12月1日【12月1日】
学校の玄関の前を通りがかった。
ガラス戸の外で、男が斧を振り上げたのが見えた。少女の悲鳴が上がった。
止めようにも、駆け寄る時間はない。手元にあった大玉の飴を袋ごとガラスに投げつけた。コツンという音が鳴るのと同時に、ガラスに血が飛び散った。
間に合わなかった。手を握りしめる私と、ゆらりと顔を上げた男の目が合った。男がドアノブに手をかけた。咄嗟に反対向きに走り始めた。
校内を必死に逃げ回った。人は誰もいなかった。息を整えようと壁に手をついた途端、ぬるりと中に吸い込まれた。
フロアとフロアの間の、隠し部屋のような場所に来てしまったようだ。床と壁はコンクリートでできているようだ。一面灰色のこの空間はかなり小さなもので、人が一人ようやく入れる程度の大きさだった。
おそらく、今までも誰かがここを使っていたのだろう。ホコリを被った荷物が放置されている。
背負っていたカバンを置いて、もう少し奥まで進んでみる。
行き止まりと書かれた赤いパネルを外すと、道が続いているのが見えた。這いつくばって進んでいると、突然広い空間に突き当たった。
立ち上がって辺りを見渡す。少し上に扉があった。あそこが出口だろうか。
つま先立ちで扉を開ける。手を出してみると、誰かに手を掴まれた。驚く間もなく、外に引きずり出された。
あの男が居た。