言葉探し「とっくり、しりとりしないか?」
夕飯の食器を片付けて紅茶をテーブルで飲んでいると、突然東海林が春子に提案してきた。
「は??何でそんな子供のような遊びをあなたとしなければいけないんですか?」
「なんだ、負けるのが怖いのか?俺はしりとり結構強いんだぜ」
「ボキャブラリーの少ないあなたに負けるわけがないでしょう」
負けず嫌いな春子は東海林の挑発についのってしまい、しりとりを始めることになった。
「じゃあまず俺から…紅茶の、や」
「焼きそば」
「バス」
「ストレートパーマ」
「饅頭」
「馬面」
「ら…ラクダ」
「ダメンズ」
「ちょっと、ストップ!!お前…何か俺の悪口みたいなことばかり言ってないか??」
「そんなことはありませんが何か?」
「そうか…じゃあ気を取り直して
ズ…、ず、図工」
「うるさい」
「おい、単語じゃないだろそれは」
「単語でないとダメだとは聞いてません」
「なんだと?じゃあ……一緒にいよう」
「嘘」
「そんなこと言うなよ」
「ヨーグルト」
「急にもどすな!!…トマト」
「トキ」
「キ…キスしたい」
てれくさそうに頭をかきながら東海林は言う。
春子は紅茶の湯気越しにその表情を見て、黙って椅子を立つ。
「いいですよ」
体を伸ばして、東海林の頬にキスをした。
春子の髪の匂いかする、さっき入ったばかりだからかバラの甘い香りがつんと鼻にしみた。
東海林は春子の頭に触れて唇を寄せた。
口の中は紅茶で暖かくなっている、アールグレイの濃い味が舌にも染み込んでくる。
唇を離すと、少し糸が垂れてすぐに途切れた。
春子は微笑みながら、東海林に言う。
「次は「よ」ですよ」
「え?まだ続けるのか?」
「あなたが負けるでやめません」
「俺が負ける前提なのかよ!!ちょっとまて…よ、よ、よ、欲求不満!!」
「負けましたね」
「あ……。くそーっ!!」
それでも、キスできたしまぁいいかと思う東海林だった。