4月1日【4月1日】
部屋でネズミを飼っていた。
よく懐いていて、名前を呼ぶと素早く走ってくる。触り心地もとても良く、飽きるまで撫で続けるのがここ最近の日課になっている。
猫なで声でネズミを思う存分愛でてから、祖父の家へと出かける。
祖父の家に入ると、祖母と祖父がいた。
祖母は既に他界したはずなのに。
いや、あれは夢だったのだろうか。多少言葉を交わして、すぐ家を出た。動揺してはやる心臓を抑えることはできなかった。幸い、不審がられはしなかったので一安心した。
外に止めてあった自転車に乗って、商業施設に行くことにした。
道中、アスファルトが抉れていた。良くない予感がして、咄嗟に道を変える。
背後から大きな音がして振り返ると、あの道路を通った大型トラックが、反対側の竹林へと倒れていくのが見えた。
衝撃的な光景だったはずなのに、商業施設に着いた頃には記憶の彼方へと消し飛んでいた。自転車を置き場に停めて中に入る。
少しの間ぶらついていたが、特に用事もない。外に出るとパラパラと小雨が降っていて、薄暗くなってきていた。
自転車置き場に戻ると、停めたはずの自転車が消えていた。
最悪、徒歩でも帰れなくはない。しかし、夕飯までに帰ろうとすればあの抉られた道を避けては通れない。強行した場合、良くて重傷、悪くて死亡といったところだろうか。笑えない。
突然袖を引かれて、悲鳴を上げる。振り返ると、幼児がこちらを見上げていた。
「困ってるの?」
「そう、だね」
「びっくりしないでいいよ。何があったのか教えて?」
幼児の目がきらきらと星のように輝く。それを見た途端、口から自然と言葉が紡がれた。
「自転車が見つからないんだ」
「そっか、わかった。私に任せて」
幼児が私の手を握ると、そこから光が溢れた。眩しくて目を瞑る。しばらくして、風の音が止んだ。
目を開くと、見慣れた天井があった。枕元で、ネズミが丸くなって眠っていた。