2月14日【2月14日】
ひとり、電車に乗っている。ぼんやりしながら数駅間、車窓を眺めていた。最寄り駅が近づいてくる頃だと、降りる準備を始めた時だった。
電車が停まった。外を見ると、全てが真っ黒な駅があった。見慣れた最寄り駅の姿とは似ても似つかない。妙な不安感に襲われる。
ぴろり、と音がした。私のスマートフォンに、緑色の通知が届いている。祖父が亡くなったという報せだった。突然の心不全だという。
電車が走り始めた。見慣れた最寄り駅が見えた。
祖父のいる病院へ駆け込んだ。祖父の手に触れた。柔らかいのに、熱を失ってしまった皮膚の感触が現実を突きつけてくる。以前、祖母が亡くなった際に一度も触れずに後悔していた。
触れることができたからだろうか。あの時のほどの後悔はない。けれど、確かな喪失感があった。