イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    こいのはじまり 恋に落ちるとは良く言ったもので。
     その瞬間恋は人をダメにする。
     恋は、かく恐ろしき病である。

    *****
     「先生、佐々倉さんさようなら〜」と元気で行儀正しい挨拶達ににこやかに手を振り、パタンと閉じられた扉が閉まったことを確認すると、高槻は大きなため息をついてずるずるとその場に崩れ落ちた。

    「おい、どうした?」
    「どうしよう……え、ちょっと待って……」
    「……彰良?」
    「え、どうしようヤバいよ健ちゃん」
    「何がだよ」
    「これ、どうしたらいい?僕、これからどうしたら」
    「だから、何がだ。主語を言え主語を」

    「僕……めちゃくちゃ深町くんのこと……すき…かもしれない」
    「はぁ?」
     心なしか頬を紅潮させて、目を潤ませながら幼なじみを見つめる高槻に、佐々倉は面倒なことになりそうだ、と天を仰いだ。


    *****
     その日は高槻の研究室で新年会を開催していた。
     院生メンバーや難波を始め、佐々倉や尚哉も集めて今年もどうぞ宜しくという趣旨の催しだったのだ。
     宴もたけなわになり、そろそろ解散となった頃から高槻の様子がおかしくなりだしたのを、佐々倉は気づいていた。
     暫く様子を見ていたが、特に大事になることは無さそうだと判断した佐々倉はそのまま放置していたが、まさかこんなことになるとは。


     恐らく会の最中で、高槻が尚哉の想いへの自覚症状を発症したのだろう。きっと内心では今の様に軽いパニックを起こしていたに違いないが、恋を自覚したからといってもいい大人だ。会が終わるまでは「生徒達の良い理解者である良い大人」を演じていたのだが、生徒達が居なくなるともうその場には佐々倉しかいない。
     今までの爽やかな笑顔をかなぐり捨てて、高槻は佐々倉に抱きつき泣きついた。
    「健ちゃんどうしよう〜〜」
    「腕に縋り付くな重い」

     たちまちに情緒不安定を隠そうとしない幼なじみにため息をつくが、そんな間にも「ねぇ!さっき僕深町くんと同じ空気吸ってたよね!」やら「え、無理、カッコいいし可愛すぎなんだけどしんどい」とのたまってくる。

     お前は恋する乙女か、いや、それともアイドルのファンかとツッコミたくなるほどの乱れっぷりを炸裂している。  
     しかも高槻は、
    「健ちゃん……僕今まで深町くんとどうやって喋ってた?」
     ときたものだから、呆れてくる。あれだけ人のパーソナルスペースをぶっ壊し、あまつさえその中に中に入り込もうとしていた人間が何を言うか。

     こうなる前から深町くんが、深町くんがと深町の話題豊富な高槻だ。高槻の気持ちは分かっていたが、まさか本人に自覚が無かったとは。
     しかしこうしている間にも、どんどん時間は過ぎていく。こうなった高槻はもう何があっても変わらないし、明日も二人とも仕事だ。
     佐々倉はどうしよどうしよと壊れたオルゴールのように続ける高槻をべりっと剥がして、帰り支度をし始める。

    「彰良ぁ、明日楽しみだな?」
    「明日?」
     ニヤリと笑いかけるが高槻は分からない様子だ。ここまで頭の回転が悪い高槻に驚くが、とりあえず今は早く帰りたい。

    「明日講義だろ?良かったな、明日も深町に会えるぞ」
    「ひぇ……っ」
     更なるどうしよう攻撃から逃げるために、佐々倉は名誉ある撤退を強行した。

    *****

     次の日の講義は高槻にとって散々だった。
     尚哉は二年生になり、先頭の席で講義を受けることが多くなった。高槻の説明を真剣な表情で聞くその顔や、冗談を言ったときの笑顔をまともに見ることが出来ない。
    (う……眩しすぎる……僕は一体どうやって、深町くんのこの笑顔を正面から見ることが出来てたいたのか……!)

     視線が合っても見つめられるその目線が熱くて、反射的に目を逸らせてしまう。
    (うう……深町くんごめん……僕は先生なのに、生徒一人と目線も合わせられないなんて……)

     そうして息も絶え絶えのまま、新年始めの講義は終了したのだった。


     高槻の研究室に、控えめなノックがされたのはその後のことだった。
     講義中にも関わらず、深町を意識しすぎて講義に身が入らないなんて、社会人失格だ……。尚哉にも、高槻の講義を受けた全員の学生に心から詫びていた時、何だか嫌な予感はした。

    「どうぞ」
    「あ、先生……」
    「ふ……かまちくん」
     昨日の今日で、息も絶え絶えな高槻のHPはゼロに等しいのに、そんな高槻の前に尚哉が恐る恐るといった体で現れた。
    「さっきの授業、先生何か変だったから、体調でも悪いのかと思って」
     それで、用事も無いのに研究室に来てくれたらしい。優しい。前から思っているがこの子は本当に優しい。でもその優しさが眩しすぎてそろそろ過呼吸になりそうだ。

    「ありがとうね、でもダイジョウブだから」
    自分の表面を取り繕うのに必死で、だからいつもはつかないよう意識していた嘘をついてしまった。
    「あ、ごめん!」
    「……っ先生、やっぱり体調悪いんじゃないですか!佐々倉さん呼んで帰りましょう!病人は横になって!」

     つかつかと高槻に近づいた尚哉は、ぐいと高槻の腕を取り、ソファに座らせ、横になるように肩を押す。
     尚哉が高槻の両肩を押したことで、自然に二人の顔が近づき、あわや間違えて口付けをしてしまいそうな距離に高槻は目を開いた。
    「近……っいよ、深町くん」
    「何言ってるんですか、いつも距離が近いのは先生の方でしょう?」
     そして、ふんわりと微笑むその表情に高槻の心臓は壊れそうだ。

    「じゃあ、佐々倉さんに電話してきますから」
    「あ、いや僕は」
    「先生。無理しちゃ、めっ、ですよ?」

     まるで子どもをあやすかのような物言いに、ズギューンとどこからか飛んできた矢に心臓を撃ち抜かれて、高槻はそのままソファに倒れ混んだ。
     可愛い。可愛すぎる。僕の教え子が可愛すぎて恐い……。

     その後、佐々倉と繋がった尚哉が『自分は行けないからお前が介抱してやれ』と伝言を残したことを聞いて、高槻はそろそろ三途の川が見えそうだと頬を濡らしたのだった。

    Fin
    mikan_mikam Link Message Mute
    2022/08/12 22:14:48

    こいのはじまり

    #高深
    ふとした瞬間に、助手くんへの恋心を自覚した先生はその気持ちの激しさに動揺するが……。

    more...
    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    NG
    模写・トレース
    NG
    • ある夏のロマンについて #高深
      浴衣に強い想いを抱く気の良い友人に、助手くんは適当に相槌を打ちながら話を聞いていたのだが……?

      *****
      付き合ってない二人。
      例によって両片思いなお二人です。

      そして、勝手に夏シリーズ第二弾。
      あと一つで終わる予定ですが、難産で九月中……せめて残暑と言われる間までに出したいです。

      楽しんで頂ければ嬉しいです
      mikan_mikam
    • くちづけ #高深高
      付き合っている先生と、キスをしたことが無いと気づいた助手くんだが……?

      *****
      一度意識すると、頭から離れないよ!な助手くんがいます。久しぶりにイチャイチャ(当社比)しております。

      ハートやブックマーク、ありがとうございます。
      季節はついに、秋ですね。
      秋といえば、高深は何の秋ですかね……。
      mikan_mikam
    • おとこのこのすきなもの #高深
      ある日助手くんは、中庭で友人らと楽しそうに話す気の良い友人を見つける。
      そんな助手くんに気が付いた友人だが……。

      *****
      付き合ってる先生と助手くんのお話とちょっとおまけ。
      mikan_mikam
    • Whenever you want #高深
      元カレの存在を嘆く気の良い友人を見て、自分も同じだと気づく助手くんだが……。

      *****

      付き合ってる二人。
      うだうだ悩む助手くんがいます。
      BGMに「ムーン○イト伝説」を選びたいほど、あの辺りの歌詞が頭をよぎります。

      そろそろ夏も終わりですね。
      夏バテにお気をつけて、どうぞ自愛ください。
      mikan_mikam
    • 君とサングラス #高深
      気の良い良い友人がサングラスを買いにいくのに付き合うことになった助手くんは、彼の高いテンションに付いていけなくなるが……。

      *****
      付き合ってない二人です。
      今回は海が出てきます。
      原作で海へ行っているお話がありますが、その辺りとは話は繋げておりません。

      そして、やっと夏シリーズが終わりました!
      それぞれに繋がりはありませんが、お付き合い頂きありがとうございました。
      今回は爽やかなラストと見せかけて、またいつものサイコパス先生がいらっしゃいますので、そちらも併せてお楽しみ頂けると嬉しいです。
      mikan_mikam
    • お口が悪いのは愛情の裏返し #高深
      出会った頃に比べて、態度や話し方が変わった助手くんに先生は項垂れるが……。

      *****
      いつも以上に短い小噺です。何も考えず、流れに身を任せて読んで頂けると喜びます。
      mikan_mikam
    • 見せるなら、あなたに #高深高
      夏の装いを楽しむ学生に、助手くんはなるべく関わり合いになることを避けようとするが.....?

      *****

      付き合ってない二人。
      勝手に夏シリーズと呼んでいる一作目です。
      もう秋の気配がしているのに、夏シリーズ(仮)は今始まりを迎えます.....!

      移転先から見にきてくださった方や、ハート、ブックマーク、ありがとうごいます。
      楽しんで頂けたら嬉しいです。
      mikan_mikam
    • その瞳に映るもの #高深
      付き合っている二人。
      助手くんに対して弱気な先生だが……?

      *****

      大変お久しぶりです!
      世間は移り変わっていますが、変わらず二人を応援しております。今回は王道のようなお話です。
      助手くんの方が男前です。
      楽しんで頂けると嬉しいです。
      mikan_mikam
    • あんなことや、こんなこと #高深
      付き合ってない先生と助手くんのお話。
      先輩も出るよ!

      *****
      助手くんの情緒とメンタルと性格は激しく乱高下します。
      一作目…瑠依子先輩との可愛いお戯れ
      二作目…先生っては超絶可愛いよね?
      の二本でお送り致します。
      mikan_mikam
    • オトナでも、コドモでも #高深
      付き合って3ヶ月の先生と助手くん。
      大人な対応の先生に、助手くんはどこか思うところがあって…?
      気の良い友人くんは、助手くんが誰と付き合ってるか知ってます。
      mikan_mikam
    • あんなことや、こんなあそび #高深 #高深高
      付き合ってる二人の短編集です。
      一作目…研究室で謎の距離の先生と先輩に、面倒ごとに巻き込まれそうだと困惑する助手くんだが…?
      二作目…先生に怒っている助手くん。服は脱いでませんが、行為を彷彿とさせる描写があります。

      *****

      2022年中も沢山の人に読んで頂き、反応やメッセージ、とてもありがとうございました!
      drmを引きずっておりますが、原作もどんどん進んで二人の関係に目が離せませんね。

      来年も二人のお話をどんどん書いていきたいので、どうぞ来年も宜しくお願い致します。
      良いお年をお過ごしください。
      mikan_mikam
    • あんたなんて好きじゃない #高深
      先生のことが好きだけな助手くんと、そんな助手くんが可愛い先生の話。

      *****
      先生がやっぱりサイコパスなのと、見様によってはホラーなので、この季節に合うショートショートになったかと思います。

      大量に投稿した前作ですが、
      大勢の方に読んで頂いて嬉しいです!
      ありがとうございます。
      mikan_mikam
    • あなたとビターチョコレート #高深
      付き合ってる二人。
      他人からの先生への悪意に、怒りを隠せない助手くんだったが……?

      *****

      お久しぶりでございます。
      久しぶりに文字を書いたので、リハビリのための超短編です。
      今後、この様な超短編が増えそうです。
      今回はちょっとどろどろな二人です。難波くんくらい爽やかな彼らはどこへ行ったんでしょうか……?

      そして、全く関係無いお話ですが、先生お誕生日おめでとうございます!皆と幸せに生きて欲しいなぁ。

      それでは、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
      mikan_mikam
    • あなたに夢中 #高深
      なぜかいつも頭によぎるあの人への気持ちは何か、気の良い友人に教えて貰った助手くんは、これからどうするべきか思い悩むが……。

      *****

      ギャグになりきれなかった超短編です。
      mikan_mikam
    • あんなことや、こんなかれら #高深  #高深高
      超短編集三作です。
      一話目…付き合ってない二人。お煎餅美味しいね。
      二話目…ほのぼの幼馴染コンビの食事会。
      三話目…付き合ってる二人。匂わせですが身体の関係があります。

      *****

      台風が過ぎて、秋が深まりましたね。
      秋のイベントに思いを馳せつつ、皆さまが思い思いの楽しい秋を楽しめますように。
      今作全く季節感無いですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
      mikan_mikam
    • あなたのどんな姿でも #高深
      いつもの研究室から聞こえる喧騒を知ることなく、いつものようにふらりと立ち寄った助手くんだったが……。

      *****
      付き合ってない二人。
      drmオリジナルキャラが出てきますが、刑期などは考慮していません。いつもの未満な彼らと彼女がわちゃわちゃしてます。

      私が書く先生は、なぜかサイコパスかおじさん臭がしてるのですが、そこを味と思って頂ければ幸いです。
      mikan_mikam
    • あんなことや、こんなきもち #深高
      超短編集です。
      付き合ってる二人はいません。

      *****
      一作目…肉食な助手くん(深高)
      二作目…供給過多がしんどい助手くん(カップリングなし)

      詰め合わせなので、色んな彼らがいます!
      二作目は架空の芸術家の話をしてます。話してるだけ。わちゃわちゃしてるだけ。それが楽しい高槻研究室だと思ってます。
      mikan_mikam
    • 偽りの声 #高深高
      先生の自分への気持ちに嘘が混じっていることに、助手くんはショックを受ける。
      先生へ憧れ以上の気持ちを持っていた助手くんは、その関係を自ら変えようとするが……。

      *****

      タグは高深高ですが、未満です。
      drmの彼らから入ったので、そんな彼らのイメージです。
      mikan_mikam
    • キュートなのセクシーなの #高深 未満。
      院生からの突然の質問に、慌てて答えを返そうとする助手くんだが……?

      *****

      今回は片方が片思い以前のお話です。
      恋になる前の、そんなお話。
      いつも通り、先生は一人空気感が違ってこのままぐいぐい行きそうな雰囲気がします。助手くんはどうなるのか……?

      日常な彼らを楽しんで頂ければ嬉しいです。
      mikan_mikam
    • おねがいダーリン #高深
      先生から「一生のお願い」をされた助手くんは、その願いに頭を悩ますが……。

      *****
      一応付き合っている二人です。
      先生と助手くんがフェチに走っております。
      残念ながらタイトルの様な甘さはありません。
      mikan_mikam
    • 先生が×××なのがいけない #高深
      助手くんが夜も眠れなくなるほど悩んでいることを、気の良い友人に相談するが……?

      *****

      あれ?デジャブ?というくらいのあらすじ説明ですが、そうです、似たようなお話です。でもちょっと違うかもしれません。気の良い友人くんへ相談するという流れが癖なんですね。
      mikan_mikam
    • 繰り返すは夢か幻か #高深高
      助手くんの夢のお話です。
      先生を可愛くしすぎてしまったので、残念ながらカッコイイ先生はいません。可愛い先生の独壇場です。
      どうぞ、お好きなように読んで頂けると嬉しいです。

      *****
      沢山読んで頂きありがとうございます!
      mikan_mikam
    • 僕と先生の未満な関係 #高深
      先生と助手くんとの超短編3作です。
      1作目は先生→→→助手くん、2作目は助手くん語り、3作目は両片思いなお2人でございます。
      mikan_mikam
    • そのまま心まで #深高
      自分が消えたあの夜への恐怖から、知らない誰かと寝ることでその不安を紛らわせようとする先生と、そんな先生を心配する幼馴染と助手くん。
      mikan_mikam
    • 触れて欲しい #深高
      先生への恋心を自覚した助手くんは、その気持ちの危うさに自分を制御しようとするが……。

      *****
      原作とdrm版の彼らがごっちゃになってます。
      ルール違反等あれぱ、ご指摘頂けると助かります。
      mikan_mikam
    • 在る日常のあるなんでも無い日。
      気の良い友人の友達から、先輩を紹介してくれないかと頼まれた助手くんであったが……。

      *****
      先輩メインのお話です。

      今回全く腐っておりませんが、腐った人間が書いているので、そう見えるところもあるかもしれません。
      mikan_mikam
    • いつも、そこにある #高深
      当たり前の日常こそが、価値がつけられない、
      とても、とても大切なもの。
      いつも側にいてくれて、ありがとう。

      *****
      一部僅かですが原作のネタバレを含みます。
      超短編が2つです。
      高深未満です。付き合っておりません。
      mikan_mikam
    • 僕らのヒーロー談義 #高深
      いつもの研究室で、助手くんから盛大な告白を受けた先生は自分の気持ちを告げようとするが……。

      *****
      架空のキャラクターと趣味のお話です。
      キャラクター名が凄くダサいです。助手くんごめんね。
      mikan_mikam
    • ふと #高深
      付き合っていない二人。
      先生が残念だと言った存在のおかげで、助手くんは自分の気持ちに気づくことが出来たが……。

      *****

      お久しぶりです。
      春ですねぇ。あの二人は花粉症は大丈夫なのでしょうか。お花見は行ったのでしょうか。

      リハビリはまだまだ続きます。
      なので短いお話となりますが、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
      mikan_mikam
    CONNECT この作品とコネクトしている作品