1月2日【1月2日】
知らない駅のホームで、電車を待っていた。
ホームの壁に貼られた遊園地のポスターが、回送列車が通る度にびらびらと音を立てている。買ったばかりの弁当を両手で抱えてぼーっと景色を眺める。西日が眩しくて目を細めた。
ふと気がつくと、視界の右下で黄色い花のアイコンが表示されている。
不思議に思っていると、突然、ドンという音がした。背中を押された私が、線路に落ちる音だった。焦ってすぐにホームに上がろうとした途端に、激しい警笛が劈いた。
駅に止まろうとする電車に、ゆっくりと足を引き込まれる。線路の石が背中にめり込む。感じたのは痛みではなく恐怖だった。頭以外が下敷きになった。
視界の端で黄色い花が散った。
ハッと我に返ると、トンネルで立ち尽くしていた。視界の右下には、ピンク色の花が表示されていた。
遠く、トンネルの出口から薄暗い夕暮れの山道が見えた。上を見上げると、光を失った電灯が並んでいた。明かりの類は持っていない。日が落ちれば暗闇に取り残されるだろう。
コンクリートを蹴って走り出した。
トンネルのちょうど真ん中まで走っただろうか。端にひとつの椅子が置かれている。椅子の脚には犬が伏せっていた。横を通り過ぎようとして、犬が怪我をしているのが見えた。立ち止まりかけたその時だった。
「止まるな」
誰かの声がした。ピンクの花が激しく点滅していた。頭を振ってそのまま走った。
背後で、犬の唸り声と人の恨み言が混ざったような音が反響した。
一心不乱に足を動かしている内に、出口に辿り着いた。トンネルから一歩出た瞬間、どこかの山の麓に倒れ込んでいた。
花のアイコンは消えていた。