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    恋しい、と獣は鳴いた アルファに生まれた人間は人生における成功を約束されたようなもの。これが世間一般の認識だ。そんなものは幻想であり、所詮は育つ環境次第なのだということをダリルはうんざりするくらいに知っている。
     ダリルはアルファとして生まれながら、その人生は恵まれたものではなかった。父親は子どもに暴力を振るうだけの男だった。母親は子どもの存在そのものに関心のない女だった。まともな生活ができないせいで心は荒み、きちんとした教育を受けることもできなかった。成人してからも安定した生活はできず、世の中全てに対する憤りを抱えながら生きてきた。
     状況が変わったのは「死者が生きた人間を食らう怪物として蘇る」という現象が世界中で発生してからだ。文明社会は驚くほどの早さで崩壊し、世界は弱肉強食の原始的な世界へと変わった。
     生きる能力のあるものが生き残り、それがないものは怪物に食われて死んでいく。それを避けるために群れる弱者をまとめ上げるのは強い者だ。それには学歴も社会的地位も関係ない。生き残る強さが全てだ。
     シンプルになった世界はダリルにとって生きやすい世界だった。生存者グループの者たちからは荒くれ者として恐れられていても彼らにはダリルのようにタフな人間が必要だった。以前の世界であれば自分のような存在など視界にも入れない者たちから頼りにされることにダリルは嫌悪を抱き、兄のメルルと共に彼らとは一定の距離を置いていた。
     しかし、その状況もリックという名のオメガが現れたことによって大きく変化する。
     リックはオメガでありながら以前は保安官として活躍しており、彼はベータであるローリと結婚して一人息子のカールがいた。強く賢く、そして誰にでも優しい彼は瞬く間にグループのリーダーになっていた。
     メルルの行方がわからなくなり、本当の意味で一人になったダリルをリックは放っておかなかった。グループの一員として扱い、他の者に対する時と同じように仲間として接してくる。役割を与えることでグループに居場所を作ってくれたのだということにもダリルは気づいていた。
     そうであってもダリルは始めのうち、メルルが行方不明になる原因となったリックを憎み、差し伸べられる手を振り払ってしまいたいと思っていた。「発情するだけの役立たず」と陰口を叩かれがちなオメガである彼がアルファである自分よりも恵まれた人生を送ってきたことに対して生まれ育った環境の違いを感じ、惨めな気持ちになったこともある。
     それらの気持ちはリックの人柄に触れるに従って消えていった。様々なことに悩み、苦しみ、それでも仲間たちを守り抜こうとする姿に尊敬を抱いた。一人で必死に立ち続ける彼の隣に並んで支えてやりたいと望むようになり、リックの親友であるシェーンが死んだ後は名実ともに彼の相棒になった。
     ダリルの中にあるリックへの感情は友情や家族愛といったものだったが、それは時間の経過や様々な出来事に遭遇することによって形を変えていく。
     焦がれる想いが恋愛感情としての愛なのだと気づいたのは安住の地であった刑務所を失い、一時的にリックと離れ離れになった時。「リックを喪ったのかもしれない」「リックには二度と会えないのかもしれない」という事実がダリルに本当の気持ちを気づかせたのだ。
     運良く再会した後もリックへの想いは募っていった。他のオメガに対して抱いたことのない「一緒に生きていきたい」と望む気持ちは本能から生まれたものではなく心から生まれたもの。本能ではなく心がリックを求めている証拠だ。
     ダリルはアルファとしてオメガのリックに惹かれているのではない。ダリル自身がリックという存在に惹かれているのだ。


    *****


     穏やかに時間が流れる夜、ダリルはリックの寝室にいた。
     ウォーカーの群れに襲われるというアレクサンドリア最大の危機を乗り越え、全員で町の再建に奮闘する中でダリルはリックと心を通じ合わせた。生きるか死ぬかという状況を切り抜けた二人の胸に芽生えた「後悔したくない」という思いが己の心に素直になるよう促したからだ。恋人同士という新たな関係に発展した二人は甘く幸せな時間を過ごすため、リックの寝室に二人きりでいる。
     ダリルはベッドに腰を下ろし、自分に背中を預けて座るリックを後ろから抱きしめた。こうして背中を預けられると信頼も預けられているように感じる。
     ダリルがリックの頬に軽く口付けるとリックは嬉しそうに笑い、お返しのようにダリルの唇にキスをくれた。
    「愛してるよ、ダリル。」
     微笑みと共に告げられた愛の言葉にダリルは笑みを深める。
    「俺もだ。どれだけ言っても足りないくらい愛してる。」
     ダリルはそう言って唇を重ねた。
     人を愛する幸せも、愛する人から愛される喜びも、全てリックと出会うことによって得られたものだ。そのことがとても嬉しい。
     何度もキスを交わし、それが途切れた瞬間に間近で目を合わせれば愛しさが募った。その愛しさのままにダリルは胸に秘めていた思いを口にする。
    「あんたと番になりたい。」
     スルッと口から零れた言葉にリックが目を丸くした。ダリルは驚いたように自分を見つめるリックと目を合わせたまま更に言葉を続ける。
    「番にこだわる必要なんてないのはわかってるが、やっぱりあんたとの特別な繋がりが欲しい。それに、あんたのフェロモンが俺以外には効かなくなるしな。嫌か?」
     リックは「嫌じゃない」と言いつつもダリルから視線を逸らした。
     何かを憂えるような表情のリックを見てダリルは言葉を重ねる。
    「嫌ならいい。強制したくない。リックの気持ちを疑ってるわけでもないし、このままでもいい。あんたの嫌がることはしない。」
     リックと番になりたい気持ちはあるが、リックがそれを望まないのなら仕方ない。無理やり番になることだけは絶対にしたくない。
     その気持ちが嘘ではないのだと伝わるように真っ直ぐにリックを見つめていると、リックの目線がこちらに向いた。
    「嫌じゃない。俺もダリルと番になりたい。だが、その前に話しておかなきゃならないことがある。」
    「何だ?」
     リックは一つ息を吐くと真剣な表情を浮かべる。
    「番のオメガに先立たれたアルファの自殺率が高いという話を聞いたことがあるか?」
     想像していたよりも不穏な内容にダリルは微かに眉根を寄せた。
    「ない。詳しく聞かせろ。」
    「調査した件数は百に満たないが、その中でも半分以上のアルファが自殺していたそうだ。生きていても鬱病やノイローゼを患っていたり、精神的に不安定で病院やカウンセリングに通っている人も多かったらしい。」
    「番のオメガが死んだことが原因なのか?だが、何で……」
    「結論が出ていたわけじゃないが、アルファは番相手に対して精神的に依存しやすいという仮説が有力だと言われていたな。アルファは番を解消できるから、それを防ぐために番のオメガに依存しやすい性質を持っているんじゃないかって。」
    「とりあえず理解したが……そんな話はテレビで聞いたこともないし、雑誌や新聞でも見たことないぞ。アルファには大事なことだってのに。」
     アルファが番のオメガに精神面で依存しやすいのであれば様々な対策やフォローが必要なはず。パートナーに先立たれたアルファの自殺率が高いことがわかっているのなら尚更だ。
     それなのにこの話は世間一般に知られていない。番になることによるリスクの話はオメガに関するものばかりで、アルファに関しては一度も聞いたことがなかった。
     不満を滲ませるダリルにリックは苦笑いを浮かべながら「気持ちはわかる」と頷く。
    「この話が広まればオメガと番になることを拒否するアルファが出てくるだろう。アルファとオメガのカップルから生まれる子どもはアルファになる確率が高いから、優秀なアルファを増やしたい政府は困る。だから警察官や保安官、医療関係者だけに知らせて一般には伏せておいたというわけだ。世界的に見ても同じようなものらしい。」
     ダリルは「そういうことか」と呟いて顔をしかめる。
     パートナーを失って精神的に不安定になったアルファが騒動を起こせば警察官や保安官が出動することになり、そうでなくとも治療やカウンセリングで医療機関を利用するだろう。そういった職業に従事する者たちがこの件を知らなければ上手く対応できないので限られた職種の人間には教えたのだ。
     ダリルは苦々しい思いを吐き出すように溜め息を吐く。
    「国の上の方の連中ってのは腐った奴ばかりだな。」
    「俺もそう思う。『口外しない』って誓約書まで書かされたのには引いたよ。」
     リックは苦笑を浮かべたままダリルに同意して頷き、その顔から笑みが引くと真剣な眼差しが向けられた。
    「ダリル、俺の方がお前より長生きするなんて保証はない。いつどうなるかわからない。だから番になるのはお前にとってリスクが大きいんだ。番のオメガに依存しやすいかどうかは個人差があるが……それでも俺と番になりたいか?」
     ダリルはリックの目を見つめ返しながらじっくりと考える。
     番を解消するアルファが皆無ではないので依存しにくい者もいるのは間違いない。ダリルもそれに該当する可能性はある。
     しかし、そうではない可能性の方が高いと考えるのが妥当だろう。リックと番になり、もし彼が先に死ねばダリルは精神的に不安定な状態になるかもしれない。最悪の場合、自ら命を絶つのだ。リックはそのことを心配して番になることに慎重になっている。
     リックは本当に優しい男だ、とダリルは思わず笑みを零した。
     そしてダリルの答えを待つリックを抱きしめ直して腕の力を強める。温もりと柔らかさから、彼が自分の腕の中にいるのだと改めて実感する。
    「リック、俺と番になってくれ。リスクがあっても俺はあんたと番になりたい。何があってもあんたは俺が守るし、もしあんたが先に死んでも番になったことを絶対に後悔しない。」
    「……本当に、いいんだな?」
     覗き込むようにして目を合わせてくるリックに向かってダリルは「当たり前だろ」と首を縦に振る。
    「ずっと一緒に生きていくって誓いだ。」
    「──ありがとう、ダリル。」
     そう言って嬉しそうに笑うリックの目は微かに潤んでいる。そのことから彼も番になることを心から望んでいるのだと実感し、ダリルもリックに笑みを返した。
    「なあ、ダリル。俺はダリルよりも長生きすると約束するよ。お前をきちんと看取るからな。」
    「頼むぜ。それなら俺は先に逝ってあんたを待つ。」
     ダリルはリックの言葉を嬉しく思うと同時に「何があっても彼を守り抜く」と自身に誓う。リックを守りたいと思う気持ちは元々強かったが、今回のことでその気持ちは更に強くなった。
     自分たちは本能が求めるから番になるのではない。一緒に生きていくことを約束するために番うのだ。その思いを込めてダリルはリックにキスをする。
     この夜、ダリルはリックの項に番の証を刻んだ。


    *****


     腕の中にあったはずの温もりが消え失せ、壁や床の冷たさにダリルは目を開ける。
     壁にもたれ、俯いて座るダリルの視界に映るのは「A」と大きく書かれたスウェットと薄汚れた己の素足だ。そのことからダリルは自分がいるのは救世主と名乗る支配者たちの本拠地・サンクチュアリだと思い知る。捕虜であるため小部屋に閉じ込められているのだ。
     ダリルはゆっくりと顔を上げて微かに明かりの漏れるドアを見つめながら先程まで見ていた夢を思い出す。
     リックと番になった夜の夢。ダリルにとって生きてきた中で最も幸せだった日。愛しさと幸福に彩られた時間はそんなに遠いものではなかったはずなのに、途方もなく昔のことだったように思えてしまう。
     ダリルは手を握り込んでリックの体温を思い出そうとしたが、感じられるのは自分の体温だけ。リックの体温を思い出せなくなるほどの長期間、彼から引き離されている。
    「……リック。」
     掠れた声で愛しい者の名前を口にすれば恋しさが募った。
     太陽のように眩しい笑顔も、自分を呼ぶ穏やかな声も、温かな体も、リックの全てが恋しい。名前を呼んで抱きしめて、「愛してる」と囁いてキスをしたい。目の前で幸せそうに笑う彼に会いたくて堪らない。
     ダリルはのそりと動いてドアに近づくと拳を叩きつけた。
    「開けろ!ここから出せ!」
     声を張り上げて繰り返しドアを殴りつければ騒ぎを聞き付けた救世主が「静かにしろ」と怒鳴る。それを無視してダリルは拳をドアに叩きつけ、体当たりで押し破ろうとした。同じようなことを続けて何日目になるのかダリル自身にもわからなくなっていた。
     手も体も痛い。捕虜として劣悪な環境に置かれたせいで肉体は弱り、暴れるほどに体力を消耗していく。そして騒ぎを起こせば救世主たちに暴力によって捻じ伏せられるのはわかりきったことだった。
     しかし、今のダリルの頭には「リックのところへ帰る」ということしかない。番のオメガを求めるアルファの本能が思考を狭めていることにダリル自身気づくはずもなかった。
    「俺はリックのところへ帰る!俺たちは一緒にいなきゃならねぇんだ!開けろ!」
     全身が痛むのにも構わずダリルはドアを殴り、体当たりを続ける。
     番である自分たちは離れてはならない。常に一緒にいるべきであり、離れ離れの今の状態は許されない。早く、早くリックの元へ帰らなければ。
     強烈な焦燥感に全身を蝕まれたダリルはドアが開くと同時に外へ飛び出し、彼を大人しくさせるために集まった救世主たちに殴りかかった。
     殴り殴られ、蹴り蹴られ、じわじわとダリルの体は動かなくなっていく。弱った肉体では複数人を相手にして敵うはずもない。
     遂に床に押さえつけられると顔を思いきり殴られ、ダリルの意識はそこで途切れた。


     ダリルの意識が戻ったのは暗い小部屋の中で、目が覚めると同時に痛みが押し寄せて思わず呻き声を上げる。もう暴れる余裕はなかった。
     床に横たわったままリックの顔を思い浮かべるが、浮かぶのは笑顔ではなく必死に泣くのを堪える顔だ。
     救世主たちを率いるニーガンという男はリックに執着を示し、言葉やプレッシャーでリックをいたぶることを好んだ。リックが感情を抑え込んで耐える姿を見て嫌らしく笑う男を見た時、ダリルは「ニーガンを殺したい」という衝動をやり過ごすのに必死だった。
     ニーガンを殺したいと思う理由は憎しみだけでなく、ニーガンがアルファだということもある。アルファは基本的にオメガに惹かれるものだ。ニーガンのリックへの執着にはアルファの本能が影響している可能性が大きく、リックに性的な意味で手を出してもおかしくない。そうなる前にリックの傍からニーガンを排除したかった。
    「リック……俺が、あいつの傍に、いなきゃ……」
     リックを何があっても守ると誓った。それに今のリックは過酷な現実に一人で必死に耐えている。自分が支えてやらなければならない。
     ダリルは拳を握り、もう一度己のオメガの名を呼ぶ。
    「──リック……俺が守る。俺の、リック。」
     ダリルが全身の力を振り絞って体を起こすと遠くから足音が響いてきた。重く響く足音は忌まわしい男のものだ。
     その足音にダリルが顔をしかめているうちに足音は小部屋の前で止まり、鍵の開く音が落ちた後、ドアがゆっくりと開かれていった。電灯の明かりを背に受ける男の姿は巨体な壁のように見える。それでもダリルは男を睨み上げた。
    「惨めな姿だな、ダリル。さっさと俺に服従すればこんなところに閉じ込められなくて済むのに。」
    「お前なんかに従うわけないだろ。何の用だ、ニーガン。」
     名前を呼ぶことさえ悍ましい、と思いながらダリルはニーガンに言葉を投げ返した。
     ルシールという愛称のベースボールバットを手にしながらダリルを見下ろすニーガンはいつもと変わらない笑みを浮かべている。その近くには拳銃を手にしたドワイトが立っていた。
     ニーガンはダリルの目の前にしゃがんでジロジロと無遠慮に視線を送ってきた。それが不快でダリルが眉間のしわを深くするとニーガンに眉間を指で突かれる。
    「本当に愛想のない奴だ。お前と番になるなんてリックは物好きだな。それともリックの前では笑顔全開になるのか?見てみたい気もするが、気持ち悪そうだ。」
     喋っているだけで他人を不愉快にさせる人間も珍しい、と思いながらダリルは黙って目の前の男の話を聞いていた。
     ニーガンの言葉一つひとつが勘に触って苛立つ。リックの名前を口にすることも不愉快で仕方ない。それでも反応を示せば支配者を喜ばせるだけなので堪えるしかなかった。
     ダリルが黙ったままでいるとニーガンは薄い笑みを浮かべて「なあ、ダリル」と話しかけてくる。
    「リックに会いたくて仕方ないんだろ?今日もリックのところへ帰ろうと暴れてたらしいしな。リックのことしか考えられなくて我を忘れてみっともなく暴れる。──無様だな。」
     ニーガンの目に宿るのは明らかに侮蔑だった。
     ダリルは湧き上がる怒りを堪えるために掌に爪が食い込みそうなほど強く拳を握った。
    「アルファはオメガと番になれば、そのオメガなしに生きられない。生死に関係なく長い時間離れることに耐えられないのさ。だから今のお前はリックに会えないストレスでおかしくなりかけてる。番になんてなるもんじゃない。」
     ニーガンの話を聞いてダリルは目を瞠った。
     今の話を聞く限り、ニーガンはアルファが番のオメガに依存しやすいと知っているようだ。
     しかし、なぜニーガンがその話を知っているのか?以前は警察官や保安官、医療関係の仕事をしていたということだろうか?
     困惑するダリルに構うことなくニーガンは勝手に話し続ける。
    「俺がガキだった頃──高校生の時だ。仲間の中に俺以外にもアルファがいて、そいつは転校してきたオメガに惚れた。『恋に落ちる』って表現がピッタリだったな。一目惚れだったんだ。二人はすぐに付き合いだして、番になるのも早かった。」
     ニーガンはダリルから視線を外して微かに目を細める。その当時のことを思い出しているのだろう。
     ニーガンは目を細めたまま「だが問題があった」と続ける。
    「アルファの方の親はどっちもアルファでオメガ差別思想の塊だった。おまけにアルファ至上主義だから最悪さ。二人の付き合いに反対して『番を解消するまで外に出さない』って自分の子どもを家に閉じ込めやがった。地元でも力のある家だったから周りも何もできなかったな。そいつは番のオメガと無理やり引き離されたってわけだ。」
    「……それで、どうなった?」
     ダリルの口はニーガンに話の続きを促した。
     ニーガンの話など聞きたくはない。それでも話の内容への関心が嫌悪を上回る。
    「家から出なくなって二ヶ月経った頃だったか?そいつは自分の親を殺して自殺した。ひどい殺し方だったらしい。まあ、その前からおかしくなってたけどな。会いに行っても番のオメガに会いたいって話しかしないし、暴れたせいで部屋はめちゃくちゃだった。」
     ニーガンはそこまで話すと立ち上がって体を伸ばす。その顔には亡き友への憐憫も悲しみも見つからず、今の話はニーガンにとって世間話の一つに過ぎないように思えた。
     この男のことは理解できない、とダリルは自分を見下ろす男を再び強く睨む。
     ニーガンは視線をルシールに移すと「面白いこと教えてやるよ」と笑った。
    「あいつは家に閉じ込められるまで情緒不安定とは無縁だった。誰かを殴ったこともなかった。おかしくなったのは番のオメガと引き離されてからさ。つまり──アルファは番のオメガに依存するから相手なしに生きられない。会えなくなったり失えば気が狂う。」
    「どうしてそう思う?」
    「俺なりに調べたんだよ。おかしいと思ったから、普段は近寄りもしない図書館にしばらく通ってな。アルファが起こした事件や事故の記事を調べまくったら半分以上が番のオメガを亡くしてた。アルファがおかしくなる理由と結び付けないってのは無理だろ?」
     ニーガンの話を聞き、ダリルは眉間のしわを深くさせる。
     当時高校生だったニーガンが気づいたのならば他にも気づいた人間はいただろう。論文として発表しようとしたり、新聞や週刊誌の記事にしようと考える者がいても不思議ではない。それなのに話が広まらなかったのは恐らく権力者が握り潰したからだ。
     腐った奴らがのさばる世界が滅びてよかった、と心の中だけで呟くとニーガンが「ダリル、俺はな」と己の心にあるものを語り出す。
    「番のオメガに依存して自滅したあいつみたいになりたくない。今のお前もだが、本当に惨めだ。俺は惨めな野郎には絶対になりたくないね。だから誰とも番にならないと決めた。オメガを抱くのは楽しいが、それだけだ。番になりたいとは思わない。」
     惨めだと言われてダリルの頭に血が上る。何度も侮辱されたことへの怒りを堪えるのは流石に難しかった。
     ダリルは唸りながらニーガンに殴りかかろうとしたが、傍で控えていたドワイトに拳銃のグリップで殴られて床に沈められる。そして、そのまま床に押さえつけられた。
     ダリルは頬を床に擦りつけながらも目だけを動かして憎い男を睨みつけた。
    「ふざけん、なよ、クソっ!それだったら、あいつに……リックに、執着するな!」
     リックを見るニーガンの目を見ると腹が立って仕方なかった。その熱の籠もった目にはリックへの執着が滲み、ダリルの中の独占欲が嫉妬の炎で焦げる。
     その他にも気に入らないことはあった。他のコミュニティーの徴収や巡回は部下に任せきりな男がアレクサンドリアだけ自ら赴くのはリックに会うためなのが丸わかりで、ニーガンの乗った車がアレクサンドリアに向けて出発するのを見るたびに唇を噛んだ。ニーガンが楽しげにリックの話をするのも「リックは自分のものだ」と主張されているようで腹立たしい。
     「オメガと番になりたくない」と言いながらオメガであるリックに執着するこの男が気に食わない。
     リックと番になったのは自分なのに「リックは俺のものだ」と嫌らしい笑みを浮かべるこの男が憎い。
     自分とリックを引き離しておいて、自分はリックに会いに行くこの男を惨たらしく殺してやりたい。
     ダリルは怒りに思考を占領された自覚のないままニーガンに殺気を送り続ける。

     ニーガンが憎い。
     俺からリックを奪おうとするニーガンが憎い。
     絶対に許さない。
     リックは俺の番。
     リックは俺だけのもの。
     殺したい。
     殺す。
     目の前のアルファを、殺す。


    *****


     ダリルとニーガンの視線での戦いは一人の男の出現により唐突に終わりを告げる。
    「──ニーガン!俺をここへ連れてきてどういうつもりだ!?」
     怒りを隠そうともしないリックの声が薄暗い廊下中に響き渡った。思いがけない人物の登場にダリルの怒りは霧散する。
     数人の救世主たちと共にこちらに向かってくるリックはニーガンを睨みながら歩いてきた。その目が床に押さえつけられているダリルを捉え、驚愕を浮かべた顔は瞬時に悲痛なものへと変わる。
     リックが「ダリル!」と悲鳴のような声を上げて駆け寄ってくるのを合図にニーガンは「放してやれ」とドワイトにダリルを解放するよう指示を出す。
     そしてドワイトが離れてすぐにダリルの目の前でリックが膝をついた。
    「ダリル、大丈夫か?……顔が傷と痣だらけだ。それに手も腫れてる。早く手当てしないと。」
     リックはダリルの腫れた顔を見て泣くのを堪えるような表情になり、ケガの具合を確かめるためにダリルの顔や体に触れた。
     ダリルはしばらく呆然とリックを見上げていたが、体を起こすと全身が痛みに悲鳴を上げるのも構わず彼を強く抱きしめる。久しぶりのリックの温もりに思わず安堵の息が漏れた。
     リックはダリルの行動に驚いたようだが優しく抱きしめ返してくれた。
    「リック、やっと会えた。──会いたかった。」
    「俺も会いたかった。お前が心配で堪らなくて……ダリル、早く手当てしよう。今のお前に必要なのはケガの手当てだ。」
     リックはダリルを抱きしめたままニーガンの方に顔を向けた。その顔に浮かぶのは怒りだ。
    「ダリルの手当てをしてほしい。それが無理なら彼をアレクサンドリアに帰らせてくれ。」
    「アレクサンドリアに帰るのはだめだ。手当てはここでしてやる。おい、さっさと医務室に連れていけ。」
     ニーガンの命令で救世主たちがダリルを立たせようとしたが、ダリルはその手を振り払ってリックを更に強く抱きしめる。絶対に離れたくなかった。
     手当てを拒否するダリルにリックは「だめだ、ダリル」と諭す。
    「きちんと手当てしないと悪化する。頼むから──」
    「そうだぞ、ダリル。最近お前が不機嫌で暴れまくるからリックを連れてきてやったんだ。こうして会えたわけだし、大人しく言うことを聞け。」
    「待ってくれ、どういうことだ?」
     リックが訝しげに尋ねるとニーガンはダリルとリックの傍らにしゃがんだ。その目がリックにしか向いていないことに気づき、ダリルは腹の底に怒りがドロドロと流れ込んでくるのを感じた。
    「リック、お前に会えなくてダリルは機嫌が悪かったんだ。こいつは番のお前に依存してるから会えないストレスが溜まってたのさ。そのせいでリックに会わせろと暴れて勝手にケガしやがった。まあ、大人しくさせるために少しは手荒なことをしたけどな。」
     そう言って肩を竦めるニーガンをリックは睨みつける。
    「……一般には伏せられていたがアルファは番のオメガに依存しやすくて、長期間引き離されたり死なれると精神的に不安定になる人間が多い。もしかして、あんたはこのことをどこかで聞いたのか?」
     その問いに対してニーガンは緩く頭を振りながら「そういうわけじゃない」と答えた。
    「自分が見たものと調べたことから判断しただけだ。誰かに教えられたわけじゃない。だが、間違ってなかったんだな。流石は俺だ。」
    「わかっていたのに俺たちを引き離したのか?……もういい、そのことについては何も言わない。だからダリルを俺と一緒にアレクサンドリアへ帰らせてほしい。このままでは自分を痛めつけて死んでしまう。」
     リックはニーガンから隠すようにダリルを抱きしめ直す。まるで我が子を脅威から守る親のような姿を見てニーガンが眩しいものを見るように目を細めた。その瞬間をダリルは目撃し、それによってニーガンがリックに惹かれているのだと理解した。
     愛情か、支配欲か。理性か、本能か。それは全くわからない。いずれにせよニーガンはリックという人間に心惹かれている。それはダリルにとって何よりも許し難い事実だ。
     それに気づくことのないリックはニーガンにダリルの返還を求め続ける。
    「このことを知っていて番になった俺を悪だと言うならそれでもいい。受け入れる。だが、ダリルと一緒にいさせてほしい。彼を苦しめないでくれ。頼む、ニーガン。ペナルティーがあるなら俺が受けるから──ニーガン!」
     リックの悲痛な声が響いてもニーガンの薄い笑みは揺らがなかった。それどころか首をゆっくり横に振って拒否を示す。
     失望したように僅かに顔を俯けたリックの顎にニーガンの指がかかった。それをダリルは即座にはたき落とす。間近で咎めるように自分を呼ぶリックの声が聞こえたが、ダリルはニーガンから目を離さなかった。
     ニーガンは自分の手に視線を落としてからダリルに顔を向けた。その目に嫉妬が浮かぶのを見てダリルの中にあるニーガンへの殺意が勢いを増す。
    「ダリル、お前は俺にとって戒めなんだよ。オメガと番になったアルファはとんでもなく惨めだから俺は絶対にこうならないっていう戒めだ。」
     ニーガンの声は落ちついている。顔に浮かぶ笑みもいつもと変わらず他者を見下したものだ。
     しかし、その目に宿る嫉妬と殺気は隠せない。
    「俺は誰とも番になる気はない。もっと言えばオメガがいなくても別に問題ない。だがな、俺はリックが欲しい。」
     ニーガンの視線はダリルからリックへと移った。その視線を受け止めるリックは言葉を失ったように黙り込んでいる。
    「リックを抱いて、項を噛んで、番の契約を交わしたい。お前に出会ってからずっとそう思ってる。惨めなアルファになりたくないのに俺はお前と番になりたいんだ、リック。」
     うっとりと囁くような声音にリックの体がブルッと震えた。振動を感じたダリルがリックの顔を見ると怯えた横顔が目に映った。
     リックは怯えている。ニーガンの得体の知れない執着心を怖がっている。それを察したダリルは再びニーガンを睨みつけた。
    「俺は、ダリルと番になっているから……あんたとは番になれない。」
     リックが震える声を絞り出すとニーガンが笑い声を上げた。おかしくて堪らないといった様子で笑い続ける男をダリルとリックは奇妙なものを見るような目で眺める。
     やがて笑いの引いたニーガンがリックに手を伸ばしてその頭を撫でた。
    「番のアルファが死んだらオメガは他のアルファと番になれる。誰もが知ってる事実だ。だろ?」
     幼い子どもに教えるような口調で話すのが却って不気味で、ダリルは背筋に寒気が走るのを感じた。
     それはリックも同じらしく、「正気か?」と問う声には怯えが滲んでいる。
    「俺は正気だ。こいつと違って誰とも番になってないからな。……わかるだろ、リック。ダリルを殺してリックと番になりたいっていう衝動を抑えるために、こいつには惨めな姿を見せてもらわなきゃならない。こいつの惨めったらしい姿が戒めなんだ。」
     何を勝手なことを、とダリルは更に強くなった怒りを視線に乗せてニーガンを強く睨みつけた。
     ダリルの心も本能もニーガンに対する憎しみと怒りを激しく燃え上がらせている。リックに執着し、何かの弾みでダリルからリックを奪いかねない存在を許せるわけがない。
     ダリルはリックの体に巻き付けた己の腕の力を強めていく。リックが苦しげな息を漏らしても解放するつもりはなかった。
     ニーガンは仲間を殺し、今でも自分たちを苦しめ続ける憎い相手だ。殺したいと思う気持ちは薄れることがなく、その思いがあるから虐げられても耐えられるのだろう。
     しかし、今日ほどこの男を殺したいと思ったことはない。
    (ニーガンを絶対に殺す。俺からリックを奪おうとする奴を放置できない。俺が、殺す)
     リックへの愛情とアルファの本能が複雑に絡み合い、それはダリルの心を真っ黒に塗り潰していく。
     真っ黒に塗り潰された心が己を変えてしまうことにダリル自身が気づくことはなかった。

    END
    ♢だんご♢ Link Message Mute
    2019/05/13 22:27:05

    恋しい、と獣は鳴いた

    #TWD #ダリリク #ニガリク #腐向け #オメガバース ##TWD ##ダリリク ##ニガリク


    pixivに投稿した作品と同じものです。
    S7辺りのダリリク・ニガリク。
    リックと番になっているダリルがリックと引き離されて情緒不安定な時にニーガンと話すお話。ダリルとニーガンのちょっとしたバトル。


    「αが番のΩに依存する」という設定で書きたくて書いてみました。会話してるだけなので特に盛り上がりのない地味な仕上がりです。
    気が向いた時にでもどうぞ。

    more...
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    • リック受まとめ #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      ♢だんご♢
    • 飽きたなら、さようなら #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      ニーガンに素っ気なくされるようになったリックが徴収の前日に調達に出かけるお話。


      ニーガンに素っ気なくされるリックを書いてみたかったので挑戦してみましたが、あんまり素っ気ない感じがしないかもしれません。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • リック受けまとめ2 ##TWD ##ニガリク ##ダリリク ##メルリク

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      ほぼニガリクでした。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • スコット受まとめ #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      ♢だんご♢
    • スコット受け他まとめ ##アントマン ##蜘蛛蟻 ##スコット ##ロケット ##トニー

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      CPあり・なしの話がごちゃまぜ。CPありは蜘蛛蟻のみ。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ある寒い日のこと #ウースコ  #アントマン  #腐向け ##ウースコ ##アントマン


      自宅軟禁期間のウースコ。
      寒い日にスコットの自宅を訪ねるジミーのお話。

      寒い日は妄想がはかどるので書いてみました。ウースコというよりもウースコ未満かもしれません。
      いつも「ウーさん」と呼んでいるのでCP表記をウースコにしましたが、ジミスコの方がいいんでしょうか?
      とりあえずウースコでいこうと思います。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤ずきんとおばあさん #蜘蛛蟻  #ピタスコ  #腐向け  ##蜘蛛蟻


      小説投稿機能のお試し。
      ぷらいべったーで投稿したものを少し手直ししました。タイトルのセンスがないのはお許しください。
      ピーターが遊びに来るのを待つ心配性なスコットのお話。
      よかったらどうぞ〜。
      ♢だんご♢
    • 本能が「欲しい」と囁いた #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿した作品です。
      S7のニガリクで、オメガバース設定を使用しています。
      ネタバレになるので詳細は控えさせていただきます。

      好きなように設定を詰め込んでいますが、よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 小さなバースデーパーティー ##TWD ##リック ##カール

      アンディの誕生日にグライムズ親子の誕生日ネタで1つ。
      放浪中の親子の誕生日のお話。短いです。
      ♢だんご♢
    • さよなら、私のアルファ #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  #オリジナルキャラクター  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の続きになります。
      ニーガンが運命の番と出会ったため、サンクチュアリを出ていくことにしたリックのお話。


      オリジナルキャラクターが複数名登場します。出番が多く、ニガリクの子どもも登場するので苦手な方はご注意ください。
      詳細は1ページ目に案内がありますので、そちらをご覧ください。
      ニガモブ要素を少し含みますし、ニーガンがひどい男です。
      よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • ベッドひとつぶんの世界 #TWD #ダリリク #ニーガン #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿したものと同じ作品です。
      S7辺りのダリリク。
      ニーガンの部下になったダリリクと、二人を見つめるニーガンのお話。


      ダリリクが揃ってニーガンの部下になったら、互いだけを支えにして寄り添い合うのかなーと妄想したので書きました。
      寄り添い合うダリリクはとても美しいと思います。
      CPもののような、そうでないような、微妙な話ではありますが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ちょっとそこまで逃避行 #蜘蛛蟻 #ピタスコ #腐向け ##アントマン ##蜘蛛蟻


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンFFH後の蜘蛛蟻。
      FFHのネタバレを含むのでご注意ください。
      辛い状況にあるピーターがスコットの家に逃避行するお話。


      FFHが個人的に辛すぎたので自分を救済するために書きました。
      蜘蛛蟻というより蜘蛛蟻未満?
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 数値は愛を語る #蜘蛛蟻 #腐向け #Dom/SubAU ##蜘蛛蟻

      pixivに投稿したものと同じものです。
      Dom/Subユニバース設定で、Switch×Subの蜘蛛蟻。
      ピーターに惹かれながらも寄せられる想いに向き合うことができないスコットさんのお話。
      特にどの時間軸というのはなく、設定ゆるゆるです。


      突然降ってきたネタに萌えてしまったので勢いで書きました。スコットさんがヘタレです。
      特殊設定なので「大丈夫だよ!」という方は、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(前半) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク

      S7の頃。救世主として日々を過ごす主人公が偶然リックと関わり、それをきっかけにリックやニーガンと深く関わるようになるお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 家族写真 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      大切にしてる家族写真をニーガンに奪われたリックのお話。

      「ニーガンはグライムズ親子の写真を勝手に持って帰りそう」と思ったので書いてみました。
      特に盛り上がりのない私向けの話です。お暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち③ #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックは食料調達のためにシェーンとカールと共に森に入り、その最中に事件が起きる。それはグループの運命を変えるものだった。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      ニガリクタグを付けたら詐欺になりそうなくらいにニガリク要素が少ないです。ニガリクを探せ!という気持ちで読んでください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 僕はコーヒー豆を挽かない #TWD #ダリリク ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S5でアレクサンドリアに到着した後。
      「生きてきた世界が違う」という理由でリックや仲間と距離を置くダリルを心配するリックのお話。


      ほんのりダリリクの味がするお話です。
      アレクサンドリアに着いたばかりのダリリクの何とも言えない距離感も良いですね。
      タイトルについては深く考えずに読んでいたたければありがたいです。
      地味な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • Restart #蜘蛛蟻 #ピタスコ #最新作のネタバレあり ##蜘蛛蟻


      ※スパイダーマンNWHのネタバレを含むのでご注意ください。


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンNWH後。
      パトロール中のピーターがスコットに出会うお話。
      蜘蛛蟻未満だけど後々に蜘蛛蟻が成立するという解釈で書いているので蜘蛛蟻です。


      スパイダーマンNWHは面白い映画でしたね。
      でも個人的にとてもしんどい展開だったので自分を救済するために書きました。蜘蛛蟻は癒やし。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 侵入者との攻防 #ロケスコ #腐向け ##ロケスコ


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      アベンジャーズ・エンドゲームでのロケスコ。
      毎朝ロケットが自分の上で寝ていることに困惑するスコットのお話。


      エンドゲームを観て見事にロケスコにすっ転んだので書いてみました。
      口調が掴みきれてないので違和感があったら申し訳ないです。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 亡霊殺し #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S2終了後のダリリク。
      リックの傍にシェーンの亡霊が見えるダリルのお話。ほんのりシェンリク風味もあります。

      盛り上がりが特にない私得なダリリクです。ダリリク未満かもしれません。
      じんわりとリックへの執着を滲ませるダリルが好きなので書いてみました。
      本当に暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 雛の巣作り #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の番外編。
      ニガリクが番になって1年が経った頃のお話。
      よかったら、どうぞ〜。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 罪な味 #TWD #リック #シェーン #カール #ダリル #ニーガン ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      リックと誰かの食にまつわるお話。
      時期も長さもバラバラ。基本的にほのぼのですが、ニーガンとの話はほのぼのしてません。


      ・【ピザ】 リック&シェーン
       アポカリプス前。「ピザの魅力には抗えません」というお話。

      ・【ケーキ】 リック&カール
       アポカリプス前。「いつもと違う食べ方をすると楽しくて美味しい」というお話。

      ・【肉】 リック&ダリル
       平和な刑務所時代。「調味料は偉大だ」というお話。

      ・【フルーツティー】 リック&ニーガン
       S7辺り。「悔しいけれど美味しいものは美味しい」というお話。


      リックに美味しいものを食べてほしいと思ったので書いてみました。ニーガン以外はほのぼのしてます。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 特に何も始まっていない二人 #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿した作品と同じもです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      特に何も始まってないけれど仲よしなダリリクの詰め合わせ。

      CPというよりブロマンスなダリリクです。お互いに相手を大事に思ってることが滲み出るダリリクが好きです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち① #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックの家族を捜す旅に出たリックとニーガンだったが、過酷な世界での旅は簡単なものではなく……。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      長編なのでのんびり書いています。次の章を投稿できるのがいつになるのか不明です。
      完全に私得な話なのでお暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(後編) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク


      S7の頃。前作の続きで、ケガの治療のためにサンクチュアリに滞在するリックを世話する主人公がリックとニーガンの関係性を目の当たりにするお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      前編よりも主人公がリックに肩入れしています。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 彼らが愛したのは「   」です #TWD #セディリク #ゲイリク #ニガリク #妊夫 #腐向け ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S8終了後。
      ニーガンの子どもを妊娠したために孤立するリックを支えるセディク、ゲイブリエル、ニーガンのお話。セディクがメインです。

      ※注意
      ・男性の妊娠、出産、授乳の表現あり
      ・リックへの差別、迫害要素あり
      ・全体的に重苦しい展開


      CP要素があるような無いような微妙なところです。
      重苦しい雰囲気の話なのでご注意ください。
      本当に気が向いた時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 生まれ落ちた日 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S1初回。
      ニーガンが病院でリックを見つけるお話。
      S1初回にニーガンを放り込んだだけ。ニーガンの過去について原作の設定を使っているので未読の方はご注意ください。


      S1の時点でニガリクが出会っていたら最強コンビになったのでは?という妄想を形にしてみました。別人感が強いです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤い糸の憂鬱 #TWD #カルリク #ニガリク #腐向け ##TWD ##カルリク ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7のカルリク・ニガリク。
      リックとニーガンが赤い糸で繋がっているのが許せないカールのお話。
      特殊な設定がありますが、深く考えない方がいいかも?


      カルリクとニガリクで三角関係が読みたくて書きました。カールの前に立ち塞がるニーガン美味しいです。
      「カールは赤い糸が見える」という特殊設定がありますが、深く考えず雰囲気を味わって頂ければと思います。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 「大丈夫」の言葉 #TWD #ダリリク #腐向け #ケーキバース ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      リックが「ケーキ」であることを知ったダリルが思い悩むお話。
      ケーキバース設定を使っています。この話にグロテスクな要素はありませんが、ケーキバース設定自体がカニバリズム要素を含むので苦手な方はご注意ください。


      リックのことが好きすぎて思い詰めるダリルが大好物なので書いてみました。
      盛り上がりの少ない私得な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 夢の残骸 #TWD #ニーガン #ゲイブリエル ##TWD

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S9ep5後で、リックが死んですぐの頃。
      リックの死を悲しむニーガンのお話。ゲイブリエルがそこそこに出番があります。リック、カール、ジュディスの出番は少々。


      リックが死んだと知らされたらニーガンは悲しむんじゃないかと思って書いてみました。
      もしかしたらドラマの中で触れている内容かもしれませんが、「こういう妄想をしました」という報告書みたいなものだと思ってください。
      特に盛り上がりのない話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
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