12月29日【12月29日】
死んで怨霊と化した女子高生を助け出すため、儀式を行うことになった。
1.半歩ずつ歩き、決められた歩数で囲いの中に入る。
2.階段を半歩ずつ上がり、祭壇の一段前で待つ。
3.祭壇に向かって祈ると、幽霊が見えるようになる。
4.聞こえてくる声に従って、幽霊に捕まらないように指示をこなす。
手順通りに祈りを捧げると、全身が黒い煙のようなものに覆われた少女が公園の中心に立っているのが見えた。こちらをじっと見つめている。儀式を行った仲間と共に、指示をこなすため走り出した。
一定時間が経過すると休憩をすることができた。休憩中は少女にまとわりついていた靄も消えて、生前に近い姿に戻るようだ。直接喋ることは叶わなかったが、儀式名で呼んでみると、照れたような笑顔を返してくれた。あれは、生前の愛称だったのだろうか。
休憩時間が終わって走り回っている内に、最初に出された指示を全て終わらせることができた。再び怨霊となった少女に捕まらないように、最後の指示を見つけに行く。公園内はあらかた探し終えている。となれば、残るは公園の下、下水道か。なぜか外れていたマンホールを退けて、階段を降りる。水路の中に小さな箱があるのが見えた。拾い上げて箱を開けた瞬間、誰かの記憶が流れ込んできた。
少女が、病気を患ってしまった親を元気づけようと外に連れ出して、公園を散歩している。しかし、少女は誤って、当時開発途中だった下水道に落ちてしまった。 工事会社は、人間が誤って落ちたなんて想定しなかっただろう。少女の遺体は見つかることのないまま、下水道が完成してしまった。
その後、設備の老朽化が進む内に、空いた穴に誤って動物が落ちる事故が数回落ちたものの、工事会社も管理会社もそれをなかったことにした。公園を訪れる人間や工事会社、管理会社の人間の負の感情と、女の子や動物の無念が合わさって、悪霊が出来上がってしまったのだった。
はっと我に返る。目の前に、少女と動物達が立っていた。誰かに真実を知ってほしかったのだろう。すっかり浄化されて、元の姿を取り戻していた。少女が口を開く。
「また、会える?」
「すぐ会えるよ、きっと。だから、大丈夫だよ」
そう答えると、彼女達は嬉しそうな顔をしたまま、光の粒になった。
今度会う時には、もっと話せるだろうか。彼女達が少しでも楽になれるように、心の中で祈った。