真相は夜の果て「今日は散々でしたね」
「ほーんとそれなー」
ゴーストの結婚騒動が落着した後、監督生は疲弊した様子の先輩兼恋人を彼の自室で労っていた。
「ビンタの跡、さすがにもう残ってませんね」
「まだ残ってたら大弱りだよー」
「じゃあ何で行ったんですか……」
「行ったらユウちゃんが妬いてくれるかなーって思って」
「動機が不純すぎる……」
露骨に呆れた顔をする監督生に対し、ケイトは頬を膨らませる。
「いーじゃん少しぐらい期待したってー」
「邪な期待に応える筋合いはありません」
「えーん、ユウちゃん辛辣ー」
監督生の胸に顔を埋め、ケイトはあからさまな嘘泣きをする。
「……そういうとこだと思いますよ、お姫様にフラれた理由」
「ん?どういうとこ?」
「言葉が軽すぎると言うか、本気じゃないのがバレバレと言うか……」
「えー?だってさー、本命以外に本気の言葉を投げ掛ける理由なんて無くない?」
ケイトの言い分に監督生は一瞬目を見開いた後、深く溜め息を吐く。
「そんな魂胆で口説いてたらそりゃビンタされますって……」
「今日のユウちゃん辛辣過ぎー、労ってくれるんじゃなかったのー?」
「労ってますよ、これでも」
監督生に頬を撫でられたケイトは嬉しそうに目を細める。
「……本当の目的はエースにゴーストたちを糾弾させることだった、とかですかね」
「んー?」
「デュースを巻き込んだのは身代わりにさせないため。自ら乗り込んだのはハートの女王の法律厳守のためにリドル先輩もエースも動かざるを得ない展開に持ち込むため。フラれたのは後の面倒を回避するため。こんなところ──」
監督生が確認の言葉を言い終えるよりも先に唇を重ね、ケイトは笑みを浮かべる。
「ユウちゃんは名探偵になれそうだね」
「っ……真相は、どうなんですか?」
「なーいしょ」
はぐらかされた不服を目で訴える監督生の頭を撫で、ケイトはまた唇を重ねた。