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    せんたく・せんたくコインランドリーに縁が深い百音と菅波だが、一緒に居を構えるにあたっては自宅に洗濯機を導入している。共働きでお互いに時間が不規則な身、厳密な家事分担を決めてはいないが、おおよそ洗濯物カゴがいっぱいになったらそのタイミングで家にいる方が洗濯をするというとりあえずの取り決めがうまく回っていて、しばらくはそれで過ごしていたある日。

    「ふと気づいたんですが」
    百音がソファベンチで論文を読んでいる菅波の傍らに立って声をかけた。論文を膝に置いて何でしょう、と顔を上げる菅波は、百音が洗濯物かごを抱えて微妙な顔をしていることに気づき、そこに不興があったかと内心焦りを覚える。
    「洗濯のことで、何か?」
    おそるおそる菅波が聞くと、百音がこくりと頷いた。

    「こうして、普段の着るものの洗濯が溜まったら、できる方が洗濯するってしてるじゃないですか」」
    「うん。あ、百音さん基準でこれはもう溜まりすぎていた…?」
    「ううん、これはちょうどこれから私が洗濯するのでいいなって思ったんですけど」
    「けど?」

    だとすると心当たりがなく、必死に頭を回転させながら菅波が上目遣いで百音をみる。百音は、唇を窄めて言葉をつづけた。

    「けど、そういえば私、全然シーツとか布団カバーとか、洗濯してないな、って気づいたんです。タオル類は衣類と一緒に回収して洗ってるけど」
    「あぁ。うん」
    そういうことか、と菅波は頷く。
    シーツや布団カバーといった大物は自分の方が干しやすいし替えやすいだろうと、菅波が自分で洗濯を回すときに適宜洗濯をしていたことを百音は言っているようだ。

    「寝具類はどうしても大きいから干したりするのも僕の方がやりやすいだろうしと思って。まずかった…ですか?百音さんの洗濯したい周期があったとか?」
    「そうじゃなくて」
    「なくて?」
    「先生の方がたくさんお洗濯してるってことでしょ?お洗濯じゃなくて交換も。あ、お洗濯してくれたんだって気づいてたけど、それが毎回だってなんだか意識の外にしてた」

    それを悔いるような百音の様子に、菅波が立ちあがって向き合い、百音の髪をなでながら変わらない上目遣いで言う。
    「それは、僕の方が適任だと思ってやっていることで、気にしないで。百音さんの方が台所仕事は得意でやってくれてることが多かったりするでしょう?」
    「そうだけど…」

    少しまだ承服しかねる様子に、菅波はそっと笑いながら髪を撫でた手を背中に移して、ぽんぽんとたたいた。
    「それに」
    「それに?」
    「あなた、かなり苦手なほうですよね、布団カバーの掛け替え」
    「えっ。あっ…。うーん」

    菅波の言い分に、我が身を振り返った百音は、布団カバーの掛け替えに苦手意識があることに気づく。布団カバーを掛けようとして、布団の角とカバーの角を対応させて括ったり裏返したりしているうちに、今どの部分をやっているか確証が持てないことがある。あまつさえ、すべての角をくくった後で、括り間違っていてカバーをかけられなかったこともあった。

    「こういうとなんだけど、僕は得意なほうかと」
    「そうなの?」
    「そうです」
    なんだか自慢げに頷いて見せる菅波に、百音が首をかしげる。そんなにいう程、布団カバー掛けに得意不得意があるものか?と思っている様子がありありと分かる。その様子に菅波は口許を緩め、百音が手にしている洗濯かごを取り上げて、口を開いた。

    「そろそろ洗濯してもいいかなと思っていたから、これを回したらシーツと布団カバーも洗いましょ。今日は天気もいいし」
    洗濯かごをその場に置いて、シーツと布団カバー外すの手伝って、と笑って百音の手を引くと、百音は素直に寝室についてくる。ベッドの頭側と足側に分かれてシーツをガバリとはがし、布団カバーのファスナーを開けて括り紐を外す。大きな布の塊をばさばさと丸めて床に置いた菅波が、クローゼットから替えのシーツと布団カバーを取り出した。

    百音がシーツ手伝う、と言って、菅波と二人でマットレスにピンとシーツを張る。そのシーツの上にかけ布団を広げた菅波が、見てて、と目くばせをすると、とても手際よくカバーをかけて見せる。角がぴしっとあいながら窮屈でなくカバーの中に布団が収まるその手つきの鮮やかさに、百音は先ほどまでの鬱屈を忘れて見入る。

    百音がやる時のおそらく半分以上の短さで布団カバーの掛け替えが終わり、ふわりとベッドの上に広げられた時、百音は思わず小さく拍手をした。
    「おぉ~」
    その声に、ね、と菅波が体を起こして言う。
    「だから、まぁ、これは僕がやろうかな、と」

    その言葉に、百音も思わずこくり、と首を縦に振ってしまう。
    「もちろん、百音さんが洗濯したいなと思った時にしてくれるのはウエルカムなんだけど」
    うん、と菅波も頷いていう。

    菅波がシーツと布団カバーの塊を抱え、百音が洗濯かごを抱えて、二人で仲良く洗濯機を置いた脱衣所に向かう。
    「先生があんなに手際いいの、どうして今まで知らなかったんだろ」
    「どうしてでしょうねぇ」
    「私がへたくそなのは知ってたのに」
    「へたくそとは言ってない」
    「要約するとそうでしたー」
    「まぁ、バレたか」

    そりゃ、いつお誘いしても快適なように先回りしときたいから、とは気づかないか、と菅波は心中で苦笑を漏らしながら、二人で仲良く休日の洗濯に取り掛かるのだった。
    ねじねじ Link Message Mute
    2022/11/19 0:28:47

    せんたく・せんたく

    #sgmn

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