1月19日【1月19日】
父方の祖父母の家に来ていた。
良い感情なんてない。しかし、連れてこられたならここに居るしかないな……と思いつつ、なんらかの行事のために集まった親戚達の相手をしていた。時間が途方もなく長く感じた。他愛ない会話を交わして、そのまま集まり自体がお開きとなった
ゾロゾロと帰っていく人の群れに揉まれつつも見送りを済まし、身内だけになった部屋で溜め息を吐く。
残った身内達の愚痴大会が始まった。やれあの人はここが悪いだの、やれこの人は昔あんなことをしただのと、そんな言葉が飛び交う。
もう沢山だ。
大体、集まる度にこんな話をするのなら、こういうこと自体しなくていいじゃないか。何が楽しくて笑っているのか。
「抜け出したい?」
突然、目の前に現れた少年がそう尋ねてきた。高めだが落ち着いた声は、どこか含みを持った響きで続ける。
「薄々気付いてるだろ。何をしたって、ここじゃ叱られない。だって、ここは君の世界なんだから。それなら全て壊したっていいと思わない?」
燻っていた心に、その言葉はするりと入り込んできた。差し出された少年の手に、自らの右手を重ねる。
「ここから出たい。こんな場所、壊れてしまえばいいのに」
震える声で、そう言った。少年が目を細めた。
「じゃあ、壊す許可をちょうだい」
もう躊躇いはない。大きく息を吸って、叫ぶ。
「お願い、全部壊して!」
「仰せの通りに」
仰々しくそう言って、少年は取り出した槍で目の前の壁を打ち抜いた。衝撃音と共に、破片が飛び散る。
音を聞いて、周囲の人が何事かと駆け寄ってきた。そして、私達の姿を見るなり、明らかな敵意を向けてきた。
怯む私と反対に、少年は人の悪役のような表情で槍を振るう。ばたばたと敵が倒れていく。彼の横顔は、狂気を感じるまでに楽しげだった。
文字通り、あとには何も残らなかった。少しの罪悪感と、晴れ渡るような心が変におかしくて、思わず笑いが止まらなくなった。少年と二人で、血溜まりの中で笑いあっていた。