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    糖分過多過多パウダーシュガーシュガー「あッ、ちょっと、やめて、ロナルド君!」
    「んん、どらこ、どらこ~」

     ああ、これが配信事故ってやつかと、下腹部を撫でまわされながら思った。

     ヌイッタ―にスペースという機能ができた、らしい。よくわからないのだが、ちょっと前に流行ったなんとかハウスみたいな奴で、フォロワーさんと音声通話が出来るという。何を喋ればいいのかよくわからないけれど、フォロワーさんに是非と言われたのでやってみることにした。
     まずはアプリを開いて、十字のボタンをタップする。すると選択肢がいくつか出てくるので、その中の「スペース」をタップする。次にスペースのタイトルを入力する欄が出てくるので、とりあえず今回は「ドラドラちゃんと喋ろう!」にした。あとは、誰かが入ってくるのを待つだけ。すると一分と経たずにフォロワーさんが入ってきた。

    「あ、蜜柑さんこんばんは」

     蜜柑のアイコンの蜜柑さんは、料理配信の常連さん。いつもコメントをくれる人だ。アイコンと名前の下に「リスナー」と表示されている。ヘッドセットを装着して、さっそく話しかけてみる。

    「えっと、これ、どうしたらいいのかな」

     タイムラインを見ながら質問を飛ばすと、フォロワーさんが操作方法を教えてくれた。蜜柑さんのアイコンをタップして、「スピーカーとして招待」をタップする。

    「招待してみたけど……これでいいのかな」

     すると暫くの間の後に、蜜柑さんのアイコンの下の文字が「発言者」になった。

    『あ、こんばんはー』
    「こんばんは! 鈴の鳴るような可愛い声だね」
    『またまた~』

     聞くに、蜜柑さんは女性のようだった。ころころと丸っこい印象のかわいらしい声だ。

    「本当に喋れるんだねぇー……あっ、いっぱい来たいっぱい来た。これどうしたらいいの?」
    『喋ってほしい人をスピーカーとして招待してもらって、あ、でも人数には限りがあるので』
    「ほうほう」
    『リスナー側からも喋らせてーってリクエストを送ることができるので、それはドラドラちゃんの采配でいい感じにしてもらって』
    「なるほど」
    『あ、ただたまに変な人もいるので、それは気を付けてもらって』
    「そうなの? えーまってまってまって、いっぱいリクエスト来た、え、どうしよ。とりあえず適当に承認するね」

     目についた数人を適当に承認する、と、皆が一斉に喋り始めた。

    『ドラドラちゃんこんばんは~!』
    『はじめまして!』
    『うわあまさかドラドラちゃんと喋れるなんて……夢か?』
    「現実だよ現実! ふふ、皆私の事大好きなんだから」
    『好きだよ好き! 畏怖~!』
    『畏怖畏怖~!』

     熱心なファンの皆はいつも私を畏怖してくれる。畏怖欲が満たされまくって、正直とっても気持ちが良い。どこぞの若造も見習ってくれたらいいのに。

    「ありがとー、とりあえずやってみたけど、えー、これ何喋ったらいい?」
    『なんでも。ドラドラちゃんが喋りたいことを喋ったらいいんだよ』
    「えー……そうだな、みんな何か質問とかある?」
    『あるある! あの、お菓子作りのことでアドバイスをもらいたいんですけど、』

     そう言って話し始めた蜜柑さん。マカロン作りに挑戦しているらしいのだけれど、中々上手くいかないらしい。

    「あー、マカロンは難しいからねぇ」
    『レシピの通りに作ってるんですけど……』
    「うーん、オーブンの癖とかあるし、その日の湿度とかによって変わってくるから、一概にどうとは言えないんだけど……」

     蜜柑さんの話を聞きながら、失敗理由を探っていく。実際マカロンは難しい。その日の気温や湿度、混ぜる回数や乾燥させる時間、オーブンとの相性などなど、どれもが失敗の原因に成り得る。さて蜜柑さんの場合は……と、不意に両肩にずしりと何かが乗った。

    「えっ、何⁉」

     瞬間的に砂になりつつも、気合で再生して振り返る、と、そこには顔を真っ赤にした五歳児がいた。え、いや、顔、赤ッ!

    「え、何? ロナルド君?」
    「どらこーただいまぁー」

     そう言って、ぎゅっと抱き着いてくる大きな五歳児。呂律が回っていない。体温がいつもより高い。アルコール臭い。うわ、これ、

    「酔ってる⁉」
    「酔ってない~」

     すりすりと頬ずりしてくる五歳児。うわっ酒臭ッ! 顔あっつ! 最悪だ! 身をよじって逃げようとするも、がっちりと太い腕がそれを許さない。と、床に落ちているヘッドセットが目に入った。いけないいけない、と急いで装着する。皆私の急な不在にざわざわしていた。

    「ごめんごめん、ちょっと五歳児がね」
    『五歳児? ロナルドさん?』
    『何かあった? 大丈夫?』
    「あーいやごめんなんでもない。ってあっ! もう! 何⁉」

     ロナルド君のいつもより熱い手が服の中に侵入してくる。まってまってまってなにこいつ今何しようとしてる⁉

    「なぁ、どらこー、したい」
    「死体⁉」
    「どらこ、えっちしよ」
    「しないが⁉ 私今何してるかわかってる⁉」
    「んー、わかんない、説明して?」

     甘えた声を出しながら首筋に唇を寄せてくる五歳児。うわー! ちょっと可愛いけどやめろやめろ洒落にならん!

    『ドラドラちゃん? どうしたの?』
    「あ、いや、なんでもない! そうマカロンの話だったよね?」
    「どらこー? 誰と喋ってんの?」
    「うるさいな! あー、違う違う、ごめんね皆、ちょっと待ってて」

     勢いよく振り向く。目が合うと、ロナルド君はへにゃりと笑った。うわっ可愛いな! って違うそうじゃなくて! 一旦ヘッドセットを外すと、私はウィスパーボイスでロナルド君に詰め寄った。

    「私、いま、配信してる、わかる⁉」
    「わかんないー」
    「わかれよ! 忙しいんだ! ちょっかいかけてくるな! じっとしてろ! 黙ってろ! わかった!?」
    「んー……」

     しょぼしょぼと小さくなるロナルド君。私の肩口に顔を埋めて、じっと押し黙った。よしよし、素直な子は大好きだ。とりあえずはこれでと、再びヘッドセットを装着する。

    「ごめんごめん、おまたせ。えーとマカロンのピエが出来ないんだっけ? 色々理由はあると思うんだけど、聞いた感じだとマカロナージュ不足かも……ひゃッ」

     ロナルド君の熱い指先が、脇腹を直に撫でた。そのまま肋骨のラインをなぞるように、指先がするすると肌を滑る。えっ、何、馬鹿なの!? 私いま配信してるんだけど!? 世界と繋がってるんだけどわかってる!?

    『マカロナージュって、どのくらいやるのが正解なんですか?』
    「あ、それはね、カードで切りながら、様子を見るんだけど、ん、ちょッ、あ、」

     指先が肌を撫でる撫でる。焦らすようなその動きに、思わず身体が熱くなる。変な声が漏れそうになって、思わず唇をぐっと噛んだ。いやだ、こまる、しかし逃れようにも馬鹿力がそれを許さない。

    「どらこー……」
    「やだ、やめてよっ……」
    『ドラドラちゃん?』
    「あーなんでもないなんでもない! マカロナージュする度に、カードで持ち上げて様子を見るんだけど、んっ、こう、リボン状に落ちるようになったら正解で、あッ、やだ、やだァ……」

     じりじりと身体を這う熱に、思わず視界が滲む。頬が熱くなるのを感じる。と、五歳児が私からヘッドセットを奪った。え、と思う間もなく、ロナルド君がマイクに向かって大声を上げる。

    「あのな、おまえらが誰かは知らないけど、どらこー俺のだから!」
    「え、ちょっと、」
    「俺のだから!」
     そう言うと、ロナルド君はスマホの電源を勝手に切った。かと思うと、急に身体がふわりと浮いた。
    「え、え、やだ、なに!?」
    「ベッドいくぞ」
    「や、やだァ……」
    「やだって顔してねえじゃん。……なぁ、ネット上の奴らなんかより、俺の相手してくれよ」

     そう甘えるように言われ、頬に唇を落とされる。うわあ、もうむり、糖分過多過多。私は心の中で白旗を上げると、ロナルド君に身体を預けた。
     その後、私はロナルド君にバチクソに抱かれた。なんかもうよく覚えていないのだが、「俺以外と楽しそうにしてんじゃねえよ」とか「マカロンって何だよ俺にしとけよ」とか意味の分からない事を言われたような、気がする。一方、ヌイッタ―では「配信事故」がトレンドに入った。言うまでもなく私が、いやロナルド君が原因だった。私はそっと、アカウントに鍵をかけた。穴があったら入りたい……。
    みりん Link Message Mute
    2022/06/19 18:31:56

    糖分過多過多パウダーシュガーシュガー

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    #ロナドラ
    ドがヌイッターでスペースをしていたら泥酔してるロが甘えてきて配信事故になる話です。
    ロナドラRTAで書いたやつの改訂版。

    表紙はらこぺ様からお借りしました
    https://www.pixiv.net/artworks/92303017

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