小休止は秘めやかに「あ、ケイトせんぱ──」
ほんの一瞬躊躇った後、監督生は言葉の続きを口にする。
「──いの、分身さん?」
「あったりー、よく分かったねーユウちゃん」
「実はあてずっぽうだったんですけど……あの、本体のケイト先輩はどこですか?」
「オレくんなら中庭にいるよー」
「中庭ですね、ありがとうございます」
「ちょーっとお疲れ気味だから優しくしてあげてねー」
「分かりました」
軽く会釈をして走り出した監督生の背中を分身のケイトは軽く手を振りながら見送った。
「ケイト先輩」
中庭の中心──から少し外れたところに生えている林檎の樹。
その根本で監督生の探し人は浮かない顔をしていた。
「……ん、ユウちゃんか」
「隣、座っても良いですか?」
「良いよ、おいで」
促されるまま監督生はケイトの隣に座り、軽く寄りかかる。
「……何か嫌なことでもあったんですか?」
「んー……強いて言うなら今日の『何でもない日』のパーティーに行くのが億劫」
「トレイ先輩がキッシュを焼いてくれるから甘いものを無理して食べなくても良くなったんじゃないんですか?」
「そうなんだけど、何て言えば良いのかなー……気が乗らない?」
「準備が面倒、とかではなく?」
監督生の質問にケイトは無言で頷く。
「……まぁ、そんな日もありますよね」
「うん……一応オレくんをパーティー会場に行かせたから完全なバックレにはならないと思うんだけど……」
「ああ、だからさっき分身さんが鏡舎の方に──」
「……ユウちゃん、もしかして見分けられるようになったの?」
「あっいえ、今回はたまたま当たっただけで……」
「うーん、ユウちゃんにバレたってことはリドルくんかトレイくんには速攻でバレちゃうかもなー……」
苦笑いを浮かべながらケイトは頭を掻く。
「……相当疲れてますね」
「うん、そうみたい」
「えっと……セラピーします?」
「是非ともお願いします」
食い気味の反応に監督生は失笑する。
「リドル先輩に怒られることになったら一緒に謝りますね」
「ありがとー……そしてごめーん……」
謝りながら体重を預けてくるケイトの頭を撫でながら監督生は微笑を浮かべた。