あがってさがってアイラブユー! お祖父様特製自己肯定感が爆上がりする薬~! これを飲むと、どんなに自己肯定感が低い男でも自分のことを愛せるようになる~っていう薬をロナルド君にこれから飲ませる。
私の恋人ロナルド君は、根は優しくて力持ち。頭は悪いが顔は綺麗で、彼に黄色い声を上げる女性は少なくない。
ちょっと揶揄えば反射でぶん殴ってくるが、私のことは好きらしく、不器用なりに愛してくれる。付き合い始めてまだ日は浅いが、あんな面白い男はいない!
それなのに、だ。当の本人は自己評価が著しく低い。この私が太鼓判を押してやっているのに、口癖のように俺なんて俺なんか。正直あまり、良い気はしない。
だからお祖父様に頼んで薬を作ってもらった。これを飲めば、ロナルド君の自己肯定感は爆上がりする。効果は一時的なものらしいが、これをきっかけに彼が自分のことを見つめ直すことができるかも……と思っているのだがやってみないことにはわからない。なのでこれからこっそり盛る。
ロナルド君は事務所で原稿の執筆中。コーヒー飲む? と聞いたら飲むと言うのでマグカップに並々注いだ。そして薬瓶の蓋を開け、コーヒーの中に数滴――
「おいドラ公」
「アギャギャヴォェアアア!」
驚きのあまり死んだ。
「お前今何してた」
「ななな何もしてないが? コーヒーを淹れていただけだが?」
いつの間にか背後に立っていたロナルド君。その表情はだいぶ険しい。
額に冷えピタ。目の下に隈。原稿にだいぶ追い詰められているらしい。うーん馬鹿馬鹿私の馬鹿! 別の日にすれば良かった!
「コーヒー淹れただけでなんで死ぬんだよ」
「いや……なんか……持病?」
「持病で死ぬのやべーな」
「そうヤバいんだよ。だから常々困っていてだな……」
「しょーもねー嘘ついてんじゃねーぞ。今なんか入れたよな」
「は⁉」
「コーヒーになんか入れたよな」
「入れてないが⁉」
「じゃあそこにある瓶は何なんだよ」
「こっ、これはアレだ! なんこう、めちゃくちゃ健康になる奴だ! 君の為を思ってだな、」
「やっぱり入れてんじゃねーか! てめえで飲め!」
「いや私既にめちゃくちゃ健康だから! これ飲んだら逆に死ぬっていうか!」
「虚弱の権化みたいな奴がなに言ってんだ! おら飲めッ! てめえで飲め!」
「あっ、ちょっ、やめ! ほんとに死ぬッ――」
口内になだれ込んで来る苦み。それから舌が痺れる感覚。
気がつけば、私の身体はさらさらと崩れ落ちていた。
***
ドラ公が俺に薬を盛ろうとして来たので逆に飲ませた。もう何回目だよこの展開。
飲んだ瞬間塵と化すドラ公。なんだ今度は何を飲ませようとしてたんだ。
「……」
「……」
「……おい」
「……」
「おいいつまで死んでんだ!」
「アッハイ! すみません!」
一喝すると、ドラ公はびくっと震えて速やかに再生した。
「……」
「……で、何の薬だったんだよ」
「は? 何が?」
「てめえが今飲んだそれだよ!」
「何のことだかわからないんだが……?」
「おいしらばっくれてんじゃねーぞ!」
「いや知らん知らんほんとに知らん! えっ、私何かした……?」
露骨に怯えた表情のドラ公。なんだなんだどういうことだ? 嘘をついているようには見えないが。
薬の副作用で記憶が消えた? それか元から記憶を消すための薬だった? よくわからないが、他に変わった様子はない。
「体調は」
「は?」
「体調に変わりはねーのかって聞いてんだよ!」
「ないないない! なんでそんな喧嘩腰なんだ怖いな……」
「いやてめーのせいだろうが!」
「アーハイスミマセンスミマセン! あっ、そうだ私夜食の買い物に行かないと!」
「あ、おい!」
「いってきまーす!」
言うが早いか、ドラ公は駆け足で出て行った。何が何やらさっぱり意味がわからない。
***
三十分後、ドラ公は買い物袋を抱えて帰って来た。やはり変わった様子はなく、いつも通りエプロン姿で台所に立っている。
「飯何?」
「唐揚げとオムライス」
「えっマジ? なんで?」
「なんでって、君好きだろう」
誕生日でもないのに? と思ったが、ドラ公のことだ、期待させておいて全く別の物を作るとかきっとそういう奴だ。見た目オムライスで卵をめくったらセロリご飯、という可能性もある。油断はできない。念のため、しばらく様子を見ることにした。
***
「……」
けれど予想に反して、ドラ公はずっと普通に料理をしている。
怪しい様子は全くない。普通にオムライスと唐揚げを作っている。室内に良い匂いが立ち込めてきた。
絶対何かすると思ったのだが、なんだろう、体調でも悪いのだろうか。それか改心した? いやそれはない。絶対にない。しかし目の前のドラ公は、健気にせっせと俺の好物を拵えている。
締め切りも近いし、そろそろ原稿に戻るべきか? いやでもしかし、あいつのことだ。俺が油断した瞬間料理に薬を盛るかもしれない。もうしばらく様子を見るべきか――なんて考え込んでいると、ドラ公が不意に大声を出した。
「アー!」
「は⁉ なに⁉」
「あっ、いや……油が……」
「んだよ火傷でもした?」
「いやそうじゃなくて……ちょっと出てくる」
そう言うなり、エプロンを外し足早に出て行こうとするドラ公を慌てて止める。
「おいどこ行くんだよ。買い忘れ?」
聞くと、ドラ公はバツが悪そうに目を逸らした。
「あ、いや、うん……油がちょっと、揚げ物をするには足りないから。ごめんすぐ買ってくる」
と、またさっさと出て行こうとするドラ公の腕を反射で掴む。
おかしい。いつものドラ公だったら、俺に買いに行けと言うはずだ。
「俺に行けって言わねーの?」
「は⁉ いや買い忘れたのは私なんだし、私が行くに決まってるだろ」
「いやでも食うのは俺なんだし。今日はジョンもいねーし」
「いやいやいや、事前に確認しなかった私の落ち度だ」
「なんて?」
「あークソ、何やってんだ私……ほんと使えない……」
「なに……?」
「なんで私ってこう、愚図なんだ……」
「……熱でもあるのか?」
「私は炭酸の抜けたぬるいコーラ……」
「いやおかしいおかしいおかしい! お前絶対おかしいって!」
「ハロードラルク。それから人の子」
「⁉」
***
驚いて振り返ると、開け放たれた窓の外にするりと長い人影が。
ドラ公の爺さん! なんだなんだ今度はなんだ!
「びっ……くりした! 何だよ突然!」
「ドラルクにあげたあの薬、注意事項を言ってなかったと思って」
「薬? 注意事項?」
「うん。自己肯定感が爆上がりする薬。ポール君が飲んだの?」
「あ、いや……自己肯定感?」
「うん。あれ、君みたいな人にはちょうどいいんだけど。ドラルクみたいな人には逆効果だから」
「……と言うと?」
「自己肯定感が高い人が飲んだら、逆に爆下がりする」
「……つまり?」
「今のドラルクは、めちゃくちゃ卑屈でマイナス思考」
「何――――⁉」
ハッとしてドラ公を見る。いかにも自信がなさそうな、存在して申し訳ありませんみたいな表情のドラ公。えっ何お前そんな顔できるの?
しかしなるほどこれで全てに合点が行った!
「でもドラ公は何でそんな……いや今はいい。おい爺さん! 元に戻るんだろうな⁉」
「うんまあそのうちね」
「そのうちって」
「早く治したいんだったら、自信をつけさせてあげるといい」
「は? 何?」
「今のドラルクは、自分が存在するだけで世界に迷惑をかけるんじゃないかとか、そんなことを思っている」
「そんなことを思っている⁉」
「何を言っているんですかお祖父様……そんなのあたり前のことじゃないですか……」
「あたり前のこと⁉」
「だからポール君、君が自信をつけさせてあげて」
「お、俺が⁉」
「うん。そうしたら多分、すぐに戻るから」
「な、な……!」
「じゃあちょっと、私用事があるから、何かあったらラインして」
「まっ――」
止める間もなく、爺さんは去ってしまった。
***
開きっぱなしの窓から、風がひゅうひゅう入り込んでくる。それ以外に音のしない室内。
俺とドラルク、二人してなんとなく沈黙する。
「あー……」
「ご、ごめんロナルド君、ごめん……」
「な、なにが?」
「なんというかその、迷惑をかけて……」
「いやうんまあそれはそうだが」
「嫌いになった……?」
さあ困ったどうしよう。これは初めての展開だ。
眉をへの字に曲げうるんだ瞳で俺を見上げるドラ公。ちょっとこれはアレだ、言っちゃ何だがアリかもしれない。
「ロナルド君……?」
アリよりのアリ。大アリだ。いつもと違うドラ公の様子に脳みそがぐらぐら揺れる。これがアレか、ギャップ萌えと言う奴か……!
「なあってば……」
「なる訳ねーだろ馬鹿!」
思わず馬鹿デカボイスが出た。ドラ公は驚いて塵になる。
「……」
「あー悪い! ごめんなドラ公。びっくりさせたな」
「いや、私が死にやすいのがいけないんだ……」
「いやうんまあそれはそうだが」
「ご、ごめん……! そうだ夜食! 途中だったな、ごめんすぐ作るから……ってあー! そうだ買い物行かないと……」
「あーいいよ俺行ってくるよ」
「いい大丈夫! ロナルド君は原稿してて」
「いやでも」
「締め切り近いんだろう? 私のことはいいからそっちに集中してくれ。じゃ!」
早口でまくし立てると、ドラ公はまたさっさと出て行ってしまった。
***
山盛りの唐揚げ。黄色く輝くオムライス。いつの間に焼いたのかバナナのケーキ。そして向かいの席から、不安げにこちらを見つめるドラ公。
唐揚げを一つつまんで美味いと言うと、ドラ公はほわっと顔を綻ばせた。
「良かった……」
雷に打たれたような衝撃。
いつもなら、当然だとか誰が作ったと思っている? だとか言ってドヤ顔をするドラ公が、褒められ素直に喜んでいる。ほらもっと食べて、だとか味付け変えてみたんだけどどう? なんてせっせと話しかけて来る。なんだここは? 天国か?
「結婚するか……」
「なに言ってんだ馬鹿。冷める前に食べてくれ」
そう言って、照れたように笑うドラ公。天使なのか?
本人には悪いが、しばらくこのままでもいい気がしてきた。そうだ普段あれだけ馬鹿にされているんだから、ちょっとぐらい良い思いをしたって……。
「……私なんかに、勿体ないよ」
――は?
「君にはもっと、いい人がいるだろうし」
――なに?
「……でも、一時の気の迷いとは言え、そう言ってくれたのは素直に嬉しいな」
――なんて?
「だからまあ、君が飽きるまで傍にいさせてくれたら、」
「待て待て待て! なんだその、なに⁉」
「なにって……」
「気の迷いとか飽きるとか、どういう意味だよ!」
「どうって、そのままの意味だが……」
「はあ⁉」
「……その、言っちゃ何だが、君はまだ若いし、恋愛経験も少ないだろう? だからその、勘違いしてるだけだと思うんだ」
「勘違いって、」
「ほら、君はずっと一人暮らしだったじゃないか。家に帰ると誰かが居るというのが、新鮮で、楽しかったんじゃないかな。だから――」
「恋愛感情と勘違いしたって⁉」
ドラ公は少し寂し気な顔で、頷いた。
待て待て待て、何を言い出すんだこの馬鹿は! 気の迷い? 飽きる? 恋愛感情と勘違い?
馬鹿じゃないのか、そんな訳ないだろ、一緒に住んだだけで恋と勘違いするなんて、そんな馬鹿この世界のどこにいる⁉
思わずそうまくし立てそうになって、飲み込んだ。違う、これは全部、薬のせいだ。
ドラ公の爺さんは、自信をつけさせてあげないと、と言っていた。そうだ自信。自信……しかしどうやって?
「……あのなドラ公、違うからな」
「うん?」
「俺は、本当に、その……」
その先の、言葉が出ない。
***
付き合って欲しい、と先に言ったのは俺だった。ドラ公は目を丸くして、しばらく黙り込んでから「また変な吸血鬼の催眠だな」とうんざりしたように言った。
違うそうじゃない本気なんだ、と後ろ手に隠していたバラの花束を差し出して、片膝をついてもう一度、「すっ、すすすす好きだ付き合って欲しい!」と言った。噛んだ。
ドラ公はめちゃくちゃ笑って笑って、涙が出るくらい笑ってから、目元を拭いながら「いいよ付き合おうか」と微笑んだ。時間が止まった。身体がふわっと宙に浮いた。そんな感覚。
そして俺達は付き合い始めた。思えば告白して以来、好きだと伝えていない気がする。言葉には出していないが行動で示しているから大丈夫、と思っていた。
けれど今のドラ公には、言葉が必要だ。好きだ。本当にお前が好きだ。頭の中ではハッキリ言える。しかし口に出そうとすると、喉に引っ掛かって上手く出せない。
「だからその、本当に――」
「いいよ無理しないで。……それより食事だ。原稿もまだだろう?」
取り繕うように笑うドラ公。笑っているのに寂し気で、なんだか泣きそうに見えて。
誰がこんな顔をさせている? 俺のドラ公に。俺の特別なたった一人に。誰がこんな――俺だ!
「あークソッ!」
咄嗟に立ち上がり、駆け寄って片膝をついて、手を握る。
「ろ、ロナルド君?」
握ったその手はひやりと冷たい。ドラ公は困惑気味に俺を見る。目と目がバチンと合った瞬間、なんだか恥ずかしくなって目を逸らしそうになった。が、気合で堪えて向かい合う。
「好きだ」
「っ……」
ぐらりと揺れるドラ公の顔。上がり切らずに震える口角。見開かれた目。手のひらがじっとりと汗をかく。
「俺は、お前が、本当に好きだ」
「……ありがとう」
そう言って、また無理して笑おうとするドラ公。ダメだ、違う、伝わっていない!
「勘違いなんかじゃねえ! 俺は本当に――」
「いいって。もういい。この話はやめよう」
「良くねえ! ……勘違いって言うけど、じゃあ恋って何なんだよ」
「何って……」
言葉を失うドラ公。そうだよな。わかんねえよな。何なんだよ恋って。
だからその先の言葉は、俺が、手探りで見つける。気持ちが届かないのなら、投げつけてでも分からせてやる!
「一秒でも、早く帰りたいと思うんだよ」
「なに……?」
「……昨日も会ったのに。明日も会うのに。今日も帰ったら居るってわかってるのに、駆け足になるんだよ。早く会いたいって、少しでも長く一緒に居たいって。……これが恋じゃないなら何なんだよ」
「それは、」
「毎日毎日お前のことばっか考えて、お前が隣にいない間も、これあいつが喜びそうだなとか、あいつだったらどうするかなとか、そんなことばっか考える。考えちまう!」
「ろな、」
「嫌だった! 最初はすげえ、嫌だった。どこにいても何をしててもずっとお前のことばっか。気持ち悪いよな引くよな。だからなんとかして、別のこと考えようとして、でもどうしても、お前でいっぱいで――」
「……」
「黙っとくつもりだったんだ。好きだなんて言うつもりなかった。でも黙ってたら、どんどん胸が苦しくなって、いろんなものがこう、溜まっていく感じがして、もやもやして、ぐるぐるして、溢れそうで、なあ、わかるか? 俺がどんな気持ちだったか、なあ、ドラ公」
「ロナルド君」
「……それをお前は! 勘違いって! ふざけんなよ、俺がどんな気持ちで――」
「ロナルド君」
「ふっざけんなよお前! 好きなんだよ愛してんだよ馬鹿! 二度とそんなこと言うな!」
「ご、ごめ……」
「バーカほんとバーカ!」
気が付いたら泣いていた。両目からだらだら涙を流して、好きだ、馬鹿、好きなんだ馬鹿と繰り返す。傍から見たら馬鹿はどちらか、考えるまでもないだろう。
ドラ公はそんな俺をそっと抱き締め、あやすように頭を撫でる。ごめん、ごめんよ私が悪かった、私が間違っていたと繰り返す。冷たいはずのドラルクの身体が、今日はいつもより温かかった。
「私のこと、好きになってくれてありがとう」
ああ、良かった。届いたんだ。
ドラ公は俺に、自信を持てとよく言う。俺なんかなんて言うな、自分に自信を持てと頻繁に言う。君にはこんないい所があるんだからと、マイナス思考な俺に、根気強く言う。
けれど俺はその言葉を素直に受け取れなかった。あいつはああ言ってくれるけど、実際の所は……なんて存在しない言葉の裏を読んで勝手に凹んでいた。
そうか、お前、ずっとこんな気持ちだったんだな。ずっとこんな気持ちで、でも諦めずに、俺に言葉を届けようとしてくれてたんだな。ダメだ俺は。本当にダメな奴だ。
ドラ公も治ったことだし、これからは俺も考え方を――
「でもそれはそれとして、やっぱり巨乳のお姉さんの方がいいんだろ?」
「……は?」
「付き合って半年経つと言うのに、今だに手を出して来ないしな。やはりこんなガリガリの身体じゃ……」
「待て待て待て待て何? 今なんつった?」
「いやだから、巨乳のお姉さんが、」
「それもそうだけど、えっ何? 手ぇ出して欲しいの?」
「それはまあ……だって私たち付き合ってるし……」
「ファ―――――――!」
「でも難しいよな。だって私、君の好みとは真逆だし。プラトニックな関係でも、付き合ってもらえるだけ……」
「いやいやいやいやいやいや抱く。抱くわ。抱かせてください!」
「いやそんな無理にとは、」
「無理じゃねーし!」
「だって君が好きなのって、えっちで巨乳な年上のお姉さんだろ? 私とは似ても似つかな、」
「似つくわ!」
「なんて?」
「おま、もっと自覚しろよ!」
「なにを?」
「さあ行くぞ予備室今すぐ行くぞ予備室」
「待て待て待てロナルド君、冷静になって考えてくれ。私だぞ?」
「は?」
「君の好きな巨乳のお姉さんじゃないんだぞ? 見ろこのガリガリの身体、」
「お! ま! え! だ! か! ら! い! い! ん! だ!」
「ヒェッ……」
「お前、ふざけんなよお前! 俺がお前に手を出さなかったのは、その、お前が嫌なんじゃないかって、」
「何?」
「お前、俺に、抱かれるんだぞ……?」
「うん……?」
「い、嫌じゃねえのかよ……」
「なんで……?」
「なんでって……」
「君の方こそ、嫌だろう、私なんて」
「お前その! 私なんてってのやめろ!」
「だ、だって私なんて、胸もないし、ガリガリだし、すぐ死ぬし性格も終わってるし」
「ハ――――――――やめろやめろやめろ!」
「だ、だってだって」
「お前それ俺の好きな奴の悪口言ってる訳だけど自覚ある? ねえよな? ねえからそういうこと言うんだもんな? お前ふっざけんなよマジで殺すぞ!」
「エーンごめんなさーい‼」
***
「――ルドくん、ロナルド君」
「んだようるせえな……」
頬をつつかれる感触で目が覚めた。何故か俺の腕の中には、一糸纏わぬ姿のドラ公がいる。
「……夢?」
「現実だが」
頬をつねられ、脳みそがのろのろと準備運動を始めた。
そうだあの後、ドラ公を予備室に引きずり込んで、わからせたのだ。ずっとうだうだもだもだ言っていたが、最終的には静かになった。わかってくれて良かったと思う。
「……ロナルド君さぁ」
「……んだよ」
「昨日私に言ったこと、あれ全部ブーメランだってわかってる?」
「アッあ……エーン! ごめんなさい‼」
わかることが出来て良かったと思う!
END!