2月15日【2月15日】
泥だらけにされた靴下が、雨の降る校庭に転がっている。私の物ではない。確か、友人の物だ。
彼女はここ最近、複数人から疎まれていた。恐らく、これも嫌がらせの一巻なのだろう。彼女の才能と努力から生まれた作品は、多くの人を虜にしていた。私も魅了された一人だった。だからといって、こんなのはあんまりだ。
両手が汚れるのも厭わず、拾い上げる。悔しくなって、手にした靴下を強く握った。本人に知らせるのは気が引ける。どうするべきだろうか。
誰かに呼ばれた気がして振り向いた。
視界が飛んだ。
気がつけば自室の布団に寝転がっていた。外は薄暗い。東の空が白んでいるのが窓から見える。今まで何をしていたのかが思い出せない。
突然、扉が勢いよく開いた。飛び込んできた彼女は、友人が居なくなってしまったと告げる。
先程の、あの靴下の持ち主がいなくなったのだと。
飛び起きて、全ての部屋を調べた。もちろん、見つかることは無い。妙な胸騒ぎがする。
もう一度自室に戻ってきたとき、甲高い悲鳴を聞いた。はやる心臓を抑えて、窓際で立ち尽くす彼女の元へ歩み寄る。
窓から顔を出して、下を覗く。
血溜まりと、おかしな方向に曲がった左足が見えた。
いなくなった友人だった。