アリスは帰■ない「今日も調べもの?精が出るねー」
「学園長はアテになりませんから」
肩を竦め、今しがた読み終えた本を本棚に戻す。
「……やっぱり帰りたい?」
「帰れるなら、まぁ」
両親や友達、学校の先生。
もう一度会って話したい人は沢山いる。
「──もし元の世界に帰る方法が無かったら、どうするの?」
見つからない、ではなく無い。
それは最も残酷な可能性。
「その時は……」
学校に通える内はまだ良い。
問題は卒業した後。
学園長が雑用として学校に留まらせてくれるならとりあえずは──
「ねぇユウちゃん」
思考を遮ったのはやけに優しい声。
「行くアテが無いならオレが面倒を見てあげよっか」
いつもと同じ、軽い調子の話し方。
「ねーちゃんズに比べたらユウちゃん一人ぐらいどうってことないしね」
なのに、どうして。
「どう?悪くない話だと思うんだけど」
こんなにも怖く感じるのだろう。
「……い、一応考えてはおきます」
有耶無耶な回答に対する反応は、微笑。
「あの、ケイトせんぱ──」
「大丈夫だよユウちゃん」
囁く声はとても優しくて。
「どうせならハッピーエンドの方が良いもんね」
けれど少し怖くて。
「二度と会えないなんて悲しい結末にはさせない」
それでもやっぱり惹かれるものがあって。
「──逃がさないよ、ユウ」
例えこの言葉が呪いだったとしても、自分は──