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    永浦さんとモネちゃん僕がスガナミのおうちから永浦さんのおうちに連れてこられたのは、スガナミが登米にお引越しするその日だった。僕が入った紙袋を提げてスガナミを笑顔で東京駅でお見送りした永浦さんだけど、おうちへの帰り道はちょっぴり寂しそう。スガナミも忙しいやつだからそんなしょっちゅう会えてたわけじゃないけど、それでも近くにいて会えるかも、ってのと、遠くにいてすぐに会えないってのは違うんだろなぁ。

    安心して!永浦さん!スガナミはいないけど、僕がいるから!ほんと、永浦さんに僕を託したスガナミはエラい。スガナミは肺呼吸だけど。僕も永浦さんのそばにいられるし、永浦さんも僕をとおしてスガナミを思い出せるし。いやー、重大ミッションだけど、サメのメンツにかけてやり通さなきゃね。心の胸ビレで自分の胸をたたいて気合を入れてたら、永浦さんがものすごく大きな建物の前にたどり着いた。え?豪邸?!んでも「湯」って書いてある。なんで?

    ただいまー、って入ってったら、笑顔が素敵なエプロンのおねーさんが出てきて、おかえりーって言う。あ!これが汐見湯だ!スガナミと永浦さんがはなしてたやつ!お洗濯もするとこ!そっかー。へー。こんなとこなんだ。このおねーさんが汐見湯のアルジなのかな。あ、菜津さん、って言うんだ。菜津さん、ヨロシク!

    菜津さんが、永浦さんが提げた僕の入った紙袋を見る。
    「あら、素敵なサメちゃんね。先生から?」
    「うん。先生のおうちにずっといたサメのぬいぐるみ。僕の代わりに、って」
    「かわいいわね、先生もサメちゃんも」
    「うん。ふふっ、あのね、このサメちゃん、先生が気仙沼のシャークタウンで買ったんだけど、その帰りに登米に向かうバスの中で私と出くわして。その時に、私が『かわいいですね』って言ったら、『これは、東京の同僚に』ってごまかしたんですよ」

    そんなことあったねー!あの頃のスガナミったら、永浦さんにもまわりにもツンケンしてたもんねぇ!あ、でも、シャークタウンで僕を選ぶときはなんかすげー楽しそうだったよ。表情筋は大して動いてなかったけど。あの日は僕が永浦さんのサメになる日がくるなんて、思わなかったなー。いや、そりゃ思わないよなー。

    永浦さんの言葉に、菜津さんが笑いながら、「東京の同僚に、じゃなくて東京の大切な人に、になったのね」ってこれまた素敵なこと言う!この菜津さんって人、きっといい人!サメの直感は当たる。東京の大切な人に預けられるに足るサメってことですよ、僕は。エヘン。

    菜津さんとのお話を終えて、永浦さんが薄暗い階段をのぼって古い木の扉(ドアって感じではない)を開けて、また小さい声でただいまーって言う。ここが永浦さんのお部屋なんだ!知ってる!レトロかわいいってやつ!なんかカーテンのあおっぽい色がサメ的に落ち着く~。

    リュックをおろした永浦さんが、僕を紙袋から出して、机の横の棚に置いてくれる。紙袋は丁寧に折りたたんで押し入れに片付けて。僕の紙袋まで大事にしてくれるなんてうれしいなぁ。あ!机の上の本、スガナミとお揃いだ!キショーヨホーシのテキスト!スガナミが登米から帰ってくるたびに、大事に机の上に置いて、そんで登米に行くたびにリュックに入れてたんだよなー。東京にいる間もちょいちょい読んでたし。そっかー、永浦さんとお揃いだったんだ。あれぇ?でもあの本買ってきたのざっと3年前…。スガナミ!どーゆーことだ!

    ふむふむ、とお部屋の中を見させてもらってたら、トントンってお部屋をノックする音が聞こえた。永浦さんがはーいって返事したら、とてもおしゃれな女の子が入ってきた。永浦さんと同い年ぐらい?サメだから人間の年齢はよくわかんないけど、菜津さんよりは永浦さんに年齢近そう。サメの観察眼!

    「モネ、おかえり。お見送り、どうだった?」
    ん?モネ?永浦さんのこと?違うちがう、永浦さんは、ながうらももねさん、って言うんだよ!スガナミが、家でちょいちょい言ってたもん。ももねさんって呼びたい…、ももねさんっていい名前だよなぁ、って。結局、東京にいる間にももねさんって呼び始めるドキョーはなかったみたいだけど。

    「うん、ちゃんと笑ってお見送りしてきたよ。5月の連休明けには会いましょう、って約束もしてくれた」
    あれ?永浦さんがモネって言われて普通に返事してる。モネなの?ももねなの?モネがあだ名なの?
    あ!分かった!スガナミが教えてもらってないんだ!きっとそうなんだ。不憫なスガナミ!
    ないしは、みんなが呼ぶ名前はヤだ、とかいう独占欲。うわー、だとしたら器の小さいスガナミ!

    「ね、今日は女子会、しよ!」
    って、お部屋に来た女の子が、持ってきた紙袋をがさっとお部屋のテーブルに置く。
    「すーちゃん、ありがとぉお」
    永浦さんが、すーちゃんって呼んだ女の子にお礼を言ってる。そうだよね、平気そうにしてても、やっぱり寂しいし、そんなときにお友達がこうしていてくれたら、気持ちも紛れるよね。永浦さんの周りには優しい人がいっぱいいるんだなぁ。

    二人の話を聞いてて、分かったことは、すーちゃんは永浦さんの幼馴染で気仙沼の子。東京で仕事してて、永浦さんと同じくここに住んでる。永浦さんとスガナミのことはずっと応援してくれてたみたい。そりゃあたくさんやきもきしたことでしょう…。心労お察しします!お疲れさんした!

    ってやっと安心したらスガナミが登米行っちゃうんだもんねぇ。すーちゃんも心配が耐えないねぇ。ほんと、スガナミがすんません。

    スガナミに代わって謝ってたら、すーちゃんと僕の目があった。こんちは!

    「あれ、このサメのぬいぐるみって…」
    「あ、うん。先生の。僕を思い出すよすがに、って預けてくれたの。かわいいでしょ」
    かわいいでしょ!

    永浦さんが手を伸ばして僕を抱っこしてくれる。へへー。頬を少し染めた永浦さんを見て、すーちゃんがニヤニヤしながら、永浦さんをつっつく。

    「もー、モネがかわいい!先生のサメだ~、ってほんとにあの人、モネとサメしか頭にないよ!」
    僕もそう思う!気が合うね!
    「そ、そんなことないよ!いつも患者さんのこと考えてる素敵なお医者さんだよ!」
    永浦さんのスガナミに対する信頼に、涙を禁じ得ないよ!サメだから涙腺ないけど。
    「ふーん」
    って永浦さんの顔を覗き込むすーちゃんの女子力!なんか、すーちゃんの絶対的な女子力には、なんていうか、絶対的な安心感がある!永浦さんのこと、一緒にみまもってこーね!

    永浦さんとすーちゃんの女子会は、永浦さんのお仕事予定を慮って夜の7時には終わった。そうだよね、8時に寝て朝2時に起きるんだもんね。すっかり寝る支度を整えた永浦さんが、お布団敷いて寝る態勢になったとき、そだ、って小さくつぶやいて、僕のとこに来た。ふわっと抱っこしてくれて、一緒にお布団に入る。永浦さんが僕のことむぎゅーってして、せんせい、おやすみ、って呟く。

    そだよね、やっぱり寂しい気持ちあるよね。
    一緒にがんばろ!僕がついてる!

    これから、永浦さんのこと、モネちゃんって呼ぼう。
    スガナミは呼ばないかもだけど、これから毎日一緒にいる僕は、一番呼ばれ慣れてるのがいいと思うんだよね~。モネちゃん、ってかわいいし!

    じゃあ、モネちゃん、改めてこれからよろしく!
    おやすみ!
    ねじねじ Link Message Mute
    2022/08/04 18:29:25

    永浦さんとモネちゃん

    #sgmn

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