分厚い壁との向かい合い方「ケイト先輩の本当の願い、ですか?」
「監督生なら聞き出せると思ったんだが……どうだ?」
「うーん……多分無理だと思いますよ。適当にはぐらかされて終わりにされる気がします」
「随分と消極的だな……」
「口で勝てた試しなんて殆どありませんし、何より……」
「何より?」
「自分が知ってるケイト先輩の顔がトレイ先輩が知りたがっている本当の顔である確証はありませんから」
監督生がしれっとした顔で言ってのけた内容にトレイは面食らう。
「自分が相当察しが悪い方だからか、これ以上踏み込んで欲しくない時はかなり分かりやすく態度で示してくれるんですよね」
「……監督生は不安になったりしないのか?そういうことをされて」
「ならない、と言えば嘘になりますけど……」
一旦言葉を切り、監督生は微笑を浮かべる。
「ケイト先輩を好きな気持ちはそのくらいじゃ揺らぎませんから」
「──はは、随分と惚気てくれるな」
「へっ!?」
トレイのからかいに監督生は顔を真っ赤にする。
「の、ののの、惚気たわけじゃなくてですね!」
「まぁ落ち着け」
「あううぅぅ……」
縮こまる監督生の頭を撫でながらトレイは笑みを浮かべる。
「……そ、そういえばどうしてトレイ先輩はケイト先輩のことを知りたいんですか?」
「どうして、か」
監督生の頭から手を離し、トレイは首を捻る。
「理由の一つは好奇心、かな」
「好奇心?」
「分厚く高い壁の向こう側にあるものを見てみたい、まぁそんなところさ」
「……ケイトせんぱーい、そろそろ出て行かないんすかー?」
「ムリ、今行ったら色んな意味で死ぬ」
しゃがみ込んで両手で顔を覆うケイトに呆れつつエースは隣の部屋で談笑する監督生とトレイの方に目を向ける。
「まー確かに、今行くのは自殺行為っすね」
「ホントそれ過ぎて困るー……」