秋風と茜色すっきりと澄んだ高い空
吹き抜けるヒヤリとした風。
ジリジリ焼ける夏の暑さはいつの間にか移ろい…
足を止め辺りを見渡せば
そこかしこに初秋の色や香りを感じる。
黄昏色に染まり始めた街に
ぽつりぽつりと点る灯に
どこか寂しさを覚えながら…
ほんの少し先を往く人物の
美しい横顔を見上げる。
眩しい茜の斜陽がその美しき横顔を隠した。
思わず目を細めて…
咄嗟に駆け寄り袖口を摘む。
足を止め振り返る彼は
些か驚いた様子でこちらを振り返り
…すまない。歩くのが早かっただろうか…と
申し訳なさそうにそう告げて
しっかりと手を握りまた歩き出す。
今度は先程よりもゆっくりと。
体温の低い手はそれでも温かく感じられる。
甘い香りを乗せた微風に頬を撫でられ
少しだけ…背中を押された気がした。
握られたその手をそっと握り返す。
ただそれだけの事。
それなのに…こんなにも胸は高鳴って。
頬が熱く感じる。
不意に彼がその手を引き寄せたと思えば
瞬く間に彼のその腕の中に収まっていた。
唐突な力強い抱擁に混乱していると
彼は額に口付けを落とす。
目元は優しく和やかに緩み
口元には微笑みを湛え
…それは、余りに美しい。
見蕩れて惚けているとそのまま抱えあげられる。
驚く間もなく彼はその背の翼を広げ大空へ舞うとスピードを上げて目的地へと向かった。
自宅である城の庭に降り立つと彼は自分を下ろした。
何故急に飛んだのかと問うたが
彼はただの気まぐれさ。とはぐらかすばかり。
…もう少し手を繋いで歩きたかったのに…
と、拗ねた振りをして小さく本音を零せば
彼はまた自分を抱き寄せて今度は唇を塞ぐ。
そしてまた恐ろしい程に美しい微笑みを浮かべてお望みとあらばまた明日にでも…と耳元に囁いた。
彼の頬がやや上気して見えたのは
茜の斜陽のせいか…それとも…。
秋風と茜色に彩られた景色の中で
そんなことを考えていた。