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    まる「ただいま」と帰宅した百音を、おかえり、と出迎えた菅波は、百音の手に、普段の仕事バッグに加えて、何やらビニール袋が提げられているのに気づいた。今日は、隣町のイベントに、ウェザーエキスパーツ社 気仙沼営業所としてお天気クイズコーナーにブース出展に出ていたので、そこでの備品だろうか。朝とは違う荷物に気づいた菅波に、百音がにこにことその袋を差し出した。

    受取った菅波が中を見ると、なにやら菓子類がどっさりと入っている。
    「これ、どうしたの?」
    「お天気クイズの景品に用意してた傘イルカくん・コサメちゃんメモパッドが余ったから、お隣のブースに差し上げたんです。そしたら、お返しに、って、向こうの景品の余りをいただいちゃいました」

    エビで鯛を釣った、みたいな?と百音が笑い、いやいや、傘イルカくんとコサメちゃんグッズなんだから、等価交換ですよ、というか、エビで鯛を釣るってのも、エビだって美味しいじゃないかって思いますしね、と菅波が軽口をたたく。百音が部屋着に着替えてリビングに戻ると、読みかけとおぼしき論文を片付けている菅波の姿があった。菅波が受け取ったお菓子のビニール袋はダイニングテーブルの上に置いてある。

    百音が、お菓子どんなのだろ、と袋をガサゴソし始めると、菅波もどれどれ、と覗き込む。受験生のゲン担ぎに人気のチョコレート菓子や、クマの形のグミの小袋、キノコやタケノコを模したチョコレート菓子に、黄色いアメの袋と、丸くて穴が開いているラムネ菓子なども入っている。

    「わぁ、これ、なつかしい!」
    と百音がラムネ菓子のパッケージを手に取る。整然と8つ並んだ丸の下には、小さな紙箱もついていて、何かおまけが入っている様子。そういえばこんな菓子もあったな、と言う顔をしている菅波を尻目に、百音がパリリとパッケージを開けた。

    小箱を取り出して中身を取り出すと、小さな青色のプラスチックの物体が出てきた。
    「これ、なんでしょ」
    「ちいさいな…。なんだこれ」
    百音の手から菅波が指先でそれをつまむと、小さな物体がさらに小さく見える。ちょこんと飛び出た棒をつまんだ菅波が、それを目の前に掲げて、あぁ、もしかしたら、とテーブルの上でついっと指をひねると、青色の物体は、勢いよく回りだした。

    「コマだ!」
    「コマでしたね」

    フムフム、と回るコマを見ながら、百音がラムネを一つ口にくわえて、ぴょー、と音を立てる。そのなんともいいがたい味わいの音色に、菅波の頬が緩む。百音に差し出されたラムネを菅波も加えて、音を立てようとしてみるが、息の加減が悪かったのか、ひよっ、と調子はずれの音がなり、百音が笑いころげるのとコマが勢いをなくしてテーブルにコテンと転がるのが同時である。

    百音の大笑いに、菅波がガリガリとラムネをかみ砕き、百音がまあもう一個どうぞ、と差し出したラムネは、ぴょっとなかなか小気味よい音を立てる。ドヤ顔をする菅波に、百音も二つめでひょーっと伸びやかな音をだしてドヤ顔返しをする。

    もういっこ、もういっこ、とフエのラムネを半分ずつ遊ぶ稚気が仕事終わりの百音の疲れをいやした。最後のラムネを二人ともかみ砕いて飲み下したところで、菅波が空になったパッケージをゴミ箱に捨て、取り出した他の菓子類をビニール袋にしまいなおした。

    「他のお菓子は食べないんですか?」

    百音が菅波の手許を覗き込むと、菅波がめっ、という顔をする。

    「もうすぐ晩ごはんでしょう。食べられなくなりますよ」

    ちなみに今日はカレーです、と菅波が言い、わぁい、と百音がはしゃいでみせる。百音が外出で菅波が在宅の日に、折々に作られるカレーは、パッケージに記載通りにきっちりちょっきり作られていて、それが逆に菅波にしか味わいなのである。

    「あと30分ぐらいでご飯も炊けるから」
    「あ、じゃあ、アメいっこだけ!いっこだけ、お願い!」

    そうやって百音にねだられたらダメとも言えないのも菅波で、パイン味のアメの袋をばりっと開けて、中から黄色く丸いアメが入った小さな袋を二つ取り出した。一つを百音の手のひらにのせて、一つはさくっと開けて自分の口に放り込む。もごもごと頬をうごかす菅波を見て、百音も笑顔で小さなパッケージを開ける。

    ころんと艶やかな黄色く丸いフォルムに百音の頬が緩む。ひょいと口に入れて、さっきのラムネのように唇に挟んで息を吹いてみるが、もちろんフエの構造になっていないので、スーと空気が漏れるだけである。箸が転げてもおかしいという様子で笑う百音に、菅波もあきれながらも笑い顔。

    百音もアメを口中で転がし始め、二人して頬がちいさくぷくりと膨らむ。その揃いの様子が、なんだかとても楽しい気持ちの百音が、ついと背伸びをして、菅波に軽いキスを贈れば、そのキスはパインの味なのであった。
    ねじねじ Link Message Mute
    2023/08/08 23:28:53

    まる

    #sgmn

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