イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    霖雨 寒の雨が夜に降り注ぐ。開け放たれた窓からは、刺すような空気が入り込み、ぽつねんと窓際に立つドラルクは、薄汚れた夜の空をじっと見つめている。その表情はこちらからは見えないが、背中は分かりやすく言葉を話している。そんな寂しい背中に、冷えるだろ、こっちに来いよと声をかけると、少しだけ間を置いてから、しょんもりとした顔がこちらを向いた。

    「ほら」

     ソファに座ったまま両手を広げると、ドラルクはのろのろと窓とカーテンを閉め、諦めたようにこちらにやってきた。俺に背を向けて座ったので、後ろからそっと抱きしめて、青白い頬に頬を寄せる。元々低い体温が、冷気のせいでより下がっているような気がして、体温を分け与えてやるとばかりに頬をぐりぐりと摺り寄せた。

    「くすぐったいよ」

     そうやって身をよじるドラルクをぎゅっと抱きしめて、耳元に唇を寄せる。

    「残念?」
    「そりゃあね」

     本当なら今日は、2人で映画を観に行く予定だった。ドラルクがどうしても観たい映画があると言うから、じゃあ明日晴れたらレイトショーで観に行こうか、なんて約束をしていた。雨でも大丈夫だよ、とドラルクは言ったのだけれど、雨だと普段より死にやすいだろとか、濡れた砂の回収だなんてごめんだとか、適当に言い訳をして誤魔化した。最終的にはドラルクも納得して、わかった、じゃあ晴れたら、約束ね、なんてそんな会話をした。本当は雨が降ると、知っていたのだけれど。
     天気予報は嘘を吐かず、案の定空は厚い雲で覆われ冷雨が夜を冷やした。ドラルクは俺の腕の中で、尚も退屈そうに窓を見る。

    「また今度、な」
    「うん」

     小さく返事をしながらも、視線はまだ窓の外に向けられていて、赤い瞳は俺を映さない。それがなんとなく面白くなくて、少しだけ温かくなった頬に唇を落とした。

    「そんなに行きたかった?」
    「だってさぁ、」
    「何?」
    「もうずっと何処にも行ってないから」
    「そうだっけ?」

     白々しくそう言うと、ドラルクはやっとこちらを見た。少しだけ怒気を孕んだ目線。それでも無いよりかは断然良いと思えて、思わず口元が緩みそうになるのを、ぐっと堪えた。

    「退治にも連れて行ってくれないし、家にいろって言うし、つまらないんだけど」
    「積みゲーがあるだろ?」
    「そうだけど。もう私長いこと、ここから出ていないよ」
    「そうだっけ」
    「そう! 買い物すら連れて行ってくれないじゃない」
    「俺、一人で買い物できるようになったんだよ。凄くね?」
    「あーはいはい凄い凄い。大人になったんでちゅねーガキルドくん」
    「そうそう大人になったの。褒めて」
    「意味がわからん」

     そう言うとドラルクは俺から視線を外して、拗ねるように足元を見た。それがなんだか可愛く思えて、もう一度頬に口付けをした。

    「また今度」
    「うん」
    「……嫌?」
    「何が」
    「俺といるの」
    「……嫌、じゃ、ない」

     そう言って黙り込むドラルクがまた可愛くて、思わずふ、と声が漏れた。

    「何笑ってんだよ」
    「かわいーなと思って」
    「ガリガリ砂おじさんが?」
    「自分で言うなよ。お前は可愛いよ」
    「まー知ってるけども」
    「そうそうそれでいいんだよ」

     もう一度頬に唇を落とす。しかしドラルクは相変わらずこちらを見ようとせず、それが少し、じれったくて、気を引きたくて、何度も頬に口づけをした。

    「なあ、こっち見て」
    「いや」
    「なんで?」
    「怒ってるから」
    「何を?」
    「ねえ、わざとだろ」
    「何が?」
    「全部」
    「わかんねぇな」
    「それでいいと思ってる?」
    「どうなんだろうな。お前は?」
    「私?」
    「もうこれでいいって、思ってるんだろ? 本当は」
    「思って……ない」
    「どうだか」

     そう言うと、ドラルクは黙り込んでしまった。何か考えているのだろう。何も考えなくて良いのに。
     何も考えさせたくなくて、ドラルクのシャツの中に手を伸ばした。そのままつ、と冷たすぎる体温を指先でなぞっていくと、ドラルクがもぞもぞと身体を揺らす。その反応がなんだか嬉しくて、そっと肋骨のくぼみを指でなぞる。ドラルクは小さく息を漏らした。

    「どらこう」

     ドラルクは答えない。ただ体温がじわじわと上がっていくのがわかって、思わず口元が緩んだ。そのまま手を下へ下へと滑らせて行って、トラウザーズの上から、内股をなぞる。そうするとドラルクはびく、と身体を震わせて、やっとこちらを振り返った。涙で膜を張った瞳が、もの言いたげに俺を見る。ああ、この目、この目だ。咎めるような、諦めたような、それでいて俺を求めるような、熱を孕んだ目。

    「キスして、お前から」

     そう言うと、ドラルクは目を閉じて俺に触れるだけのキスをした。薄く冷たい唇の感触が心地良くて、もう一回、と強請ると、またすぐ唇が重ねられる。それを何度も繰り返しているうちに、どちらからともなく、舌を絡めた。時間をかけて互いの口内をまさぐり、唾液を交換する。ドラルクが顔を離すと、唾液がつうと糸を引いた。
     ああ、今、繋がっている。そう思うと、とぷとぷ、と、何かが満たされる感覚がした。


    みりん Link Message Mute
    2022/06/23 22:50:56

    霖雨

    人気作品アーカイブ入り (2022/06/24)

    #ロナドラ
    ゆるゆるとドを閉じ込めるロと、それをゆるゆると受け入れていくドの話です。
    病んでます。
    ※時系列バラバラ
    次の話(水温)はR18です

    表紙はらこぺ様からお借りしました。
    https://www.pixiv.net/artworks/93519929

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品