3月27日【3月27日】
今日は卒業式だ。
今年は市民会館で式を行うらしく、ホールは卒業生や在校生で賑わっている。ようやくこの学校ともおさらばだ。解放感のままに式を抜け出して、館内を歩き回っていた。人はすっかり出払っており、廊下には私しかいない。
吹き抜けまで来たとき、階下におかしな人影が見えた。この時期にしては違和感を覚えるほどに服を着込んでいる。
「全員を殺すつもりはないからな」
「休憩を入れさせろ、そこで逃げた奴らは逃がそう」
「事件を起こすわけだからな」
彼らがリュックサックを開く。真っ黒い銃火器が見えた。
休憩時間になったのか、ホールから人がぞろぞろと出てくる。階段を駆け下りて友人を見つけ出し、ろくに説明もしないままに手を繋いで走りはじめた。しかし、人並みに揉まれて手が離れてしまった。脳が焦燥感に支配される。
少し回り道をして荷物置きを見に行くと、彼女の靴とカバンはなくなっていた。無事に逃げることができたようだ。安心したが、立ち止まっている暇はない。
私も自分の荷物を取って、外へ出ようとする。館内の地図は見当たらない。闇雲に、人の群れとは真逆の方へ向かう。出口が見つからずに休憩時間が終わろうとしていた。
近くにいた人に外に出ろと伝えるが、当然誰も取り合ってはくれない。諦めて出口を探す。急がなければ、巻き込まれる。
「右だ」
誰ともわからない声だったが、何の手がかりもない今、これを信じる以外の道はない。長い長い廊下を駆け抜ける。
角を曲がった。扉が開け放たれているのが見えた。外から射し込む光は眩しかった。
背後から聞こえた轟音に耳を塞いだ。