夢は口ほどに物を言う「わっ、」
足を縺れさせて転びそうになった監督生を素早く受け止め、ケイトは安堵の息を吐く。
「ユウちゃん大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます」
「どういたしましてー」
服の埃を軽く払い、ケイトは表情を曇らせる。
「……ねぇユウちゃん、大分無理してるでしょ」
「へ、」
「目の下、クマが出来てるよ」
「っ……」
気まずそうに俯く監督生の頭を優しく撫で、ケイトは微笑む。
「何があったの?」
「た、大したことじゃないので……」
「言い訳じゃなくて理由を聞かせて」
「う、」
これはもう観念せざるを得ないと察した監督生は溜め息を吐く。
「……ここ最近、同じ夢を見るんです」
「それはどんな夢?」
「真っ暗な道をひとりで歩き続ける夢です」
「ひとりって……もしかしてずっと?」
「ずっと、です」
ぽつり、ぽつりと水滴を落とすように監督生は言葉を紡いでいく。
「誰にも会えないんです。どれだけ歩いても、何一つ変化が起きなくて……」
「その夢を見るのが嫌で寝てないのが、クマの理由?」
「……はい」
「そっか」
一言呟き、ケイトは監督生の目元を親指でなぞる。
「ところでユウちゃんは夢占いって知ってる?」
「ゆ、夢占い……ですか?」
唐突な質問に監督生は困惑する。
「夢の内容を聞いて、その人の心理状態が今どんな感じなのかを判断するんだよ」
「心理状態……」
「ユウちゃんの場合は真っ暗な道をひとりで歩く夢だからー……誰にも相談できない悩みを抱えて不安になっている」
「っ!」
「──図星、だね」
何も言い返せなくなった監督生の目が潤む。
「ごめんね」
謝罪の言葉を呟くのと同時にケイトは今にも泣き出しそうな顔をした監督生を抱き寄せる。
「けい──」
「オレにはユウちゃんの悩みを今すぐ解決することは出来ないけど、話を聞いたり気持ちが落ち着くまで傍にいることぐらいは出来るよ」
「っ……」
「だからちょっとぐらい甘えてよ、付き合ってるんだからさ」
ケイトの少し拗ねた声に一瞬目を丸くした後、監督生は大粒の涙を溢しながら笑う。
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして」