2月18日【2月18日】
美術の授業を受けていた。
自分の好きな曲をイメージして、絵を描くという題材だった。目の前の絵の具セットを見てため息をついた。
絵の具は嫌いだ。どう混ぜたって満足な色が作れないし、不器用なせいで絵筆だって上手く使えない。出来るのならば、こんな授業なんて放り出してしまいたい。
それでも何とか完成まで漕ぎ着ける。出来上がった絵に布を被せる。目にも入れたくない。あまりにも酷い出来栄えだった。
他のクラスメイトも、既に描き終えたようだった。お互いの絵を見合って笑ったり褒めあったりしているのが聞こえる。
その様子を見ていた教師が口を開いた。
「では、その絵に描いてあることを先生が叶えてあげます」
歓声と悲鳴で部屋が揺れた。
心臓がバクバクと大きな音を立てている。
誰からも忘れ去られて消えてしまいたいと歌う曲をモチーフにしたのが、仇になるとは思わなかった。
あの教師の言うことが本当ならば、私も消え去ってしまうのだろう。
周囲を見回せば、喜びに顔をほころばせる人達に混じって、顔を歪ませている人達がちらほらと見える。仲間がいることに対して、こんな状況ながらも安堵してしまう。
でも、消えたくない。
衝動的に走り出した。隣の準備室へ飛び込む。いつの間にか、体中に紙切れが貼り付けられていた。レッテルのように思えた。
「あと5秒!」
キャンバスの間を縫うように走る。
4。
惨めな最期なんて誰にも見られたくない。
3。
紙切れが体を覆い尽くしていく。
2。
地面に伏せて、祈る。
1。
紙の貼られてない手先が、最後に見えた色彩だった。
「時間です!」
歓声。