5月29日【5月29日】
見知らぬ山小屋に集められていた。
集められた人間達に木の札が配られていく。札の裏には何かが書かれている。
自分に配られた札をひっくり返すと「一」という数字と自分の名前が書かれていた。配り終えるまでに時間がかかっている。持っておくのが面倒くさくなって、近くの棚の上に札を置いた。
全員に札が行き渡ったのを、係員らしき仮面を被った人間が確認して、私達は次の間に通された。
椅子に座っている老婆がいた。私達が全員揃うと、老婆はしゃがれた声で説明を始めた。
曰く、札に書いてある数字と自分の名前を他者に当てられると死ぬ。そうして最後まで残った者だけを逃がしてやると。
辺りは騒然とした。
私はそこでようやく、自分が前の部屋に札を忘れてきたことに気がついた。運がいいのか悪いのか分からないが、周りの人々が札を隠してさらに先の部屋へと走り始めたのを見ると、少し運が良かったのかもしれないと思った。
札を持っていない時点で負けるはずはないのだが、念には念を入れて、教室のような部屋の教卓の下に隠れ続けていた。
そうこうしている内に、生存者は残り四人まで減っていた。ガタイのいい男性が、少女に名前と数字を当てられて倒れるのが見えた。少女も良心の呵責に耐えられなかったのか、自分で自分の目と喉を潰して死んだ。
最後の生存者である青年を探しに行く。廊下には死体が積み重なっていた。足音がよく響いた。
風呂場の扉を開けると、彼がいた。私を見て警戒をむき出しにしてきたので、敵意はないと伝える。
「何もしてないのに生き残ってるのはおかしいと思ったんだ。それに、私は最初の部屋に札を忘れてしまった」
何より、自分が生き残るくらいなら君に生きてほしい。
自分から名前と数字を告げる。青年は納得のいかない表情をしていたが、最後には了承してくれた。
青年が私の名前と数字を口にする。しかし何も起こらない。二人とも首を傾げる。
「もしかすると、札を置いてきた時点で別の扱いをされてるんじゃないかな」
青年が呟く。こうなれば最終手段だ。青年に頼み込んで、浴槽で首を締めてもらうことにした。
意識が霞んでいく中で、青年の苦しそうな顔が見えた。