サメとアヒルのクリスマスじんぐるべーる!
ぐわわわわー!
すずがーなるー!
ぐわー!
あははー。って、今日もサメ棚改めサメ・アヒル棚はとっても賑やか!スガナミがシュッチョーに行っては連れて帰ってきたアヒルちゃんが10羽になって、そりゃもう毎日サメおにーさん・おねーさんたちは大忙し。ほんと、モネちゃんが喜ぶからって、シュッチョーのたんびにアヒルがいるホテルに泊まって、アヒルちゃん連れて帰ってくるスガナミはこの僕たちの苦労分かってんのかねー。
まぁ、でも、まさかそれで連れて帰ってもらえないアヒルちゃんがいたら、その方がかわいそすぎて一大事だから、ちゃんとスガナミが連れて帰ってくるのも大事なことなんだけどさ。
アヒルちゃんたちもすっかりサメ・アヒル棚に馴染んだ頃、初めて窓の外に雪が降った。初めて窓から雪を見たアヒルちゃんたちはそりゃもうぴよぴよぐわぐわ大盛り上がりだったよね。まぁ、いうて僕たちもぬいだったりフィギュアだったりするから、実際に雪に触れたことがあるのはごく少数なんだけど。(とはいえ、僕はそのごく少数のうちの1匹だったりする。亀島のお家の縁側でゴロゴロシャークしてた時に、雪が降ってきたことがあったから。あんときはちべたくてびっくりしたなー)
雪ってなーに?フユってなーに?のアヒルちゃんたちにあれこれ説明してあげてたら、モネちゃんが窓のとこにきて、外の雪を見てる。ちょっと降り始めるの早かったな・…って呟きながら窓を開けて、雪の結晶の写真を撮ってる。ひゃー、窓からの空気もちべたい!アヒルちゃんたちも、さむーい!って笑いながら心の羽をパッタパタしてる。ねー、さむいねー!
窓を閉めたモネちゃんが、僕たちを見て、さむいね、って笑う。ねー、さむいねー!
僕の前に一列に整列してたアヒルちゃんを数羽、ネコザメさんの頭の上に乗っけて、うん、って満足げ。アヒルちゃんとサメたちをこうやってお構いしてくれるモネちゃん素敵!マジ、サメの天使!
ネコザメさんの上に上手にアヒルちゃんを置いたモネちゃんは、僕の吻をもにゃりって撫でてくれた。むふー!おうちの中は、もうすっかりクリスマス。スガナミが、初めてモネちゃんとおうちクリスマスをすることになった時に浮かれトンチキにたくさん買った、クリスマスの飾りがたくさんあって、それを一緒に暮らすようになって、モネちゃんとスガナミで楽しく飾ってた。
てか、あの時からさらにクリスマスの飾りが増えてるのは気のせいじゃない。スガナミが、なんかステキなの見つけるたんびに、買ってくるから、じわじわ増える。そんで、モネちゃんも、もー、って言いながらうれしそう。スガナミだけばくはつしろ。
すっかりクリスマスになったお部屋で、モネちゃんが家事しながら楽しそうにお歌を口ずさむもんだから、サメたちもアヒルたちもお歌を覚えちゃって、そんでみんなで歌ってるってわけ。
モネちゃんとスガナミのクリスマスまでのとっておきが、アドベントクランツってローソク飾り!なんでも、クリスマスまでの何回かの日曜日に、ちょっとずつ火をつけてってクリスマスを楽しみにするものなんだって!
二人ともお仕事が忙しいから、日曜日ちょっきりに一緒に、ってばっかりでもないけど、それでも、毎週、一緒にローソクに火を着けるようにしてた。小さなローソクに火をつけて、それを二人でうれしそうに見てるのを見ると、涙出そうになるよね。涙腺ないけど。
電気を消したお部屋で、ローソクの火が灯ってるのは、なんだかとっても暖かい気持ちになる。海の生き物的にはご縁がないものだけど、いいもんだなー、って思うよ。そんで、きれいですね、ってモネちゃんはローソクと周囲のモミのリースを愛でてて、うん、ってスガナミは言いながらも、きれいなのはモネちゃんだ、って顔してモネちゃんばっか見ててデレてる。やっぱりスガナミだけばくはつしろ。
今年は、スガナミが、新婚さんの同僚にクリスマス休みをとらせてあげたい、ってモネちゃんに相談してて、もちろんモネちゃんもそのスガナミの気持ちを大切にしてあげて、二人のクリスマスのお祝いがちょこっと前倒しになった。
菅波のお義母さんのお祝いごはん作りますね、ってモネちゃんが張り切ってて、スガナミも楽しみです、ってうれしそう。ねー、すっかりモネちゃんの得意料理になったんだもんね!
お祝いの前日、二人で晩御飯を食べ終わって、明日のお祝いも楽しみですね、って笑ってる。別にキリスト者でなくとも、楽しみになるクリスマスというのは、面白いものですね、ってスガナミが言って、先生、昔、冬至のお祭りに結びついたものだから、誰が祝ってもいいんだ、って言ってましたよ、ってモネちゃんがスガナミみたいなまじめくさった顔をしてるのが面白い。やーい、スガナミが一本取られてやんのー。
だよねー、なんか、クリスマスって、楽しい気持ちになるよねー。ミツオんちはお寺なのに、モネちゃんやユートくんに、お寺だってクリスマスしてぇよう、とかわけわかんないこと言って、そんで、クリスマス当日、スガナミはおうちにいないもんだから、モネちゃんはミツオんちのお寺クリスマス会のお手伝いに行く。ちなみに、僕にも出番があるらしくて、ぬいのネコザメさんと一緒に行くことになってる。
さて、明日のご馳走の下拵えしよっと、ってモネちゃんが立ち上がり、スガナミが後に続こうとしたところで、モネちゃんがスガナミの前に紙袋を置いた。あ!あれは!ひょっとしなくてもひょっとするやつ!
サメのみんなは心の胸ビレをパッタパタさせて、アヒルのみんなhは、なになに、なにー?ってぐわぐわしてる。
「先生は、今年もみんなに赤いボーシ作ってあげて下さい」
わーい!やっぱりー!モネちゃんわかってるぅー!
「あぁ、なるほど。了解です」
「今年は、アヒルちゃんたちの分も、お願いしますね」
わーい!モネちゃんやっさしー!
だよねー!アヒルちゃんたちも、赤いボーシ欲しいよねー!
スガナミが、恐る恐るサメ・アヒル棚を振り返ってる。
いやいや、この僕たちわたしたちのつぶらなキラキラした瞳を見てよ!
赤いボーシ必要でしょうが!
「わかりました」
スガナミが頷いて、モネちゃんはよろしくお願いしまーす、ってお台所にひっ込んでった。片付いたテーブルの上に材料を広げたスガナミは、フム、ってひとつ頷いて、アヒルちゃんを一羽、テーブルに連れてって、自分のデスクから定規を持ってきて、アヒルちゃんのサイズを測ってる。マメだなー。
まぁ、あれで凝り性だから、モネちゃんから頼まれて適当なボーシを作るわけないよね。これぐらいの寸法でいいのか?とはいえかぶり具合がむずかしいな…とかぶつぶついいながら、いくつか試作して、アヒルちゃんにそれぞれかぶせて、これは浅すぎるが、これだと安定感とトレードオフで目が隠れるな…ってシコーサクゴしてる。
やっと、5個目に作ったのが満足行く形になったみたいで、よし、ってなんかものすごく満足げに納得してる。えーっと、アヒルは何羽いるんだ?ってサメ・アヒル棚を振り返ってる。10羽だよ!じゅう!ってアヒルたちがぴよぴよぐわぐわシュチョーしてる。ねー、ひとつでも赤いボーシ足りないのなんてやだもんね!てか、自分で連れて帰ってきてるんだから、アヒルちゃん何羽いるか、覚えてろフカー!
スガナミがせっせとアヒルちゃんの赤いボーシを作ってたら、下拵えを終えたらしいモネちゃんがリビングに戻って来た。10個、キレーに同じ形に並んでる赤いボーシに、モネちゃんもニコニコでうれしそう。とってもステキにできましたね!ってモネちゃんがニコニコなもんだから、スガナミもモジモジうれしそう。もー、赤いボーシ作り終わるまではばくはつしないでよね!
これからサメたちの分を作るから、アヒルたちに被せてあげてくれますか、ってスガナミが言って、モネちゃんがわかりました、って役割分担するから。こうやって、二人が役割分担するのを見るのも好きだなー。
モネちゃんが、スガナミの作った赤いボーシを、とっても優しく、アヒル一羽いちわにかぶせてくれるの、ほんとステキ!さすが、サメとアヒルとスガナミの天使!(うわぁ、モネちゃん大忙し!)
アヒルちゃんたちは、初めてかぶせてもらった赤いボーシにそりゃあ大喜びで、心の羽をパッタパタぐわぐわさせてる。
『赤いボーシ!』
『赤いボーシ!』
『これが、クリスマス?』
『僕たちの!クリスマス!』
『とくべつ!』
『赤いボーシ!とくべつ!』
『スガナミつくるのジョーズ!』
『モネちゃんかぶせるのジョーズ!」
『めーよサメだから!』
『あははー!』
あぁ、アヒルちゃんたちもすっかりサメジョークまで使いこなすように。それもこれも、サメ・アヒル棚で、サメのおにーさんおねーさんが頑張ってアヒルちゃんたちをお世話したから!いや、今年、頑張ったよねー、僕ら!ほんと、スガナミはそこんとこ分かってんのかね。
アヒルちゃんたちに赤いボーシをかぶせ終えたモネちゃんは、サメ分の赤いボーシを作るスガナミの手元を興味深そうに見てる。そんでスガナミは、手を休めずに、アヒルちゃんたちの赤いボーシの作り方と、サメ用の赤いボーシの作り方の違いについてモネちゃんに説明してる。アヒルちゃんたちは頭がまるくって、サメたちはなだらかな局面だから云々。
それを、ふんふん、っていつまでも楽しそうに聞いてるモネちゃんが、マジモネちゃんって感じで、ほんと、スガナミはこんな天使が配偶者でいてくれることを、もっとシャークゴッドに感謝すべき。いるか知らんけど。
スガナミが赤いボーシを完成させるたびに、これは内臓模型用です、とか、これは大きい方のホホジロザメ用です、とか言う指示にしたがって、モネちゃんがサメたちにかぶせてくれる。確かに形が違いますねぇ、なんてモネちゃんが感心して、スガナミが照れくさそう。あれだけ講釈垂れといて、照れくさそうにするとか、ほんとスガナミはばくはつするしかない。赤いボーシ作り終わってから。
赤いボーシを作り続けながら、スガナミがそういえば、って口を開く。
「今年も、アグリーセーターあるんですか?」
「ありますよ!」
って、モネちゃんの即答ぶりぃ!
いやー、毎年、よくあんなトンチキなサメのセーター見つけるよなぁ、って感心しちゃうけど、なんかモネちゃんもそれに秋から全力投球してるフシもある。
「…楽しみにしときます」
スガナミの正直な声のトーンが笑える。でも、モネちゃんがあまりにふんす!ってうれしそうなもんだから、すんげービッミョーな顔になってやんの。
赤いボーシにトンチキセーター!
明日のお祝い、楽しみだねー!