in the light of your dawn_2『僕を愛せますか。』
白い綺麗な人豹の第一声は、間違いなくこの言葉だった。
数分前に触れあい、互いの存在を認識したばかりなのに、
なぜそんなことを言ってきたのか。
あの人獣は『愛』に飢えているのだろうか。
「なっ?!お前…!」
「あぁ。獣人でなくなってしまったとき、服を破いたらと思って。」
「そう、か。」
すらりと伸びる足に一瞬気を捕らえられたのだが、ルートの言葉で現実に戻った。
(足立と本当に似ている体つきだな…。)
そんなことを思いながら、俺も寝床の準備を整えた。
布団にはいったあと。
一日であったことが多過ぎてなかなか寝付けない状況だった。
満月の夜をはじめ、遠吠えが聞こえていたが、その正体は人獣であった。
そして満月の夜は人獣がもっとも人間らしくなるときで、
たまたまその日に俺は人豹であるルートとであった。
「堂島さん。」
夜の静けさが広がる中、ぽつりとルートが呼び掛けてきた。
「どうした。」
顔を動かさず返答すると、ルートはそのまま話続けた。
「僕はね。本当はあなたと前から知り合い…ですよ。どこでというのは言えないですが。
あなたの刑事の勘で、当てて見せてください。…待ってます。」
「…おう。」
その言葉は、俺の心のなかにずしりと残るものとなった。
ルートの存在についてはまだわからないことだらけだが、
少しずつ紐解き、足立のことも何かわかれば。
そんなことを考えているうちに微睡みの中へと沈んでいったのだった。
そうしてあっという間にひと月経ち、また満月の夜が近づいてきた。
相棒として優秀なルートは、この1ヶ月、さまざまな事件を共に解決していった。
ときたまサボり癖はあるのだが、それでも熱心に仕事をしてくれていた。
解決するごとにおねだりをしてくるように体を擦り寄せてくるのはかわいいものだ。
一度、子供にするように額に口付けてやったのだが、この時は驚いて逃げ出してしまった。
後々考えて、そういえば俺の事が好きだとか言っていたな…と思い、謝っておいた。
それに対してルートは少し悲しい顔をしていたが、すぐに許してくれたようだった。
そして二度目の満月の夜。
ルートは再び綺麗な人豹へと姿を変えた。
「おかえり。」
ヒトガタに戻ったルートにそう告げると、
ルートははにかみながらも嬉しそうに「ただいまです」と応えてくれた。
ヒトガタに戻ったので、一月話せなかったあれやこれやをたくさん会話した。
ルートも会話が嬉しいらしく、尻尾を元気よく振りながら一生懸命会話をしてくれた。
「なぁ、ルート。」
「はい?」
俺が呼び掛けると、嬉しそうに尻尾を振りながら見つめてくる。
その仕草から何から、やはり俺はある人物しか思い当たらなくて。
「ルート、口づけをしてみてもいいか。」
「!!!」
俺は確かめるための大一番に出ることにした。
ルートは言われて驚いたのか、おどおどとし始める。
おそらく、俺がそういったことをしようとすること事が想定外だったのだろう。
そんな様子も愛らしくて。
俺の知る、一番愛したいと思っていたその人物と同じにしか思えなくて。
『お前は、足立なのか…?そうなのか、ルート。』
いつからか、俺はそんなことをずっと自問自答し続けていたのだ。
だからこそ、ルートともう一歩深いところで繋がってみたくて。
もし俺の「刑事の勘」が外れていたら、ルートの信頼を一気に失うかもしれない。
それでも俺は。
足立、お前のことを救いたい。
そしてお前に伝えられなかったこの想いを伝えたいから。
「可愛いな。……透。」
俺は愛すべき相手…足立の名を呼びながら口づけを交わしたのだった。