ある日の縄文堂足(+菜々子ちゃん)「ふぅ、こんなもんかな。」
「足立さん、上手!菜々子も耳飾り、できたよ!」
「うん、菜々子ちゃんも上手だね~。」
ここはとある集落。
僕はこの小さな女の子、菜々子ちゃんと、その父親、堂島遼太郎さんと一緒に暮らしている。
血族、というわけではなく、僕は堂島さんに拾ってもらった人間だ。
堂島さんに口説かれ、互いに好いていき、一応伴侶として生活を共にしている。
堂島さんは狩りを得意としていて、相棒の鷹と一緒に日中は狩りをしている。
その間、僕は菜々子ちゃんと一緒に装飾品や食器などを作ったり、
家事をしていたりする。
最初、僕はこれらの仕事を全くできなかったのだが、
しっかり者の菜々子ちゃんに教わり、上達した。
今日は菜々子ちゃんが装飾品、僕が食器作成の当番で、
二人で色々研究しながら作成していたのだった。
「ただいま。」
「「おかえりなさい。」」
夕方、堂島さんが帰ると、夕食の時間だ。
ゆっくり1日の出来事を語る家族の時間。
こんなにゆっくり流れるトキを過ごせるとは、少し前の自分では到底想像できない時間だ。
そうして菜々子ちゃんが眠ると、
夫婦の時間となる。
堂島さんは割と甘えたらしく、僕をすぐ膝の上に乗せたがる。
すりすりと首に顔を埋めて、僕の感触を確かめるような触り方をするのだ。
「今日も1日お疲れ様です。」
「あぁ、ありがとう、足立。」
ゆっくりと口づけを交わし、互いを労う。
こんな甘い時間も僕が過ごせるとは思っていなかった。
だが、こんな時間も、先ほどまでの時間も、全て堂島さんがくれたものだ。
大切な…大切な宝物のひとつ。
「そうだ、足立。これ、受け取ってくれないか。」
「それ…堂島さんと同じ首飾り…?」
「そうだ。これは狼の骨で作ったものなんだが、やっとこの間捕えてな。
お前の分もこしらえたんだ。」
お揃いの飾り物を身に着ける、というのには意味がある。
そう、『家族』という証になるのだ。
(勿論、既に菜々子ちゃんは狼の骨で作られた耳飾りをつけている。)
「千里が身に着けていた耳飾りを作り変えても良かったんだが、お前はそれでは納得しないだろうからな。」
「それは…千里さんのものはそのままとっておくべきですからね。」
堂島さんから渡された僕専用の首飾り。
持ち上げてみると、きれいな赤い石が填められている。
「綺麗だろう。この間海沿いに行ったときに拾ったんだ。…俺も着けた。」
「…!」
「俺の奥さんなんだ。身につけて…くれないか、透。」
強い意志を持った、だけれど少し不安げな目。
そんな堂島さんのまなざしに何度救われただろうか。
今度は僕が堂島さんの目を…力強いあたたかなものにする番だ。
「勿論。あなたを幸せにすると誓ったその日から、あなたの伴侶として一生を共にすると誓ってます。
よろしくお願いします、遼太郎さん。」
ゆっくりと僕に首飾りを下げて、満足げな堂島さんは、
そのまま僕を抱き抱え、寝床へと運んでいったのだった。