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    9月27日【9月27日】


    平日だというのに、普段より2時間も遅く起きてしまった。やってしまったと頭を抱えながらも、急いで準備を終えて家を出た。

    いつもより遅い時間の電車は、驚くほどの速度で走っている。一番先頭の車両に乗っていた。何か嫌な予感がして、前方の窓をちらりと見やった。

    前を行く電車の、車両の最後尾が迫ってきている。

    このままでは追突する。それなのに電車は速度を弱めることなく突っ込んだ。激しい衝突音がする。どうか誰か、助けてくれ。体を低くして、祈るばかりだった。

    自分が死んだような様子はなかった。周りの乗客を確認しようとして、目を閉じ直した。目の前の床に、飛び散った鮮血を見た。
    しかし、いち早く脱出しなければ火災が起こる可能性もある。諦めて辺りを見回す。偶然にも、自分の目の前の窓ガラスが割れていた。人を踏まないように脱出する。

    外は中よりも大惨事であった。四方八方に肉片が飛び散っており、悲鳴やうめき声が聞こえてくる。地獄絵図である。この場から動こうと一歩踏み出した瞬間、私の体に、誰かが抱きついてきた。
    驚いて振り返ると、弟が居た。少し頬を切っているようだが、他に傷は見当たらない。手を繋いで一緒に逃げる。後ろから爆発音が聞こえた。

    どうやって逃げたかは記憶にない。いつの間にか祖父の家に辿り着いていた。テレビでは、あの事故の映像が流れていた。くたくたになった体で、耳を塞いで寝転ぶ。弟はゲームを始めたようだった。

    疲れたからか、異様なまでの眠気に襲われた。抗えずに目を閉じる。あんな事故に巻き込まれたのが、夢であってほしいと心の中で願った。そのまま意識が遠のいた。

    次に目が覚めたとき、私は線路沿いに立っていた。

    「目が覚めたか」

    横を見ると、見知らぬ男性が立っていた。

    「あちらを見るといい」

    言われた通りに目をやる。電車が恐ろしいほどの速さで、前の電車に迫っている。

    私が乗っていたはず電車だった

    「あなたが乗車しなかった。たったそれだけのことで、電車は運命を違えた」
    「どうして」
    「少なくとも、あなたの弟はあの電車に乗ったままだ」

    あの時よりも電車の速度が上がっていることに気が付いた。これでは、先程よりもより多くの命が失われるのではないか。

    「全員助ける方法を、今すぐ教えろ」

    男の肩を掴んで、震えた声でそう言った。

    「簡単だ、ただ願うだけでいい」
    「本気で言ってるのか」
    「ああ。そういう決まりだからな」

    自然に、どう願えば良いのかを理解した。そうして目を瞑って、手を組んで呟いた。

    「お願い、あの電車を止めて」

    しょうがないですね

    脳内に直接、声が響いた。男が私を抱き上げた次の瞬間、私達は電車と並んで飛んでいた。驚く間もなく、一心に弟の名前を呼んだ。

    空いていた窓から、弟が顔を出した。

    「そこから飛んで。受け止めるから、この人が」
    「は?」
    隣の男を指差すと、弟が頷いた。私は地面に飛び降りて転がった。入れ替わるように弟が窓から飛びだした。男はやれやれといった顔をした後、弟を受け止めた。

    どうにかしておきましたよ

    「ありがとう」
    再び脳内に響いた声にそう返す。次に聞こえたのは、電車の急ブレーキの音だった。体にびりびりと伝わるそれに思わず耳を塞ぐ。

    音が止んだ。

    電車は、追突する寸前で止まっていた。
    縣 興夜 Link Message Mute
    2022/12/15 16:06:00

    9月27日

    9月27日の夢日記

    #創作 #夢日記

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