹿狩りの弾に当たったんだ。弾が鹿を貫通したから勢いは落ちたが、砕けた銃弾が体の奥に残っていて血管を傷つけてる。そのせいで出血が止まらないんだとハーシェルが──カールの傍にいた人がハーシェルといって、彼がそう話していた。」
    「手術して取り除けないのか?」
    「医療道具が足りないから今はできないが、シェーンがオーティスという男と一緒に調達に行ってくれている。二人が戻ってくるのを待ってるんだが……戻りが遅ければ道具が足りない状態で手術をすることになる。」
    「医療道具が揃えば助かるのか?」
    「……最善を尽くせる、としかハーシェルは言わなかった。」
     ニーガンは顔を強張らせながら話すリックの姿からカールに残された選択肢の少なさと厳しさを痛感する。手術をしなければ助からず、医療道具が不足した状態で手術を強行すれば成功率が限りなくゼロに近くなる。そして、調達に向かった二人が戻って万全の状態で手術ができても必ず助かるとは言い切れないのだ。
     「そうか」としか返せないニーガンはリックの次の言葉に目を瞠る。
    「ハーシェルは獣医であって人間相手の医者じゃないんだ。それもあって迂闊なことは言えないんだと思う。」
     医者は医者でも動物の医者。そのことに驚きを隠せないニーガンにリックが微かに苦笑を浮かべた。
    「息子の命を獣医に預けるなんて無謀だと思うだろう?だが、彼の処置は的確だったし、医学の知識が皆無の素人というわけじゃない。現状ではカールを救えるのはハーシェルだけだ。ローリも納得して彼にカールの命を託すと決めた。」
    「確かに驚いたが、今は医者を選べる状況じゃない。お前たちが納得して決めたなら俺は何も言わない。」
    「ありがとう。後はシェーンたちが無事に戻ってくるのを待つだけだ。」
     リックはそう言って、どこまでも続く轍に視線を向けた。その顔に不安が横切る。
     ニーガンはリックがシェーンを心配しているのだと察して「心配するなよ」と彼の肩に手を置いた。
    「シェーンはタフな野郎だ。二人で行ったんだから何かあってもフォローし合える。無事に帰ってくると信じてやれ。」
     ニーガンの励ましにリックは小さく頷いたが、それでも彼の顔から不安の色が消えることはなかった。


     ニーガンはリックと話をした後、他の仲間たちと共に農場内にテントを建てた。テントでの寝泊まりなのは昨日までと同じだが、柵に囲まれた農場の中ということでグループ全体に「ここは安全だ」という雰囲気が漂っている。
     ニーガンは仲間たちの気の緩みを引き締めるために話をしようと作業が落ち着いた頃に全員を集めた。そこへリックが姿を見せる。
    「みんな、何もかも任せてしまってすまない。」
     仲間の様子を見に来たリックの顔色は先程よりも悪い。歩いてくる時も足取りが不安定だったので貧血が悪化しているようだ。一目で具合が悪いのだとわかるリックに皆が心配そうな眼差しを向ける。
     体調不良のせいで笑みがぎこちないリックに近づいたのはグレンだ。
    「リック、さっきより顔色が悪いよ。家で休んでなきゃだめだ。さあ、戻ろう。」
     グレンがリックの背中を支えながら家に戻るよう促したが、リックは「平気だ」と首を横に振った。
     そしてリックはニーガンに顔を向ける。
    「テントの設営は終わったみたいだな。」
    「ああ。お前たちのテントも建てておいたから、家の中で休みにくいならこっちで休め。」
    「ありがとう。」
     リックはニーガンに微笑んでから仲間たち全員の顔を見回した。
    「みんなには迷惑をかける。本当にすまない。俺は基本的にカールの傍にいることになるから、その間はニーガンに俺の代理を任せることにした。だから彼に協力してあげてくれ。俺もなるべく様子を見に来るから何かあったら相談してほしい。」
     リックがグループのところへ来たのはリーダーの代理について話すためなのだ。テントの設営くらいであれば問題ないが、他のことについてニーガンが指示を出せば「リーダーではないニーガンが指示を出すのはおかしい」と考える者が出てきても不思議ではない。反発はグループに亀裂が入る原因となる。それを防ぐためにリックは「代理をニーガンに任せる」と宣言しに来たのだろう。
     ニーガンは自身に余裕のない状態でグループのことにまで気を回すリックに感心しつつ、今の状況でも他者のことを考えずにいられない彼を哀れに思った。
     ニーガンが複雑な思いで見つめるリックはリーダーの顔で話を続ける。
    「この農場は森に囲まれていて道路からも離れているからウォーカーが中に入ってくることは少ないらしい。だが、全く入ってこないというわけじゃない。油断せずに夜間の見張りは今まで通り続けよう。もし異変があったらハーシェルにも知らせてほしい。」
     リックの提案に誰も異を唱えることなく頷く。それを見てリックがホッとしたように笑みを零した。
    「ありがとう。よろしく頼む。」
     感謝を告げるリックにアンドレアが「ねえ、リック」と声をかけた。
    「お礼はいいから早く戻って休みなさいよ。すごく体調が悪そう。また輸血したの?」
     アンドレアの質問にリックは「少しだけだ」と答えた。少量であってもリックは既に何度もカールに血を分け与えているので体へのダメージは大きい。これ以上無理をさせるべきではない。
     ニーガンはリックの体を支えるグレンに顔を向ける。そして「リックを連れて行け」という意味を込めてハーシェルの家を指差した。それを受けたグレンがニーガンに向かって頷き、「リック、行こう」と言ってリックの体を支えながら歩き出した。
     グレンに付き添われて家に戻っていくリックの後ろ姿をグループ全員が見守る。
    「大丈夫かしら?リックまで倒れてしまいそう。」
     心配を滲ませながら呟くキャロルにデールが答える。
    「俺たちが支えないと。今までも助け合ってきたんだ。それを続ければいい。」
    「そうね。リックとローリを私たちで支えましょう。」
     そう言って微笑むキャロルに皆が同意して笑みを浮かべる。ニーガンはその様子を見つめながら少しだけ安堵する。
     最近はグループ全体にリックに寄りかかろうとする様子が見受けられたので、この緊急事態であってもリックを頼ろうとする気持ちが抜けないのではないかと危惧していた。そのような気配があれば厳しく指示することも考えていたが、そこまでしなくても良さそうだ。昨日の出来事が皆の意識を変えるきっかけになったのかもしれない。
     しかし、まだまだ甘さの抜けない集団であることは事実。注意深く見ていく必要がある。
     とりあえずは様子見だ、とニーガンは目を細めた。


     物事が動き出したのは辺りが暗闇に包まれた刻限だ。勢い良く走り込んできた車の音に気づいてテントや家の中から皆が飛び出してくる。
     車から降りてきたのはシェーンで、彼は医療道具の詰まったリュックサックを背負っていた。物資調達は成功したのだ。そのことに喜ぶ人々の中で一人、ハーシェルが落ち着いた口調で問う。
    「オーティスは?」
     その一言に全員の顔から笑顔が消え失せる。車から降りてきたのはシェーンのみ。助手席にも、荷台にも、どこにもオーティスの姿がない。それが示すのは残酷な結末だ。
     親しい人の死を悟ったマギーが涙を流すと同時にハーシェルが「パトリシアには言うな」と声を絞り出す。パトリシアはカールに付きっきりで外に出てきていなかった。
    「手術には彼女の助けがいる。終わるまで黙っていてくれ。」
     ハーシェルはそれだけを言い残すとリュックサックを持って家の中に戻っていった。その後ろ姿からニーガンは深い悲しみを感じ取った。
     嗚咽に釣られてマギーの方に顔を向ければ、彼女は幼子のように顔をくしゃくしゃにして泣いている。オーティスとは家族ぐるみの付き合いだったようなので喪失感が大きいのだろう。労るようにローリが彼女に寄り添っている。
     そして、ニーガンはシェーンに目を向けた。シェーンは視線を彷徨わせたり自分の正面に立つリックを見つめたりと落ち着きがない。その様子から彼がひどく動揺していることがわかった。そのシェーンはリックに調達先での出来事を語り始める。
    「高校には奴らがうじゃうじゃいた。俺たちには弾が十発しか残ってなくて、オーティスが『援護するから先に行け』と言ったから言う通りにした。少しして後ろに気配がないことに気づいて振り向いたら……」
     そこでシェーンは黙り込む。言葉に詰まっているらしく、何かを言いかけては口を噤んだ。その痛々しい姿を見てリックがシェーンを抱きしめた。リックは動揺の収まらない親友に優しく声をかける。
    「彼は罪滅ぼしをしたかったんだ。」
     その一言を告げる声が少し震えていた。自分の息子のために命を落とした者がいるという事実にリックも罪悪感と胸の痛みを感じている。
     やり切れなさにニーガンは溜め息を吐いたが、何気なく巡らせた視線を一点で留めた。それはシェーンの頭だ。
    (あれは──無理やり髪を毟り取られた痕だ)
     シェーンの頭の一部分は頭皮が露出しており、それはどう見ても強引に髪を毟り取られた痕だった。髪を毟り取られるほどウォーカーに接近された人間が無事でいるのは奇跡に近い。
     妙に引っかかる、とニーガンが注意深くシェーンを観察し始めたところでシェーンがリックに拳銃を差し出した。それはリックのものだ。
    「……オーティスから渡された。彼の代わりに返す。」
     シェーンの話から察するに、リックは己の拳銃をオーティスに貸したのだろう。それをシェーンが所持していることにニーガンの中に芽生えたシェーンへの疑惑が大きくなる。
     シェーンの話では彼らは多くのウォーカーに襲われて弾切れ状態に陥ろうとしていたのだ。そのような状況で他者に拳銃を譲り渡す余裕があったとは考えられない。
     考え続けるニーガンの視線の先ではリックが差し出された拳銃を見下ろしていた。しばらく沈黙が続いた後に彼は視線を上げてシェーンを見る。真っ直ぐにシェーンを見つめるリックは何も言わない。その表情は何かを探ろうとしているように思えた。
     やがてリックはシェーンの手から拳銃を受け取り、何も言わないままローリと共に家の中に入っていった。
     シェーンはリックとローリを見送ると車を背もたれに座り込む。その際に彼は右足を庇うような素振りを見せた。車から降りる時も歩く時もシェーンは右足を庇っているので足にケガをしているようだ。
     ニーガンはゆっくりとシェーンに近づいて彼の正面に立つ。見下ろせばこちらを見上げてくる相手と視線がぶつかった。
    「右足をケガしてるな。挫いたのか?」
     その問いにシェーンは「そうだ」と肯定した。
    「高いところから飛び降りた時にな。情けない話だ。」
    「なるほど。その足だと走るのは無理そうだな。本当によく無事に帰ってこられた。」
     ニーガンが話す度にシェーンの肩が小さく跳ねる。まるで怯えているかのように。
     シェーンが気まずそうに視線を外したのを見て、ニーガンは更に質問を重ねることに決めた。
    「なあ、シェーン。──その頭の傷、痛くないのか?」
     その問いにシェーンの目が見開かれる。
     シェーンはこちらを見ることもなく一点を凝視したまま何も言わない。いや、言わないのではない。声を発することができないのだ。
     凍りついたように身動きせずに黙り込んだシェーンにニーガンはニヤリと笑いかける。
    「後でケガの手当てをしてもらえよ。」
     それだけを言い残してニーガンは他の仲間を連れてテントの方に戻る。カールの手術が終わるのを待つのに大勢が家の中にいてはハーシェルたちの邪魔になるからだ。
     ニーガンは自分たちのテントに向かって歩きながら、オーティスという顔も知らぬ男に起きた悲劇について考える。
     確たる証拠は何もない。あくまでも個人的な心証に過ぎないので誰にも話すつもりはない。それでも導き出された結論は間違いではないだろう。

     オーティスは自ら犠牲になったのではない。シェーンが犠牲にしたのだ。


    ******


     リックにとって今日はとても長い一日だった。その終わりを安堵と共に迎えられたことを心から嬉しく思いながら、穏やかな寝顔を晒すカールを椅子に座って見守る。
     シェーンが持ち帰った物資のおかげでカールの手術は万全の状態で行うことができた。それもあって手術は大きなトラブルもなく終わり、ハーシェルの「手術は成功だ」という言葉にローリと抱き合って喜んだのは一時間ほど前の出来事になる。ハーシェルを始めとしてグリーン農場の人々にはどれだけ感謝しても足りないくらいだ。
     喜びと感謝の気持ちで満たされているリックの隣ではローリがカールの頭を優しく撫でている。リックは妻と息子を見守りながら小さく笑みを浮かべたが、我が子の命と引き換えに失われた命を思い出して笑みを消す。手放しで喜ぶには犠牲が大き過ぎた。
     手術が終わった後、ハーシェルはパトリシアにオーティスの死を伝えた。それにリックも立ち会って哀悼の意と感謝の気持ちを伝えたが、それが何の役に立つというのだろう?愛する人の死を知らされて泣き崩れるパトリシアには慰めの言葉は無意味だった。
     事故とはいえカールを撃ったのはオーティスだ。それでも彼はカールのために最大限のことをしてくれた。無事に帰ってきてほしいと心から願い、彼の死を知った瞬間は言葉では表せないほど辛かった。「自分も一緒に行っていればオーティスは生きて帰れたかもしれない」という罪悪感はリックの心に一生残る。
    (神が存在するとしたら……きっと誰も救うつもりはないんだろう)
     リックは心の中だけで呟いた。
     カールは死にかけた。そのカールを救おうとしたオーティスが死んだ。二人とも悪い人間ではなかったはずなのに神は二人を救おうとはしなかった。少なくともリックにはそのように思える。
     誰のことも救おうとしないのなら神など必要ない。神に救いは求めず、縋ることもせず、自分と大切な人たちを信じて進むだけだ。
     リックが密かに決意を固めているところへドアのノック音が響く。開け放たれたドアをノックして部屋に入ってきたのはニーガンだった。
    「カールはどうだ?」
     ニーガンの質問に答えたのはローリで、彼女は微笑みながら「大丈夫よ」と返した。
    「出血が止まったからお腹の異常な膨らみもなくなったわ。貧血状態だから顔色は良くないけど、きちんと食べて寝たら回復するってハーシェルが言っていたから大丈夫。」
    「そうか。本当によかった。若いから傷はすぐに治るさ。」
     ニーガンの言葉にリックとローリは笑顔を浮かべて頷いた。
     部屋の出入り口付近に立っていたニーガンはこちらに歩いてきてリックの傍らに立った。そしてリックの目元を親指でサラリと撫でる。その顔には苦笑が浮かんでいた。
    「ひどい顔だぞ、リック。疲れが出まくりだ。」
     ニーガンの指摘にリックも自身に向けて苦笑する。
    「今日だけで一週間分の疲れが溜まった気がする。」
    「だろうな。お前もローリも今夜は休め。他の奴らもお前たち夫婦が疲れ切ってることを心配してた。」
     ニーガンの提案にリックは首を横に振った。カールの傍を離れるわけにはいかない。
    「気持ちはありがたいが、カールの傍を離れられない。俺たちが寝ている間に状態が変化しないか心配なんだ。」
     そう答えてローリを見ると、彼女は何度も頷いてリックに同意した。
     ローリの反応を確かめたリックは再びニーガンの方に顔を戻す。彼は呆れたように笑った。
    「そう言うと思った。カールが心配で傍を離れられないのはわかってるから、俺がここでカールを見ててやる。何かあったら呼びに行ってやるさ。それなら大丈夫だろ?」
    「それだとあんたに負担がかかる。そこまで甘えるわけにはいかない。」
    「俺は手術の間に少し仮眠しておいたから一晩くらい問題ない。今は俺の言うことを聞いて休め。いいな?」
     提案を引っ込めるつもりのないニーガンにリックは溜め息を落とした。
     ニーガンが自分たちを心配している気持ちが強く伝わってくる。彼はリックが首を縦に振るまで待つつもりに違いない。このまま押し負ける自分の姿が容易に想像できて、リックは思わず笑ってしまった。
     リックはニーガンの言葉に甘えて休息を取ることに決めて、ニーガンに向かって頷いてみせた。
    「せっかくの申し出だから少し休ませてもらう。ローリ、それでいいな?」
     ローリの方に振り返って問うと彼女も「わかった」と頷いた。そのローリの顔にも疲れの色が見える。心配し過ぎたせいなのだろう。
     リックは椅子から立ち上がってローリと共に部屋の出入り口へ向かう。ローリを先に部屋から出すと立ち止まって振り返り、リックと入れ替わりで椅子に座ったニーガンを見た。
    「どうした?」
     こちらに顔を向けたニーガンが不思議そうに首を傾げる。その顔を見つめながら、リックはニーガンの存在に改めて感謝の気持ちが込み上げるのを感じた。
     昼間、ニーガンの顔を見ただけで涙が溢れたのは心からホッとしたからだ。ニーガンに今の状況を変える力はないと理解していても彼の存在はリックを安心させてくれた。傍にいてくれるだけで心強いと思える相手に巡り会えた奇跡にはどれだけ感謝を捧げても足りない。
     ニーガンがいてくれて良かった、と思いながらリックはニーガンに微笑みかける。
    「何でもない。おやすみ。」
    「ああ、しっかり眠れよ。」
     寝る前の挨拶を交わしたリックは今度こそ部屋を後にした。
     用意された部屋に入ると既にローリがベッドに横になっていた。素朴ながらも温かみのある内装が安らぎをもたらしてくれるおかげで彼女はリラックスしているようだ。
     リックもブーツを脱いでローリの隣のベッドに寝転がる。天井を見上げながらゆっくり息を吐き出すと今日のことが一気に脳裏に甦った。
     辛かった。恐ろしかった。絶望した。悲しかった。苦しかった。こんなにも様々な負の感情が全身を駆け巡った経験は昏睡状態から目覚めて我が家に戻った時以来だ。
     しかし、最後には喜びを得ることができた。この喜びを与えてくれた全ての人々に感謝して、その気持ちを忘れないようにしよう。
     また明日から頑張ろう、と自身を奮い立たせてからリックは目を閉じた。そして、目を閉じてから数分も経たないうちに眠りの世界に落ちていく。それほどに大変な一日がようやく終わりを告げた。

    To be continued.
    ♢だんご♢ Link Message Mute
    2020/05/30 22:00:30

    道なき未知を拓く者たち③

    #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


    pixivに投稿した作品と同じものです。
    「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
    リックは食料調達のためにシェーンとカールと共に森に入り、その最中に事件が起きる。それはグループの運命を変えるものだった。


    ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
    ニガリクタグを付けたら詐欺になりそうなくらいにニガリク要素が少ないです。ニガリクを探せ!という気持ちで読んでください。
    よかったら、どうぞ。

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    • リック受まとめ #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      ♢だんご♢
    • 飽きたなら、さようなら #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      ニーガンに素っ気なくされるようになったリックが徴収の前日に調達に出かけるお話。


      ニーガンに素っ気なくされるリックを書いてみたかったので挑戦してみましたが、あんまり素っ気ない感じがしないかもしれません。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • リック受けまとめ2 ##TWD ##ニガリク ##ダリリク ##メルリク

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      ほぼニガリクでした。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • スコット受まとめ #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      ♢だんご♢
    • スコット受け他まとめ ##アントマン ##蜘蛛蟻 ##スコット ##ロケット ##トニー

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      CPあり・なしの話がごちゃまぜ。CPありは蜘蛛蟻のみ。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ある寒い日のこと #ウースコ  #アントマン  #腐向け ##ウースコ ##アントマン


      自宅軟禁期間のウースコ。
      寒い日にスコットの自宅を訪ねるジミーのお話。

      寒い日は妄想がはかどるので書いてみました。ウースコというよりもウースコ未満かもしれません。
      いつも「ウーさん」と呼んでいるのでCP表記をウースコにしましたが、ジミスコの方がいいんでしょうか?
      とりあえずウースコでいこうと思います。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤ずきんとおばあさん #蜘蛛蟻  #ピタスコ  #腐向け  ##蜘蛛蟻


      小説投稿機能のお試し。
      ぷらいべったーで投稿したものを少し手直ししました。タイトルのセンスがないのはお許しください。
      ピーターが遊びに来るのを待つ心配性なスコットのお話。
      よかったらどうぞ〜。
      ♢だんご♢
    • 本能が「欲しい」と囁いた #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿した作品です。
      S7のニガリクで、オメガバース設定を使用しています。
      ネタバレになるので詳細は控えさせていただきます。

      好きなように設定を詰め込んでいますが、よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 小さなバースデーパーティー ##TWD ##リック ##カール

      アンディの誕生日にグライムズ親子の誕生日ネタで1つ。
      放浪中の親子の誕生日のお話。短いです。
      ♢だんご♢
    • さよなら、私のアルファ #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  #オリジナルキャラクター  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の続きになります。
      ニーガンが運命の番と出会ったため、サンクチュアリを出ていくことにしたリックのお話。


      オリジナルキャラクターが複数名登場します。出番が多く、ニガリクの子どもも登場するので苦手な方はご注意ください。
      詳細は1ページ目に案内がありますので、そちらをご覧ください。
      ニガモブ要素を少し含みますし、ニーガンがひどい男です。
      よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • ベッドひとつぶんの世界 #TWD #ダリリク #ニーガン #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿したものと同じ作品です。
      S7辺りのダリリク。
      ニーガンの部下になったダリリクと、二人を見つめるニーガンのお話。


      ダリリクが揃ってニーガンの部下になったら、互いだけを支えにして寄り添い合うのかなーと妄想したので書きました。
      寄り添い合うダリリクはとても美しいと思います。
      CPもののような、そうでないような、微妙な話ではありますが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ちょっとそこまで逃避行 #蜘蛛蟻 #ピタスコ #腐向け ##アントマン ##蜘蛛蟻


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンFFH後の蜘蛛蟻。
      FFHのネタバレを含むのでご注意ください。
      辛い状況にあるピーターがスコットの家に逃避行するお話。


      FFHが個人的に辛すぎたので自分を救済するために書きました。
      蜘蛛蟻というより蜘蛛蟻未満?
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 数値は愛を語る #蜘蛛蟻 #腐向け #Dom/SubAU ##蜘蛛蟻

      pixivに投稿したものと同じものです。
      Dom/Subユニバース設定で、Switch×Subの蜘蛛蟻。
      ピーターに惹かれながらも寄せられる想いに向き合うことができないスコットさんのお話。
      特にどの時間軸というのはなく、設定ゆるゆるです。


      突然降ってきたネタに萌えてしまったので勢いで書きました。スコットさんがヘタレです。
      特殊設定なので「大丈夫だよ!」という方は、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(前半) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク

      S7の頃。救世主として日々を過ごす主人公が偶然リックと関わり、それをきっかけにリックやニーガンと深く関わるようになるお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 家族写真 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      大切にしてる家族写真をニーガンに奪われたリックのお話。

      「ニーガンはグライムズ親子の写真を勝手に持って帰りそう」と思ったので書いてみました。
      特に盛り上がりのない私向けの話です。お暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 僕はコーヒー豆を挽かない #TWD #ダリリク ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S5でアレクサンドリアに到着した後。
      「生きてきた世界が違う」という理由でリックや仲間と距離を置くダリルを心配するリックのお話。


      ほんのりダリリクの味がするお話です。
      アレクサンドリアに着いたばかりのダリリクの何とも言えない距離感も良いですね。
      タイトルについては深く考えずに読んでいたたければありがたいです。
      地味な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • Restart #蜘蛛蟻 #ピタスコ #最新作のネタバレあり ##蜘蛛蟻


      ※スパイダーマンNWHのネタバレを含むのでご注意ください。


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンNWH後。
      パトロール中のピーターがスコットに出会うお話。
      蜘蛛蟻未満だけど後々に蜘蛛蟻が成立するという解釈で書いているので蜘蛛蟻です。


      スパイダーマンNWHは面白い映画でしたね。
      でも個人的にとてもしんどい展開だったので自分を救済するために書きました。蜘蛛蟻は癒やし。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 侵入者との攻防 #ロケスコ #腐向け ##ロケスコ


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      アベンジャーズ・エンドゲームでのロケスコ。
      毎朝ロケットが自分の上で寝ていることに困惑するスコットのお話。


      エンドゲームを観て見事にロケスコにすっ転んだので書いてみました。
      口調が掴みきれてないので違和感があったら申し訳ないです。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 亡霊殺し #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S2終了後のダリリク。
      リックの傍にシェーンの亡霊が見えるダリルのお話。ほんのりシェンリク風味もあります。

      盛り上がりが特にない私得なダリリクです。ダリリク未満かもしれません。
      じんわりとリックへの執着を滲ませるダリルが好きなので書いてみました。
      本当に暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 雛の巣作り #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の番外編。
      ニガリクが番になって1年が経った頃のお話。
      よかったら、どうぞ〜。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 罪な味 #TWD #リック #シェーン #カール #ダリル #ニーガン ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      リックと誰かの食にまつわるお話。
      時期も長さもバラバラ。基本的にほのぼのですが、ニーガンとの話はほのぼのしてません。


      ・【ピザ】 リック&シェーン
       アポカリプス前。「ピザの魅力には抗えません」というお話。

      ・【ケーキ】 リック&カール
       アポカリプス前。「いつもと違う食べ方をすると楽しくて美味しい」というお話。

      ・【肉】 リック&ダリル
       平和な刑務所時代。「調味料は偉大だ」というお話。

      ・【フルーツティー】 リック&ニーガン
       S7辺り。「悔しいけれど美味しいものは美味しい」というお話。


      リックに美味しいものを食べてほしいと思ったので書いてみました。ニーガン以外はほのぼのしてます。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 特に何も始まっていない二人 #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿した作品と同じもです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      特に何も始まってないけれど仲よしなダリリクの詰め合わせ。

      CPというよりブロマンスなダリリクです。お互いに相手を大事に思ってることが滲み出るダリリクが好きです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち① #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックの家族を捜す旅に出たリックとニーガンだったが、過酷な世界での旅は簡単なものではなく……。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      長編なのでのんびり書いています。次の章を投稿できるのがいつになるのか不明です。
      完全に私得な話なのでお暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(後編) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク


      S7の頃。前作の続きで、ケガの治療のためにサンクチュアリに滞在するリックを世話する主人公がリックとニーガンの関係性を目の当たりにするお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      前編よりも主人公がリックに肩入れしています。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 恋しい、と獣は鳴いた #TWD #ダリリク #ニガリク #腐向け #オメガバース ##TWD ##ダリリク ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのダリリク・ニガリク。
      リックと番になっているダリルがリックと引き離されて情緒不安定な時にニーガンと話すお話。ダリルとニーガンのちょっとしたバトル。


      「αが番のΩに依存する」という設定で書きたくて書いてみました。会話してるだけなので特に盛り上がりのない地味な仕上がりです。
      気が向いた時にでもどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 彼らが愛したのは「   」です #TWD #セディリク #ゲイリク #ニガリク #妊夫 #腐向け ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S8終了後。
      ニーガンの子どもを妊娠したために孤立するリックを支えるセディク、ゲイブリエル、ニーガンのお話。セディクがメインです。

      ※注意
      ・男性の妊娠、出産、授乳の表現あり
      ・リックへの差別、迫害要素あり
      ・全体的に重苦しい展開


      CP要素があるような無いような微妙なところです。
      重苦しい雰囲気の話なのでご注意ください。
      本当に気が向いた時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 生まれ落ちた日 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S1初回。
      ニーガンが病院でリックを見つけるお話。
      S1初回にニーガンを放り込んだだけ。ニーガンの過去について原作の設定を使っているので未読の方はご注意ください。


      S1の時点でニガリクが出会っていたら最強コンビになったのでは?という妄想を形にしてみました。別人感が強いです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤い糸の憂鬱 #TWD #カルリク #ニガリク #腐向け ##TWD ##カルリク ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7のカルリク・ニガリク。
      リックとニーガンが赤い糸で繋がっているのが許せないカールのお話。
      特殊な設定がありますが、深く考えない方がいいかも?


      カルリクとニガリクで三角関係が読みたくて書きました。カールの前に立ち塞がるニーガン美味しいです。
      「カールは赤い糸が見える」という特殊設定がありますが、深く考えず雰囲気を味わって頂ければと思います。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 「大丈夫」の言葉 #TWD #ダリリク #腐向け #ケーキバース ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      リックが「ケーキ」であることを知ったダリルが思い悩むお話。
      ケーキバース設定を使っています。この話にグロテスクな要素はありませんが、ケーキバース設定自体がカニバリズム要素を含むので苦手な方はご注意ください。


      リックのことが好きすぎて思い詰めるダリルが大好物なので書いてみました。
      盛り上がりの少ない私得な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 夢の残骸 #TWD #ニーガン #ゲイブリエル ##TWD

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S9ep5後で、リックが死んですぐの頃。
      リックの死を悲しむニーガンのお話。ゲイブリエルがそこそこに出番があります。リック、カール、ジュディスの出番は少々。


      リックが死んだと知らされたらニーガンは悲しむんじゃないかと思って書いてみました。
      もしかしたらドラマの中で触れている内容かもしれませんが、「こういう妄想をしました」という報告書みたいなものだと思ってください。
      特に盛り上がりのない話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
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