201031_ハロウィンと輪廻『はろうぃん』というお祭りは、外国のお祭りで、
日本で言うところの年越しにあたる…というのだという。
でも、由来を聞くと、先祖の魂も戻ってきたりするとのことで、
さながらお盆のようにも感じた。
「でもな、一緒に悪霊もついてきてしまうことがあるらしいんだよな。」
「お盆のときはちゃんと道標があるので、そういうことはないですよね…。」
「あぁ。だから、こういう顔のカボチャができたんだと。…もとはカブらしいがな。」
「へぇ。」
堂島さんが器用にカボチャを顔の形にくりぬきながら、
『はろうぃん』の由来について説明をしてくれた。
今回も昨年と同様、かぼちゃぷりんを作ってもらう予定なのだが、
器は普通の物を使う予定なので、今回カボチャの中身をくりぬいた後、
顔を作って『はろうぃん』用の飾りを作ってくれていた。
「さぁ、足立。この中に、狐火を入れてくれないか。」
「狐火を?」
「そう。それが道標になるんだよ、外国ではな。」
言われるがままに火を灯し、中にゆっくりと注ぐと、辺りがぼんやりと明るくなり、
魂の光が近寄ってくるのが見えた。
「お盆の時以外でも、こうやって魂は集まってきてくれるんですね。」
「あぁ。やはり大切な人に最期の想いはきちんと伝えてから旅立ちたいのだろう。」
「大切な…人…か。」
ふと、遼太郎さんのことが頭をよぎったが、
隣に立つ堂島さんを見ると、まっすぐ魂を見据えた横顔が見えた。
限りある魂を失い、永遠の魂となった堂島さん。
後悔はないと言っていたけど、想いを伝えたいというのはないのだろうか。
「ん?どうした、足立。」
僕の目線に気付いた堂島さんは、顔をこちらに向けると、ゆっくりと頭を撫でてくれた。
「堂島さんは…大切な人に想いを告げて輪廻を巡りたいと思いますか。」
「そうだな…まぁ、そうして命を繋いでいきたいよな。」
やっぱり堂島さんは、ヒトとしての人生の方がよかったのだろうか。
少し胸の痛みを感じながらも、笑みを作って、「そうですか」と絞り出すような声で僕は呟いた。
すると、堂島さんは僕の肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「最期までお前と共に生きた後、お前と共に輪廻を巡って、再び隣で生を過ごしたいぞ。」
「…!」
ぱっと見上げて堂島さんを見ると、優しい顔で見つめ返された。
僕は思わず照れてしまい、堂島さんの胸板に顔を隠し、額を擦り付けると、
堂島さんは頭をぐっと抱き寄せて閉じ込めた。
堂島さんの鼓動を聞いて、少し落ち着いてくると、
「そうやっていつも可愛い姿も見ていたいしな。」
意地悪く僕の心にとどめを刺した堂島さんの声が耳に伝わったのだった。