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    縄文堂足_2市場での売れ行きは上々だった。
    菜々子ちゃんの営業が上手いのだ。
    あっという間に売り終わると、労いもかねて近くの食事場へと足を運び、
    少し美味しいものを二人でつついていた。

    するとそこに、小汚い男が数名、近づいてきたのだった。
    すっと菜々子ちゃんを隠すような配置に座り直し、
    彼らの同行をみていると、やはりこちらへと向かってきていた。

    「菜々子ちゃん。ごめん、食べるの中断ね。」

    耳元でぽそりと話すと、菜々子ちゃんは少し驚くも、すっと僕の背中に隠れてくれた。

    (堂島さんの教えで、危ないときは堂島さんか僕の後ろにまずは隠れるように、
    と言うことになっているのだ。)

    「足立はお前か。」
    「…人違いなんじゃない。」
    「人相書きが一致している!」
    「…。」

    相手を睨み付け、一瞥しようとするも、さすがに堂島さんほどの凄みは出せず。
    あまり怯ませることは出来なかった。

    「『ミナヅキ』の使者だといえば、お前はどういった用件かわかるよなぁ、足立?」
    「…!」
    「それとも、この嬢ちゃんが実は『足立』なのか?ん?」
    「痛いっ!」
    「この子に触るな…!!」

    男共を凪払い、菜々子ちゃんを助け出すと、彼らはにやにやと僕の方を見つめた。

    「お前が足立だと認めて、俺たちとくりゃ、その子には手を出さねぇよ。
     だが…認めねぇなら…。」
    「奴隷にでも出してやるか。」
    「…!やめろ。…足立は僕だ。このこの前で奴隷の話をするな。」

    これ以上菜々子ちゃんを巻き込むわけにもいかず、僕は簡単に牛革に伝言を書き、
    菜々子ちゃんそれを渡して、一人で家に返したのだった。

    「で、君たち、どこから沸いてきたわけ?」

    少し人気のないところへ移動し、まずは情報収集がてら問うてみた。
    おそらく昔の繋がりのどこかからなのだろうが、なぜ僕の居場所がわかったのか。
    それに、昔は『足立透』とは名乗っていなかった。
    この名前はあそこでしか使っていない。

    …本当の僕の名前なのだ。

    「ミナヅキさまからのお呼びだしでお前を探したんだ。この意味、わかるよなぁ?」
    「…!!」

    ミナヅキ。
    僕がまだ奴隷だった頃。
    散々な扱いをされたところの主人の一人。
    実は僕はそこから逃げ出してきたのだ。
    少しずつ色仕事の合間で武器となりそうなものを集め、逃亡準備をした。

    本もたくさん読んで知識もつけて。
    そうして逃げてきて行き着いたのが堂島一家だったのだ。

    「断ったら?」
    「半殺しでも連れてこいと言われている。あぁ、変な精霊を封じるものは持ってるからな。」
    「…そう。」

    ふぅ、と深く息を吐く。
    この数年、堂島さんたちの暮らしは本当に幸せなものだった。
    人生のなかで一番幸せで、ゆったりとした時間だった。

    (この思い出だけでじゅうぶん、かな。)

    ふっと笑ったあと、昔の意地汚い表情へと戻していった。

    「いいさ。どこにでも連れていけよ。道中、遊んでやってもいいよ?」

    こうして僕は、再びどん底の人生へと戻ることになったのだった。


    side:D

    今日の遠狩はまぁまぁだった。
    足立が整えてくれた装備は上々だったし、獲物もいいものを見つけたりできた。
    だが、今日は太鼓持ちなところもあり、一部は譲らなければならなかったのだ。
    (まぁでも、久々に腹一杯食わしてやれそうだ。)
    そう思いながら家へ帰ると、泣きじゃくった菜々子が立っていた。

    「どうした?!!菜々子!足立はどうした?!」

    泣いていた菜々子に近づくと、菜々子は泣きながら牛革を差し出してきた。
    そこには足立の文字らしきものが綴られていた。


    『堂島さん

    直接伝えられなかったことを先に謝ります。
    僕は昔の生活に戻らないとならなくなりました。
    その現場を菜々子ちゃんに見せてしまい、怖がらせてしまいました。
    でももう僕が関わらなければそんな思いはせずに済むから。
    堂島さんもお元気で。
    たくさんの幸せをありがとうございました』

    「あいつ、また自分をすり減らすつもりか…!!」

    手に持っていた革がへにゃりとまがったのも気にせず、俺は怒り狂った。
    菜々子は変わらず泣き続けていた。

    少ししてようやく落ち着いてきた俺は、菜々子がみた光景などを聞き出した。

    「ミナヅキ…。確か隣の集落の権力者がそんな名前だった気がするな…。」

    ミナヅキという名前の権力者が住まう地域は、奴隷制度が根付いていた。
    力あるものが強く、弱きものを虐げられる権利を持つという恐ろしい社会を作り上げたミナヅキ。

    そこで足立もまた奴隷として生活をしていたと聞いていた。
    足立は切れ者でもあったので、度々知恵を絞れと命令もされていたという。

    そのミナヅキから逃げてきた先が俺のところだったわけで。
    あいつはもうそこから解放されていいはずなのに。
    またそこに戻ってしまったのだ。

    「…あいつはもう俺の家族なんだ。…家族を奪われて、黙っていられるか。」

    心を決めた俺は、先祖代々伝わる首飾りの装飾品を身に着けた。
    その装飾品は何百年も前から存在していたと伝えられているもので、
    真ん中に赤と金で輝く石が填まっていた。
    …そういえば、足立が持っていた片手剣のところに填まっていた石も、
    同じような赤色に輝くものだったように思う。

    「…来い、『コウリュウ』。お前の力を貸して欲しい。」

    首飾りを掴み、念じると、狩りの相棒である鷹が変化して、龍の姿へと変えた。

    「遼太郎の坊主、久方ぶりだな。」
    「あぁ、千里が亡くなっちまって以来だな。
     すまん、お前の見据える目を借りて、足立を探したい。」
    「大事な家族を護るため、だな。」
    「あぁ。頼む。」
    「代償は…そうだな、足立の坊主が戻ってから請求でいいぞ。」
    「わかった。」

    そうしてコウリュウから借りた目で、俺は足立を捕えた。

    「待ってろ。すぐ迎えに行くからな、足立。」

    okano_teru Link Message Mute
    2020/06/11 22:46:39

    縄文堂足_2

    ついのべ風作品。縄文時代のような時代背景での堂足の話。
    #ペルソナ4 #足立透 #堂島遼太郎 #堂足

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