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    ゆりきゃすカイすば小ネタログ■シトラス・サマー


     試着室のカーテンが小さく揺れて、紅茶色のくせ毛がひょこりと顔を出す。戸惑い気味の視線がこちらを向いているのに気が付いて、試着室の隣の壁に凭れていたカイトはカーテンの端を押しやり中を覗く。壁代わりの姿鏡の前で、ワンピースを着た昴が珍しく落ち着かなさげに立っていた。
     今日はオフ日だ。昼前から街へ出て軽く食事を済ませ、服でも見るかと買いまわっている最中に、ふと隣から声が聞こえた。かわいい。知らずのうちに漏れていたらしい呟きと視線が向かう先にあったのが、いま昴が着ているワンピースである。なぜだかいやに試着を渋る女を、気になるならとりあえず着て来いと少々強引に試着室に押し込んだのだった。
    「えっと、どう、ですか……?」
    「……別に、おかしくはねーよ」
     白を基調にライムグリーンとレモンイエローがあしらわれた、夏らしい色合いの、裾の長いワンピース。これなら服飾に拘りのある陽向でも文句は言わないだろうとカイトが思う程度には昴の長身にしっくりと馴染んでいたが、当の本人はどうやら思うところがあるようで、相変わらず困ったように眉尻を下げている。なにが気に入らないのかと尋ねると、「いや、服はすっごいかわいいんですけど」と弁解めいた答えが返る。
    「全然女の子らしくないあたしがこんなかわいいワンピース着るの、もったいないっていうか、なんていうか……」
    「は?」
    「こういうのってやっぱり伊織とか蒼星さんみたいな、細くてかわいい女の子が着るものかなあって」
     そう言葉を続けながら、昴が姿鏡に向き直る。幼さを残したまるいティーブラウンが、自身の輪郭を辿って残念そうに逸れてゆく。
     女性ながらによく鍛えられ引き締まった腕や背のシルエット。いまは布地の下にあるうすく割れた腹筋や、長い脚に無駄なく纏い付いているしなやかな筋繊維の束の感触も、カイトは知っている。確かに昴の体は筋肉質でしっかりとしており、「細くてかわいらしい」女性のそれではない。
     けれどもそれがなんだというのか。カイトは呆れた息をひとつ吐いて、持っていたハンガーを昴の手に押し付ける。
    「え、」
    「さっき見つけた。このへんなら合わせられるだろ」
     渡したハンガーには、ゆったりとしたつくりの薄手の上着がかかっている。昴が試着をしているあいだに偶然――あくまでも偶然に――目に止まったので持っていたものだ。
    「あの、カイトさん?」
     カーテンを閉め直しながら、あどけなさの残るひとみをいくらか瞬かせている昴と目を合わせる。言わんとするところを察せずにいるらしい昴へ、カイトはカーテンの隙間越しに口角を持ち上げ笑ってみせた。そして言う。
    「オンナノコらしくなくても、お前は『女』だよ」
     お前を『女』にした私が言うんだから間違いない。
     数拍分の沈黙のあと、言葉の意味を理解した昴の頬が愉快なまでにあざやかに朱に染まった。
    「な、なんでこんなとこでそういうこと言うんですか!」
    「それくらいは自分で考えな」
    「………………っ!」
     平均以上にゆたかな双丘のうえで、上着がぎゅうと抱きしめられる。少なからず筋肉質であろうが、全身をみれば紛うことなき肉感をもった女性の体だ。それで「女の子らしくない」もなにもないだろうとは思うのだけれども、未だに本人にはさほどの自覚もない様子なのである。
     ――まあ一応、自分がそばにいる日以外は着て出るなとあとで釘を刺しておくか。そんな算段を立てながら、カイトは今度こそ完全にカーテンを閉めた。


    ***
    20160830Tue.
    ■ゼロにふれる


     そっと内側へしずめた指先を、とろけるようなあつい潤みに迎え入れられて目眩がした。掠れた息をひとつ吐き、すぐそばにある薄く汗ばんだ額に唇を寄せてやると、強張っていた肩の力がわずかに抜けたのがわかる。
    「大丈夫か」
     さきほどからぎゅうとカイトの腕を掴んだままでいる相手にひとつきり尋ねれば、ほんの少しの躊躇を含んだ空白のあと、ちいさな首肯が返ってきた。「……ちょっとこわい、けど、」
    「あたしは、かいとさんがいい、です」
     熱に濡れた紅茶色のひとみが、カイトを映して緩慢にしばたく。睫の端が、眦に浮いた雫をすくってまばたくのが見えた気がした。
     受け入れるかたちにうまれた自分たちではつながることも、いのちを残すこともできない。そうわかっていても、この衝動をなかったことにはできなかった。熱い体を宥めつけるように、背中からまわした腕の力をほんのわずか強くする。浅い場所を指の腹でやわく撫でるたび、はじめて耳にする声のあまやかな音階が鼓膜を揺らしては寝室に溶けていった。


    ***
    20170314Tue.
    ■夏の残香


     夏のとあるオフの日、カイトさんがあたしをプールに連れて行ってくれた。それだけだとなんだか夏休みの宿題の一行日記みたいだけど、楽しかった!がからだじゅうに溢れかえっていて、カイトさんの家に帰ってきてふたりぶんの水着を手洗いしているいまのあたしの頭には逆にそのひとことしか浮かばなくなっている。もったいないから、頑張って思い出さなくちゃ。
     ――夏になったら一回くらいはプールに行きたいですね、なんて話をしたのはしばらく前のことだった。でもそのときはカイトさんはゆるい相槌をうつくらいのものだったから、あたしのほうがそんな雑談をしたのもすっかり忘れてたくらい。だからカイトさんが今朝いきなり「プール行くぞ」って言い出したときはびっくりして、持ってた箸を落っことしてしまった。
     当たり前だけどプールの用意なんてこれっぽっちも持ってきてなかったから、取りに帰ろうとしたところを捕まえられて(軽くとはいえ首根っこをつかむのはどうかと思う!)あたしでも知っている有名なブランドのロゴの入った紙袋を渡された。
     中にはあたしの好きなライムグリーンの、ふわふわでひらひらの水着。
     すっごくかわいい、かわいいけど、こんな見るからに高そうな水着着れません!そう言いたかったのに、「どうせお前のことだから、色気のない水着しか持ってないだろ。スポーツジムに行くんじゃねーんだぞ」だなんていじわるな顔で楽しそうに笑われちゃったらもう何も言い返せないというか、……まあ、カイトさんとのデートに着ていけるようなかわいい水着なんて持ってないのも言い訳できないくらいには図星だったわけで。それから一時間もしないうちに、あたしはボンレスはむのビーチボールと浮き輪と、わくわくする胸をカイトさんの愛車の助手席で膨らませながら、プールへ向かうことになっていた。
     どこのプールに行くんだろう、カンパニーからちょっと離れたところにある市民プールかな、なんて思っていたら、――着いたところは貸別荘の室内プール。時間単位で借りられる、プライベートプールって言うんだってカイトさんは教えてくれたけど、びっくりしすぎてあんまり詳しいことは思い出せない。
    「私が選んだお前の水着を、なんでほかの連中に見せてやんなきゃいけないんだよ」
     あと私のも新しく買ったやつだから。そう言っていたずらっぽく笑ったカイトさんは頭がクラクラするくらいきれいで――そのあとのことは、内緒にしておきたい。思い出すだけでどきどきする、カイトさんとふたりだけのひみつ。
     まるっきり夢だったんじゃないかと思うくらい非日常な時間を思い出しながら水着を濯ぎ終えて、タオルで水気を取ったあと、ベランダへ干しに行く。夕方になってもまだ外は暑くて、ガラス戸を開けた途端に薄く汗が滲んだ。広々としたリビングにはヒナタが大人しくしているだけだったから、あたしはそのままぺたぺた歩いてベッドルームへ向かう。ドアを開けると、オレンジ色の夕陽の差し込むそこで部屋着に着替えたカイトさんがのんびり寝そべっていた。
    「カイトさん」
    「ん」
     背中を向けているカイトさんを小さな声で呼ぶと、カイトさんが体を半分だけひねってこっちを振り返る。特に何も言わずにもとの方向へ戻っていった薄紫の両目に呼ばれるみたいに、自然とベッドの端に腰を下ろした。カイトさんのおでこにかかった前髪をそっと払うと、そのまま指先を捕まえられる。のそりと起き上がったカイトさんの手はいつもより少しあたたかかった。
    「眠いですか?」
    「べつに、ガキじゃあるまいし」
     体はあたしのほうが大きいけど、カイトさんの手だけはあたしよりも大きい。大きな手のひらと、すらっとしたかたちの、長い指。カイトさんが音楽を作りやすいように神様がくれたものなんじゃないかって、あたしは勝手に思っているけど、きっと間違ってないと思う。かっこよくて優しい(わりとよくいじわるだけど)カイトさんの手が、あたしは好きだ。
     そのカイトさんの手が服の裾から潜りこんで、あたしの背中をするりとすべってブラのホックを外す。いたずらに肩紐を落としながら指先でくすぐるみたいに脇腹を撫でられて、思わず笑い声を上げて身をよじった。
    「コラ、逃げんな」
    「だって」
     そう言われてもくすぐったいものはしょうがない。中途半端に脱がされたブラもむずがゆくて、下着の肩紐とシャツの袖から腕を抜こうとしたところをそのまま小さい子にするみたいにすぽんと全部脱がされる。ブラのワイヤーや服の支えをなくしてたゆんと落ちた胸のさきをきゅっとつままれて、さっき上げた笑い声とは完全にちがう声が出た。
    「や、カイトさ……っ、待っ、あ!」
     あたしもカイトさんの服を脱がせたいのに、つまんだそこにかぷりと噛みつかれて肩が跳ねる。熱い舌と口のなかの温度に、自分の体がとろけだすのがわかった。
    「っくく、」
    「も……、わら、わないで、くださいっ」
    「無理言うなよ」
     あたしの指がいつまで経ってもカイトさんの下着のホックに辿り着かないのを、意地の悪いことにカイトさんが笑う。こういう声で笑っているときのカイトさんは、こんなことをしてるのにほんとに子どもみたいないじわるをしてくる。誰のせいだと思ってるんですかって文句も全部言わせてくれなかったから、ホックを外すのは諦めて部屋着のショートパンツのゴムにぱっと片手をかけた。
    「あ、おい待てお前っ」
    「やですっ」
     カイトさんだって待ってくれなかったじゃないですか、雰囲気とかもうそんなの、あたしは知りませんからね!力が抜けかけてる手でなんとかカイトさんの腰骨のあたりまでショートパンツごと下着を下げて、下着のなかに指先を潜り込ませる。熱い肌の、いちばんやわらかい場所まであとほんの少しのところで、隙をついて思いきりベッドに押し倒された。ふたりぶんの体重を受け止めたベッドが、ばふ、と大きな音をたてる。
    「うわっ」
    「ほんっ……といい度胸してんな、昴」
     カイトさんの薄紫のひとみが、茜色のなかでらんらんと光る。……ああ、これは、やっちゃった、かもしれない。仰向けになったあたしの首筋を、すっかりスイッチが入った様子のカイトさんが弱く噛む。甘噛みしたところを舌でなぞられるのがくすぐったくてぞわぞわする。身じろぎした拍子に鼻先をかすめた黒髪からは、プールの塩素と、カイトさんのにおいがした。


    ***
    20170715Sat.
    ■にたものけもの


     ぽふん。洗いたてのシーツとやわらかなベッドマットが、昴の体を受け止める。子どものような仕草で寝そべった長身を横目に見ながら、カイトはベッドの端に腰を下ろした。
    「あー、冷たーい……気持ちいー……」
     冷房のきいた寝室の空気をたっぷりと含んだシーツが、湯上がりの肌に心地好いらしい。昴は弛緩した声とともに、あちらこちらと寝返りを打ちながら冷えたシーツの感触を味わっている。肩まで捲りあげられたシャツの袖と、ショートパンツの裾から惜しげなく晒されたしなやかな四肢が、シーツの波間をするりと泳ぐ。よく鍛えられ、薄く割れた腹筋がシャツの裾から覗いているのに気がついて、思わず手を伸ばしていた。
    「うわ!?」
    「ガキみてーに腹出してんなよ。っていうかお前な、もーちょっとイイ声出せ」
    「なんですかそれ!」
     いつものようにからかいながらついと指先で腹筋を辿ってやると、無防備に弛緩していた体が途端に逃げをうつように跳ねる。
    「ちょっ、カイトさん、あは、くすぐったいですって、そこ無理っ、あはははは!」
     この大型犬は大概くすぐりに弱い。身をよじって笑う昴の横腹をつかみ、マウントポジションを奪取するべく体重をかけようとすると、それを察したらしい紅茶色の瞳が酸素不足に潤みながらもぱっとカイトをねめつけた。
    「も、むりって、言ってるのにっ!」
    「おわっ……!」
     負けず嫌いな性分のあるところに、散々擽られて力の抜けた四肢を強引に動かしでもしたものか、想像よりも強い力で体勢を返される。ぼふん!
     いささか間の抜けた音とともに仰向けに寝台へ縫いとめられる形になったカイトと、思いのほか近くにあった昴の視線がかちりと噛み合う。うすく濡れた双眸と、上気した頬にふと夜のにおいが香って、鼻先を掠めていったような気がした。
     年甲斐もなく取っ組み合ったせいで乱れた前髪が、目元にかかって煩わしい。手で払う代わりにちいさくかぶりを振ると、かすかな絹擦れの音が耳元で響く。晒した首筋を追う視線はまるきり野生のけもののそれで、甘やかな衝動がぞわりと背筋を撫で上げた。
    「……えっと、あの、」
     どうやらこの幼い獣の嗅覚にも、たしかに夜のにおいが届いたらしい。戸惑いを含んだ中低音を聞きながら何食わぬ顔で指先を持ち上げ、肘を抱え込むようにして少々強引に姿勢を固定する。
    「つかまえた」
    「ッ……!」
     耳元で囁いて、ふふん、と笑えば、掠めるほどそばにある頬がかっと熱を持つ。体勢を整えるべくわずかに腰を引きかけたところを左足を絡めることで遮りながら、同時に右膝を立てて内腿の付け根へ押し当てた。
    「ひゃ、っ!?」
     ショートパンツ越しに軽く膝頭を押し付けて、繊細な部分を撫でるように擦る。あからさまで、けれども遠回しな刺激に、紅茶色のひとみが困惑を含んで揺れる。腕の拘束を解くよう雄弁に訴えかけてくる呼び声には意地悪く気が付かなかったふりをして、そのままやわらかな口唇に唇を寄せた。夏物の薄いシャツ越しの豊かな双丘がカイトの胸にふれて、あまい感触と温度で熱を煽る。
    「ん、……は、……ッカイ、トさん……っ!」
    「なんだよ」
    「べつにっ、あたし、逃げませんからっ……!」
    「知ってる」
    「なっ……」
     正面から目を覗き込んで捕らえれば、この獣は逃げてはいかない。カイトがその程度のことを知らないはずはないと、昴とて知っているだろうに。息継ぎの合間に上がった抗議の声を躱し、煽るようにもう一度膝を動かして、カイトはにやりと口角を吊り上げる。
    「……ほら、私の膝貸してやるから」
     いささか意地の悪い顔をしている自覚はあるけれども、いまはどうにもそんな気分だ。
    「だから上手に誘ってみな?」
     さて今夜はこの獣はどう出るか。くつくつと喉を震わせて笑いながら、カイトは熱い耳朶にかるく歯を立てた。
     ――とどのつまりが、負けず嫌いはお互いさまというもので。



    ***
    20180214Wed.
    ■きれはし

     茜色のなかで見る、やわらかな赤毛と紅茶色のひとみが好きだ。網膜を灼く色彩に目を細めながら手をのばして、機嫌良く棒付きアイスを頬張っていた色気のないくちびるをあまく食んだ。間近で震えた睫を濡らすうすいしずくは通り過ぎた春の雨に似て、ふと呼吸を忘れてしまうほどやさしくてあたたかい。
    ふたりへのお題ったー:カイト嬢と昴ちゃんへのお題/『呼吸を忘れてしまうほど』)


    ---


     湯をしたたらせたままだった明るい紅茶色の短髪に、柔らかなタオルをかぶせてわしゃわしゃとかきまぜる。大型犬の無防備な笑い声と一緒に、しっとりと濡れた髪と首筋からあまい石鹸の匂いが香って自宅のリビングの空気に溶けていった。鼻先を掠めたそれに、まばたきをひとつ。
     石鹸のにおいってこんなに甘かったっけか。シャンプーかボディソープでも換えたのかと、好奇心に誘われるまま湯上がりのうなじに鼻先を寄せる。大げさに驚いてこちらを振り返ったまるいティーブラウンを見て、ああ、違うな、とひとりで勝手に納得した。
    「カイトさん?」
     隣に座る昴が私を呼ぶ。すっかり聴き慣れた呼び声でさえ、ずいぶんあまく鼓膜を揺らして頭に響く。
     逃がさないように首筋に腕をまわして、風呂の湯の温度を残した耳たぶをやわく食む。腕に拘束されたままくすぐったげに肩を竦めた昴が、ソファの上でごそりと身じろいで律儀に私のほうに向き直った。紅茶色の瞳が、じっ、とこっちを見ることおよそ数拍。
    「んだよ」
    「カイトさんが言うんですか、それ」
     体の向きを変えたおかげで、なにやら楽しげに笑う昴の吐息がじかに私の肌にふれる。喉元をくすぐるそれの心地好さと、じゃれつく声の素直な響きに気をよくして、そのまま黒地のキャミソールの裾に指先をつたわせた。昴の頭の上にのっていたはずのタオルは、知らないあいだに横に滑り落ちている。
     薄く汗ばんでいるせいで少しばかり肌にはりついているキャミソールをひとさし指の先で剥がして、薄い布地の内側に潜り込む。すべらかでやわらかい肌。熱い。なんとなく、昴のなかにふれるときのことを思い出してぞくりとした。
     手の甲で布地を押し上げていきながら、胸の谷間のあたりまで辿り着いたところで手を止める、というか、押し上げたキャミソールの生地が胸に引っかかったと言うほうが正しい。当の本人は動きづらそうにしているときもあるからそれほどありがたくもないのかもしれないが、とにもかくにも相変わらずでかい胸だ。キャミソールのなかに窮屈そうに押し込められているそれにふれると、かすかに上擦った声が上がる。私の手のひらにゆうにひとつかみずつはあるなめらかな感触と重みが気持ち良くて、ついむにむにと構ってしまうのは毎度のことだ。
    「ずいぶん大人しいじゃねーか、珍しい」
     いつもならくすぐったがる声のひとつやふたつくらいは飛んでくるはずが、小さく身じろぐ程度でおとなしく身を任せている昴に気がついて、間近にある紅茶色のひとみを覗き込む。うっすら潤んだ両目がまっすぐに私を見返して、遅い目瞬きとともに口を開く。
    「カイトさんがおなかすいた顔してるから、なんか、つられちゃって」
     ――どうやら、自分で思っているより顔に出ていたらしい。気恥ずかしさを誤魔化すために熱い首筋に鼻先をうずめると、昴の温度にあたためられた、いつも通りの石鹸のにおいが、ひどくあまやかに体内へ沁みていった。


    ***
    (フォロワさんよりお題/「鼻先で掠る先」)

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    2018/06/30 23:03:38

    ゆりきゃすカイすば小ネタログ

    #R15 #カイすば #性別反転

    カイト嬢と昴ちゃんの小ネタログ。ふんいき破廉恥ぎみ。■カイすば以外の子は名前しか出てきませんが全員そっくりそのまま性別がひっくり返っている世界線なのでご注意ください。


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    ##腐向け ##二次創作  ##Kaito*Subaru

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