イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    約束の場所

    「アルミン」
    僕が自宅に帰り玄関へ入ると、たまたま通りかかったのか、その玄関の前にはアニが立っていた。手には何やら手紙を持っていて、そこから目を放して、そうしていきなり名前を呼ばれた。
    「ああ、ただいま」
    「うん、おかえり」
    僕は靴を脱ぎ、コートのボタンを外しながらアニに挨拶をした。そこで思い出したように挨拶を返してくれて、本日の公務後初めて顔を合わせていることも思い出してくれたようだ。
     エルディア国との第一回の交渉を終えて連合国に帰った僕らは、あれからまた連合国の国内の問題と向き合っていた。エルディア国側から提示された条件などのすり合わせが必要だからだ。
     そんな毎日の中で、僕ら大使団は集合住宅のような公宅で私生活を送っている。だから、実質アニの部屋は僕の部屋から二部屋ほど離れた場所にあるものの、大した距離もないので僕の部屋にいることも多く、むしろそちらのほうが自然になりつつあった。……それくらい僕らは、一緒にいたから。
    「アルミン、局留めで手紙届いてたよ」
    アニがずっと手に持ち、眺めていた手紙を差し出した。それはどうやら僕宛の手紙だったようだ。
    「何か怪しいんだけど」
    そう言いながら手渡されるものだから、僕も身構えながらそれの宛名などを確認した。えらく達筆な字で僕の名前が記されていて、けれどその裏面には、たった二文字が並んでいるだけだった。
    「……差出人……イニシャルしかないね……『K.A.』って……誰だろ……?」
    「開けるの?」
    「……うん、まあ、局留めだったんでしょ?」
    「うん」
    僕は簡単にアニに確認して、その字に見覚えがないかを考えてみた。
     仕事柄、僕宛の公式な書類はすべて大使館宛に届くようになっている。ミカサやオニャンコポン、兵長なんかはこの自宅の住所宛に送ってくるし、近所の局留めで届くのは、それ以外の個人的な知人ばかりのはずだ。そこに紛れて局留めで届いたのだから……おそらく僕がちゃんと個人的に知っている相手であるはず。少なくとも、僕の個人的な知人から局の住所を聞けた人になる。
     びり、びり、と小さく紙を千切る音が立つ。僕はその手紙の端をなるべく丁寧に、けれどこの手で引きちぎっていった。その様子をアニもじっと見つめていて、中から二つ折りになった手紙を取り出すところまでずっと見守られた。
     手紙を自分の前に広げる。
    『アルミンさん。突然の手紙お許しください。ヒィズル国のキヨミ・アズマビトでございます。』
    「あれ、キヨミさんからだ」
    「……キヨミ? 本当に?」
    「うん、そうみたい」
    アニと目配せを交わしたあと、今度はアニにも見えやすいように手紙を傾けてやった。そこにびっしりと記されている文字を目で追っていく。
    『大使館を通しての手紙でないこと、個人的な内容につきご理解いただけますと幸いです。』
    なぜキヨミさんが僕の個人的な知人しか知り得ない局の住所を知っているのだろうと疑問に思いつつも、逸る気持ちに乗せられるがまま、先を続けていく。
    『先日、ミカサ様とお話ししているときに、アルミンさんが様々な環境にご興味がおありとのお話を伺いました。私どもヒィズルは中でも火山の多い国でありまして、岩漿などを間近で見ていただくことができます。ミカサ様にもぜひアルミンさんを招待してほしいとのご提案をいただき、あなた方への感謝の気持ちをお伝えする機会だと捉え、ここに招待することを取り決めいたしました。』
    僕は一度顔を上げてまたアニの顔を覗き込んだ。
     とりあえずキヨミさんがこの住所を知っていた理由はわかったのだけど、その内容があまりにも突拍子もなくて驚いたのだ。ちらり、と僕の視線に気づいたアニは僕を一瞥して、しかし何も言わないまますぐさま視線を戻した。それを見て、僕もとりあえずまた視線を文字の上に戻す。
    『つきましては、アルミンさん、また後日、よいお日取りをご連絡くだされば、私どもはいつでも歓迎いたします。また、必要であれば国賓として公式に招待することも可能でございますので、必要とあらばお申し付けくださいませ。ご連絡心より待っております。キヨミ』
    「……つまり?」
    すべてに目を通し終わったアニが、今度は僕のほうへ問いかけてくる。
    「……つまり、僕をヒィズルに招待してくれるってこと……だよね。岩漿ってあれだ……〝炎の水〟。それが、『岩漿』だったはず」
    自分の中でそれらを繋ぎ合わせている間、心臓が静やかにとくとくと、けれど確かに波打っているのが感じ取れた。
     ……『岩漿』を、この目で見ることができる……ということだ。
     ――僕の脳裏には、とある影が過っていた。
    「ふうん……よかったじゃん」
    「あ、うん、そうだね」
    アニに声をかけられたことで現実に引き戻されたぼくは、その手紙をまた封の中に戻しながら顔を上げた。
    「で、個人で行くの?」
    頭の回転の速いアニは、さっそく僕に核心をつく質問を寄越す。……そんなの、考えるまでもないではないか。
    「……そりゃまあ、個人で行ったほうが静かに過ごせるだろうけど……でも、ここはせっかくだから公式に招いてもらったほうが、僕らの今後には繋がると思うんだ」
    きっとアニもそう思っていたのだろう、それに対して何も口を挟まなかった。
     僕たちはようやく歩き出して、玄関に背を向けた。
    「僕たち連合国側の大使が、地鳴らしの被害国でありながらパラディ寄りの姿勢を保っているヒィズルに公式に招待してもらえるんだ。ここで両国の友好をアピールできれば、今後の道がずっと広がるよ」
    「……うん、そうだろうね」
    リビングに到着して鞄を下ろしたあと、今度はネクタイを外しながら、アニに向けるでもなく独り言を呟くように声を零した。
    「早速明日キヨミさんに返事を書くよ。そして大使館を通して招待してもらおう。僕たちにとって、大事な催事になる」
    かけてあったハンガーにネクタイを整えて、それから今度はそこにスーツのジャケットを着せていく。
    「そうだね。ミカサも気が利くね」
    「うん。ミカサにも手紙出そうかな。こんな機会を作ってくれて、ありがたいや」
    ――僕の中で、〝炎の水〟をこの目で見られることは、どうしてだろう、嬉しさだけが純粋にここにあるわけでもなかった。はしゃぎたい気持ちを持ちながら、どこかでもやもやと居心地の悪さを感じている。……またちらつくのは、あの影だった。
     それよりも、僕はどちらかというとヒィズルとの関係の打開策になるのではと、むしろそちらのほうに浮かれていた。それがこの口ぶりにも出ていたのだろうか。
    「……ヒィズルに公式に行けること?」
    まんまとアニにそれを言い当てられて、また居心地が悪くなる。
     ……長年の夢だった、〝炎の水〟――『岩漿』をこの目で見ること。……しかし、僕の中でそれはもう叶った夢だった。きっとこれ以上望めない形で、僕は〝あのとき〟……それを〝叶えてもらって〟いる。……それを今さら、自分の足で、肉眼で見ることができるからって……――、
    「――アルミン?」
    「あ、……あ、ごめん、うん。そうだね」
    我に戻り、アニが小さくため息を吐いたのを聞いた。そのため息の意味は何だったのだろう。それからアニは僕に背中を向けて「とりあえず夕飯にしよう」とキッチンへ入って行った。
     ……もしかしたらアニには、今の僕の気持ちは見透かされていたのかもしれない。

        ***

     僕が書いた返事の通り、ヒィズルの公式な手続きの元、僕たちは国賓として招かれることになった。諸々の所用が残っているため、そして何より約一か月ほどの長い旅になってしまうため、そんな長期に渡って大使館を空けることはできず、メンバーは僕とアニ、それからピークで行くことになった。――公式に招待してもらうからには、それなりにこなさなければならない行事がある。それを鑑みて、僕はこのメンバーを選んだ。
     出発当日にもコニーに「いいなあ」と零されてしまったけど、「留守を頼むよ」と肩を叩いて出発した。
     キヨミさんが準備してくれたヒィズルでの日程はこうだ。
     まず到着してからキヨミさんら外交官との会談を行い、それから各種プレスの取材をこなす。そののち、歓迎の晩餐会を開いてもらい、一日目は終了だ。二日目は朝からの活動になり、まずは地鳴らし被害者の慰霊碑訪問、それから午後は訪問記念講演で僕が演説を任されている。そのあとはしばしの自由時間があり、就寝となる。三日目も朝からの活動だ。地鳴らし跡地の活用視察がある。今回の日程の公式な行事の中で僕が最も重要視しているのが、始めの『外交官らとの会談』と、この『地鳴らし跡地の活用視察』だ……これらは今後に大いに期待できる情報交換だからだ。……その『活用視察』を終えると、そこからは残りの一日が自由行動になっている。きっとこの時間に例の『岩漿』を見に行く計画を立ててくれているのだろう。四日目に僕らはもう一度短めにプレス対応があり、見送りの式典ののちに帰路に就く。
     往路は連合国側の手配のため、船の移動となり、所用時間は約二十五日間だ。二十五日かけてヒィズルに赴き、それから四日の国賓としての日程をこなし、僕たちは颯爽とヒィズルをあとにする。幸いなことに……と言っては不謹慎なのかもしれないが、帰路はヒィズルの手配のため、飛行機での移動となり、約二十四時間ほどの所用時間となる。これらすべてで『約一か月の旅』というわけだ。
     二十五日の長い船の旅を終えた僕たちは、ヒィズルに降り立ちまず驚かされた。
     国の姿勢としてエルディア国寄りの態度を見せていたヒィズルの国民は、それでも僕らを大変歓迎してくれたのだ。僕らが船から降り立つその港では多くの国民で賑わっていて、それぞれが大使館の紋章が描かれた旗を振ったり、覚束ないエルディア語で感謝の言葉が記された看板を持っていたり……それがない者も各々で手を振ったりしてくれていて、エルディア国に降り立ったときの緊張感が嘘のようだった。さすがに三人で見合わせるほどの衝撃だ。――僕たちを宿に送り届けるための自動車に乗るまでのわずかな間、ずっと民衆は明るく迎えてくれたのだ。
     出迎えてくれたキヨミさんは、少し前にエルディア国で顔を合わせていたときと変わっておらず、凛々しく芯を持った顔つきをしていた。
    「――……驚かれましたか?」
    準備してくれていた、移動のための立派な自動車の中で、しばらく囲われていた民衆を目で追っていたところ、キヨミさんに尋ねられた。
     僕はこの衝撃を隠すこともせず、「驚きました」と素直に伝えた。するとキヨミさんはふと頬を緩めて、僕たち三人をゆっくりと眺めた。
    「……ヒィズルの半分は地鳴らしの被害に遭いました。ですがあなた方がエレン・イェーガーを止めてくださったお陰で、もう半分は生き残ることができたのです」
    そうしてその落ち着いた眼差しのまま、静かに続けた。
    「これは、ここだけの話です」
    一呼吸置き、さらに声色が少し潜められる。
    「ヒィズルという国は地鳴らし前より結んだ条約や、パラディ島から供給される資源により、国としてはエルディア国へ寄った姿勢を保っていますが、国民感情としましては、エレン・イェーガーの行いを止めたあなた方にこそ感謝の念が向いているのです」
    やはり少し意外だったのが本音だ。……そうかキヨミさんの手紙にも『あなた方への感謝の気持ちを』というような内容が書かれてあったのを思い出した。……そういうことだったのだ。これはここ現地に赴いたからこそわかったことで、僕は少しだけ、安堵するように肩の力を抜いた。――これは思っていたよりも、幸先はいいのかもしれない。
     僕たちはまず、各々の荷物を下ろすために本日より数日に渡り使わせてもらう宿に送り届けられた。
     自動車を降りるなり、僕たちを先導するように進むキヨミさんに連れられて、そのヒィズル特有の建築物に案内される。当たり前だが、パラディ島や連合国の建造物とは趣がまったく異なっていた。ただ、その宿泊施設の前にも僕たちを歓迎してくれる、おそらく従業員や警備員たちがずらりと並んでおり、その建築物に感心できるほど落ち着いては見られなかった。
    「こちらが我が国の伝統的な宿泊施設でして『旅館』と呼ばれる宿です。お一人様お一部屋ずつ準備しておりますので、ゆっくりとお休みいただけます」
    石を通路に合わせて一定間隔を開けて埋め、歩きやすいようにしているところを、丁寧に一歩ずつ踏みしめながら進んでいく。ほとんどはキヨミさんの見様見真似だ。
     横にずらして開く、重たく丈夫そうな扉を開き、その向こうから現れた大きな広間を一望した。その広間のさらにすぐ向こうには、また趣きのある中庭が見えている。
     案内されるがままに僕たちは進み、そこで靴を脱いで中履きを貸してもらった。
    「なお、期間中は大使団様の貸切となっておりますので、お風呂もご自由にお使いください。普段は時間帯で男女の入る時間をずらしているのですが、ご滞在期間中はそちらで自由にお取り決めいただいて大丈夫です」
    笑顔でそう言ったキヨミさんに対して、僕はああそうかと密かに納得していた。そういえばヒィズルは大衆浴場が盛んで、大勢の人で賑わう浴場も一般的に存在しているとの話だった。そしておそらく、この宿泊施設の浴場もそういうものなのだろう。
     多感な時期を兵舎で過ごした僕とアニはおそらく平気だろうが、果たしてピークはどう思うだろう。パラディでは大衆浴場は一般的ではなく、おそらくそれはマーレも同じだったはずだ。……気になりピークを盗み見てみると、僕の憂慮はいとも簡単にバレてしまい、にこりと笑顔を作って誤魔化されてしまった。
     何はともあれ、僕たちはそこで予定通りに荷物を落ち着けたあと、簡単に昼食をいただいて、すぐにヒィズルでの最初の行事へと向かった。キヨミさんを始めとした外交官らとの会談だ。あからさまにはできなかったのだろうが、なんとなく感じるヒィズル側の好意的な姿勢もあり、僕たちはここで有意義な会談を進めることができたのだと自負する。
     そのあとはそれぞれの担当へ分かれて、各種プレスの取材に対応した。アニが各新聞社の取材を受け、ピークが最近新開発された『テレビジョン』という映像媒体の取材を受けた。僕はというと、この時点でまだまだ情報発信媒体としては主力を占めるラジオの取材の対応をした。連合国側でもラジオを自分が聞くことは何度かあったが、まさかそれに自分の声を乗せる日が来るとは思っておらず、これがまた実際の講演よりも遥かに緊張した。
     日も暮れ切ったあと、それぞれが対応を終えた順に宿に戻った。全員が揃うと、キヨミさんがまた立派な自動車を準備してくれて、僕たちは歓迎の晩餐会の会場へ向かった。そこに訪れていたのはヒィズルの政界の立役者たちに留まらず、各財閥の当主や大手企業の社長などの姿もあった。どうやら本当に多くの方面の人々に興味を持たれていたようで、晩餐会の間中、僕たち大使団の面々はあちこちへ引っ張りだこになっていた。……もちろん、これは望むところだ。
     船による長旅直後からの公務を終え、宿に戻ったあとの僕たちは既に限界を迎えていた。……少なくとも僕は。割り当てられた部屋に戻ると、ふかふかのベッドのようなものが床に敷かれていて、そうして気づいたら既に朝日が差し込んでいた。どうやら僕は気を失うようにそこで寝ていたのだと、起きてから知る羽目となった。
     キヨミさんから渡されていた日程表に寄ると、朝食まではもう少し時間があったので、僕は今日の午後にしなければならない演説の原稿を確認することにした。二十五日間の航路をかけて考えて、頭に入れた演説ではあるものの、昨日の一日で経験したことも織り込み、大部分を書き直すことにした。いかんせん、この国の人々がここまで僕たちのことを歓迎してくれるのだとは思っておらず、改めて伝えたいことが山ほど溢れてきたからだ。……旅館の従業員が朝食の準備ができたので、と呼びに来るまで、何度もこの演説の内容を確認した。
     そうやって二日目もめまぐるしく過ぎていく。
     午前中の慰霊碑訪問にも多くの国民が押し寄せていた。彼らに見守られて訪問記念行事が行われ、また午後の講演会も大盛況の内に終わった。僕が準備した演説もとてもよかったとキヨミさんにも一言もらうことができた。
     前日ほどの多忙さでもなかったこの日は少し余裕が持てたので、ヒィズル自慢の鮮魚料理を夕食としていただいたあと(これも雑誌の取材と並行ではあった)、アニとピークと三人で少し旅館の周りを散策する時間を設けることができた。……もちろんキヨミさんの許可の元、警護つきでのことだったのだが。そしてその散策ののち、また僕たちはそれぞれの部屋に戻り、交代で浴場を使って大人しく就寝に至った。
     あっという間に訪れたのが、この三日目だ。
     公的な日程で僕が重要視している『地鳴らし跡地の活用視察』があり、またそのあとはキヨミさんの好意で個人的に『岩漿』を体験しに行けるのだ。わくわくとした高鳴りももちろんあったが、どちらかと言えば緊張感のほうが勝っていたように思う。
     朝食を終えた僕たちの元へ、またいつものように立派な自動車が迎えに来て、そして連れられてきたのはヒィズルの飛行場だった。本日視察する地鳴らし跡地とは島が異なるとは聞いていたので、現地までは飛行機で移動するのだろうかと見当はつけていた。そして飛行場を目にしたとき、それは確信に変わった。
     数時間揺られた飛行機を降りてまた自動車で移動すること数十分、一旦人の気配が薄れかけたかと思ったが、また街が人々で賑わい始めたことに気づく。そうして、本当に線を引いたようにこちら側とあちら側で景色の違うその境目に、この自動車は停車した。降車するなり、背の高いフェンスの向こう側に延々と続いていく殺風景な景色を一望し、また圧倒された。
    「ここがちょうど、地鳴らしの被害地区との境目になります」
    キヨミさんの声色が、いつもより少し重たく聞こえたような気がした。
     だが正直に言うと、僕の予想とは少し違った。
     連合国側の地鳴らし被害地は、未だにほとんど更地であることに対して、ヒィズルでのこの一画では既にその上に街が建ち始めていたのだ。そして反対の一画では、新鮮な緑の芽がすくすくと育っている様が見て取れた。殺風景とは表したが、それはあくまでここまでの街に比べればの話だ。
    「……すごい、もうここまで」
    思わずぽつりと呟くと、キヨミさんは少し誇らしげに目元を緩めて、それから僕たちをその地域に入るための管理室まで連れて行き、入所手続きを済ませた。僕たち三人とキヨミさん、そして警備要員数名を連れ立ち、僕たちはその地鳴らし跡地についに踏み入れる。
     〝フェンスの向こう側〟に入ってみると、思っていたよりも作業員で賑わっていた。建ち始めている家々は実際に既に使われているらしく、なるほどこの新しい街の新しい住人が作業員となり、緑地の開拓と街の開拓に分かれて進めているのかと感心した。
     キヨミさんに連れられて歩くと、緑地に面した歩道に出る。広大な土地に、もう僕の背丈くらいの木々の苗が規則正しく並んでいる様がよくわかった。
    「――私どもは地鳴らしによって枯れた土地に、また緑を復活させることを是としております」
    案内役のキヨミさんが僕たちに開拓の状況を語り始め、僕はこの目の前の光景を見落とすことなくしっかりと眺めた。
    「このように、ちょうど地鳴らしの被害を受けた地域とそうでない地域の境目から、人の手で少しずつ街と緑地を広げております。そして人の手がまだ届かない地域へは、その方法は詳しくは長くなりますので割愛いたしますが、飛行機を使った種子の散布などを試みております」
    「種子の散布」
    相槌代わりに鍵となる言葉を復唱して見せる。キヨミさんは「ええ、」と肯定したのち、また口を開いた。
    「ヒィズルは地域により気候や地質が大きく異なる国ですので、その場所や季節に合わせた種子の散布を模索しております」
    確かに巨人に踏み荒らされた土地でも、風に乗ってやってきた種子が成長し始めている地域は多い。それに便乗して、その土地にあった樹木の種子を散布しているとのことだ。……だが、本来は樹木の成長には人間の丁寧な管理も必要なはずで、だからこその『模索』なのだろう。
    「それにしても、もうここまで進んでいるんですね。木々の苗がこんなに成長している」
    僕は改めてこの大地に並ぶ苗木を見ながら感嘆を零した。連合国側の現状を知っていれば、ヒィズルの、少なくともこの地域の進め方は成功しているように思える。
    「はい、これらの政策は三年ほど前から始まっておりますので、地域によっては結果が出始めているのです。……ですが、もう少し木々が成長してから動物の入植や、植物の種類の多様化を行っていく手筈なので、そこからが本当の正念場になるのではと専門家は見ています。……どこの国もそうだとは思いますが、なかなかの長期戦です」
    樹木が成長してしまうのに四十年から五十年はかかると言われているのだから、森林を取り戻すには百年単位の計画と連携が必要になってくる。それは連合国側でももちろん議論されている問題ではあるが、何をおいてもまだ〝種子の散布〟に至るまでの準備が、連合国側ではできているとは到底言えない状況にある。
    「確かに、課題はそれこそ山のようにありますね。特に我々連合国側ではまだ土地すら整えられていないので……それにしても、飛行機を使った種子の散布は大変参考になります。飛行を始めとした様々な技術に関しては連合国側にとって損害の大きい分野なのでまだ当面の実用化は難しいでしょうが、大陸側でも今後活用できないか、参考にさせていただきます」
    「もちろんです」
    キヨミさんは一度足を止めて振り返り、愛想のいい笑顔を向けてくれた。
     それからまたすぐに前を向いて歩き始め、
    「……あとは、人口の増加政策が急務となっておりますので、それらについても議会で討論がなされ続けています」
    一つ悩みを零すように吐露した。
     地鳴らし被害に遭った国々はどこも変わらず、その減少してしまった人口に対する問題を抱えている。
    「我々連合国側でも人口の問題は深刻です。……ですが先ほど言ったようにまだ土地が整わないので……課題が山積みであることを実感しますね……」
    「さようでしょう。ヒィズルのこの取り組みも、大陸と比べるとまだ小さな島国であるからこそのものだと思いますので。大陸側も上手くことが噛み合うように、私どもも願っております」
    キヨミさんの言葉に感謝を伝えて、それから僕たちは緑地を離れて作業員の住まう街へ向かった。そこで作業員らの生活環境や待遇などの話を簡単に紹介してもらい、昼食をいただきがてら、その作業員らと話をする時間を設けてもらった。彼らは不便さは感じているものの、概ねこの生活に満足し、また自分たちの課せられた仕事に誇りを持っているようだった。キヨミさん曰く、もう少し街が落ち着けば、彼ら作業員の家族単位での生活を始められるよう、環境の整備に尽力しているとのことだった。
     そうやって地鳴らし跡地の視察は幕を閉じる。
     僕たちは訪れたときのように管理室で退所の手続きを行い、また飛行場へ向かった。
     飛行機に揺られること数時間、僕たちは元いた島に降り立った。お馴染みの立派な自動車に揺られて『旅館』に戻り、その玄関まで向かうわずかな道のりで、キヨミさんに声をかけられた。
    「それでアルミンさん」
    「……はい」
    声をかけられた僕は足を止めて、それに気づいてアニとピークも足を止める。
    「本日の午後、お約束しておりました火口見学へお連れする予定ですが、よろしいでしょうか」
    ……『火口見学』という言葉は馴染みはなかったものの、キヨミさんとの〝約束〟があるとすれば、それは『岩漿』を見に行くことだったので、おそらくそのことだろうと結びつけた。〝炎の水〟だ、〝火口〟とは言葉としては合致できる。
    「……は、はい。ありがとうございます」
    「ほかのお二方はいかがいたしましょうか」
    そう言ってキヨミさんは、僕の後ろで僕のことを待っていたアニとピークに目配せをした。
     当たり前だが、僕一人でこの貴重な『火口見学』を体験するなんて考えてもいなかったので、すぐさま「もちろん、みんなで行けたらいいなと思っています」と返答をしていた。特にアニとピークに確認したわけではないが、そうするのが自然だと思った。
     ――また僕の脳裏に過った影を追って、けれどすぐに振り払うように瞬きをした。
    「さようですか」
    キヨミさんも一息吐いて、それから止めていた足を再び歩ませ始めた。
    「……とは言ったものの、、ヒィズルも伝統の多い国ですので、見て楽しいと思っていただけるところはたくさんございますよ。みなさんそれぞれ、悔いのなきよう」
    「ありがとうございます」
    品のある笑みを湛えたまま、いつものように僕たちを旅館の玄関まで先導したキヨミさんとは、一旦そこで分かれることになった。三十分後にまたこの玄関前の広間で合流しようと提案されて、ようやく僕たちはこの堅苦しいスーツを脱ぐために部屋に向かうことができる。
     廊下を歩きながら、僕はそこに敷き詰められている赤い絨毯の網目を、一生懸命に目で追っていた。
     ――ついに、『岩漿』をこの目で見るときがやってきたのだ。……しかもそれは、最愛の仲間たちと一緒で。……そう、最愛の。
     しつこく僕の脳裏に現れ続ける影に、僕はきゅっと胸を締めつけられる。……けれどだからと言って、この状況をどうしたいのかもわからない。せっかく与えられた機会であり、好意なのだから、甘んじて受け入れるのが得策のはずだ。頭ではそうわかっているのに……未だに、このことを手紙で読んだときに抱いたような、あの居心地の悪さが拭えないのだ。
    「……アルミン」
    「あ、うん」
    すっかり自分の胸中に集中してしまっていた僕に、後ろを歩いていたアニが静かに声をかけてくる。少し歩幅をずらしてアニの隣に着くと、
    「あんた、一人で行ってきなよ」
    「……え?」
    何と突拍子もなくアニは僕にそんな提案をした。
    「私たち、首都の街並みの観光でいいからさ」
    付け加えてから、ピークの意思を確認するようにそちらへ目を向けると、ピークも笑顔でうんうん、と頷いていた。
     僕はその提案に意表を突かれたような気持ちになった。
    「……でも、君たちだって見たいだろ? 岩漿」
    だって、僕はこの『岩漿』をアニとピーク――〝最愛の仲間たち〟と見るつもりで……見る心構えで、ここまできたというのに。
    「……私たちはいいよ」
    アニは意見を変えなかった。
    「……わかった」
    そのあと、『ありがとう』と付け加えるか迷ったけど、結局言わないまま、僕らは部屋の前で分かれた。
     ――〝エレンと〟見たかった炎の水だから。
     『岩漿』のことを考えると度々僕の脳裏を占領する、図々しい幼馴染のことを思い出していた。そうだ、ずっと僕の思考に忍び込んでいた影は……エレンのものだ。……本当は、エレンを差し置いて『岩漿』をこの目で見ることに、少し悶々としていた。……だって、僕の中にあった『炎の水を見る』という夢は、あのとき――エレンと過ごしたあの最後の時間に、ほかでもないエレンの手で叶えてもらっていて……。だから、今さら、エレンではない誰かと、それを再び見てしまうことに……そうか、罪悪感だ。僕は、罪悪感のようなものを抱いていたように思う。――エレンと過ごした最後の時間の、あの記憶を……ほかの誰かとの時間で上塗りしてしまうような、そんな不安のようなものが、きっと僕の中にずっとあって、そしてそれを、アニはなんとなく気づいていたのだろう。……だからきっと気を遣ってくれて、それで『一人で行ってきなよ』になったのだ。
     窮屈なスーツを脱ぎ捨てたあと、僕はまだ時間があることをいいことに、窓際に備えつけの一人用のソファに腰を下ろした。そこから見える空を瞼の裏に映すように、静かに流れゆく雲を眺める。
     そういえばヒィズルに着いてからと言うもの、バタバタしていたせいでアニとゆっくりとした時間を過ごせていなかったなと思い浮かぶ。……とは言ったものの、国賓として招いてもらっている以上、いくら行事ごとがないとは言え公務中には変わりないので、これでいいのだと自分を納得させた。
     ――静かに瞼を下ろした。
     眼前に広がる、赤黒く、神秘的な輝きを放つ空間を思い出す。足元から吹き上げる熱風により、僕もエレンも髪の毛がふわわふと浮いていたのを覚えている。まるで生き物のように地を這う赤色の明かりは、迫力満点に、次々と周りの枯れ木や岩を飲み込んでいっていた。……こんなにも思い出せるのだ、あのときのことは。ただ残念なことに、僕はその目の前の〝炎の水〟をこの目に焼きつけるのに精いっぱいで、エレンがどんな顔をしていたかは思い出せなかった。……ぎり、とまた胸中が痛む。……君は、どんな顔をしていた?
     はっ、と空気の塊が肺の中に雪崩れ込む。
     ――キヨミさんとの待ち合わせの時間が迫っていることに気づき、僕はアニとピークに声をかけて、三人で旅館の玄関前の広間に向かった。キヨミさんは既にそこにいて、そしてもう一人、何やら完全装備を済ませた男性が合わせて待機していた。
    「お待ちしておりました」
    キヨミさんが僕らに声をかける。
     僕から「アニとピークは首都観光に興味があると言っていて」と伝えて、キヨミさんが「それなら私が」と楽しそうに手を挙げた。
     どうやら元々僕の『火口見学』はこの完全装備の男性に案内役を任せるつもりだったらしく、アニ、ピーク、そしてキヨミさんが「では行ってまいります」と楽しそうに旅館を出たあとも、僕は案内役の男性に言われるがままに『登山の準備』をしていた。

     目的の『火口見学』の土地へは、また同じように自動車を使った。ただ、乗っているのが僕だと知られないように配慮されているのか、これまで使わせてもらっていた立派な自動車ではなく、一般車だった。この自動車で僕たちは数時間を揺られた。
     この近くですから、と平地で自動車を下ろされたとき、既に陽はかなり傾いていた。まだ明るさはあったものの、空の色は青空というよりは少し赤みを帯びたライラックの色に近いようなものだった。その色をどんどん薄めていくように、白い煙が立ち昇っていくのが見えて、それが今回の目的地なのだとすぐにわかった。
     道中で聞かされたがこの火口周辺は有名な観光地になっているらしい。道のりもかなり整備されて気軽に見学できる場所として話題になっているそうだ。……少し拍子抜けしたのが正直なところだが、あまり時間にも余裕がなかったのでさくっと見られるのはよかったのかもしれない。
     今日も今日とて観光地として健在していたこの場所は、一般人が立ち入りを許可されている広場にそれなりに人を抱えていた。……とは言っても、日が傾き始めているのでまばらではあった。
     僕が自動車を降り立ってまず感じたのは異様な匂いだった。この山全体をもくもくと覆うような、この鼻につく匂いは、エレンと〝炎の水〟を見たときには感じなかったものだった。
     足の裏からじわじわと伝わるような気がする温かさがあり、これもエレンと一緒にいたときは感じなかったものだなと思いを馳せた。まるで、まるで大地が僕を身体の芯から温めてくれているような、そんな膨大な感覚が湧き上がった。
    「あちらが今回ご案内する火口です」
    案内役の男性がぴん、と腕を伸ばして煙が上がっている方向を示して見せた。
     僕は慌ててそちらへ視線を向け、方向を確認するや否や柵のほうまで慌ただしく歩み寄った。するとそこから少し目線の下のほうに、翡翠色の水溜まりが見える。……どくん、と心臓が派手に脈を打った。……この白い煙はその水溜まりから昇っていて、僕は衝撃を受けるがままに目を見開いてしまった。
     ――〝それ〟が、翡翠色だったからだ。
    「……え、あの、こ、これが……『岩漿』……ですか……?」
    恐る恐る案内役の男性に尋ねてみると、男性は深く頷きながら「さようです」と肯定した。そのあとに、なんとか成分やなんとか成分が豊富なため、この場所の『岩漿』はこんな色をしているというような説明を受けたが、僕は目の前に広がる光景に気を取られてそれどころではなかった。
     エレンと見た〝炎の水〟は、赤黒かったのだ。こんな匂いもしなかった。足の裏から伝わる地熱も、あのときは一切感じなくて……僕はあのときエレンに見せてもらったものと同じものを見ているのか、それが信じられなかった。信じられなくて、ただひたすらにその神秘的な光景に釘づけになってしまった。あのときだって神秘的だと思ったが、これはベクトルが違う。視覚からは『冷たさ』すら感じてしまいそうなこの色合いだというのに、ここを包むすべてがそうではないことを証明している。
    「……今回は特別に少しだけ奥へ進む許可をもらっていますよ。もう少し近づいてみますか?」
    案内役の男性が僕に提案をする。既に圧倒されていた僕は、言葉少なに「お願いします」と応えるのが精いっぱいだった。
     男性は僕を連れて、柵の裏手に回った。おそらく専門家などしか立ち入れない地域にあたるのだろう。キヨミさんがきっと口を効いてくれていたのだ。僕の胸は先ほどからどくどくとうるさく高鳴っていた。近づくにつれて匂いもどんどん濃くなっていく。
     柵を開いて「どうぞ」と言われたとき、僕はこの足元を見て一瞬だけ怯んでしまった。ここまでは整備された地面だったが、ここから先はごつごつとした起伏のある地面が広がっている。『岩漿』の熱で変形させられたであろう地面の形が、それでも踏みつけてしまえば簡単に崩れそうなほど脆く見える。……僕は慎重に片足をその真っ黒な地面に下ろした。何度か踏みつけてみるとまったくもって心配するような硬度ではなくて、しっかりと固さを持った安定した地面だった。
    「大丈夫ですよ。形は見ての通り、起伏が激しく足場としては悪いですが、そう簡単に崩れたりはしません」
    僕が降り立ったあと、男性はすいすいと僕の隣を進み始めた。「さあ、こちらです」と突き進む彼の姿は、少し楽しそうだなと思わせた。
    「この時間帯に見ると確かにこんな色ですが、日が暮れると色が変わるんですよ」
    男性はその楽しそうな姿勢のまま、僕のことをちらりと盗み見た。
     ――色が、変わる?
    「幸いもう少しで日も暮れる時間ですし、それも見て帰りましょうか」
    「は、はいっ、ぜひ……!」
    条件反射のように何も考えずに返事をしていた。
     本来この色であったことだけでも驚きだというのに、さらに夜になると色が変わるなんて……僕はずっとヒィズルの『岩漿』に驚かされてばかりだった。……そして思わず、僕は自分の隣を確認してしまった。あのときはあった、あの影を探して。――今はもういないなんて、わかりきっているのに。
     ずっと突き進んでいた男性が「ここまでですね」と足を止めた。どうやらこれ以上はガス溜まりができている可能性があるらしく、危険なので近づけないとのことだ。僕は先ほどよりも視界いっぱいに広がる『岩漿』を眺めた。この匂いにもそろそろ慣れたような気はしていたが、やはり強烈だ。肌で感じる熱風も、煙が立ち昇る音も、五感すべてでこの場所をこの身体に浸透させていく。
     この見ず知らずの男性と二人で、僕はしばらくこの場所からヒィズルの『岩漿』をぼおっと眺めた。
     日の傾きが進んでしばらくして、男性がそろそろ整備された区域に戻ろうと言った。足元がしっかり確認できる内に戻りたかったのだろう、僕たちは一般人が立ち入ることができる広場まで後退した。それから日が暮れ切るのを待つのだ。――果たしてそれは何色になるのか、それをこの目でしっかりと確かめなければならないから。
     翡翠色の『岩漿』から立ち昇る煙が、まるで僕の身体の中にまで入り込んでいくように感じる。それくらい、僕はこの壮大な景色の中で、感動というきらきらしたものだけでなく、言葉にならない蟠りをも抱えていた。いくら探しても正体を捉えることができない影があって、それがずっと、思考の隅を占領し続けた。

     僕が旅館に戻ると、アニとピークは既に夕食を摂り終えているのだと聞かされた。
     ヒィズルの『岩漿』を眺めたことでいっぱいになったこの胸中を整理したくて、……いやもっと単純に、誰かと話がしたくて、僕は既に身体を休めていたアニの部屋に向かった。
    「こんなに遅く帰ってくると思わなかったよ」
    部屋の中に招き入れられて第一声がそれだった。
     窓の外はすっかり真っ暗になっていたし、床に敷くタイプのベッドは既に部屋の真ん中を陣取っていた。明日はほとんど帰路に就くだけとは言え、もうそろそろ就寝を考えてもいい時間に差しかかっている。
    「うん。すっかり長居しちゃった」
    僕は部屋の真ん中に敷かれたベッドとはまた少し離れたところに腰を下ろした。
     今、この僕の胸中に渦を巻いている傷跡を暴かれたような不快感を、どうやって言葉にしようか……いや、言葉にすべきか否か、アニの目の前で少しの間考えた。
    「あんたが岩遊びしている間に、こんなもの撮る羽目になったんだけど」
    「ん?」
    ぬっと唐突に視界に入ってきた数枚の紙切れを凝視して、僕はすぐにそれが写真なのだと気づく。そこに映っていたのはヒィズルの伝統衣装を身にまとったアニとピークの姿だった。僕はそれを急くようにアニの手から奪い取って、まじまじと見るために目の前に置いた。
    「わあ! キモノだ! 着せてもらったの!?」
    「うん。キヨミが準備してくれてて、体験にって」
    アニが着ていたのは鮮やかな青みの強い水色の着物だった。繊細かつ豪胆な花柄の刺繡が丁寧に施されていて、とてもよく似合っていた。髪型もだ、これは確か……そうだ、『かんざし』と呼ばれる髪飾りをつけていて、それがまたアニの煌びやかな髪の毛を引き立てていた。ピークは反対に紫色の混じった濃い赤色の着物を着せてもらっていた。そちらにも刺繍が施されていて、艶のある金色が織りなす淑やかな鳥の柄が美しかった。普段髪の毛を高い位置で括ることがないピークに、このかんざしを挿して持ち上げている髪型は鮮烈に映っている。
     一番上にあった、アニとピークがともに映っている写真をめくると、今度はそれぞれが一人ずつで映っている写真が出てきた。そして四枚目は、キヨミさんと三人で楽しそうに笑っている写真だった。
     きゅ、と何故か少し、胸の中が軋んだ。往生際の悪い影がまた僕の意識を過って、それをまた払拭しようと気を逸らした。
    「そっかあ。ぼく、こっちでもよかったなあ」
    それらの写真をアニに差し出しながらぼやく。
     結局のところ、『岩漿』を見に行って僕が得たものは、新しいものへと発見と、それ以上の、エレンへの後ろめたさのような蟠りだけだったのだから。しまいにはここへ赴いてしまったことへの後悔すら抱いているかもしれないのだ。
    「……思ってないくせに」
    「……え?」
    「本当は、そんなこと思ってないでしょ」
    咎めるように見られている気がして、なんとなく視線を逸らしてしまった。
    「…………そんなことは、ないけど……」
    アニの視線が突き刺さって痛むように感じる。
     ――本当に? 僕は今回、一人でヒィズルの『岩漿』を見たことを……後悔しているのだろうか。
     エレンのことを、たくさん思い出した。思い出す羽目になった、今回の『火口見学』で、僕はこんなことならいっそ見なければよかったと思ってしまったのだ。そうだ、往生際が悪く影を表しているのはエレンではなく、往生際が悪く僕がエレンを勝手に思い出していたのだ。
     もうエレンは僕の隣にはいない。そんなこと、わかりきっていて、もう受け入れているはずなのに、今日は妙に胸がざわつく。……だから、僕はこんなことならアニたちと首都観光でもしてわいわいしていたほうがよかったと、そう思ってしまったはずだ。
    「……どうだった? 〝炎の水〟」
    黙り込んでしまった僕の隣にゆっくりと歩み寄り、アニはそのまま腰を下ろして、少し寄りかかるように身体を傾けた。その温もりが心地よくて、静かな声使いがどうしてか切なくて、ぐっと何かが込み上げてくるのを感じた。慌てて視線を落としたのは、その動揺を隠すためだった。
    「……う、うん……」
    かろうじて出てきた声だったというのに、アニはその先を望むようにずっと僕の口元を見ていた。
    「……え、エレンと見たときと、けっこう違ったんだ」
    「……そう」
    何度も頭を過る、エレンが隣にいたときの光景を、今日見た新しい景色でかき消そうとする。僕がまさに恐れていたのはこれなのに、今は耐えられずに自らそうしようとしているのだから世話ない話だ。
    「あのときは、……エレンと見たときは、熱風は感じていたんだけど。自分の足で踏み締めるとさ、じわじわとした地熱も伝わってくるんだ。不安定でごつごつとした足場に、噴き上げる熱風……そして、身体を芯から温めるような地熱」
    そうだ、エレンと見た〝炎の水〟とは、何もかもが違った。
    「……何より驚いたのが、それが翡翠色だったんだ」
    ――だからこそ僕は、何度も何度も思い出してしまったのだろう。
    「ひ、翡翠?」
    アニがぱちくりと瞬きをして見せてくれた。本当に興味があるのか、ただ僕に話を合わせてくれているのかはわからないけど、僕はそれを一目見たときの衝撃をまた抱いた。
    「そう、びっくりするだろ? 炎の水はその成分によって色が変わるみたいで、ヒィズルの炎の水はとても美しい翡翠のような色だった」
    「へえ、『炎』って言うからには赤いのかと思っていたよ。不思議だね」
    「うん、そうなんだ。だけどね、翡翠色なのに、日が暮れるとそれは変わって」
    「変わる?」
    じり、とまた光景が浮かぶ。
     赤黒く輝く、生き物のような『岩漿』を思い出して……それでも、もうどこにも……エレンはいなくて。
    「その本来の色を取り戻したように赤く……暗闇の中で……赤く、輝くんだ……」
    そうなのだ、日が暮れたあと、辺りが暗くなる代わりにそれは標のように赤く輝き始めたのだ。エレンと見たときは足元いっぱいに広がっていたその光景のまま、それを少し離れたところから見ているような感覚に陥った。ねえ、エレン。そう語りかけてしまいたくなるような、それほど鮮明に僕の胸の中をかき乱した。
    「……言葉にできないほどの光景だった。――まるで滾る鍋の中に放り込まれたような空間で、肌で、身体全部で、感じたんだ。……〝炎の水〟を。」
    「うん」
    ――もう何年経っているというのか。わかっている。
     今度はぼんやりと本を眺めている光景が目に浮かぶ。川べりの石畳の上で、エレンと一緒に広げた分厚い本。いくら〝本物〟をこの目で見たって、そこに載っていた絵を僕は忘れることはないだろう。
     ……まだ、幼いころの夢は幼いままだ。宝石の中にそれを閉じ込めたように淡く輝いているのに、だからこそ、それをもう取り出すことができなくて、切ない、苦しい。……僕はもう、新しい景色を共有できないのだ、エレンと。
    「……」
    ついに思い出に飲まれて言葉を失くした。
     やはり僕も大人しく首都観光をしていればよかったのだ。そうしていれば、未だにこんなにエレンが僕の中でふんぞり返っているなんて知らずに済んだのに。……そう思ったけど、それはそれでエレンらしいなと――いや、〝僕らしい〟なと、少し気が緩んだ。
     ことん、とアニの頭が僕の肩に乗る。何も言わないアニの珍しい行動に驚いて、
    「アニ?」
    僕は視線だけ向けるようにアニを見やった。
     肝心のアニは僕のことを見返すことはせず、この部屋の壁にかかった絵巻を眺めてただ静かに零した。
    「いいよ、無理しなくて。わかってる」
    どく、と心臓が跳ねる。
     僕が抱いているこのなんとも言えない不快感のこと、アニはすべて見透かしているのだろうか。……いや、初めからアニは、それらを見透かしているようだったではないか。
    「やだなあ、何のことだよ」
    誤魔化そうと思ったのに、声が震えてしまった。まったく肝心なところで僕は。
     見透かされたことで感情が増長されたように押し寄せて、一層強く僕の胸を圧迫した。わけもわからない内に目頭が熱くなって、僕がしたことと言えば先ほどよりも深く俯くことだった。……ぐっ、とくぐもった声が不意に漏れる。
     そうしたら唐突にアニの手が僕の視界を横切って、僕の頭を優しく撫でてくれた。その優しい手つきは、さらに僕の蓋を外すように感情をむせ返らせた。僕の内側は溢れてきたすべての、ぐちゃぐちゃの感情で窮屈になって、それがアニへの気持ちと相まって不思議な愛おしさになっていた。苦しくて切ないのはきっとエレンへの感情で、愛おしくてくすぐったいのはアニへの感情だ。……いや、違うか、どれもこれも一緒くただ。
    「……ありがとう」
    「うん」
    そうやってしばらくの間、アニは静かに僕がくり返す呼吸を聞いてくれていた。

    「――あ、そうだ」
    少し気持ちが落ち着いてきたころ、いつの間にかうとうとしていたアニに気づかずに、僕は大きな声を上げてしまった。
     それに驚いたように顔を上げたアニに「ごめん」と微笑みながら謝罪し、思い出したことを早速と言葉に乗せた。
    「ここのお風呂ね。〝温泉〟って言うんだって」
    「……オンセン?」
    僕が案内役の男性と『火口見学』へ行った際、二人でぼおっと『岩漿』を眺めているときに聞いた話だ。
    「うん! それがさ、炎の水……つまり火山の熱によって温められた、天然のお風呂なんだって!」
    ヒィズルにはたくさん火山があり、その周辺にはたくさん天然のお湯が沸いているのだと言う。中にはそのお湯を使って蒸し料理ができるほどの高熱なお湯もあるらしい。
    「……天然の?」
    僕が突拍子もなく熱弁を始めるものだから、アニは姿勢を正しながらも首を傾げて尋ねた。
    「えと、誰かが水を温めてるわけじゃないってこと?」
    「そうなんだ! 自然の力で温められたお湯なんだって! しかも、このお湯が沸いてる地区によって、そのお湯は特別な効能があったりするらしいんだ!」
    「こ、効能?」
    次から次へと仕入れたばかりの知識を披露する。
     その成分よって『岩漿』の色が違うように、その周辺の環境によって湧き上がるお湯には種類があるというのだ。まったく自然の力とは面白いものだと深く感心した。
    「うん! 傷の治りが早いお湯だったり、疲れが取れやすいお湯だったり、身体の痛みが取れるお湯だったり。中には肌が綺麗になる、美容効果のあるお湯もあるんだって! 不思議だよね!?」
    「あ、うん。不思議だね」
    いつもの冷めたような口調で、それでもアニは僕の言葉に同意を示してくれる。勢いが治まらないまま僕はアニに身体を寄せて、
    「アニはもう入った!?」
    声高々にそんな質問を投げかけていた。
     いかんせん、僕だってこの話を聞いてやっと、この旅館のお風呂の興味が湧いたくらいだ。一昨日、昨日と多忙だったこともあり、お湯に浸かることをしなかったので、果たしてアニは既にそれを体験したのかと気になったのだ。そしてあわよくば、その感想も聞きたいという気持ちもあった。
     しかしアニは僕の勢いに少し怯むように姿勢を引いて、
    「あ、いや、まだだけど……時間あんまりなかったし、シャワーで済ませてたよ」
    素直に教えてくれた。……ということは、今日、あの案内役の男性からこの話を聞けたことは幸いだった。明日帰路に就く前にその〝温泉〟を体験することができる。
     興奮冷めやらぬ状態で僕は拳を握り、
    「じゃあさっそく入らなくちゃね!」
    少し強引にアニに提案を押しつけた。こんな機会は滅多にないのだから、逃すのはあまりにも惜しい。
    「僕は後でいいからさ、君とピークで入ってきなよ! ヒィズルは『大衆浴場』と言って、みんなでわいわいお風呂に入る文化があるらしいんだ!」
    新しい知識と体験に胸を躍らせている僕を見て、アニはまた少し間の抜けた反応を見せた。何とも気のない声色で「……あ、うん」と相槌を打ったあと、「……それでいいの?」と付け加えた。
     それでいいの、とはどういうことだろう。アニとピークの二人だけで〝温泉〟を堪能することだろうかと結びつけた僕は、僕とアニとピークの三人でお湯に浸かる光景を想像しかけて、「いやいや」とその想像を振り払うように笑った。
    「いいよ。いくらなんでも女性に囲まれてお湯に浸かるわけにはいかないんだから」
    納得してくれたのか、アニはそろそろと立ち上がりながら時計を見やった。
    「……そう、わかった」
    半ば僕に背中を押される形で、アニは浴場に向かう準備を始める。……少し気乗りしなさそうな雰囲気はあったが、あえて見なかったことにして、僕はアニと一緒に部屋を出て彼女を見送った。
     僕も〝温泉〟に浸かるのは楽しみだが、ひとまず先に夕食を摂らなければと思い出して、食堂のほうへ向かうことにした。

     そうして僕らは長いようで圧倒的に短かったヒィズル訪問を終えた。僕らが初めて〝温泉〟を経験した次の日、僕らはまたヒィズル国民の手厚い見送りを受けながら、この地を発った。船旅よりはよほど短い時間だったが、それでも揺られるには少し長い時間を揺られて、馴染み深い現在の拠点に帰還した。
     帰って一番にしたことと言えば、ミカサに手紙を書くことだった。


    おしまい

    あとがき

    いかがでしたでしょうか~!
    いつものことながら長いのにお付き合いくださりありがとうございます……!

    キャプションにも書いたのですが、
    minamixさんのお誕生日に何か書きますよとお声がけしたところ、
    このシリーズの新作が見たいとおっしゃっていただいたので、こちらはminamixさんに捧げます~(*´▽`*)
    minamixさん、お誕生日おめでとうございます♪(時間がかかってしまい申し訳ないです;)
    楽しんでいただけていたら幸いです……!

    時代設定だいたい1940年代らへんでイメージしています。

    さらに細かいイメージとしては、ヒィズルも北側から地鳴らしされて、九州周辺が無事だったという感じです。
    本州のどこからへんで地鳴らし止まったのかなあと。
    ただ、進撃の世界地図自体、我々の地図をひっくり返したような地図なので、
    もしかしたら九州が北側だったかもしれないけど!;
    詳細わからないので、こういう感じにしました。

    なので、今回大使団が招待されたのが我々で言う九州にあたる地域という設定で、今回モチーフ(というか、参考?)にした火山は阿蘇山です。(中岳火口)(現在は『ハイヒールでも覗ける火口』として有名なのだとか)

    船の旅程の二十五日ほどというのは、本当に何の根拠もありません。
    ただ、我々の現実世界で日本~ハワイ間が大体九日くらいかかるらしいので、それで考えてみました。
    その倍以上は距離あっただろうな、というのと、時代が少し遡るので、それよりもかかるだろうなとか。
    船の移動大変ですね~。

    ちなみに、始めはピークちゃんではなくジャンくんを連れて行こうかなと思ったんですけど、
    よく考えたらジャンくんには留守番組のリーダーになってもらわねばとなり、同行はピークちゃんにしました。

    アニちゃん、ミンくんと温泉入りたいと思ってたらかわいいね〜^^(お前は誰だ)

    ともあれ、ご読了ありがとうございました!
    お楽しみいただけていたら幸いです^^
    飴広 Link Message Mute
    2023/07/02 23:40:03

    約束の場所

    【アルアニ】

    最終話後のお話につき、未読の方はご注意ください。

    今までのこのシリーズ、かなりアニちゃん寄りだったんですけど、今回はアルミンくん寄りです。
    アルアニ主体というよりは、アルミンくんのお話でナチュラルにアルアニをやってる感じです。
    (だって公式で相思相愛なんだもん)

    お誕生日のお祝いに何か書きますとお伝えしたところ、
    こちらのシリーズの続編が見たいとリクエストいただきました^^
    いいネタが降ってきてよかった~!笑

    あと、ない知恵絞って考えたので、もし「ん?」ってところがあってもスルーしてください^^;
    いっしょうけんめいかんがえました。

    お楽しみいただけると幸いですー!

    Pixivへの掲載:2021年11月19日 16:19

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
    • マイ・オンリー・ユー【web再録】【ジャンミカ】【R15】

      2023.06.24に完売いたしました拙作の小説本「ふたりの歯車」より、
      書き下ろし部分のweb再録になります。
      お求めいただきました方々はありがとうございました!

      ※34巻未読の方はご注意ください
      飴広
    • こんなに近くにいた君は【ホロリゼ】

      酒の過ちでワンナイトしちゃう二人のお話です。

      こちらはムフフな部分をカットした全年齢向けバージョンです。
      あと、もう一話だけ続きます。

      最終話のふんばりヶ丘集合の晩ということで。
      リゼルグの倫理観ちょっとズレてるのでご注意。
      (セフレ発言とかある)
      (あと過去のこととして葉くんに片想いしていたことを連想させる内容あり)

      スーパースター未読なので何か矛盾あったらすみません。
      飴広
    • 何も知らないボクと君【ホロリゼホロ】

      ホロリゼの日おめでとうございます!!
      こちらはホロホロくんとリゼルグくんのお話です。(左右は決めておりませんので、お好きなほうでご覧くださいませ〜✨)

      お誘いいただいたアンソロさんに寄稿させていただくべく執筆いたしましたが、文字数やテーマがあんまりアンソロ向きではないと判断しましたので、ことらで掲載させていただきましたー!

      ホロリゼの日の賑やかしに少しでもなりますように(*'▽'*)
      飴広
    • ブライダルベール【葉←リゼ】

      初めてのマンキン小説です。
      お手柔らかに……。
      飴広
    • 3. 水面を追う③【アルアニ】

      こちらは連載していたアルアニ現パロ小説「海にさらわれて」の第三話です。
      飴広
    • 3. 水面を追う②【アルアニ】

      こちらはアルアニ現パロ小説「海にさらわれて」の第三話です。
      飴広
    • 最高な男【ルロヒチ】

      『現パロ付き合ってるルロヒチちゃん』です。
      仲良くしてくださる相互さんのお誕生日のお祝いで書かせていただきました♡

      よろしくお願いします!
      飴広
    • 3. 水面を追う①【アルアニ】 

      こちらはアルアニ現パロ小説「海にさらわれて」の第三話です。
      飴広
    • 星の瞬き【アルアニ】

      トロスト区奪還作戦直後のアルアニちゃんです。
      友だち以上恋人未満な自覚があるふたり。

      お楽しみいただけますと幸いです。
      飴広
    • すくい【兵伝】

      転生パロです。

      ■割と最初から最後まで、伝七が大好きな兵太夫と、兵太夫が大好きな伝七のお話です。笑。にょた転生パロの誘惑に打ち勝ち、ボーイズラブにしました。ふふ。
      ■【成長(高校二年)転生パロ】なので、二人とも性格も成長してます、たぶん。あと現代に順応してたり。
      ■【ねつ造、妄想、モブ(人間・場所)】等々がふんだんに盛り込まれていますのでご了承ください。そして過去話として【死ネタ】含みますのでご注意ください。
      ■あとにょた喜三太がチラリと出てきます。(本当にチラリです、喋りもしません/今後の予告?も含めて……笑)
      ■ページ最上部のタイトルのところにある名前は視点を表しています。

      Pixivへの掲載:2013年7月31日 11:59
      飴広
    • 恩返し【土井+きり】


      ★成長きり丸が、土井先生の幼少期に迷い込むお話です。成長パロ注意。
      ★土井先生ときり丸の過去とか色んなものを捏造しています!
      ★全編通してきり丸視点です。
      ★このお話は『腐』ではありません。あくまで『家族愛』として書いてます!笑
      ★あと、戦闘シーンというか、要は取っ組み合いの暴力シーンとも言えるものが含まれています。ご注意ください。
      ★モブ満載
      ★きりちゃんってこれくらい口調が荒かった気がしてるんですが、富松先輩みたいになっちゃたよ……何故……
      ★戦闘シーンを書くのが楽しすぎて長くなってしまいました……すみません……!

      Pixivへの掲載:2013年11月28日 22:12
      飴広
    • 落乱読切集【落乱/兵伝/土井+きり】飴広
    • 狐の合戦場【成長忍務パロ/一年は組】飴広
    • ぶつかる草原【成長忍務パロ/一年ろ組】飴広
    • 今彦一座【成長忍務パロ/一年い組】飴広
    • 一年生成長忍務パロ【落乱】

      2015年に発行した同人誌のweb再録のもくじです。
      飴広
    • 火垂るの吐息【露普】

      ろぷの日をお祝いして、今年はこちらを再録します♪

      こちらは2017年に発行されたヘタリア露普アンソロ「Smoke Shading The Light」に寄稿させていただきました小説の再録です。
      素敵なアンソロ企画をありがとうございました!

      お楽しみいただけますと幸いです(*´▽`*)

      Pixivへの掲載:2022年12月2日 21:08
      飴広
    • スイッチ【イヴァギル】

      ※学生パラレルです

      ろぷちゃんが少女漫画バリのキラキラした青春を送っている短編です。笑。
      お花畑極めてますので、苦手な方はご注意ください。

      Pixivへの掲載:2016年6月20日 22:01
      飴広
    • 退紅のなかの春【露普】

      ※発行本『白い末路と夢の家』 ※R-18 の単発番外編
      ※通販こちら→https://www.b2-online.jp/folio/15033100001/001/
       ※ R-18作品の表示設定しないと表示されません。
       ※通販休止中の場合は繋がりません。

      Pixivへの掲載:2019年1月22日 22:26
      飴広
    • 白銀のなかの春【蘇東】

      ※『赤い髑髏と夢の家』[https://galleria.emotionflow.com/134318/676206.html] ※R-18 の単発番外編(本編未読でもお読みいただけますが、すっきりしないエンドですのでご注意ください)

      Pixivへの掲載:2018年1月24日 23:06
      飴広
    • うれしいひと【露普】

      みなさんこんにちは。
      そして、ぷろいせんくんお誕生日おめでとうーー!!!!

      ……ということで、先日の俺誕で無料配布したものにはなりますが、
      この日のために書きました小説をアップいたします。
      二人とも末永くお幸せに♡

      Pixivへの掲載:2017年1月18日 00:01
      飴広
    • 物騒サンタ【露普】

      メリークリスマスみなさま。
      今年は本当に今日のためになにかしようとは思っていなかったのですが、
      某ワンドロさんがコルケセちゃんをぶち込んでくださったので、
      (ありがとうございます/五体投地)
      便乗しようと思って、結局考えてしまったお話です。

      だけど、12/24の22時に書き始めたのに完成したのが翌3時だったので、
      関係ないことにしてしまおう……という魂胆です、すみません。

      当然ながら腐向けですが、ぷろいせんくんほぼ登場しません。
      ブログにあげようと思って書いたので人名ですが、国設定です。

      それではよい露普のクリスマスを〜。
      私の代わりにろぷちゃんがリア充してくれるからハッピー!!笑

      Pixivへの掲載:2016年12月25日 11:10
      飴広
    • 赤い一人と一羽【露普】

      こちらは露普小説「ケーニヒスベルク二十六時」シリーズの続編です。
      飴広
    • ケーニヒスベルク二十六時 / プロイセン【露普】

      こちらは露普小説「ケーニヒスベルク二十六時」シリーズのプロイセン視点です。
      飴広
    • ケーニヒスベルク二十六時 / ロシア【露普】

      こちらは露普小説「ケーニヒスベルク二十六時」シリーズのロシア視点です。
      飴広
    • ケーニヒスベルク二十六時 / リトアニア【露普】

      こちらは露普小説「ケーニヒスベルク二十六時」シリーズのリトアニア視点です。
      飴広
    • 「ケーニヒスベルク二十六時」シリーズ もくじ【露普】

      こちらは露普小説「ケーニヒスベルク二十六時」シリーズのもくじです。
      飴広
    • 最終話 ココロ・ツフェーダン【全年齢】【イヴァギル】

      こちらはイヴァギルの社会人パロ長編小説「オキザリ・ブロークンハート」の最終話【全年齢版】です。
      飴広
    • 第七話 オモイ・フィーラー【イヴァギル】

      こちらはイヴァギルの社会人パロ長編小説「オキザリ・ブロークンハート」の第七話です。
      飴広
    • 第六話 テンカイ・サブズィエ【イヴァギル】

      こちらはイヴァギルの社会人パロ長編小説「オキザリ・ブロークンハート」の第六話です。
      飴広
    CONNECT この作品とコネクトしている作品