6月23日【6月23日】
ひとりで住宅街を走り回っていた。
先程まで一緒にいた人物を探しているのだ。彼は私を置いて、知らぬ間にどこかへ行ってしまった。
沈みかけた夕日が、辺りの家々を橙色に染めている。路地裏を覗くと、道の先を右へ曲がる誰かが見えた。先回りをしようと走る。出てきた人を捕まえようとしたが、彼ではなかった。
走り回る。捕まえる。彼ではない。
また走り回る。また捕まえる。また彼ではない。
そんなことを繰り返している内に、日は沈みきって、空で星が輝き始めた。街灯なんてない、真っ暗な路地を走り続けた。
息が切れる。足がもつれる。限界だ。アスファルトに倒れこむ。もう諦めてしまおうか。
そう思った瞬間に、鐘が鳴った。
時間切れのようだ。
道の先にある橋の上で、美しい白髪をなびかせて川を眺めている人物を見つけた。けれど、もう遅い。
カチリ、何かが当てはまる音がした。でも、間に合わなかった。足元でぽっかりと口を開けた、果てのない真っ黒な穴に落ちていく。
伸ばした手は届かなかった。最後に振り絞って叫んだ名前だけでも、届いていてくれと願った。