軽率に奮い立たせる_主足verある休日の午後。
珍しく珈琲片手に唸っているクソガキを見つけたので、
何に悩んでいるのか聞いてみた。
「ある人を振り向かせたいのですが、そのための言葉が全然見つからなくて…。」
…とうとうきたか、この時が。
出所後、紆余曲折あり、クソガキ…鳴上悠と僕、足立透は一緒に生活をしている。
実は一緒に住むにあたり、
このガキから、異性に向けられるはずの「好き」も一緒に告白されたのだが、
それはきちんと断った。
それでもクソガキはシェアハウスを提供してくれたのだが、
流石に振られた相手と生活は辛くなったのだろう…。
ようやく「まとも」な対象へ愛を告白することにしたのか。
そう思ったとき、なぜか一瞬胸のあたりがツキンと痛くなったが、
適当に励ます言葉をかけてやることにした。
「へー。キミ、容姿端麗なんだし、大丈夫だよ~。頑張れ頑張れ~。
言葉より容姿で押せばとりあえず確保できるんじゃない~?」
こうして僕は、この後起こることを予想せず軽口をたたいてしまったのだ。
「なるほど。よくわかりました。…では足立さん。」
「ん?」
「もう一度言います。俺はあなたのことが好きです。俺の顔、実は好みでしょ?」
「はい?」
ちょっと待て。
さっきあのガキ振り向かせたい奴がいるって言ってなかったか?
それって…僕なの?振られたのに?
あれ、チクチクしてたの止まった?
「さっき、『容姿端麗』と言ってくれてましたよね?」
「まぁ言ったけど…。」
「それは足立さんの言葉で表現された俺への愛の告白ですよね?」
「はい?」
「それにすごく苦しそうな表情で言っていたのは…俺が告白しようとしていた相手が
あなたじゃないかもしれないと思ったからじゃないですか?」
「…はぁ?」
「さっき励ましてくれたあと、胸のあたりをおさえていたのはなぜですか。」
…それは僕じゃないやつに告白すると思ったらチクっと痛かったからだけど。
「それは足立さんじゃない相手に告白をすると思って心が痛くなったから…ですよね。」
言葉発していないはずなのになんでわかるんだよ。
「足立さん、好きです。愛してます。今は俺の顔が好きで付き合ってくれるでも構いません。
俺と…ずっと添い遂げてくれませんか。一生大事にします。」